在庫の鮮度管理
目次
鮮度管理という言葉は、食品業界、飲料業界ではよく使われておりますが、鮮度とはいったいどのような意味があるのでしょうか?
鮮度とは新鮮さの度合いです。
収穫時に最高で時間の経過とともに低下します。「とれたて」や「活きのよさ」がおいしさをほぼ決定づける農産物では、鮮度が最高のときが品質も最高となります。また鮮度を示す表示として消費期限、賞味期限があります。
消費期限と賞味期限
農林水産省によると食品の消費期限とは開封していない状態で、
「表示されている保存方法に従って保存したときに食べても安全な期限」のことで、期限を過ぎたら食べないほうがよいとされ、主に弁当や洋生菓子など長くは保存がきかない食品に表示してあります。
賞味期限とは、「開封していない状態で表示されている保存方法に従って保存したときにおいしく食べることができる期限」のことで、主にハム・ソーセージやスナック菓子、缶詰など冷蔵や常温で保存がきく食品に表示してあります。
期限については、賞味期限食品の情報を把握している製造業者等が科学的、合理的根拠をもって適正に設定しているようです。
在庫の単品管理と総枠管理
企業の在庫管理指標は、一般的に在庫回転率が多いです。
在庫を売上高や売上原価で割って算出するやり方で、総枠管理とも呼ばれます。
品薄在庫と過剰在庫が相殺されるため、在庫が適正レベルであるかどうかを判断する指標としては不十分といえます。金額を基準に算出されることが多いようです。
一方の単品管理は、オペレーション上、商品の受発注、生産計画策定、倉庫管理上、主に数量が基準となり、管理対象としては、製品、商品、半製品、部品等の単体となり、主に数量を基準に管理されます。
単品管理という言葉はセブン‐イレブンの代名詞のように使われていますが、情報システム用語事典では、次のように定義されています。
単品管理とは第一義的には、商品の売れ行きを“単品”ごとに見極めることで、売れ筋商品が品切れを起こさないようにするとともに、死に筋商品を売り場・在庫から排除する商品管理技法をいう。
商品の鮮度管理は食品も衣料品にも通じる
セブン‐イレブン創業者・鈴木敏文氏はイトーヨーカ堂の社内報IYグループ四季報2002月春号に鮮度管理について以下のように述べています。
商品の鮮度管理が重要であるという点では、食品も衣料品もまったく同じです。このことを私は言い続けているのですが、多くの人が食品と衣料品が違うという既成概念に縛られていてなかなか理解されません。食品が毎日新しい商品を売り場に入れて鮮度を保っているように、衣料品も新しい商品を入れ続けなければ、お客に飽きられてしまいます。
セブン‐イレブンは明らかに時間軸で変化の流れを大きくとらえています。
その時間軸を輪切りにして断面を観察し、お客さまの立場から未来のありたい姿を想像し、今何をすべきかを仮説と検証で追求している企業であります。
この鈴木氏の考え方は、衣料品に限らず、FMCG(Fast Moving Consumer Goods=変化の早い製品)であれば、どの業界にも当てはまるはずです。
商品と情報は鮮度が命
鮮度管理には、狭義の鮮度管理と広義の鮮度管理があると思います。
前者については、サプライチェーンとしてITを含め、様々な分野で紹介されていますが、後者については、導入している企業は限定的のようです。
私は、モノと金の鮮度管理を提唱します。
課題の早期発見、先手アクションにより、過剰生産、廃棄ロスの削減、不正リスク軽減になります。
在庫の付加価値について
製造業であれば、在庫は材料・部品、仕掛品、半製品、完成品、製品・商品、積送中在庫、補修用部品から流通在庫までです。
総枠管理とは貸借対照表(B/S)に記載される在庫で、
単品管理とはそのうち、付加価値が最も高い完成品と製品が対象です。
最初に完成品、製品の鮮度状況を確認した上で、より付加価値に低い在庫についての時間軸管理が求められます。
在庫管理を時間軸で管理する
在庫は外部から材料・原料を調達し、生産、販売、物流、取引先から最終顧客へとシフトします。在庫は入と出だけでなく、各々の部署で保管されている状況を把握する事で質がどのように変化するかを確認する必要があります。在庫の質的管理とは、それを時間軸で管理する事です。
在庫の鮮度管理
在庫管理の基本は、量と質が適正かどうかを評価・判断する事です。
在庫の適正レベルを測定するためには、総枠管理(量)から見た適正レベルと単品管理(質)から見た適正レベルが求められます。
単品管理は換言すれば鮮度管理といえます。
どんなに在庫回転が低くても、定番商品が欠品を発生させては販売機会の損失につながります。
一方、定番商品が潤沢にあっても、過剰生産、過剰調達の場合、在庫の一部は鮮度が悪化します。
従って、鮮度管理では、売れ筋商品、死に筋商品を区分するだけでは不十分で、
時間軸でロットごとの状況を把握することが極めて重要です。
在庫鮮度を徹底追求している企業の共通点
在庫鮮度管理をしている企業・商品の事例は、以下の通りです。
食品業界に限らず、在庫を時間軸で管理する在庫鮮度管理を徹底している企業を分析してみると、次のような特徴がみられます。
- お客様の立場に立って、鮮度・業務プロセスリードタイムを経営指標に明確に定めて、トップ自らが目標を掲げている。
- 業務プロセス改革を断行して、特に生産、物流リードタイム短縮を立案、実践している。
- 売れ筋商品と死に筋商品を明確に分けて、現場まで落とし込んでいる。
- 鮮度状況、結果に対して、トップ、実務者で同時に共有し、PDCAを回している。
- 流通在庫(店頭在庫)の鮮度(在庫回転)まで常に意識した上で、生産(発注)を行っている。
- 海外展開しているが、同等のやり方を導入して順調に伸ばしている。
- システム構築を前面に打ち出していない。
- 不正会計リスクは極めて限定的である。
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