半導体不足を解消するカギは見える化が握る|システム導入で安定供給を実現

今回は、半導体メーカーが抱えている在庫不足の解消策をテーマに記事をお届けします。 昨今の深刻な在庫不足問題に、どうやって終止符を打つことできるのでしょうか。 結論として、現場の見える化が鍵を握っていると筆者は考えています。見える化とは、工場・倉庫で発生している問題を可視化させて、すぐに改善できる仕組みをつくることです。 半導体業界をはじめ製造業の現場では、「どの在庫が、どこに、どれだけあるのか」がわからなくなり、トラブルが発生しやすくなります。見える化を実現することで、生産効率が向上して、想定外の事態にも対応できるようになります。 しかし、工場・倉庫では属人化や手作業による作業が中心で、適切な在庫管理ができていないケースが珍しくありません。 「部品が安定的に調達できない」 「リードタイムが大幅に遅れている」 「急な需給の変化に対応できていない」 「在庫情報を正確に把握していない」 といったお悩みを、製造現場で抱えていませんか? 見える化が難しいのであれば、システムを導入することで円滑に解消することができます。現品(原材料・仕掛品・製品)およびデータ情報を可視化するのが、システム(在庫管理システムや生産管理システム)です。 これらのシステムでは、在庫・生産状況の最新情報が自動更新されます。さらに、欠品・過剰在庫を自動検知できるため、適正在庫を保つことが可能です。今回は、半導体業界におけるシステム導入事例を紹介します。 在庫管理の視点から半導体不足を解消する方法を探るために、ここでは以下のテーマで記事をお届けします。
  1. 各企業の売上低下・減産状況
  2. 半導体が不足した原因
  3. 見える化で共有安定化を図る方法(システム導入の効果)
半導体をはじめ半導体部品や、半導体を搭載する電子製品を扱う製造業の在庫管理担当者様向けに、供給安定化のポイントをお伝えします。

1.半導体不足がもたらした売上低下・減産の現状

半導体不足がもたらす売上低下・減産の現状 半導体は自動車やゲーム機、パソコン、スマートフォン、液晶テレビ、洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫、エアコンなど、幅広い電子製品・家電製品に使用されています。 世界的な半導体不足により、各メーカーおよび関連企業の生産状況や販売台数、売上に影響を及ぼしています。

1-1.上場企業115社がマイナス影響

帝国データバンクは、2021 年度以降に判明した上場企業の「半導体不足」の影響・対応調査の結果をまとめています。
  • 生産や商品・サービス供給面で「マイナスの影響」を示した上場企業は115社
  • 業種別で最も多いのは製造業で86 社
  • 半導体の供給不足による取引先の減産にともない、自社も生産調整などを強いられた「間接型」が59社と最多
  • 生産休止や減産を強いられたケースは 22 社
  • 業績面でマイナスの影響があった、あるいは今後マイナスの影響が見込まれ る企業は 60 社
(参照:帝国データバンク特別企画:上場企業「半導体不⾜」の影響・対応調査(2021 年 8 月)

国内の上場企業だけでも多大な損失を被っていることがわかります。 日本の非上場企業、さらには世界中の企業に視点を広げれば、甚大な影響があると推測できます。

1-2.日本・世界企業の実情

生産や売上にマイナス影響があった日本国内および世界企業の事例を紹介します。

①三菱自動車

日本を代表する自動車メーカー。2022年3月期の連結売上高が、従来予想の2兆800億円から2兆100億円へと下方修正。販売台数が6万台減少。

②任天堂

家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の2021度販売台数を計画より150万台少ない2400万台に引き下げ。

③Apple

新型スマートフォン・iPhone13シリーズを最大で1000万台減産する見通しを発表。

④アンリツ

電子計測器などの製造・販売メーカー。2022年3月期第1四半期、主力の通信計測事業の売上高は前年同期比12.8%減の167億9100万円。

⑤米複合企業スリーエム

医療用マスク「N95」を提供するメーカー。第2・四半期決算で、売上高は72億ドルと、82億ドルから減少。とくに自動車向け接着剤や保護フィルムを扱う、輸送・電子部門の売上高が20.9%減少。

⑥ユニオン・パシフィック鉄道

アメリカ西海岸から内陸部向けの鉄道貨物輸送大手。第3四半期における対自動車・自動車部品メーカーへの注文量が18%減少。 これらの事例からわかる通り、主力商品の生産台数を減産や受注数の減少などによって、各企業の売上高・販売計画が下振れしている状況です。 深刻な半導体不足を解決するためには、半導体メーカーによる製品の安定供給が必至となっています。

2.半導体不足に陥った2つの原因

半導体不足に陥った理由
半導体不足が問題視されるようになったのは、2020年の春ごろからです。なぜ、突如として半導体の品薄状態が世界的に発生したのでしょうか。 需要と供給の側面から説明します。

2-1.巣ごもり需要の拡大

新型コロナウイルスの影響が大きいと考えられます。世界的なパンデミックによって、リモートワーク・リモート授業や新しい生活様式が普及しました。
パソコンやテレビ、家電、ゲーム機の巣ごもり需要が拡大することで、半導体のニーズが一気に膨れ上がったことが要因です。2021年以降は、withコロナ、アフターコロナの時代へと徐々に入っていき、経済全体が回復の兆しを見せました。とくに自動車市場が好調となり、今までの低迷を挽回する動きが目立つようになりました。
一般家庭内の需要だけではありません。鉄道や介護・医療ネットワーク、銀行のATMなど、社会インフラでも半導体は使用されています。社会の復旧と同時に、さまざまな産業で半導体の過剰需要へと追い込まれたのです。

2-2.相次いだ供給トラブル

需要が拡大しているにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、もしくは感染者が発生したために、半導体メーカーは生産工場を閉鎖・運休せざるをえませんでした。 たとえば、トヨタ自動車はコロナ禍において減産を発表したのですが、これはSTマイクロエレクトロニクスのマレーシア工場の稼働停止に起因していると言われています。 さらに、ロックダウンの影響で物流が停滞して、一連のサプライチェーンに混乱を招きました。 とりわけ打撃を与えたのは、中国深セン市の塩田港です。国内最大の輸出入拠点であり、世界の電子機器の約90%が塩田港を経由しています。 世界の半導体メーカーは、生産能力を東アジア・東南アジアにさせていることもあり、物流の動きが鈍化したことで、ますます供給が追い付かなくなっていきました。 現在、とくに不足している半導体は以下の通りです。
  • DDIC(ディスプレイドライバーIC):電源管理用
  • PMIC(パワーマネジメントIC):ディスプレイ駆動用
  • MCU(マイクロコントローラー):電子機器の制御用
これらの半導体の多くは、ファウンドリーと呼ばれる半導体受託製造メーカーで生産しています。 ファウンドリーは、巨額のコストをかけて大型設備を有していることもあり、急な需要の拡大増加にあわせて生産能力を拡大していません。 さらに、追い打ちをかけるようにアメリカでの大寒波、台湾の水不足、福島県沖地震など自然災害が半導体の生産拠点を襲いました。 痛手を負いながらも、市場ニーズに応えるべく半導体メーカーは生産力の回復に努めているのが現状です。

3.半導体の安定供給には見える化が重要

見える化
半導体の需給バランスが崩れた原因を取り上げましたが、最大の問題は、急激な変化に対応できなかったことです。 市場はつねに変化し続けます。環境に振り回されない供給能力を強化することが、半導体メーカーには急務とされるのではないでしょうか。 日本国内の半導体メーカーに焦点を当ててみると、キオクシアやソニーセミコンダクタソリューションズなどの大手はコロナ禍で好業績を残しています。しかし、中小零細企業の多くは売上拡大を実現できいません。さらに国際市場では、競争力が低下しており世界シェアも10%(アメリカは50%以上)を切りつつあります。 経済産業省が発表している『半導体戦略』では、日本の凋落は「設計・開発能力」と「生産能力」にあると問題視しています。とくに日本企業の多くは、ローエンド製品を扱うレガシー工場が中心です。量産できる力も備わっていません。 (参照:経済産業省|半導体戦略(概要)) 新たな設備投資や技術開発も必要ですが、生産強の強化を図っていかなければなりません。どうすれば半導体の生産力を上げて、安定供給につなげることができるでしょうか。

3-1.見える化とは

在庫管理の専門家として、鍵を握っているのは「見える化」だと考えています。 製造業における見える化では、「どの在庫が、どこに、どれだけあるのか」を正確に把握することが最重要です。
  • 現品(原材料・仕掛品・製品)情報
  • データ情報
2つの情報がわからない事態に陥ることで、生産状況は一気に滞ることになります。 具体的には、
  1. 部品コストのロス
  2. 人件費のロス
  3. 歩留まりの悪化
  4. 他工程の負荷集中・手持ち状態
  5. 納期の遅れ
などが挙げらます。 さらには、チーム・業務部門の売上低下、企業全体の業績やキャッシュフロー悪化を招きます。 新型コロナウイルスのような不測の事態において、「見える化」が行き届いていない企業は、外的な変化に振り回されやすくなります。 現場の状況が可視化できなければ、原因を特定できず、改善の余地もありません。

3-2.半導体業界の在庫管理

とくに半導体は、製造プロセスにおいて多種多様な原材料が必要となります。 たとえば、以下の通りです。
  • シリコンウエハー
  • 半導体洗浄液
  • フォトマスク
  • エッチングガス
  • CMP材料
  • ウェットケミカル
  • 封止材
  • レジスト(感光材)
  • パッケージ基板材料
多種目の在庫状況を正確に把握して、管理することは簡単なことはありません。さらに、昨今の半導体市場では多品種少量・変種変量生産ニーズが高まっており、かつ低コスト・納期の短期化が求められています。
市場の需要を満たすには、在庫管理の見える化が必須です。では、どのような方法が有効なのでしょうか。よく使われているのはエクセルですが、機能として限界があり、人的ミスも発生します。もっとも効率的なのがシステムを導入することです。製造現場で使われるシステムには、いくつか種類があります。
  • 在庫管理システム:在庫情報・入出庫情報をリアルタイムで管理できるシステム
  • 受注管理システム:受注後の処理を自動化・一元管理するシステム
  • 生産管理システム:製造業の生産管理に関わる一連のプロセスを管理
  • 原材料管理システム:部品・原材料に特化した管理システム
解決したい課題に応じて、最適なソリューションを選ぶ必要があります。在庫管理においては、在庫管理システムが有効です。「どの在庫が、どこに、どれだけあるのか」を正しく把握して、棚卸差異や在庫不足、過剰在庫をなくすことができます。

3-3.半導体企業のシステム導入事例

システムの導入事例として、2社を紹介します。

①ルネサスエレクトロニクス

同社は、材料の資料量・調達状況を見える化させる原材料管理システムシステムを、2022年前半に構築する予定です。
おもな機能は、こちらです。
  • 原材料の在庫量を瞬時に把握
  • 原材料と半導体製品の型名を紐付けて、各材料の在庫量を検索
  • 現材料が不足することで、どの製品にいつ影響を及ぼすかを瞬時に特定
  • 適正在庫の実現
2021年3月、同社の主力工場で火災が発生しました。現在は復旧していますが、半導体不足による製品の受注残が積みあがっています。
材料の調達状況やリスクを可視化させる必要性から、システム導入に踏み切ったのです。もし調達リスクの高い原材料がわかれば、生産地・調達先の分散化を進めてリスク軽減することもできます。

応用電機株式会社

非規格少量生産に特化し、常時千種におよぶ製品を提供する企業です。
半導体ではなく、半導体の機能を測定し検査する装置を製造しています。同社では、自動発注・在庫管理システムを開発しており、大きな効果を発揮しています。
  • システムと受注EDIで標準0.5日のスピード発注および低コスト化を実現
  • 購買においては、リール部品の標準化を進め、各事業部間で最大公約数的に最適な在庫配備を実施
非規格少量生産に特化し、かつ社内一貫でDMS(設計受託)・EMS(製造受託)をするビジネスモデルで成功しているのは、システムの有効活用があると考えられます。
このように、さまざまな在庫・製品を扱う、もしくはグローバルにサプライチェーンを構築している半導体関連企業で見える化を実現するならば、システム導入が欠かせません。コロナ禍のような変化に耐えて、かつ生産性を向上させるために役立つことがわかります。

4.製造現場の見える化なら在庫管理システム

在庫管理システムの導入 半導体関連メーカーが在庫の見える化を実現するなら在庫管理システムがおすすめです。

4-1.市場変化に対応できるシステムが必要

在庫管理の課題を抱えている企業の多くは、現状を正確に把握できていません。 これは原因を特定して、改善策をとれていないことを意味します。在庫管理システムを導入すれば、部品・原材料、仕掛品・半製品、完成品の在庫が正確に管理できるようになります。 弊社が実施しているセミナーでは、「在庫管理体制が整っていない」「自社の在庫回転率や在庫日数、適正在庫数を把握できていない」という声が参加者から数多く集まっています。どの問題も根本的な要因は、現場の「見える化」が十分ではないためです。 在庫の欠品、過剰在庫、不動在庫、棚卸差異、リードタイムの長期化などの在庫問題を抱えている方は、在庫管理システムの導入をご検討ください。市場の需給変化があっても、在庫管理システムにより、現場の見える化を徹底しておくことで対応できるようになります。

4-2.現場で使いやすいのはクラウド型『成長する在庫管理システム』

成長する在庫管理システム「在庫管理110番」では、クラウド型『成長する在庫管理システム』を提供しています。 在庫管理システム・生産管理システム導入実績のある専門家が開発しました。現場での使いやすさを第一に考え、直感的でわかりやすいのが魅力です。システムの特徴は次の通りです。
  1. 必要最小限
  2. 低コスト
  3. システムに依存しない
  4. 誰でも操作ができる
  5. 成長に合わせて機能をアドオン
ぜひ在庫管理業務の改善、生産性の向上にお役立てください。 ➽クラウド型「企業が成長する在庫管理システム」(30日間無料お試し可能)
在庫管理システムのこならお任せください 無料相談受付中

お問い合わせはこちら