適正在庫

自社の適正在庫を知りたい!
と考えておられる方は多いのではないでしょうか?
様々な案が理論がありますが、実務経験者からの目から見ると、
素直に首を縦に振ることをできるものはありません。
現場で在庫量の目安を付ける際の方法をご紹介します。

適正在庫
手っ取り早く知りたい方は、こちらをご覧ください。

なぜ在庫は必要なのか?

適正在庫を語るうえで、まず知っておかなければいけないのが、
在庫が必要な理由です。

在庫が必要な理由は3つあります。

お客(または後工程)が「欲しい!」と思った時に、
すぐにあるいはほとんど待たせずに品物を渡せるように
するために必要です。

適正在庫を決める要因は、

  1. リードタイム
  2. 変動
  3. 経営戦略

一番大切なのは

お客に渡すまでの時間=納期

です。

適正在庫リードタイム

在庫を扱う人が全て考えるのが、なるべく待たさずに品物を
届けることです。

それは、お客の要求納期に間に合わせるためではないでしょうか?

適正在庫を考えるうえで最も大切なのが、時間=リードタイムです。

工場を例にとって考えてみると、
それぞれ、次の3つのリードタイムがあります。

適正在庫

  1. 発注リードタイム
    材料を発注してから、工場に納品されるまでにかかる時間(日数)
  2. 製造リードタイム
    生産に着手してから、生産完了までにかかる時間(日数)
  3. 出荷リードタイム
    製品を出荷してから客先に届くまでの時間(日数)

この3つのリードタイムを足した時間が工場が商品をお客に
届けるために必要なリードタイムです。

要求納期と総リードタイムの関係

お客の注文日と要求納期までの日数を顧客リードタイム
とします。

要求納期と総リードタイムの日数差が適正在庫
考えるうえで大きなポイントになります。

要求が工場の総リードタイムよりも長い場合

次のような場合、工場は在庫を持つ必要はありません。

要求納期 > 工場の総リードタイム

なぜならば、お客から注文を受けた後に、部品を調達・生産・出荷
しても、お客の要求する日付に間に合うからです。

つまり、工場は一切在庫を持たず在庫ゼロで
良いということになります。

注文住宅やフルオーダーメイドの服は、この事例に
当てはまります。

フルオーダーメイドの服を注文して、

明日よこせ!

という非常識な人はいないと思います。

顧客リードタイムが工場の総リードタイムよりも短い場合

在庫を扱っている業者のほとんどがこちらに該当するのではないでしょうか。
この時、必ず工場は在庫を持たなければいけません。

要求納期 < 工場の総リードタイム

適正在庫量の目安

必要な在庫量は次の式で表すことができます。

工場のリードタイム - 要求納期 =必要な在庫量

これが工場が最低限必要な在庫量です。

在庫を時間と考える

例えば、
要求納期=20日
工場のリードタイム=25日

とします。

5日間の時間が足りません。

このような場合に工場は、少なくとも5日分の在庫を
持たなければいけません。

これがまず1つ目の適正在庫を決める要素になります。

ここで考慮しなければいけないのが、
製造業の在庫は「材料・仕掛品・製品」の3種類があると
いうことです。
5日分の在庫を3種類のうちどの時点の在庫として持つか
というのを決めなければいけません。

どの時点で在庫を持つか?という問いに答えるための
ひとつの指針になるのが、デカップリングポイントと言います。

変動に備えるための在庫

2つ目が変動です。

先ほど求めた在庫量は、最低限必要な理想的な
適正在庫量です。

しかし、そのほかにも在庫を持たなければ
いけない要因があります。

それは変動への対応です。

変動とは、需要変動を含めた予測が必要な
ものを指します。

需要変動の要因になるのは大きく分けると
次の4つに分類できます。

  • 仕入先
  • 工場
  • 顧客
  • 市場

仕入先が適正在庫を決める要因になること

仕入先が要因になるのは、材料発注に
関連することです。

  • 発注リードタイム
    発注リードタイムが長い。短くできない。
  • ロット
    ロットが大きく、必要な量だけ買えない。
  • 納期遅れ
    指定した納期に材料が入ってこない。
  • 不良
    納入された材料が不良で、数が減ってしまう。

工場が適正在庫を決める要因になること

工場が決めるのは次の2つに分けることができます。

  1. 生産能力に関わること
  2. それ以外

生産能力

工場には生産能力があります。
原則として単位時間当たりの生産能力を超えて生産を
することはできません。

工場の生産能力が50個(総リードタイムは5日)
仮にお客から200個(顧客リードタイムは10日)

顧客リードタイムの方が長いですが、
この工場の生産能力では、10日で100個しかつくれません。
そのため、さらに10日前に100個を作っておく必要が
あります。

お客から生産能力を超える注文が続く場合は、生産能力の
増強を検討しなければいけません。

それ以外の要因

もう一つの工場が要因が、主に製造過程で起こることです。

例えば、次のような事です。

  • 機械故障
    生産能力が落ちてしまう。
  • 欠員
    生産能力が落ちてしまう。
  • 廃棄ロス(歩留り、不良)
    できる予定の数量ができあがらず、余分に
    生産しなければいけなくなる。
  • 段取り
    生産以外に時間が取られ、予定よりも製造リード
    タイムが長くなってしまう。
  • 移動
    生産以外に時間が取られ、予定よりも製造リード
    タイムが長くなってしまう。
  • 生産ロット
    必要以上に余分に作ってしまう。
  • 各種事務処理
    処理待ちで生産が止まる。
    処理ミスで、指示数や出来高数が違う。

つまり工場の4Mの何らかの不調によるものです。

顧客が適正在庫を決める要因になること

顧客が要因になるのは、主に製品や販売に
関連することです。
例えば、次のような事です。

  • 緊急発注
    いつもの顧客リードタイムよりも短い
  • 廃棄ロス
    客先での破損や紛失

市場が適正在庫を決める要因になること

市場が要因になるのは、法律改正や流行や嗜好に
関連することです。
例えば、次のような事です。

  • 定期的な需要変動
    定期的な行事(正月やクリスマス)、季節変動
  • 一時的な需要変動
    テレビ番組に取り上げられ、一時的に殺到
  • 長期的なトレンド
    徐々に増え始めている、または減り続けている。

経営戦略

3つ目の適正在庫を決める要因は、経営戦略です。

例えばアマゾンは、お客からどんな商品の要求が
来ても応えられることをめざし、「地球最大の品揃え」
をうたってます。

高級車の代名詞であるフェラーリは、年間の生産台数が
決まっています。しかも在庫を持たず、お客に納期を突
き付けます。

つまり経営戦略によっても適正在庫は変わるのです。

3つ目が会社の適正在庫を決めるうえで一番大切かも
しれません。

安全在庫の公式が役に立たない理由

適正在庫を調べていくと、必ずと言っていいほど行きつくのが、
安全在庫の公式です。
安全在庫は、次の式で表すことができます。

安全在庫=安全係数×使用量の標準偏差×ルート(発注リードタイム+発注間隔)

ここで算出した安全在庫が使えない理由は2つあります。

在庫は増えるだけで減らない

欠品を防ぐための計算であり、在庫は常にプラスになります。
余剰在庫になる危険性を秘めています。
つまり、余剰在庫を防ぐことはできません。

前提条件に無理がある

安全在庫の公式には、
決定的な弱点があります。

安全在庫の求め方は、次のような制約があります。

  • データ量がある程度必要
  • データが正規分布であること

統計上理想的な状態にある場合を対象にしているので、
データ量が少なかったり、正規分布でない記録では、
正確な値が出てきません。

一応、求めることは可能ですが、現実とかけ離れた
数字が出てくるのでびっくりするはずです。

使えない数字とは、結果が大きすぎたり、
小さすぎたりすることを指します。

私も試しにこの式を使って安全在庫を求めたことが
ありますが、計算結果に従うと、かなり余剰在庫
なるケースの方が多いことが分かっています。

自社にとっての適正在庫量の求め方

これまでのことをまとめると、

適正在庫=(要求納期の日数-工場の総リードタイム)+安全在庫

安全在庫を考慮した適正在庫

ここでいう安全在庫とは、
安全在庫の公式で求めたものではなく、
次のような考え方をします。

安全在庫=変動をカバーするための在庫+経営戦略のための在庫

適正在庫を求める手順

  1. 自社のリードタイムを知る。
  2. 顧客からの標準的な顧客リードタイムを知る。
  3. 1と2の差を見て、最低限適正在庫を決める。
  4. 需要変動を考慮して、安全在庫を設定する。

適正在庫に近づけるための取り組みのヒント

発注ロットが大きすぎる、生産のラインバランスが悪い、
といった問題は適正在庫を妨げる原因になるので、
改善しなければいけません。

仕掛品の場合

適正在庫の基準に近づけるために取り組むのは、製造リ
ードタイムの短縮です。現場の作業をしっかりと観察し
て、時間がかかっているところを取り除いて行きます。

購買品(部品や原材料)の場合

適正在庫の基準に近づけるために取り組むのは、ロット
リードタイムになります。
ロットは、1日の平均使用数とリードタイムの関係を見て
過剰でなければ、手をつける必要はありまん。
たとえば、以下のような条件の場合、

ロット=200
1日の平均使用数=18
リードタイム=10日

リードタイム期間中にほぼ使い切ってしまうので、ロット
は妥当な数と言えます。
しかし、以下のような場合だと
ロット=200
1日の平均使用数=2
リードタイム=10日

リードタイム期間中に約20個しかつかわないので、180個
余ってしまいます。
このような場合は、ロットの削減が有効になります。

購買品の場合もリードタイムの削減がきわめて有効です。
発注リードタイムを削減すると、1回で調達する量が少な
くて済みますし、需要予測の精度も高くなります。

市場や顧客要因

市場や顧客要因はなかなか自社の努力では
解決できない大きな問題です。
注文情報や市場の動向などに着目して、常に情報を
仕入れるようにします。
顧客に情報を与えてやるというくらいの気持ちが大切です。

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