適正在庫のための在庫分析

適正在庫とは、少なすぎず、多すぎず適度な在庫量のことです。
しかし、社会として決まった定義がありません。
私が考える適正在庫とは、1つの決まった値では無くて、
○○個~○○個までという上限値と下限値を設定し、その枠内に
収まっているのが適正在庫だと考えます。
適正在庫とは

「私の会社の適正在庫を教えてください。」というご質問を
いただきます。
しかし、適正在庫は会社によって違います。
下限値と上限値を極限まで減らすこともできますし、その逆もあります。
会社の戦略・判断が、適正在庫を決めます。

ただ、適正在庫の目安を決めることはできます。
ここでは、適正在庫を決めるための目安をご紹介します。
ご紹介する方法は、エクセルだけでできます。
特別なソフトや統計学などの難しい知識は不要です。
中小企業の皆様もぜひチャレンジしてみてください。

適正在庫分析はどんな会社に適しているか?

適正在庫分析は、次のような会社に適しています。

  1. 過剰在庫や滞留在庫に悩んでいる。
  2. 過剰なのか滞留しているのかが判断できない。
  3. 毎年、一定金額の在庫を廃却している。(廃却金額が減らない)

その他、発注作業の効率化にも適しています。

  1. 勘や経験による発注を止めてデータに基づく発注をしたい。
  2. 発注作業を省力化・自動化したい。
  3. パートやアルバイトレベルで発注できるようにしたい。

ただ、適正在庫はデータによる分析なので、精度の良い在庫データ
が少なくとも2年以上あることが望ましいです。
在庫データとは、

  • 仕入などの入庫データ(時系列)
  • 出荷・販売・使用などの出庫データ(時系列)
  • 最新の在庫データ

在庫のデータ無い会社、在庫精度の低い会社はまずは、

  • 在庫データを取ること
  • 在庫精度を上げること

この2つに取り組んでください。
在庫を増やす最大の原因は不安です。
不安とは、

  • 在庫データが無いので判断基準が無い(勘に頼るしかない)
  • 在庫が分からない(在庫数が信用できない、または現物を見ないと分からない)
    この2点を無くすだけで、在庫は必ず減ります。

適正在庫を設定するための3ステップ

適正在庫は、最終的に在庫管理は経営に直結しなければ意味がありません。
実務(現場)から適正在庫を決めようとすると、どうしても無理のない現状
を維持するような数値が出てくることが多く、甘めの数字になってしまいます。
私が推奨する適正在庫の決め方は、経営的な観点から適正在庫から決めることです。
適正在庫の決め方
ステップとしては、

  1. 経営的適正在庫を決める
  2. 実務的適正在庫を調べる
  3. 1と2から合理的適正在庫を決める

まずは実務的なことは横に置いて、経営的適正在庫=在庫金額
を決めます。
在庫金額を決める前に、ひとつだけ知っておいて
いただきたいことがあります。

経営と現場をつなぐ共通言語は在庫回転日数

在庫の話になると、経営と現場はいつもすれ違います。
なぜ、すれ違うのでしょうか?
それは、経営側と現場側で、在庫の扱い方が全く違うからです。

それぞれ次のような見方をします。

  • 経営は在庫をお金で見る
  • 現場は在庫をモノ(数)で見る

片方が英語でしゃべっていて、もう一方が日本語でしゃべって
いるようなものです。同じ話題でも理解できません。

これを両者が共通の認識で「翻訳」するものが必要です。
それが、在庫回転率です。

在庫回転率は金額でも数量でも計算できます。
計算式は次の通りです。

  • 金額で算出する場合:在庫回転率=売上原価/平均在庫高
  • 数量で算出する場合:在庫回転率=出庫数/平均在庫数

そして、在庫日数は、次の式で求められます。
在庫日数=日数/在庫回転率

この式を使えば、金額でも数量でも日数に換算することができます。
在庫金額△△円というよりも、○○日分の在庫といえば、現場も
理解できるでしょう。

在庫金額を決める

そこで、まずは、在庫金額を決めます。
売上を作るために売上原価を減らすことはできません。
※仕入原価を下げて付加価値を上げる(=原価率を下げる)こともできますが、ここではあくまでも在庫管理の役割ではありませんので省略します。

ここで在庫金額の決め方ですが、大きく分けて次の3つがあります。

  1. 売上原価と原価率から、理想的な在庫金額を算出する方法
  2. 財務的な観点から会社として達成したい在庫金額を算出する方法
  3. 資金繰り(運転資金)の観点から在庫金額を算出する方法

売上原価と原価率から求める場合は、次のように求めます。
金額から在庫日数を求める
在庫回転の公式を使えば、売上原価から在庫回転日数を求めることができます。

資金繰りの観点から求める場合は、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)
の公式を使って、在庫日数を求めることができます。

以上のような方法から算出した在庫金額が
経営的適正在庫金額になります。

これで一応の目標値が決まります。
最終目標値は在庫金額ですが、ここから目標在庫回転日数を算出します。
目標在庫金額の算出

改善対象(適正在庫で無い在庫)の絞り込み

ここから改善対象の絞り込みを行います。
残念ながら、多くの場合この絞り込みをやらないので、
「対象が多すぎる・・・」と挫折することが多いようです。

改善対象は3つのグループに絞り込みます。

例えば、目標在庫回転日数が30日とします。
基本的な考え方として、全ての品目が会社目標の在庫回転日数を
達成すれば、会社の目標値は達成できるはずです。
その考え方に従って、次のように品目を2つに分けます。
目標在庫金額2
在庫全体を構成するものを

  1. 在庫回転日数が30日を超える品目
  2. 在庫回転日数が30日以内の品目

在庫回転日数が30日以内のものは、それなりに周っている品目なので
改善の優先度を下げます。

改善対象は、「在庫回転日数が30日を超える品目」ですが、
私の経験上、悩みを抱えている会社は、「在庫回転日数が30日以内の品目」
よりも「在庫回転日数が30日を超える品目」の方が多いはずです。

これではまだ数が多いので、さらに対象を絞り込みます。

過剰・滞留在庫の絞り込み

「在庫回転日数が30日を超える品目」から過剰・滞留在庫を絞り込みます。
過剰・滞留在庫がどれくらいなのか?という定義は無いですが、在庫回転
日数が180日以上(6か月以上)のものを対象にしてみましょう。
滞留在庫の絞り込み

すると、現在の在庫が3つのカテゴリーに分かれます。
改善の順番としては、

  1. 過剰・滞留在庫(Cグループ)
  2. 目標適正在庫日数よりも在庫回転日数が大きいもの(Bグループ)
  3. 目標適正在庫日数以内のもの(Aグループ)

1についてもさらに絞り込みます。
在庫金額が一番大きなものから順番に削減・改善に着手します。

実務的適正在庫を求める

改善の方法は、需要予測の実施ではありません。
「なぜ在庫回転日数が大きいのか」に着目します。
そして、その品目の在庫回転日数(リードタイム)の中身を
分解して調査します。

リードタイムは大きく分けて2つあります。

  1. 正味リードタイム
  2. バッファーリードタイム

まず、正味リードタイムを調べます。

正味(実質)リードタイム

正味リードタイムは大きく分けるとざっと次の3つに分類できます。
リードタイム
これらのリードタイムの積み上げが会社の正味リードタイムになります。

なお、生産や加工は製造業だけのものではありません。
卸売業や小売業でも、加工工程がある場合があります。
例えば、いくつかの商品を組み合わせて「セット品」を作ったり、
梱包などを行う工程が該当します。
外注を使っているのであれば、その時間も加算します。

もう一つのリードタイムがバッファーリードタイムです。
例えば、正味リードタイムのうち調達日数が1週間だとしても、
1か月に1回だと事実上、調達日数は1か月になります。

つまり、バッファーリードタイムはあらゆる制約や条件によって
生まれるリードタイムです。例えば、

  1. 発注頻度
  2. 発注ロット(最低発注量)
  3. 遅れ(調達、生産)
  4. 輸送

これらを考慮して求められるのが、
現状の在庫日数を分解して見えてきた内訳です。

ここから、改善点を見つけ、目標である経営的適正在庫日数
に近づける作業になります。

需要予測はほとんど外部要因に左右されてしまうため、
当たりづらくどれだけ頑張ったとしても努力が報われにくいです。

当てるのが難しい需要予測をするよりも、見つけた無駄を
省いていく方が現実的かつ効果的です。

たとえ需要予測をしたとしても、制約や条件を外さない限り、
算出された数字をそのまま使うことはできません。

改善が遠回りのようで一番の近道であり、効果的です。

あなたの会社の適正在庫在庫分析のお手伝いをします。

適正在庫分析、改善対象の絞り込みのお手伝いをします。