在庫管理とは何か?基本から適正在庫までを解説

仕掛品を棚卸資産として計上する

    在庫管理アドバイザー岡本茂靖

    筆者:岡本茂靖(在庫管理アドバイザー、日本物流学会理事)
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    在庫管理110番代表。在庫管理、生産管理の実務経験を経て、瀬戸内scm株式会社を創業。500社以上の相談、コンサルティング実績を持つ。

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    在庫管理アドバイザーのノウハウすべてを注ぎ込み、現場で在庫量の目安を付ける際のポイントをまとめました。

     

    『自社の適正在庫を知りたい!』と考えておられる方は多いのではないでしょうか?

    適正在庫について様々な案や理論がありますが、私、在庫管理アドバイザーの目から見ると、正直言いまして素直に首を縦に振ることができるものはありません・・・

    在庫管理のの基本から現場で在庫量の目安を付ける際のポイントまでを解説します。


    以下、こちらのページの目次になります。


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    第1章 なぜ在庫は必要なのか?

    適正在庫を語るうえで、まず知っておかなければいけないのが、在庫が必要な理由です。

    お客(または後工程)が「欲しい!」と言ってきた時に、「すぐに」あるいは「ほとんど待たせずに」商品を渡せるようにするために在庫が必要なのです。

    そして、適正在庫を決める要因は

    1. リードタイム
    2.  変動
    3.  経営戦略

    となり、

    一番大切なのは、お客に渡すまでの時間=納期です。

    第2章 適正在庫とリードタイム

    在庫を扱う人が全て考えるのが、なるべく待たさずに商品を届けることです。

    それは、お客の要求納期に間に合わせるためではないでしょうか?

    適正在庫を考えるうえで最も大切なのが、時間=リードタイムです。

    工場を例にとって考えてみると、それぞれ、次の3つのリードタイムがあります。

    適正在庫

    [1]発注リードタイム 
    材料を発注してから、工場に納品されるまでにかかる時間(日数)

    [2]製造リードタイム 
    生産に着手してから、生産完了までにかかる時間(日数)

    [3]出荷リードタイム 
    製品を出荷してから客先に届くまでの時間(日数)

    この3つのリードタイムを足した時間が工場からお客へ商品を届けるために必要なリードタイムです。


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    第3章 要求納期と総リードタイムの関係

    お客の注文日と要求納期までの日数を顧客リードタイムとします。

    要求納期と総リードタイムの日数差が適正在庫を考えるうえで大きなポイントになります。

    第3章-1 要求が工場の総リードタイムよりも長い場合

    次のような場合、工場は在庫を持つ必要はありません。

    要求納期 > 工場の総リードタイム

    なぜならば、お客から注文を受けた後に、部品を調達・生産・出荷しても、お客の要求する日付に間に合うからです。

    つまり、工場は一切在庫を持たず在庫ゼロで良いということになります。

    注文住宅やフルオーダーメイドの服は、この事例に当てはまります。

    フルオーダーメイドの服を注文して、『明日よこせ!』という非常識な人はいないと思います。

    第3章-2 顧客リードタイムが工場の総リードタイムよりも短い場合

    在庫を扱っている業者のほとんどが、こちらに該当するのではないでしょうか。

    この時、必ず工場は在庫を持たなければいけません。

    要求納期 < 工場の総リードタイム

    適正在庫量の目安

    必要な在庫量は次の式で表すことができます。

    工場のリードタイム - 要求納期 =必要な在庫量

    これが工場が最低限必要な在庫量です。

    ちなみに現状の在庫量がどれだけ自社にあるのか、

    わからない方は、まず在庫量を把握する必要があります。

    第4章 在庫を時間と考える

    例えば、

    要求納期=20日

    工場のリードタイム=25日

    の場合、

    工場は、少なくとも5日分の在庫を持たなければいけません。

    これがまず1つ目の適正在庫を決める要素になります。

    ここで考慮しなければいけないのが、製造業の在庫は「材料・仕掛品・製品」の3種類があるということです。

    5日分の在庫を3種類のうち、どの時点の在庫として持つかというのを決めなければいけません。

    どの時点で在庫を持つか?という問いに答えるためのひとつの指針になるのが、デカップリングポイントと言います。

    デカップリングポイントがわからない方はこちらをご覧ください。

    デカップリングポイントとは

    第5章 変動に備えるための在庫

    2つ目が変動です。

    先ほど求めた在庫量は、最低限必要な理想的な適正在庫量です。

    しかし、そのほかにも在庫を持たなければいけない要因があります。

    それは変動への対応です。

    変動とは、需要変動を含めた予測が必要なものを指します。

    需要変動の要因になるのは大きく分けると次の4つに分類できます。

    • 仕入先
    • 工場
    • 顧客
    • 市場

    第5章-1 仕入先が適正在庫を決める要因になること

    仕入先が要因になるのは、材料発注に関連することです。

     発注リードタイム 
    発注リードタイムが長い。短くできない。

     ロット 
    ロットが大きく、必要な量だけ買えない。

     納期遅れ 
    指定した納期に材料が入ってこない。

     不良 
    納入された材料が不良で、数が減ってしまう。

    第5章-2 工場が適正在庫を決める要因になること

    工場が決めるのは次の2つに分けることができます。

    1. 生産能力に関わること
    2. それ以外

    [1]生産能力 

    工場には生産能力があります。

    原則として単位時間当たりの生産能力を超えて生産をすることはできません。

    工場の生産能力が50個(総リードタイムは5日)
    仮にお客から200個(顧客リードタイムは10日)

    顧客リードタイムの方が長いですが、この工場の生産能力では、10日で100個しかつくれません。

    そのため、さらに10日前に100個を作っておく必要があります。

    お客から生産能力を超える注文が続く場合は、生産能力の増強を検討しなければいけません。

    [2]それ以外の要因 

    もう一つの工場が要因が、主に製造過程で起こることです。

    例えば、次のような事です。

     機械故障 
    生産能力が落ちてしまう。

     欠員 
    生産能力が落ちてしまう。

     廃棄ロス(歩留り、不良) 
    できる予定の数量ができあがらず、余分に生産しなければいけなくなる。

     段取り 
    生産以外に時間が取られ、予定よりも製造リードタイムが長くなってしまう。

     移動 
    生産以外に時間が取られ、予定よりも製造リードタイムが長くなってしまう。

     生産ロット 
    必要以上に余分に作ってしまう。

     各種事務処理 
    処理待ちで生産が止まる。
    処理ミスで、指示数や出来高数が違う。

    つまり工場の4Mの何らかの不調によるものです。

    第5章-3 顧客が適正在庫を決める要因になること

    顧客が要因になるのは、主に製品や販売に関連することです。

    例えば、次のような事です。

     緊急発注 
    いつもの顧客リードタイムよりも短い

     廃棄ロス 
    客先での破損や紛失

    第5章-4 市場が適正在庫を決める要因になること

    市場が要因になるのは、法律改正や流行や嗜好に関連することです。

    例えば、次のような事です。

     定期的な需要変動 
    定期的な行事(正月やクリスマス)、季節変動

     一時的な需要変動 
    テレビ番組に取り上げられ、一時的に殺到

     長期的なトレンド 
    徐々に増え始めている、または減り続けている。


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    第6章 経営戦略

    3つ目の適正在庫を決める要因は、経営戦略です。

    例えばアマゾンは、お客からどんな商品の要求が来ても応えられることをめざし、「地球最大の品揃え」をうたってます。

    高級車の代名詞であるフェラーリは、年間の生産台数が決まっています。

    しかも在庫を持たず、お客に納期を突き付けます。

    つまり経営戦略によっても適正在庫は変わるのです。

    3つ目が会社の適正在庫を決めるうえで一番大切かもしれません。

    第7章 安全在庫の公式が役に立たない理由

    適正在庫を調べていくと、必ずと言っていいほど行きつくのが、安全在庫の公式です。

    安全在庫は、次の式で表すことができます。

    安全在庫=安全係数×使用量の標準偏差×ルート(発注リードタイム+発注間隔)

    ここで算出した安全在庫が使えない理由は2つあります。

    第7章-1 在庫は増えるだけで減らない

    欠品を防ぐための計算であり、在庫は常にプラスになります。

    余剰在庫になる危険性を秘めています。

    つまり、余剰在庫を防ぐことはできません。

    第7章-2 前提条件に無理がある

    安全在庫の公式には、決定的な弱点があります。

    安全在庫の求め方は、次のような制約があります。

    • データ量がある程度必要
    • データが正規分布であること

    統計上理想的な状態にある場合を対象にしているので、データ量が少なかったり、正規分布でない記録では、正確な値が出てきません。

    一応、求めることは可能ですが、現実とかけ離れた数字が出てくるのでびっくりするはずです。

    使えない数字とは、結果が大きすぎたり、小さすぎたりすることを指します。

    私も試しにこの式を使って安全在庫を求めたことがありますが、計算結果に従うと、かなり余剰在庫になるケースの方が多いことが分かっています。

    第8章 自社にとっての適正在庫量の求め方

    これまでのことをまとめると、

     適正在庫=(要求納期の日数-工場の総リードタイム)+安全在庫 

    安全在庫を考慮した適正在庫

    ここでいう安全在庫とは、安全在庫の公式で求めたものではなく、次のような考え方をします。

     安全在庫=変動をカバーするための在庫+経営戦略のための在庫 

    第8章-1 適正在庫を求める手順

    [1]自社のリードタイムを知る。

    [2]顧客からの標準的な顧客リードタイムを知る。

    [3]1と2の差を見て、最低限適正在庫を決める。

    [4]需要変動を考慮して、安全在庫を設定する。


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    第9章 適正在庫に近づけるための取り組みのヒント

    発注ロットが大きすぎる、生産のラインバランスが悪い、といった問題は適正在庫を妨げる原因になるので、改善しなければいけません。

    第9章-1 仕掛品の場合

    適正在庫の基準に近づけるために取り組むのは、製造リードタイムの短縮です。

    現場の作業をしっかりと観察して、時間がかかっているところを取り除いて行きます。

    第9章-2 購買品(部品や原材料)の場合

    適正在庫の基準に近づけるために取り組むのは、ロットやリードタイムになります。

    ロットは、1日の平均使用数とリードタイムの関係を見て過剰でなければ、手をつける必要はありません。

    たとえば、
    以下のような条件の場合、

    ロット=200
    1日の平均使用数=18
    リードタイム=10日

    リードタイム期間中にほぼ使い切ってしまうので、ロットは妥当な数と言えます。

    しかし、
    以下のような場合だと、

    ロット=200
    1日の平均使用数=2
    リードタイム=10日

    リードタイム期間中に約20個しかつかわないので、180個余ってしまい、ロットの削減が有効になります。

    購買品の場合もリードタイムの削減がきわめて有効です。

    発注リードタイムを削減すると、1回で調達する量が少なくて済みますし、需要予測の精度も高くなります。

    第9章-3 市場や顧客要因

    市場や顧客要因は、なかなか自社の努力では解決できない大きな問題です。

    注文情報や市場の動向などに着目して、常に情報を仕入れるようにします。

    顧客に情報を与えてやるというくらいの気持ちが大切です。

    第10章 在庫管理セミナーに参加する

    在庫管理110番では、定期的にセミナーを開催しています。

    セミナーでは、過剰在庫を適正在庫に導き、1000万円の在庫を削減した実例をお伝えします。

    なお、在庫管理セミナーに参加いただいた方には、2つの特典があります。

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    第11章 需要連動型在庫管理表

    需要連動型在庫管理表

    需要連動型在庫管理表は適正在庫を自動で計算する在庫管理表です。

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