小売バイヤーが不良在庫を発生させないための基礎知識

ここでは小売バイヤーのためのPDCAプロセスについて解説します。
これは私が在職時代に、新人バイヤーの研修などで話していた内容です。
ごく基本的なことですが、忘れがちなことなのでベテランバイヤーの皆様も
復習だと思ってお読みください。

まず、PDCAとは以下の4項目の頭文字です。

  • P・・・Plan  計画
  • D・・・Do   実行
  • C・・・Check 点検
  • A・・・Action 修正行動  

計画の立て方(Plan)

何かを実行する場合、よほど場当たり的な行動でない限り、必ず目標があるはずです。
例えばマラソン大会出場だと、10時間で完走する!受験だと東京大学に合格する等、得ようとする結果です。

「そんな基本的な事は分かっている」と言われそうですが、
実はここに大きな落とし穴があります。

小売業の仕入れは会社の貴重な資金を使います。
仕入れは小売業にとって一番大きな投資ですから無計画は許されません。

希望的観測が強い水増し販売計画はリスクの塊

会社は、仕入れの投資に対して利益を得る事が目標です。
単に利益を得るだけではなく、「より高い利益」が目標です。
したがって、仕入れ担当(バイヤー)は、より売れる商品、より利益率の高い商品を選定しなければいけません。

一品当たりの販売利益額は、利益率×販売数量なので仕入・販売計画は、
高い利益率の商品をより多く販売する計画が「望ましい計画」となります。

バイヤーは、従来と比べどれだけ多く売れるか、また仕入れについても、これまでより安い原価設定をできるか、に焦点を当てて計画を立案しなければいけません。

販売数量計画が、期待値を込めた数量見込みとなっている事が多いのではないでしょうか?例えば、次のような販売計画の作り方です。

  • 前年比120%とかの目標値ありきでの見込み作成
  • 今年の商品の改良ポイントを大きく加味して上乗せ

仕入原価の低減は次のようになっていませんか?

  • 仕入数量を大きくする事で一品当たりの仕入れ単価を小さくする
  • 時期外れの仕入れで原価を安くする

作成された販売計画が上記のような希望的観測に基づいた販売数量で、仕入れ計画が販売数量に見合わない大きな数量の仕入れでの原価低減だとしたらどうでしょうか。

確かに仕入・販売計画上は、より高い販売利益の獲得という
点では目的に合致しているように見えます。

そしてこの計画を決済する上司にとっても耳ざわりの良いものかも知れません。
希望的観測に基づき水増しされた販売見込み数や、過剰な仕入れ数量による在庫増大等の問題(その先には、利益度外視の安売りや廃棄)が潜んでいます。実現可能性では大きなリスクがあるといえます。

マイルストーン

目標にたどり着くまでには中間目標値を設定しなければいけません。
この中間目標値のことをマイルストーンといいます。

マイルストーンとは、最終目標を達成するための重要な中間目標のことです。
例えばマラソンなら10km地点を5分で通過する、
受験なら8月の模試で偏差値60を獲得する、という目標までの時系列に沿った
具体的な値です。

目標は具体的で適正であること

最終目標と、そこに到達する為のマイルストーン作り、これがP:計画です。
ここで重要な事はまずその目標が具体的で適正であるという事です。
根拠の無い願望や気合いではダメです。

次にマイルストーンが適正である事、つまり、そのマイルストーンに沿って進んでいく事が可能で、結果として目標に到達できる様に組み立てられている事です。
適正な目標とマイルストーンがあって初めてP:計画と言えます。

実行の仕方(Do)

計画が出来たら次はD:実行です。
計画は出来たのだから実行は当たり前、と思いがちですがそうたやすくはありません。
実行の重要なポイントは、あくまでも計画に則って実行することです。

私が見てきた小売バイヤーの失敗例の多くは、”計画を作る事”が目的になることです。
計画ができたこと自体に満足してしまい計画通りの実行に進めない、あるいは始めてもすぐに頓挫してしまうケースです。

頓挫してしまう理由は、以下のような言い訳が出てきます。

  • タイミングが合わなかった
  • 状況、条件の変化があって時期をずらしている

状況や変化への対応というあたかも正しいように
聞こえる言い訳で計画の実行自体をおろそかにして良い訳はありません。

大切な事は、あくまでも計画に沿って実行をしなければ何も得られない
という事です。

点検の方法と視点(Check)

計画に沿って実行し、マイルストーンに到達した時点で
目標と実績のギャップを点検します。この段階がC:点検です。

点検で大切なのは、目標と現状のギャップを認識しその原因を探ることです。
この段階での目標との小さなマイナスを放置しておくと、結果的に取り返しのつかない結果を招くことになるからです。
販売計画でバイヤーが見るべき視点は、

  • 販売数量が計画よりショートしている
  • 在庫数量が目標より過剰になっている
    等です。
    販売数量や在庫数量ではなく、在庫回転日数などの指標による差異確認も重要です。
  1. 販売数量は目標を下回っている。在庫回転日数は計画より小さい(在庫回転日数は計画よりも良い)
  2. 販売数量は目標を大きく上回っている。しかし、在庫回転日数は計画より大きい。(在庫回転日数は計画よりも悪い)

目標と現状のギャップの原因は何か?

先ほどの1に関しては、次の2点について考えます。

  • 販売数量がショートしている原因は何か、
  • 販売数量がショートしているにもかかわらず在庫回転日数が大きく減少している原因は何か?

通常、販売数量が減少すると、在庫の流動性が下がるので、在庫回転日数は上昇します。しかし、この場合在庫回転日数はが大きく減少している事しています。
この問題の原因として考えられるのは、

仕入数量が過小の結果、品切れが発生し販売数の減少を招いたのでは?
となりますので、仕入のタイミングと数量を点検します。

2に関してですが、後々山積みの不良在庫として問題が
顕在化するよくあるケースです。
通常、販売数量が目標を上回れば在庫回転日数は減少するはずです。
しかし、2のケースでは在庫回転日数は大幅に上昇しています。

現場で起こっていると考えられる現象は、
商品は売れているが、商品在庫が必要以上に倉庫に積みあがっている状況です。
おそらく現状売れているからという理由でどんどん仕入れを増やしたことが原因です。

好調に売れている時は問題視したくないケースです。
ただ、一旦販売が下降線となった時のダメージは非常に大きくなることが普通です。
それまでの販売利益が吹き飛んでしまい到底補いきれないケースが良くあります。
これも仕入れをきちんと点検すれば未然に防止できる問題です。

修正行動(Action)は具体的に!   

適切な目標値とマイルストーンをもった計画を立案し、それに沿って実行し、マイルストーンでの差異点検と原因抽出を行いました。
次に行うのがA:修正行動です。

点検の段階で得たギャップの原因に対して具体的な対策を行います。
具体的な対策とは、発生した差異を解消、挽回し、結果として当初目標に到達させる為の行動です。
修正行動での重要なポイントは、的確な対応を行うという事です。

1に関して(販売数量は目標を下回っている。在庫回転日数は計画より小さい)
マイルストーンでの販売数の目標未達に目をとられて、販売数増強の為に価格を下げるとか、押し込み販売とかの見当違いの対応策をとってはいけません。
この2つのケースでは共通して、仕入に問題ありとなった訳ですが、
むやみに仕入れを増やす、減らす事ではありません。

今後の必要数量をきちんと計算し、その数量を計画の修正として明確に表します。
そして、修正計画それに従って実行していく事が必要です。

つまり、修正行動とは計画の修正であり、それに従った対策の実行を意味します。
当然、計画の修正によって、最終目標値が当初計画とは異なってくる場合も多いですが、これも、この計画自体の成否を評価する重要な要素となります。

PDCAプロセスはだれが見ても分かりやすいこと

PDCAを進めるに当たって最も重要なポイントは、
その計画自体が誰が見ても可視的でわかりやすい事です。
例えば、時系列的な数値の羅列だと、
どこで何がどう変化をしたのか、
良い方向なのか、
悪化なのか

数字の羅列だと即座に読み取れません。
計画に修正を加えた場合も同様に、どの程度の修正なのか、またその影響がどれ位なのかを読み取る事は困難です。
計画が、数字の羅列でわかりづらい場合は、
その次のプロセスD.C,Aに繋がらない事が多いです。

PDCAプロセスはチームで進める

"PDCAプロセスは個人でも有効ですが、小売業等の会社組織の場合はチームで運用する事を勧めます。
計画立案当事者の仕入や開発部門、販売担当部門、補充物流部門、マネジメント等の担当者によるクロスファンクショナルなチームを作ります。
チーム内でPDCAを監督して、一部門での暴走を防止し、情報の共有化はもとより、協力体制の強化にもつながります。

仕入れ、販売計画にお悩みなら是非お気軽にご相談ください

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