ERP(統合基幹業務システム)の導入は、システム機能をひとつに統合できるので、業務効率化や経営判断の迅速化といったメリットがあります。
しかし、中小企業には、大規模なERPはお勧めできないと言い切れます。
特にSAPのような大規模ERPは、導入コストや運用負荷が高く、中小企業にとって過剰な場合があります。本記事では、中小企業がシステム導入を成功させるためのベストプラクティスについて解説します。
目次
大規模ERPのメリット・デメリット
大規模ERPとは、SAPやOracleなどのように、多機能かつ高い拡張性を持つ統合基幹業務システムを指します。
ERPのメリット・デメリットは以下の通りです。
ERPのメリット
財務管理、人事管理、販売管理、在庫管理など、多岐にわたる業務を統合的に管理できる点が特徴です。
ERPのデメリット
大規模ERPはその複雑さゆえに、導入・運用コストが高く、システムのカスタマイズやデータの準備、既存システムからのデータ移行にも多大な労力を要します。
中小企業にSAPなどの大規模ERPは必要ない3つの理由
これらの特性は、大規模な業務プロセスを持つ大企業には適していますが、中小企業には過剰であることが多いです。
そのため、中小企業には大規模なERPシステムは必要無いと言い切れます。その理由は、次の3つです。
コスト負担が重い
SAPやOracleといった大規模ERPは、導入時の初期費用が数千万~数億円と非常に高額です。
中小企業ではこれらのコストを吸収する余裕がない場合が多く、「高機能だから」という理由だけで大規模ERPを導入すると、結果的に財務面で大きな負担となります。そのため、導入後に「思ったほど効果が出ない」「維持管理にお金ばかりかかる」といった不満につながるケースも少なくありません。代表的なコストをご紹介します。
導入コスト
これにはライセンス費用、システム構築費用、そしてコンサルティング費用が含まれます。中小企業にとって、この初期投資は非常に大きな負担となる場合が多く、導入を検討する段階で断念せざるを得ないケースも少なくありません。
運用・保守コスト
さらに、初期費用だけではなく、運用・保守にかかるランニングコストも数十万円~と無視できません。例えば、大規模ERPでは定期的なメンテナンスやアップデートが必要であり、そのたびに追加のコストが発生します。オンプレミス型の場合、自社内でサーバーやネットワーク機器を維持・管理するための設備投資も必要です。また、クラウド型であっても月額費用やユーザー数に応じた課金モデルが一般的であり、これが長期間にわたると総コストは膨れ上がります。
また、OSのアップデートなどによって、サポートが切れ、強制的な入れ替え必要になる可能性もあります。
カスタマイズ関連コスト
さらに見落とされがちなのが「隠れたコスト」です。例えば、大規模ERPは中小企業の業務プロセスにそのまま適合することは少なく、多くの場合カスタマイズが必要です。このカスタマイズには多額の費用と時間がかかり、導入計画が当初の想定よりも大幅に長引くことがあります。また、大規模ERPの操作は複雑であるため、従業員へのトレーニングも必須です。このトレーニングには直接的な費用だけでなく、従業員が通常業務を中断して学習に時間を割くという形で間接的なコストも発生します。
業務プロセスの複雑さ
大規模ERPのようにすべての業務を統合的に管理する仕組みは過剰となるケースが多いです。その理由は、多機能さにあります。
中小企業の業務プロセスは比較的シンプルであることが多く、例えば販売管理や在庫管理など、特定の業務だけを効率化できれば十分な場合があります。
実際に、中小企業ではその全機能を100%活用することはほとんどありません。むしろ、その多機能性ゆえに導入後の運用が煩雑になり、「使いこなせない」「現場で混乱する」という問題が発生しやすくなります。
実は、大企業でも持て余していることが多く、ERPに機能はあるものの理解しきれず、エクセルやクラウドサービスを独自に使っているケースもあります。
機能が複雑に絡み合っているため、適当に設定をしてしまうと思わぬところで悪影響が出てしまうこともあります。
また、大規模ERPには高度な分析機能やグローバル対応機能などがありますが、中小企業ではそれらを活用する場面自体が少ないため、「宝の持ち腐れ」になりやすい点も課題です。結果として、高額なシステムを導入しても投資対効果が低下し、「もっと簡単なシステムで良かった」と後悔するケースが多いのが現実です。
運用負荷
大規模ERPは運用にも高い専門知識を要求します。日常的な操作でも複雑な設定やエラー対応が必要であり、ITリテラシーが高い人材がいないとスムーズに運用できません。しかし、中小企業ではそのような専門人材を確保すること自体が難しい場合があります。その結果、機能や設定が理解できず、機能はあるけど使っていない(使うことができない)というケースも多いです。
そのため、大規模ERPを運用するには専任担当者やIT部門の設置が求められることがあります。しかし、人員リソースに限りがある中小企業では、このような体制構築は現実的ではありません。その結果、トラブル発生時にはベンダー頼みとなり、解決まで時間と追加費用がかかることもしばしばです。
さらに、現場スタッフにとっても、大規模ERPは「使いづらい」と感じられることがあります。特にUIが複雑だと、日常業務でストレスとなり、生産性低下につながる可能性があります。「簡単な作業でも手順通り進めないとエラーになる」「操作方法を覚えるだけでも一苦労」といった声はよく聞かれる問題です。
中小企業がシステム導入を成功させるために必要な4つのポイント
以上3つの理由から、ERPの導入はお勧めできません。
そこで、中小企業がシステム導入を成功させるために必要な3つのポイントを解説します。
小さく始める
全社的な大規模システム導入ではなく、小規模から段階的に始めることが重要です。
- 最初は在庫管理や販売管理など特定分野に絞ったシステムから導入する。
- 効果を確認しながら他領域へ拡張していく。
クラウド型ERPなど、小規模でも導入しやすい選択肢も増えており、中小企業に適した柔軟性とコスト効率を提供します。
機能別にシステムを導入する
最近は安価な特定業務に特化した業務システムがたくさん出ています。
販売管理システム、会計システム、といったように、それぞれの機能の強みを生かして導入すればシンプルで自社に必要な機能をもったシステム環境を構築できます。
業務の棚卸しを行う
まず、自社の業務内容や課題を明確化するために「業務棚卸し」を実施します。具体的には以下の手順で進めます。
- 各部門の業務フローを洗い出し、無駄や非効率な部分を特定する。
- 業務プロセスを可視化し、属人化している作業や重複作業を排除する。
このプロセスにより、どのような機能が必要か明確になり、不必要な機能を排除したシステム選定が可能となります。
改善点を探し続ける
システム導入後も継続的に改善点を探り、PDCAサイクルで運用体制を最適化します。
- 定期的にデータ分析を行い、新たな課題や改善余地を特定する。
- 現場からフィードバックを収集し、システム設定や運用方法に反映させる。
中小企業向けシステム選定時のポイント
- コストと機能のバランス必要最低限の機能に絞り込み、予算内で最大限の効果が得られるものを選びましょう。
- 使いやすさ現場スタッフでも直感的に操作できるUI/UX設計が重要です。トレーニングコストも削減できます。
- サポート体制導入後もベンダーから適切なサポートが受けられるか確認しましょう。クラウド型の場合、この点は特に重要です。
まとめ
中小企業には必ずしもSAPなどの大規模ERPは必要ありません。むしろ、自社の業務内容や課題に応じた適切なシステム選定と段階的な導入こそが成功への鍵です。業務棚卸しによる現状把握、小規模から始めて徐々に拡張するアプローチ、そして継続的な改善活動によって、中小企業でも十分な成果を上げることが可能です。
今後も自社の成長段階や市場環境に応じて柔軟な対応を行いながら、最適なIT活用戦略を構築していきましょう。
もしこの記事を読んで「自社に最適なシステム選定の方法がわからない」「具体的にどのように業務棚卸しを進めればいいのか」「クラウド型ERPや小規模システムについてもっと知りたい」といった疑問やご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
使いこなせる在庫管理システムを導入する
在庫管理システムの導入を成功させるためのポイントは使いこなせるものを導入することです。
在庫管理110番にもシステムの導入や入れ替えの相談をいただきますが、在庫管理システムの失敗で多いのは、「欲張りすぎている」ことです。
多機能なものを導入しても、理解ができない、設定が追い付かない等の理由で使いこなせず、結果的に使えない状態になっています。
もし、初めて在庫管理システムを導入するのであれば、高価なものを入れる必要はありません。安価なもので充分です。最初から自社の業務に合わせようとこだわると、多くの機能が必要だったり、機能で賄えない場合はカスタマイズになり、高額になっていきます。
在庫管理110番が開発した成長する在庫管理システムは、使いこなせることを大前提に開発しています。必要最小限でシンプルなシステムから始めることができます。さらに、システムの機能を拡張することができるので、徐々に自社の業務に合わせてカスタマイズできるため、業務効率化にも役立ちます。500社以上の在庫管理のコンサルティング・相談をのってきた在庫管理アドバイザーが、『今のあなたの会社に本当に必要な機能』を提案しますので、安心して相談できます。
低コストで自社に必要な機能を持ったシステムが導入できる
在庫管理のご相談・お問い合わせ
在庫管理システムの導入・入替えのためのシステム選定のご相談、その他在庫管理に関する課題、お悩みはお気軽にご相談ください。
現役の在庫管理アドバイザーがあなたの相談に乗ります!無料の個別相談(1か月間、7社限定)もぜひご活用ください。