キャッシュコンバージョンサイクルの管理会計における位置付け

管理会計と財務会計

会計は大きく財務会計と管理会計に分類されます。
財務会計は会社の実態を外部に報告するための会計です。
財務諸表3表で構成されます。

  • 損益計算書(P/L)
  • 貸借対照表(B/S)
  • キャッシュフロー計算書(C/F)
    財務会計は過去志向であるのが特徴です。

一方、管理会計は経営(マネジメント)を上手に行って、
会社の業績を良くするための会計です。

管理会計では、厳格なルールや制限はなく、会社ごとに独自のレポート形式を用いるケースが多伊野が特徴です。管理会計のデータを基にして以下のような重要資料が作成されます。

  • 事業計画書
  • 取締役会用の資料
  • 中期経営計画書

また、組織内部の業績測定や業績評価などにも活用されます。
将来志向が求められる管理会計の担っている役割はとても大きく、対外的な意味合いの強い財務会計とはまた違った意味の重要性があると言えます。

キャッシュコンバージョンサイクルの適切な位置づけ

CCCを最も適切に位置付けについて、以下の二つを紹介します。

FCF(フリーキャッシュフロー)→営業CF(キャッシュフロー)→CCC

キャッシュコンバージョンサイクルの位置づけ
『読む管理会計 企業再生編「キャッシュ経営」で会社を救え!』(林總著、日経BP社)の中では、達成目標としてCCCを9日短縮して月あたりの営業CFを1億円の創出を掲げています。
一般的にキャッシュフローは経理・財務に任せ、
在庫管理は現場(製造、販売、調達、物流、SCM)に任せるケースが多いのではないでしょうか?
キャッシュフローは月次、在庫管理は週次/日次とサイクルも異なります。

ROE→ROIC→CCC→DSO(売掛債権回転日数)、DIO(棚卸資産回転日数)、DPO(買掛債務回転日数)

キャッシュコンバージョンサイクルの位置づけ

企業の目的は、企業価値の最大化にあり、企業価値を持続的に向上させることがマネジメントの役割であるという考え方が日本でもようやく普及してきました。

ROEとROICとは?

ROEとは
ROE(自己資本利益率 Return on Equity)とは、投資家が最も注視する指標です。下図は、リターン(ROE)とリスク(資本コスト)を示したものです。
ROEとは

持続的な価値創造とは、リターンが常にリスクを上回る状態を意味します。投資家は企業に資本コストを提供し、企業は投資家にROEで投資家の期待に応えようとします。

日本はROEが欧米に比べ低いといわれていますが、2017年度のROEは10%を超えるレベルまで回復しています。

ROIC(投下資本利益率 Return on Invested Capital)について
ROICの位置づけ
稼ぐ力を表すKPI(重要経営評価指標)として、ROIC(投下資本利益率)があります。端的にいうと、「事業に使ったお金から、どれだけの利益を出したか」ということです。

ROICはROEの重要な要素となる位置づけです。

アサヒグループホールディングスの中期経営計画で、ROE、ROIC、CCCを相関させている点に着目しました。目標をROEではなく、ROEから株主資本コストを引いた企業価値の創造に置いている点も、大変興味深いです。

目的を達成するためには、
ROEの維持・向上

ROICの向上

資本回転率の向上

キャッシュ・コンバージョン・サイクル

と紐づけることは極めて重要な点です。一般的に様々な財務指標を数値化して、掲載している企業が多い中、このように構造まで踏み込んで開示している企業は数少ないのではないでしょうか?

キャッシュ・コンバージョン・サイクルの日米比較
CCCの日米比較
各社の過去2年間の四半期数値を、日本の一般的な会計年度(4月から3月)に準じて、2016年度、2017年度と単純平均して増減をまとめたものです。

米国企業5社はいずれも、前年比で改善している中で、小売業の巨人ウォルマート社のCCCが8日というのは驚異的です。
売掛債権回転日数と買掛債務回転日数は日本企業並みなので、
在庫管理を如何に徹底しているかがわかります。

規模は違いますが、ドン・キホーテホールディングスと比べてみましょう。
ウォルマート社とドン・キホーテホールディングスを2017年度平均で比較すると、全体で-20日(DSOは-1日に対し、DPOは-9日、DIOは-28日)の差があることがわかります。在庫回転の差の大きさは明らかです。

従来の産業上の壁を取り払って企業のコアコンピタンスに特化し、企業のキャッシュフローを上げたウォルマート社は、地球規模で斬新的なサプライチェーンを展開してきましたが、ビジネス環境が厳しい今日でも約10日のCCCを維持しています。(10年間のCCC実績では、上限+15日、下限+2日)

・日本企業でCCCが5日以上改善した企業はユニ・チャーム、パナソニック。DPOの改善が主な要因となっています。

キャッシュコンバージョンサイクルの日米の意識の違い

 日米の違いは、経営指標としてのCCC結果を意識し、キャッシュ・マネジメントの観点から全社一丸となってサプライチェーン改善活動を持続している米国企業と現場が主体的に在庫最適化の観点から、サプライチェーン活動を継続している日本企業との差にあるようです。

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高井先生は実務的な管理会計のスペシャリストです。
ソニーにて多数のご経験を積まれ、実績を残されています。
欧米ではスタンダードな経営指標であるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの普及に努めている数少ない専門家です。
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