正しい在庫の持ち方:見込み生産・受注生産の分岐点を学ぶ|在庫管理110番

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在庫をどのような状態で持てばいいのか?

物流業、卸売業、小売業が持つ在庫は、販売する
ための「製品のみ」です。

しかし、製造業は、3種類の在庫を持っています。

  • 部品・原材料:生産活動に必要なもの
  • 仕掛品:生産途中のもの
  • 完成品:販売・出荷できるもの
    詳しくは、在庫とは何かをご参照ください。

どのタイミングで在庫を持つかによって、
大きく状況が変わります。

一般的な考え方では、

在庫は上流工程で持つのがベスト

工場の都合だけを考えれば確かにそうです。
下記の図で分かるように、

在庫は上流工程で持つ

ひとつの部品・原材料は、様々な仕掛品や製品に使われます。
部品aは、仕掛品1~3の全てに使えますが、
仕掛品1は、製品AとBにしか使うことができません。

下流工程に近づくに従って、用途がどんどん限定されて
いきます。

在庫をもつときは、安全在庫を設定することが多いので、
部品の状態で在庫をもてば、安全在庫の設定は1種類のみ
仕掛品の状態で持てば3種類の安全在庫を、
製品の状態で持てば、6種類の安全在庫を、
それぞれ設定しなければいけません。

在庫も増えますし、
棚の整備(置き場)も余分に必要になります。

工場にとって、在庫を下流で持つメリットは無いのです。

生産にかかる時間と顧客満足

しかし、工場にはもうひとつ考えなければいけないことが
あります。

それは、生産にかかる時間と納期です。

いつまでもお客が待ってくれれば良いですが、
それを実現するためには、覚悟・マーケティング・ブランディング
などの戦略が必要です。
(例:限定ブランド品、フェラーリなどの高級車)
これらはモノの売り方の話なのでこの場では省きます。

工場は、お客の要求納期にできるだけ応じられるように
製造リードタイムを常に短くする努力をしなければいけません。

製品で在庫を持てば、すぐに出荷・販売できるため顧客にすぐ
に届けられます。
しかし、部品で持つとどうなるか?

生産しなければいけなくなります。
その分だけ時間が余分にかかってしまいます。

お客によっては、
「そんなに時間がかかるならいらない」
となってしまい、機会損失になってしまうかもしれません。
早く顧客に届けることができるのは、顧客満足につながります。

在庫の持ち方のジレンマ

ここまでをまとめると、

上流工程で在庫を持てば、在庫は少なくて済むが
生産に時間がかかり、納期が長くなる

下流工程で在庫を持てば、在庫は多くなるが、
生産時間は短くなり、納期が早くなる。

在庫の持ち方

これが製造業の在庫の持ち方の難しいところです。

つまり、在庫の持ち方の判断基準は、

  • 製造リードタイム(生産にかかる時間)
  • 納品リードタイム(顧客への納品にかかる時間)

となります。

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在庫の持ち方は業界によって違う

これは業界や製品、ブランディングによって大きく変わります。

例えば、ボールペンなどの日常の消費財であれば、
お客は絶対に待ってくれません。
おそらく、「いまから生産するので10日待ってください」
というと、違うボールペンを買うのではないでしょうか?

しかし注文住宅であれば、

竣工まで4か月かかります。
と言っても、「じゃあ別の家を買おうか。」
ということにはなりにくいと思います。

これを上手く利用して在庫を減らしたのが、パソコンメーカ
ーのデルが行った手法が有名です。

パソコンは日進月歩で、非常に寿命が短い製品です。
それにも関わらず、CPUやメモリなど種類は多岐にわたり、
非常に大量の製品在庫を抱えざるを得ない状況でした。

しかし、「デル・モデル」では在庫の持ち方を製品から仕掛品
に変えました。

デルでパソコンを買おうと思うと以下のような画面が現れます。

在庫を仕掛品で持つ

ユーザーがスペックを選んでいくのです。
これにより、デルは製品在庫を持つ必要がなく、各仕掛品(ユニット)
単位で在庫を持っていれば済むようになりました。

もちろん、このような在庫の持ち方を実現するためには、
仕組み作りと市場環境がありました。

やり方によっては、「製品在庫が当たり前」の業界でも
適用することが可能だということを示しています。

デカップリングポイント

在庫をどのタイミングで持つかということを
専門用語でデカップリングポイントと言います。

これは、在庫が3種類ある製造業独特の考え方で、
卸売業や小売業などの他の業界には無い考え方です。

先ほどのデルを例にとると、
仕掛品(ユニット)単位までは生産を見込み生産で進めて、
注文があってから、仕掛品の組み立てを開始します。

つまり、デカップリングポイントとは、
見込み生産と受注生産の切り替わる分岐点ということになります。
図にすると以下のようになります。

デカップリングポイント

デカップリングポイントの直前に在庫を持ちます。
ボールペンのデカップリングポイントは、最下流工程の製品で、
注文住宅のデカップリングポイントは、最上流工程にあり、
在庫は一切持っていません。
デカップリングポイントについて詳しく見る

不良在庫を減らし利益が出る会社を作るために

在庫管理は100社あれば100通り。
他社の話を聞いても、「うちの会社とは違う」と
思うのは当然です。

自社に合った在庫管理をやるためには、
基礎的な考え方・知識をしっかりと理解して、
自社に応用する力を身につけなければいけません。

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