製造業の原価管理がシステムでうまくできない理由

原価管理をするメリットとは

まず、なぜ原価管理をすると良いのかをご説明します。
原価管理をすれば、製品1つ当たりの原価が分かるようになるため、利益が見えるようになります。あなたも原価管理の目的はおそらくこれだと思います。

実は原価管理ができるようになった時のメリットはこれだけではありません。
システムによって原価管理ができるようになると、製品の原価が分かるだけではなく、
進捗管理や部材の発注コントロールができるようになり、過剰在庫や欠品を抑えることができるようになります。その結果、キャッシュフローの改善、効率アップによる利益率の向上が見込めます。
原価管理に取り組むことは、会社にとっても働く従業員にとってもメリットが大きい
といえます。

システムを導入しただけで原価管理はできません

ただ、残念ながらシステムを導入したにもかかわらず原価管理がうまくできていない
会社は多いようです。

在庫管理110番には、在庫管理をしている様々な業種の会社からご相談やお悩みを寄せられます。
製造業で多いご相談のひとつに「原価管理がやりたいがうまくいかない」
というお悩みがあります。
製造業の中でも特に、人の手が多くかかる組立・加工系の会社様からのご相談が多いです。

原価管理をやりたい会社では、在庫管理・生産管理のシステムを導入しているケースがほとんどです。

ご相談の中で皆様が口を揃えて言うのが、
「システムベンダーにシステムを導入すれば、原価管理ができるようになるといわれたが、うまくいっていない」

ということです。あなたはいかがでしょうか?

実はこれは当然のことで、システムベンダーさんの言う通り
すればいいわけですが、システムベンダーさんが言うほど簡単ではありません。

原価管理をやるためのシステム設定が大変

原価管理をやるためには、システムに設定が必要なのですが、この作業が
とても大変で、途中であきらめる事が多いようです。

また、取り組んではみたものの中途半端になってしまい、返って現場が
混乱してしまった・・・というケースもあります。

システムベンダーからすれば、「設定するだけ」ですが、
その設定するだけがとても大変です。

私は実務でそういった業務にかかわっていたため、苦労が良くわかります・・・

なるべく無理なく、原価管理を進めていく方法をお伝えします。

原価管理の構成を知る

初めに、製品の原価管理が何で成り立っているかを知っておきましょう。
製品原価は、大きく分けて作業原価と材料原価、その他原価(経費)です。
画像の説明

  1. 作業原価:製品1台あたりに掛かった労務費(作業時間)
  2. 原材料原価:製品1台あたりに使用する原材料費
  3. その他経費:光熱費や間接費などの1台あたりの計算が難しい費用
    このうち、システムで集計するのは、主に作業原価と材料原価です。

それぞれのデータの集め方は次の通りです。

作業原価の集め方は製品の生産着手から完了までの時間の測定。
原材料原価の集め方は、製品の生産着手から完了までに使った原材料の記録。

それぞれについてみていきます。

作業原価と工程の設定

作業時間は、大きくみれば生産開始(着手)~生産完了(完成)までの時間を集計したものですが、製造工程にはいくつかの「工程」があります。
そのため、システム上では作業を工程ごとに区切る必要があります。

さらにそれぞれの工程は、「生産指示」という形で、それぞれの工程が
開始・完了で区切られます。

中小正業業の場合は、工程を厳密に設定していないこともあり、
工程の設定に苦慮しているケースが多いようです。

原材料原価と構成(部品表)

原材料は、工程と同様で大きく見れば、「製品1台あたりに使われる原材料」として
みればよいのですが、それらを厳密にデータ化していないケースが多いようです。

さらに、工程に区切った時、その工程でどんな原材料がいくつ必要か?
という情報も必要になります。

各工程には、いくつかの必要な材料と、前工程から流れてくる仕掛品、そしてその工程で出来上がる仕掛品がある。つまり仕掛品を作るための構成(部材や仕掛品のまとまり)の設定が必要。
構成はより複雑になり、途中であきらめてしまうケースが多いようです。

工程と構成が原価管理にブレーキをかける

原価管理をしようとしたとき、システムでは工程と構成の設定が求められます。
これまで工程や構成を厳密に考えていなかった会社がいきなり、一気にやろうとするので、システムによる原価管理が頓挫します。

私も、これまで何も無かった会社がいきなり原価管理のために、工程を区分して、
構成を登録するのは、あまりに負担が大きいと考えます。

そこで、弊社では、実務経験に基づき、現場に過度な負担をかけず、混乱を招かない
原価管理の段階的導入を提唱します。

原価管理の段階的導入法

弊社が提唱する段階的導入法のロードマップは下の図の通りです。
&show(system_genka002.gif,,原価管理の段階的導入方法;

通常のシステムは、作業原価と材料原価を同時にやることを考えます。
ただし、その方法はこれまで全く工程や構成に取り組んでいない企業には、
最初からは荷が重い作業です。

ポイントは次の2点です。

  1. 作業原価と材料原価を分離する
  2. ざっくり管理から詳細管理へと徐々に落とし込み

作業原価の収集

作業原価の集計は、使った時間と製品を紐づける作業なので、
比較的ハードルは低いです。次のように進めることをお勧めします。

1.作業原価に的を絞る

まずは、生産の開始から完了までをひとくくりとして、開始と完了の時間を取ります。
生産管理システムがあれば、「生産(製造)指示」というものが出せると思います。まずは、そこに部材情報は紐づけずに、生産着手から生産完了までの時間を生産指示を使って記録、集計します。
運用面において、生産指示を使った製造と、開始と完了の記録を取るという行為に慣れるという狙いもあります。
いくら良いシステムでも、作業者が開始・完了を記録しないと意味が無いので・・・

2.作業原価を工程ごとに取る

生産の着手~完了までの開始・完了になれつつ、その間に工程を考えます。
工程が出来上がったら、システムに工程を設定して、工程ごとに開始・完了をとるようにします。工程の組み方のコツですが、はじめはざっくりと、徐々に細かくしていくことです。工程を設定することで、工程ごとの開始・完了が分かりますので進捗管理が可能になります。

原材料原価の収集

原材料原価の集計は簡単に実現しません。
ステップを踏んで、慎重に進めることをお勧めします。

3.原材料原価はまずは使った分だけ集計する

作業原価に並行して、原材料原価の集計も進めます。
作業原価と同じように1製品当たりに使用した原材料を記録すると考えるかも
しれませんが、原材料原価はその前段階があります。

それは、入出庫です。
まずは、対象を特定せずに、システムを使って入出庫をします。
原価管理を行うときに使われるのは主に生産管理システムです。

生産管理システムにおいて、最も大切なのは原材料の精度と言われています。
製品を材料を結びつけるのは「生産指示」ですが、原材料の精度が悪いと、生産指示
が全く機能しません。

その理由として、次の2点が挙げられます。

  1. 生産指示があったとしても原材料が無ければ生産着手できない
  2. 生産指示があったとしても使用する原材料の指示が間違っていたら生産着手できない

生産指示を出したものの、原材料の精度が悪い過ぎて、
できるものから生産しており、生産指示が全く役に立っていない・・・

ということもよく聞く話です。
まずは入出庫の習慣をしっかりとつけて、在庫の精度を高めることを優先
することをお勧めします。
目標としては、在庫精度95%以上(棚卸差異率5%以下)です。

4.製品と原材料を結びつける

原部材の精度がある程度確保できた段階で、「生産(製造)指示」と「使用した原材料」をつなげます。
これで、「どの受注(製造)に対して、どの部材をいくつ使ったか?」
が分かるようになるので、製品1台(1指示)あたりに使用した部材が分かります。
工程が少なかったり、所要時間の短い工程が多い場合は、製品と原材料を結びつけるだけで十分でしょう。

5.工程と材料を結びつける

工程を設定し、工程ごとの開始と完了そして、先ほど作業原価で設定した工程ごとに、必要な部材をまとめます。これが構成になります。

構成を設定すれば、工程ごとに必要な部材が分かるので、部材のピッキングや先行生産(見込み生産)、もできるようになり、進捗に応じて生産調整が自由にできるようになります。

ベテランの勘による属人的な、いわゆる見えない管理から、データに基づいた客観的事実による見える管理へと変わるため、全体の効率が上がると同時に、無駄な仕入れや生産も減ります。

私の経験上、一度に構成での運用をスタートしてもうまくいかないはず・・・
と考えています。構成間違いなどの設定ミスや、思っていたことと違う
という想定ミスがあるからです。
工程を絞ったり、製品を絞ったりと、一部分からスタートできれば
なお良いです。

原材料の原価管理のロードマップをまとめると、次の3段階になります。

  1. 使用部材の記録
  2. 1受注(指示)分の使用部材の記録
  3. 工程別の使用部材の記録

システムの仕様・機能に合わせて

上記のロードマップは、すでにシステムを導入している場合は、システムに搭載された仕様や機能に合わせて実施します。
新規導入や入れ替えを考えている場合は、これまで説明したような導入方法ができるか?

システムにはそれぞれ仕様があります。仕様に沿ったことしかできませんので、仕様を理解したうえで、運用と一緒に進めていくことをお勧めします。

原価管理のメンテナンス

構築して終わりではありません。
その先に待っているのがメンテナンスです。
作業原価に関しては、工程が変わる、追加されるなどよほど大きな変更が
無い限りは、メンテナンスは不要です。

ただ、原材料原価に関してはそうではなく、
設計変更などによって、使用する原材料が変更されることもあり得ます。
メンテナンスしないと、指示と実際の作業の乖離が起こります。
すると、「生産指示が信頼できないもの」になってしまい、使われなく
なっていきます。

原材料の構成をメンテナンスする仕組みが無いと、せっかく作った仕組みが
徐々に崩壊します。

まとめ:原価管理で大切なのは準備と運用

ここまで、原価管理を段階的に導入する方法を解説しました。
システムベンダーが言うほど、「原価管理が簡単にできます」
というものではありません。

システムベンダーからすれば、「システムを設定して使うだけ」です。
ただ、実務を任される現場にとっては、
実務の合間をぬって準備をしなければならず、これまで染みついたやり方や
習慣を変えるというとてつもない労力が必要です。

システムは道具ですから、次の2点がとても大切です。

  • 設定:システムを動かすための材料の準備
  • 運用:システムを使いこなすことに慣れる

今回解説した原価管理の段階的導入によって、
会社の実情に応じて着実に設定と運用を実施して、
システムをうまく使いこなして念願の原価管理を実現してください。

原価管理のご相談・お問合せ

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