在庫管理システム導入の失敗事例

(部品製造業A社の場合)

A社は在庫管理のシステム化を図るため、上流業務の販売・仕入管理
からシステム化を図れば下流の在庫管理は容易にシステム化できると
考え、テレビで頻繁に見かける著名な販売・仕入・在庫管理システム
を導入しました。

ソフトメーカーの助言に従って上流の販売管理は売上伝票発行から
売掛管理、仕入管理は発注伝票発行から買掛管理がシステム化され
て関連の事務処理は効率化が図れ、それなりに効果が得られました。

次はいよいよ在庫管理システムを使いこなそうと意気込んだ取り組
みはじめたところ、確かに在庫管理は仕入管理の入庫情報と売上管
理の出庫情報によって会社としての在庫計算はできていました。
しかし、仕入や売上のデータ入力は月次の決算に間に合えばよいと
いうことでまとめて時間のある時に入力していました。

そのため、リアルタイムの在庫が把握できないのはもちろんのこと、
今日の在庫すら分からない状況でした。そこでその日のうちに入力を
済ませるルールを徹底して何とか日次締め時点での在庫を把握するこ
とは可能になりました。

しかし、問題がまだありました。伝票入力担当者は日によって作業量
がバラつくので作業負荷が増大し、不満たらたらでした。

もともと、在庫管理のシステム化は在庫精度と品質を向上させるため
にシステムを利用した在庫場所(ロケーション)管理や先入先出そし
て、ロット管理などを実現したいと考えていました。

しかし、それらの機能がどこにも見当たりませんでした。
そこで機能追加のカスタマイズをソフトメーカーに依頼しましたが
パッケージのカスタマイズは対応できないとのつれない返事でした。

せっかく、多額の投資をしてシステム導入が在庫管理にはほとんど役に立たない
ことが後になって判りました。

在庫管理システムの導入に失敗した原因

販売・仕入管理が成功したのになぜ、在庫管理システムの導入は失敗したのでしょう?それには在庫管理システム導入に当たって独特の特徴があります。
販売・仕入管理と在庫管理システムを比較しつつご説明します。

  1. 在庫管理は情物一致
  2. 在庫管理は100社あれば100通り
  3. 自社を知らなかった

在庫管理は情物一致

まず、導入した販売・仕入管理が成功したのは、販売管理は売上伝票発行から売掛管理、仕入管理は発注伝票発行から買掛管理などは、伝票処理が中心です。
伝票さえキチンと扱えれば、作業は完結します。

一方、在庫管理はどうでしょう。
在庫を1個出荷をするという処理をシステムに入力しても、現物が実際に出荷
されていなければ、システムの情報と現物に差異が生じます。その逆も同じです。
現物を1個出荷したのに、システムに出荷情報を入力しなければ、差異が生じます。つまり、在庫管理システムは、個々の現品と伝票処理の同期させる情物一致が必須です。
現品の入出庫が行われる現場でタイムラグを最小限にして伝票入力
することが求められます。

システムを導入する前に在庫の運用ルールを決めて、その通りに関係部署の
担当者が動けなくてはいけません。

在庫管理は100社あれば100通り

会計のルールは、会計は簿記というルールによって、何をやるべきか、どうやればいいのかと言うことが厳格に定められています。最終的な決算書のフォーマットも国によって決められています。このように会計には会社によって独自のやり方やルートがあるとはいえ、
会計には世の中の一般的な取り決めに基づいたルールがあります。

一方、在庫管理はどうでしょう。
国や業界などによって在庫管理のルールは決められていますか?
答えは「ノー」です。在庫管理は、全て各社独自です。
在庫管理システムは会社の現場に密着したシステムです。
扱う製品や、物流、受渡し方法、管理したい項目などによって、
各企業独自の機能を保持する必要があります。

自社を知らなかった

会計はルールがあり、管理する項目、手順、報告の書式まで全て決まっています。
だから、システムに落とし込むことができます。

この会社は、在庫場所(ロケーション)管理や先入先出そして、
ロット管理などを実現したいと考えていました。
しかし、導入したシステムではそれが実現できませんでした。

この会社の最大の失敗は、

  1. 導入目的を明らかにしていなかったこと
  2. 自社の業務フローを明確にしていなかったこと
  3. 自社に必要な機能を把握できていなかったこと
  4. 追加カスタマイズできるかどうか知らなかったこと

残念ですがシステム会社の失敗ではなく、導入を決めた会社の失敗です。
在庫システムを導入する前に、システム導入の基本常識が欠落していた
ことを如実に表しています。

在庫システムで導入失敗する理由

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