棚卸差異の発生原因と改善方法

その在庫データ、本当に合っていますか?
在庫精度(棚卸差異)は、在庫が合っているかどうかを確かめる唯一の手段です。
帳簿上の在庫と実在庫が合わない。
在庫管理に携わる人にとって頭の痛い永遠のテーマです。

なぜ、棚卸差異は発生するのでしょうか?
そしてその改善方法は?

長年棚卸の計画から実務、そして棚卸差異の分析に関わり
続けてきた在庫管理アドバイザーが解説します。

在庫管理110番では在庫管理の教科書「棚卸編」として棚卸のノウハウをまとめています。

棚卸差異とは?

棚卸差異率とは、帳簿上の在庫データと実際に数えた在庫数の差異率のことです。
例えば、帳簿在庫が100個に対して、実際に数えた在庫数が90個であれば棚卸差異率は10%になります。

棚卸差異の改善ステップ

棚卸差異を減らす改善ステップは次の通りです。

  1. 棚卸差異を損と益で別々に算出する
  2. 棚卸差異の原因を知る(推定する)
  3. 棚卸差異の原因を改善する

棚卸差異には損と益がある

一言に棚卸差異率が10%といっても、
棚卸差異は2種類あります。
それぞれ、棚卸差損と棚卸差益と言います。

  • 棚卸差損とは、帳簿上の数よりも実際に数えた数の方が少ない場合
    例)帳簿在庫が100個に対して実査在庫が90個であれば、「棚卸差損」
  • 棚卸差益:帳簿上の数よりも実際に数えた数の方が多い場合
    例)帳簿在庫が100に対して実査在庫が110であれば、「棚卸差益」

棚卸差異を算出していますか?

そもそも、棚卸後に棚卸差異をきちんと算出していますか?
残念なことに在庫を修正して終わりという会社がとても多いようです。

もし、経営者がそのようなことをさせているのであれば
即刻その考え方は、経営者・管理者は改めるべきです。
なぜなら、棚卸差異は会社経営の財務に大きな影響を与えるからです。

棚卸し金額は、会社の売上総利益(粗利)を決める最も重要な要素です。

粗利 = 売上 - 売上原価

売上原価を決めるのが棚卸金額です。

つまり、棚卸金額が狂えば自動的に粗利が狂います。
その結果、営業利益も経常利益も全て狂います。

利益が見えなければ、正しい経営判断ができるはずがありません。
さらに棚卸の間違いによって余分な税金を納めるということにもなりかねません。

実際に棚卸差異が財務会計に与える影響をシュミレーションをしてみましょう。

棚卸差異が10%あると会社の利益はどうなる?

棚卸差異率のシュミレーション
帳簿在庫に対して棚卸差異率が0%(差異無し)、5%、10%、15%の
場合に分けてそれぞれ計算しました。

売上総利益(粗利)と営業利益がどうなるかというと・・・

↓↓こんなふうになります↓↓
棚卸差異率のシュミレーション

  • 棚卸差異率が5%の時
    粗利率:18% 、営業利益率:2%
  • 棚卸差異率が10%の時
    粗利率:16% 、営業利益率:0%
  • 棚卸差異率が15%の時
    粗利率:14% 、営業利益率:-2%

ちなみに、少し古いデータですがH28年度の中小企業の営業利益率は2.99%です。
[[※平成29年中小企業実態基本調査速報(要旨)より>
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/180329chousa.pdf]]

棚卸差異率が5%あるだけで、営業利益率が2%も変わります。

営業利益が1%違うだけでも企業の業績は大きく変わります。
少し財務を分かっている方であれば、営業利益1%の重みは十分に
理解できるでしょう。

営業利益を1%上げるだけでも大変なのに、棚卸差異があるだけで
営業利益が吹き飛んでしまう可能性すらあることが分かっていただけたと思います。

今、あなたの会社でやっている棚卸が絶対に
正しいと言い切れますか?

残念なことに、棚卸でほぼ棚卸差異なく数えられている会社は
少ないです。
もっというと、棚卸差異率を把握していない会社ほど、
棚卸差異が大きなことが多く、棚卸結果は信用できません。

弊社のご支援先のうち、棚卸差異率を出したことが無かった会社に
実際に棚卸をしてもらい、棚卸差異率を算出してみたことがあります。

実施したすべての会社が、棚卸をやる前は「うちの棚卸は大丈夫ですよ!」
と自信満々でしたが結果は散々で、愕然としていました。

棚卸差異率0%、その結果は本当?

棚卸差異率を出している会社でも1点気を付けていただきたい事があります。
その棚卸差異率は本当の事実を示しているのかと・・・

おそらく、皆様が会社で出している棚卸差異率は、
在庫データ全体を足した合計と棚卸結果全体を足した合計
で出した棚卸差異だと思います。

実はこれが大きな落とし穴です。

先ほどの例で、
帳簿在庫が100に対して実査在庫が90と、
帳簿在庫が100に対して実査在庫が110が同時に存在した時、

全体の合計で見た時は、
帳簿在庫数200個、実査在庫数200個となります。
棚卸差異は0%(棚卸差異無し)になります。

しかし実際には、棚卸差異が存在しているのです。
合計することで事実が隠れてしまう場合があります。

棚卸差異は損と益に分けて算出する

上記の例のように、棚卸差異は、必ず損と益別々で集計しなければ
いけません。

合計の棚卸差異が小さくても、それはたまたまであり
見た目上の数字だけかもしれません。

棚卸差異を損と益に分けて、

  1. 棚卸差損の結果だけを集計する
  2. 棚卸差益の結果だけを集計する

とそれぞれ別々に出してみなければ、本当に
棚卸があっているかどうかはわかりません。

棚卸差異は偶然に起こるものではなく、
日々の業務や棚卸の方法などによって起こります。

従って、原因追究して取り除かない限り、日々同じような
ミスが発生し、必ず次回も同じようなことが原因で棚卸差異が
発生します。

棚卸差異はなぜ起こるのか?

では棚卸差異はなぜ起こるのでしょうか?

棚卸差異が起こる理由は大きく分けて2つあります。

  1. 棚卸当日に起こるミス
  2. 日々の業務で起こるミス

棚卸業務を長年やっていると、ミスはある程度予測でき
分類できます。

皆様にはミスが発生する要因をご紹介します。
要因をある程度知っておけば、どこでミスが発生するかを
予測できるので対策が立てやすくなります。

まずは、棚卸当日に起こるミスについてご説明します。

棚卸当日に起こるミス

棚卸当日の起こるミスは、カウント、入力、集計の3パターンです。

在庫カウントに起因するミス

  • 数え間違い(数量や品目)
  • 数え忘れ
  • 重複カウント

入力に起因するミス

  • 棚卸表に品番間違い
  • 記入欄を間違える
  • PC入力時の転記ミス(タイプミス)

集計に起因するミス

  • 集計漏れ
  • 過剰集計

日々の業務で起こるミス

本来在庫管理は非常に単純です。
在庫=入庫-出庫

つまり、入庫と出庫をきちんとできていて、
管理していれば狂わないはずです。

代表的な原因をご紹介します。
ミスの種類は社内と社外、そして事務と現場の2つに分かれます。

事務処理のミス

  • 入力間違い
  • 数字の読み間違い
  • 伝票処理漏れ

現品管理のミス

  • 破損
  • 紛失
  • 記録ミス
  • 移動

仕入先のミス

  • 数量間違い
  • 品違い
  • 伝票漏れ

ミスが起こるのは、ルールが決まっていなかったり、
決まっていても守られていなかったり曖昧だったりすることが原因です。
ただ、ルールや仕組みを作るだけでも解決しません。

ミスには必ず人間が絡んでいます。
そして、これまでずっとやり続けてきた習慣ややり方を
すぐに変えることもできません。

根気よく作ったルールややり方を習慣に変えていく
努力が必要です。

ただ、絶対にやってはいけないのは
「次は気を付けます」
というものです。

ルールを作ったうえで「次は気を付けます」なら
良いですが、何もしないではだめです。
気合だけでは何も変わりません。

棚卸差異の原因を取り除く方法

ここで、明日からでもすぐにできるミス防止の方法をご紹介します。
これらの方法は、環境を変えることを重視しています。
改善は、なるべく環境を変えるように心がけます。

環境を変え、「ミスが起こりにくい」、「ミスしたら気づきやすい」
状況を作ります。

ミスをした人間を責めてはいけません。

棚卸差異を無くすためにやるべきこと

棚卸し差異を無くすためにやっておくべき事を3つご紹介します。

棚に表示する

注意喚起の表示を設置します。
表示は見やすく分かりやすいものにします。

また、注意書きは多すぎると効果が無くなります。
たまに、お店などで注意書きが多いところはありませんか?
多すぎると覚えきれないですし、目に入らなくなります。

表示はポイントを絞ってできる限り少なくします。
文字よりもイラストのほうがパッと見て分かりやすい
ので効果的です。

指先呼称と声出し

  • 指差し呼称
    JRなどの鉄道会社の運転士が行っているもので、
    自分の行動を再確認するのに役立っています。
    日本の鉄道は、事故が少なく正確なのは指指し呼称を
    しているからとも言われています。
  • 声出し
    これも鉄道の運転士が行っていることです。
    「○○ヨシ!」と言った具合に声を出して確認します。

指差しと声出しは、準備も不要なので、明日からで
もすぐにできる簡単な行為です。
これらは、自分の行為を改めて視覚と聴覚で再確認
できるのでとても効果があります。

行動を定着させるためには時間を根気を要します。
ただ、担当者に指示するだけではなく、指示者が
率先して行うことが、早く定着させるコツです。

検品

納品されたものの中身を確認せずに段ボールのまま
倉庫に保管しているケースが多いですが、

仕入先による誤品、数量間違いによって棚卸差異が
起こる場合があるので、検品を行いましょう。

仕入先のミスが多い場合は、検品を行います。
仕入れ業者が多い場合は、納入時間が重なるケースも
多く、現品処理と伝票処理がばらばらになることも
あります。

全業者の品を対象にするのではなく、よくミスが起こる
業者の品だけを対象にすれば実施しやすくなります。

検品することにより、業者は「きちんとしなければ」
という抑止力が働きます。
検品を行って、自社がしっかりと管理をしていることを
アピールしましょう。

見なし出庫

システムを使って入出庫を行っている
会社で、特に見なし出庫を行っている場合は、
データ上の出庫数と実際の出庫数が異なっている
場合があります。

システムで管理しているデータが間違っているか、
現物の処理がシステムの指示したものと違うか
いずれかが原因です。

情物一致を心がける

日々の在庫狂いを防ぎ、棚卸差異を発生させない
ために最も効果的なのが情物一致です。

これは、情報の処理と現物の動きをなるべく
一致させるということです。以下の2点がポイントです。

  • 後回しにしない
    入庫処理をしたらすぐに在庫は保管場所に格納する。
  • 面倒くさがらない
    処理は必ずその場で行う。ため込むともっとやらない。

歩留りを把握する

完全な管理をしていても目減りで減ることも必ず
あります。
液体、気体、紛体などは、どんなに正確に計量しても
蒸発したりしてしまうため、出庫量が増減して
しまいます。

このような場合は、期の途中に帳簿上と実在庫
の差異が大きく開いていき、突然欠品してしまう
ことにもなりかねません。

循環棚卸などを行い、こまめに修正します。
歩留まり率がある程度分かっている場合は、
出庫に算入するほうがいいかもしれません。

棚卸差異の原因には特徴がある

これまで様々な会社を見てきましたが、棚卸差異が発生する原因には
それぞれの会社

在庫管理の教科書「棚卸編」

在庫管理の教科書04「棚卸」>

在庫管理改善支援センターでは、棚卸の実務についてまとめた
在庫管理の教科書04「棚卸」を作りました。

棚卸は、決算・業務改善のどちらにも重要な役割を担っているにも
関わらず、実務について解説をした教材はほぼ皆無でした。

公認会計士が書いた棚卸の本もありますが、公認会計士はあくまでも
監査という立場のため、現場を知りません。

在庫管理の教科書04「棚卸」は、棚卸の事前準備から当日、さらには事後処理まで棚卸に必要な一連の実務にフォーカスした実践的な教材です。

在庫管理の教科書04「棚卸」を使うことで
次のようなメリットがあります。

  • 棚卸作業が早く終わります
  • 棚卸差異が減ります
  • 棚卸を業務改善に生かせます

さらに在庫管理の教科書04「棚卸」には、
実務ですぐに使えるフォーマットを14個特典として
お付けしています。

  • 今まで棚卸の仕組みが無かったからこれから棚卸の仕組みを作りたい
  • 棚卸のやり方を見直したい

一度話を在庫管理アドバイザーから聞いてみたい

在庫管理改善支援センターでは、定期的にセミナーを開催しています。
実際の事例に基づいた内容で分かりやすいと好評です。

なお、在庫管理セミナーに参加いただいた方には、2つの特典があります。

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