直接原価計算では利益が分からない?経営判断を誤らせない「真の収益指標」とは

直接原価計算は、約束ごとが前提で帳尻合わせの全部原価計算と違って、商品個別の粗利益(付加価値額)までは正しく計算できます。

仕入れて売る小売業や卸売業であれば、直接原価計算でも問題ありません。

しかし、製造業や建設業、小売業であっても流通加工を行う行っている会社の場合は、直接原価計算では一見儲かるように見えても、なぜか儲からないという不思議な現象が起こります。

 

その原因は直接原価計算には、原価とともに重要な要素である「時間」が抜けているからです。

経営の神様、京セラの稲盛和夫氏も「時間当たり」という収益性の見かたに注目して重要性を提唱していました。

つまり、直接原価計算では実際の経営で「儲かる商品」を見つけるには不十分だということです。

そこで、今回の記事では、本当に「儲かる商品」が見けるための私が考案した真の収益性指標「S賃率」について解説します。

 

S賃率はシンプルで簡単に計算できるにも関わらず、分かりやすく経営の現場で本当に使える経営指標です。

もし、あなたが正しい経営判断ができるような収益性のモノサシ・が欲しい!

と思っている場合は、S賃率をぜひ活用してください。

収益性指標の抜本的見直しに役立ちますのでぜひお読みください。

全部原価計算を使っている場合は、こちらの記事がお勧めです。

「全部原価計算」の利益は嘘?経営判断に必要な「本当の利益」を計算する方法

直接原価計算が収益性の判断に役立たない2つの原因

最近、金融機関から「前期の客先ごとの粗利益および粗利益率の一覧を提出してください」という働きかけが多いようです。
これは、「商品原価を出してください」よりはマシですが、仕入れて売る小売業や卸売業以外ではほとんど意味はありません。

粗利益そのものが、収益性判断に役立たない2つの問題点は以下の通りです。

  1. 時間の概念が欠落している
    先に述べたように、直接原価計算で計算すると「儲かる商品」なのに、実際はなぜか儲からないのは、「時間」を考慮していないからです。
  2. 変動費(原価)に左右される
    高価な材料など変動費が大きいものは、「原価率」が高くなるため、直接原価計算で計算すると粗利益率が低くなり、低収益に見える

材料費などの原価とともに、実際に自社でどれだけの作業時間を使った上での粗利益はどうか?ということを把握できることが本当に儲かる商品を見つける経営の現場で役立つ指標です。

S賃率とは?時間軸を加味した真の収益性指標

直接原価計算は、「時間」と「原価」の問題を抱えており、本当の儲けがわかりません。
そこで、私が考案した時間の概念を加えた「S賃率」を使えば、真の収益性が見えてきます。

S賃率の計算式
S賃率=自社で創出する付加価値額(=生産高・売上高-変動費)÷制約条件(≒直接作業時間)

 

S賃率のポイントは、社内で創出する付加価値額とそこに投入する制約条件(多くは直接作業時間)となる経営資源も考慮していることです。

そのため、直接原価計算のような問題が起こりません。

さらにS賃率は、個別商品だけではなく、全社合計でも事業別・部門別、ロット別でも柔軟に計算できます
必要に応じてそれぞれの「収益性指標」として活用できるため、実務的に極めて使いやすいのが特徴です。

【解説】S賃率の構成要素

S賃率の構成要素は以下の2点のみで非常にシンプルです。

  • 付加価値額
    「生産高または売上高」から「変動費」を引いた金額
  • 制約条件 
    生産能力やスペースなど、売上や生産を増やしたくても増やせないものが制約条件になります。

    • 自社内で価値を付加する事業の場合
      TOC理論によりツナガリとバラツキのある作業の流れにおいては、キー工程が全体工程の流れを決めるためキー工程で収益性を判断できる。
      製造業であれば、キー工程の直接工数(全部原価計算のように全工数を対象にする必要なし)※機械化が進んでいる会社の場合は、キー工程の機械稼働時間の適用が妥当な場合もある
    • 小売業や卸売業のように仕入れて販売する業態の場合
      スペースなどが制約条件の場合には、スペース(面積・坪)当たりの獲得付加価値額を用いる場合もある(基本的には「粗利率」が指標となる)

S賃率と直接原価計算の比較

具体的に、同じ商品をS賃率と直接原価計算で計算した比較をご紹介します。

凸凹製作所の商品A~Cの商品別収益性について、標準的な直接原価計算による算出方法と当方推奨のS賃率で算出した結果が下表の通りです。

 

直接原価計算とS賃率の比較

S賃率の評価の見方
• ◎(健康商品):この商品だけ販売した場合、必要固定費に加え必要利益まで稼げる商品
• 〇(貧血商品):この商品だけ販売した場合、必要固定費は賄えるが必要利益までは稼げない商品
• △(疑似出血商品):変動費が売価を上回っていない(逆ザヤでない)が、この商品だけ販売した場合当社の必要固定費は稼げない商品

 

直接原価計算で収益性の高い順番は以下の通りです。

  1. 商品B
  2. 商品C
  3. 商品A

一方、S賃率で計算した場合の集積性の高い順番は以下の通りです。

  1. 商品A
  2. 商品C
  3. 商品B

商品AとBの順位が逆転しています。このようになるのは「直接作業時間」を考慮しているかどうかが理由です。

 

S賃率の計算根拠

S賃率「基準賃率」計算根拠を簡単に説明します。

当期想定工数 30,000(時間)←(製造要員数、稼働率加味)
当期目標から計算

  • 当期固定費目標額 210,000 (千円)
  • 当期損益分岐点賃率= 7,000 (円/人時)※付加価値由来

必要賃率の計算
借入金返済等を加味した必要利益を加算(年間必要利益40,000千円プラス)して算出。

  • 必要賃率=8,333(円/人・時) …付加価値由来

 

直接原価計算(粗利益)評価とS賃率評価では全く異なる結果になります。
つまり、「時間」を無視した直接原価計算(粗利益)の収益性評価では、真実の収益性を見誤る危険性が大きいことが分かります。
これは、比較表で示した通り「粗利益」にとどまって評価するか、「時間」要素を加味して評価するか、でまったく違う結果になるのです。

いかがでしょうか?
高収益構造への鉄則は儲かるモノに多くの経営資源を投入するために、儲からないモノから経営資源をシフトすることです。
非常にシンプルです。しかし、「儲かる/儲からない」の判断自体が従来の直接原価計算の粗利益のみでは正しく判断できないこと自体が問題です。
「時間」要素を加味した事実情報によるS賃率方式への転換こそが、高収益企業への道の第一歩になります。

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この記事では、従来の直接原価計算(粗利益)が持つ「時間の欠如」という弱点と、本当に儲かる商品を見抜くための新経営指標「S賃率」の重要性について解説しました。

もしかすると、あなたは今、 「S賃率の考え方は分かったが、自社の場合はどう計算するんだ?」 「この指標を使って、どうやって利益計画や経営判断に活かせばいい?」 と感じているかもしれません。

 

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