キャッシュ・コンバージョン・サイクルの事例(ファーストリテイリング)

ファーストリテイリングは、ユニクロに代表される製造小売業です。
現在、スペイン インディテックス社(ZARA)、スウェーデンH&M社、に次ぐ世界アパレル業界第3位の売上高で、世界一を目指しています。

SPAとは

SPA(speciality store retailer of private label apparel)とは、アパレル分野を中心として、小売業が製造の分野まで踏み込み、自社のオリジナル商品の開発を行い、自社で販売する方法のことを言います。

欠品による機会損失

小売業では最も重要視される領域、在庫と大きな関連のある管理指標です。
欠品とは、顧客が発注した際に、商品が手元にないことをいいます。

一般的にどの企業も営業関係者は、特に売れ筋商品または定番商品に関して
欠品による販売機会ロスを極小化するために安全在庫として、在庫をやや
多目に持つ傾向にあります。

高崎商科大学商学部特任教授・梶田ひかる氏によると、
欠品の流れを以下のように整理しています。
欠品について

通常、欠品が発生すると、販売機会損失と長期的損失として
顧客ロスの2種類に分けられます。

欠品がある場合、売上を最大化するため、数量変更、代替品に
変更して出荷しますが、最悪は納期を変更して出荷となります。

また提示された納期変更も受け入れられない場合は、
販売機会損失という扱いになります。

ユニクロ対ZARA

ユニクロvsZARA
(出所:「ユニクロ対ZARA」 齊藤孝浩著 日本経済新聞出版社を参考に改編)
欠品率の測定方法は業界、企業によって異なります。
また商品の特性、生産地と消費地の距離によっても異なります。

同じ業界でもアパレルのファーストリテイリング(ユニクロ)とZARAで大きく異なる点も興味深い点です。ユニクロは、小売業の発想で「作ったものを売る」
という特徴を持ち、毎シーズンに需要期に店頭在庫を欠品させないため、
毎週の売れ行き動向を注視し、週単位での販売管理。

一方のZARAは製造業の発想で「売れるものをつくる」という特徴を持ち、常に最新のファッション商品を店頭に並べることに注力して、売れ筋商品を欠品させないように補充するという考えはありません。

両社の違いは小売業と製造業の違いにあります。
自社で工場を持つZARAは計画外に売れすぎることは操業の安定を崩すため、
欠品補充を良しとしません。

稼働率は売上原価に直接影響及ぼすのを恐れているだけではなく、
輸送は店舗毎に週2回の航空便を使っている点も興味深いと思います。

在庫管理におけるZARAの強み

また、齊藤孝浩氏は週刊東洋経済2017年12月23日号で、
ZARAの強みを以下のように紹介しています。

宣伝広告費の占める割合が小さい

ZARAの広告宣伝費は売上の0.3%です。
一方ファーストリテイリングは3.8%(2017年8月期)です。

圧倒的に小さく、店舗の立地や内装・新製品投入のオペレーションに金をかける、プル型の集客プロモーションが成功しています。

商品は空輸

新製品は週2回に投入され(日本では月曜日と金曜日)、デザインから4週間。
追加商品は最短で2週間以内に各国の店舗に並べられます(空輸)。

死筋商品を抱えない

ファッションに敏感な女性が衝動買いしたくなるような
魅力的な商品を次々に供給できるサプライチェーンにより、
「死に筋商品」を大量に抱えるリスクを極力減らせるため、
高い利益率を維持しています。
(ROEは過去10年間 30%前後で推移。2016年度は26%)

在庫回転率の比較

ユニクロvsZARA_在庫回転日数
次に両社の過去3年間の在庫回転を確認してみましょう。
(ファーストリテイリングの決算は8月末、インデックス(ZARA)は1月末)
※年度末在庫額÷売上原価×365日で算出。

在庫回転日数は、両社とも商品サイクルが約3か月であることを考慮すると、
両社ともに高いレベルにあります。
ファーストリテイリングは約4か月、インディテックスは3か月の在庫を抱えています。但し、インディテックスの売上の約65%がZARAで、残り35%は他のブランドである点も考慮する必要があります。

ファーストリテイリングのキャッシュコンバージョンサイクル

ユニクロのCCC
直近13四半期の在庫、売掛金、買掛金、運転資本の関係を金額と回転日数で以下が確認できます。
在庫額はピーク時(3Q末=12月末)に約2500~3000億円です。
運転資本の倍になる。
ユニクロの在庫・売掛金・買掛金・運転資本の推移
つまり、資金繰りを改善するには在庫圧縮が最大の効果があるといえます。
単純に在庫額を圧縮すると売上機会の損失に直結するため、在庫回転率
高めることによる在庫削減の実現が求められます。
ファーストリテイリングにとって、売上の増大、商品力の強化に加え、
在庫回転率の改善は、重要な経営課題といえるでしょう。

ZARAのビジネスモデル

ZARA_お客様との距離を近く
ZARAは1975年に製造業からSPAに転換しました。
自らは店舗を抱えることでお客様との距離の短縮を図りました。

顧客の反応をいち早くフィードバックすることで需要予測の精度を高めています。

  • 「片手は工場に、もう一方の手は顧客に触れていなければならない」
  • 「聴き上手」になれ、現場のフローを止めるな

物流に関しては以下の差異があります。
アパレルメーカーでは一般的にデザイナーが主体的に流れ作業をします。
一般的なアパレルの流通形態
そのサイクルは6か月といわれます。

一方でZARAは、顧客を中心にデザイナー、工場(自社+協力工場)、
店舗が一体となります。
ZARAの流通形態
準備に2か月、シーズン中は3週間が基本。
意思決定の差は明らかにZARAが早いので、機会損失も少なく、過剰在庫も抱えません。

運転資金、キャッシュフローのご相談

高井先生は実務的な管理会計のスペシャリストです。
ソニーにて多数のご経験を積まれ、実績を残されています。
欧米ではスタンダードな経営指標であるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの普及に努めている数少ない専門家です。
運転資金がいつも厳しい、キャッシュフローが一向に良くならない、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを経営指標として取り入れてみたいなどのご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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