貸借対照表と在庫(その在庫、本当ですか?)

BS(貸借対照表)には、棚卸資産として商品や部材などの在庫が計上されています。
しかし、その金額が本当かどうかは、次の2点について甚だ疑問です。

  1. 計上された金額だけの価値があるか?
  2. 在庫金額は本当に合っているのか?

正しい数字が無いと、正しい経営判断はできません。
ここでは、上記2点について解説とその改善方法をご紹介します。

計上された金額だけの価値があるか?

棚卸資産に計上された金額は、棚卸資産の評価方法にもよりますが、原則仕入れ原価を計上したものです。(製品であれば、仕入れ+製造原価の積み上げ)
ただ、その金額に相当する価値が今現在あるのかどうかは、非常に疑わしいです。
例えば、10年前に100円で仕入れた商品は、おそらく今は100円の価値はありません。

弊社に過剰在庫を課題としてご相談いただいた会社様の在庫分析してみると、
在庫金額の20%しか売上に貢献していないことが分かりました。
つまり80%は不良・滞留在庫だということです。
おそらく、数億円積みあがっている在庫は、すでに商品価値が無いものも多く、
本当の金額を示していません。

実態を表した金額にするために

実態を表した金額にする方法は2つあります。

  1. 陳腐化(棚卸評価損)
  2. 整理(処分)

それぞれの方法についてご説明します。

陳腐化で在庫の価値を下げる

主に品質的価値(災害などによる破損、食材などの腐敗、鉄製品の錆、期待通りの機能を果たせない)や社会的価値(流行が過ぎ需要が変わった)時に、陳腐化といって在庫している商品や原材料の金額を下げることができます。会計上は、棚卸評価損として計上され、在庫金額を減らすことができます。

品質的価値が無くなったことによる陳腐化はわかりやすいですが、社会的価値は見た目上分からないので、注意が必要です。
国税庁では、上記のような陳腐化は「棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合」と定義しています。

その具体例として、次の2点が紹介されています。※原文をそのまま転載

  1. いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。
  2. 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

その他陳腐化について詳しく説明されているので国税庁のホームページをご覧ください。
棚卸資産の評価損

上場企業は、株主のために上記の陳腐化がプロセスとして組み込まれていることが多いですが、中小企業はよほど気を配っている企業でない限りほぼありません。

陳腐化(棚卸評価損)に関するご相談承ります

在庫自体を整理(処分)

先ほどの陳腐化は、金額を減らして本当の価値に直す処理ですが、その処理をしたからといって安心ではありません。なぜならそのもの自体は残っているので、保管されているからです。
保管には、場所と管理が必要、すなわちコストがかかっているということになります。
そもそも陳腐化する前に整理をして、棚卸評価損が起きないように予防策が必要です。
その予防策として最も有効な手段が整理です。
在庫金額を本質的に実態化するためには、整理して在庫の存在自体を無くすことが必要です。整理は在庫管理の改善の中で、一番最初に行うことでもっとも基本的かつ重要な作業です。
在庫を減らす方法は2つしかありません。

  1. 売る・使う
  2. 捨てる

一般的な整理の方法は「赤札作戦」です。
整理対象品に「赤札」と呼ばれる紙を貼り、対象となったものを
捨てるという方法です。ただ、在庫管理110番では、次のステップをご提案しています。

整理は次の3stepで進めます。

  1. 整理対象品をあぶりだす
  2. 使うか売れないかを検証し、実行する
  3. 廃棄する

STEP1:整理対象品をあぶりだす
まず、整理対象品が分かりませんので、あぶりだす作業が必要です。
現品に直接「紙」を貼って、整理対象品を現品レベルで見える化します。

整理対象品にする方法は「基準を決める」ことです。
「いつかは使うかも・・・」という感情を持ち込まず、明確な基準によって
淡々と作業を進めます。
どちらかわからない(基準に合致しているかが見分けられない)時は、「紙」を貼りましょう。
ここではまだ捨てるということが決まったわけではないので、安心してください。

弊社では、上記の方法を詳しく解説した在庫管理の教科書があります。
在庫管理の教科書2「現品管理」の詳細はこちら

STEP2:使うか売れないかを検証し、実行する
まず、使用用途や売り先が分かっている場合は、加工などをして修正して使用する、売り先に直接持っていき、買ってもらえないかどうかを聞いてみる。
もちろん、ここでは加工するなら加工コストとの天秤が必要ですし、販売の際は金額を下げることが必要でしょう。

もし、用途も売り先も分からない場合は、買取業者に相談するという方法があります。買取業者は、幅広い販売ネットワークを持っています。

あなたの会社と取引が無い会社や、あなたの業界では考えつかない思いがけない販路が見つかる場合があります。

在庫管理110番も理念の一環として不良在庫の買取マッチングを実施しています。
在庫の販売先が無い、提案したけど断られてしまったという場合は、お気軽にご相談ください。複数の提携買取業者様をご紹介します(紹介は無料です)。

在庫管理110番の不良・過剰在庫買取サービスもったいないマッチング

STEP3:廃棄する
手を尽くしても、販売先が見つからない場合は、それはどんなに思い入れがあったとしても「ゴミ」にすぎません。もしかすると売れるかも・・・という淡い期待を持ちたくなりますし、せっかく仕入れたのでもったいない気持ちはわかります。
ただ、保管にはコストがかかりますので、そのまま置いていても経費としてお金がどんどん流出していくだけです。覚悟して捨てましょう。

在庫管理110番では、整理の3ステップについてのご相談。ご支援を随時承っています
ご相談はお問合せフォームからお願いします。
不良・過剰・滞留在庫に関するお問合せ

在庫金額は本当に合っているのか?

そもそも在庫金額自体が本当に合っているのでしょうか?
私の経験上、中小企業の在庫金額はかなりの確率で間違っていると思っています。

在庫金額を決めるのは棚卸ですが、棚卸自体が合っていない可能性がとても
高いのです。
棚卸は在庫を確定させる作業ですが、日々管理しているはずの在庫データと
実際に数えた現物の数量の数の整合性を確かめる作業でもあります。

それがいわゆる在庫精度であり、棚卸差異率で確かめることができます。
棚卸差異の確かめ方と改善方法についてはこちらのページで詳しく解説しています。
在庫が合っているかどうかを確かめて改善する方法

在庫金額が合っていないと悲惨なことが起こります。
在庫管理の不備による倒産で有名なのが、「マキ製作所」です。

在庫金額の帳簿上の在庫66億円のうち、44億円分に資産価値が無い、そもそもとあるべきはずの在庫が、相当程度、見当たらなかったということが判明して倒産しています。

業界のトップメーカーであり、顧客は農協という誰もがうらやむ好条件を備えていた超優良企業が在庫に足をすくわれて突然倒産しました。

棚卸とはある時点の会社の資産を数えて確定する作業ですが、

  • ある時点
  • 資産
  • 数える

上記の3点が曖昧で理解されいません。
弊社のご支援先でも真っ先に取り組むのが、先ほど紹介した整理とともに棚卸の適正化です。取り組み方法としては、

  1. 「ある時点、資産、数える」とは何かを正しく理解する
  2. 棚卸差異を算出して会社の現状と課題を知る
  3. 棚卸差異を無くして、本当の在庫が見える状態を作る

「在庫数とは、入庫数(仕入れ)から出庫数(使用・販売)を引いた数字です。(在庫=入庫ー出庫)
つまり、棚卸差異があるということは、ほとんどの場合において日常的な入庫か出庫のプロセス(ほかにも在庫移動やシステムなどの問題もあります)に問題があるということです。

棚卸改善に取り組めば、自然と日々の課題を解決できますし、いちいち在庫の現品確認をしなくても、データ上で在庫を確認できる体制を作ることができます。

在庫管理110番では、棚卸の実務的ノウハウを在庫管理の教科書「棚卸編」としてまとめています。

在庫金額、在庫精度の改善について

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