手作業の倉庫を劇的に変える!保管・作業効率を高める棚の決め方と通路幅の基準

経営陣から『生産能力を高めたいから、現場の保管スペースを減らしてくれ。ただし、保管能力(収納力)はそのままで頼む』と無茶振りをされた……。

倉庫のレイアウトを任されたが、そもそもやったことが無い。

倉庫が狭くて、スタッフ同士や台車がすれ違いにくい。通路を広くしたいが広すぎると保管効率が落ちる。どうやって保管効率と作業効率を両立させれば良いのか?

あなた方の部品倉庫や工場のバックヤードで、このような悩みはありませんか?

 

本記事は、中小企業に多い自動倉庫やフォークリフトを使わない手作業中心の倉庫のためのものです。

手作業や台車による保管やピッキングに最適な「棚のサイズ」と「通路の幅」の決め方を見直すだけで、保管効率と作業効率を完全に両立させることができます。

なぜなら、限られたスペースを有効活用しつつ、現場スタッフの無駄な動きや歩行ストレスを徹底的に減らすことができるからです。

本記事では、人間の身体サイズ(人間工学)に基づいて、棚や通路の幅を具体的な数値基準を交え、すぐに実践できる倉庫レイアウトのノウハウをご紹介します。

棚の高さと奥行きの決め方

手作業が中心となる倉庫では、棚の高さは「180cm」を基本とし、奥行きは「置く部品のサイズ」に合わせて選ぶのが正しい倉庫 棚 決め方の基準です。

棚の高さの基準:無理なく手が届く「180cm」が理想な理由(身長×1.2倍の根拠)

手作業の現場において、棚の高さは「180cmに収めること」が理想です。

その理由は、作業スタッフが踏み台やステップを使わずに、手を伸ばして無理なく、安全かつ余裕を持って届く限界の高さだからです。

 

建築やインテリアの人間工学(身体サイズと空間設計)において、大人が上方に無理なく手を伸ばして届く高さ(上方把握限界高)の目安は「身長×1.2倍」とされています。

現在の日本の平均身長(男性:約171cm、女性:158cm)にこの基準を当てはめると、手が届く高さの限界は以下のようになります。

手を伸ばして届く高さ(上方把握限界高)の目安は「身長×1.2倍」
  • 男性の場合:171cm × 1.2 =約205cmまで届く
  • 女性の場合:158cm × 1.2 =約190cmまで届く

カタログを見ると高さ210cmの部品棚も多く存在しますが、これでは平均的な女性スタッフが最上段の奥にある部品をスムーズにピッキングできません。

誰もが踏み台なしで安全・スピーディーに作業できる棚の高さ基準を作るなら、女性の手が余裕を持って届く「180cm」を最上段の目安にするのがベストです。

棚の奥行きの基準:見落としを防ぐ45cm・60cm・120cmの選び方

置くものが決まっている場合は、基本的に「置くもの(部品のサイズや通い箱のサイズ)」にジャストで合わせる形で奥行きを決定します。

しかし、ほとんど決まっていなかったりこれから増やしていく場合は、棚の奥行きは、一般的に「45cm」「60cm」「120cm」が基本スペックとして多く選ばれていますが、選び方には明確なルールがあります。

奥行きを深くしすぎると、人間の腕の長さを超えてしまうため、「奥にある部品が取りづらい」「手前の影になって在庫を見落としてしまう」といった致命的な問題が発生するからです。

置くものが決まっていない場合、これから増やしていく場合

基本サイズである「45cm」または「60cm」のどちらかを選択してください。

一般的な大人の腕の長さ(前へ倣えをしたときの長さ)は約60〜70cmですので、60cm以内の奥行きであれば、奥までしっかり目視でき、手作業での出し入れもスムーズになります。

※120cmの奥行きは、後述する「両面取り」で前後の両側からアクセスする場合にのみ採用する特殊なサイズです。

スタッフの平均的な「身体サイズ(身長・腕の長さ)」と「部品の形状」の2つを考慮して棚のスペックを選ぶことが、負担をかける無理な動きと無駄な動き(ロス)をなくす第一歩です。

作業性と効率化を左右する通路の幅

作業人数と台車幅別の通路幅目安。60cmは1人がギリギリ、90cmは1人がスムーズ、120cmは2人がすれ違い可能な広さ。

通路幅の基準を決める際は、通路を歩く「人間の肩幅」だけでなく、現場で使用する「手押しのカートや台車の幅」までしっかり計算に入れる必要があります。

作業人数と台車幅で使い分ける!通路幅60cm・90cm・120cmの目安

倉庫の通路は、広すぎると棚を置くスペースが削られて保管効率(収納力)が落ちてしまいます。

逆に狭すぎると、スタッフ同士や台車が行き違うたびに立ち往生したり、お互い道を譲り合ったりして作業効率が著しく低下します。

肩幅・台車の幅

  • 一般的な成人の肩幅:約45〜50cm
  • 手押しカートや軽量台車の幅:45〜65cmくらい

これらが現場で交錯しないための具体的な通路幅の目安として、以下の3つの基準数値を使い分けましょう。

通路の幅特徴最適な利用シーン
60cm人間1人、または台車1台が通るのが限界の幅この幅では、スタッフ同士や台車のすれ違いは不可能です。そのため、頻繁に行き来しない「最も奥にある棚同士の間」や「デッドスペース」にのみ適用し、極力通路面積を削りたい場所に有効です。
90cm台車(幅45〜65cm)を転がしながらでも、その横をもう1人のスタッフが横を向いて通り抜けられる幅作業スタッフ2人お互いをかわしながらすれ違うことも可能なため、一般的なピッキングエリアの「標準的な通路幅の基準」として最もおすすめの数値です。
120cm台車を押したスタッフ同士が正面から行き交っても、減速することなくノンストレスで安全にすれ違える幅入荷場から各棚へ続くルートや、中央を貫く幹線通路など、最も交通量が多い「メインのピッキング 動線」に最適な幅です。

上記のように、各通路の「交通量」や「台車の有無」に合わせてこれら3つの数値を正しくレイアウトにはめ込むことが、無駄のない空間設計のコツです。

作業効率を高める高さ別の在庫配置ルール

棚のサイズや通路幅が決まったら、次は「棚のどの高さに・何を置くか」という在庫配置のルールを明確にします。これを徹底するだけで、探す時間・しゃがむ時間が減り、作業者の負担とピッキング速度は劇的に向上します。

部品倉庫の高さ別在庫配置ルール。180cm以上は軽くて低頻度の部品、130〜180cmは手が届きやすい部品、60〜130cmは最頻出のメイン部品、60cm以下は重いものを配置する。

手作業よる保管では、「出荷頻度(回転率)」と「重量」の2つの軸で高さを割り振ることが棚の中に何を保管するかを考えるコツ。

高さ60〜130cm:最も出し入れがスムーズ

棚の中で最も価値が高いのが、床から「60cm〜130cm」の間です。

このエリアは人間の目線に入りやすく、直立したまま、かがんだり背伸びをしたりせずに最も部品を見やすく取りやすい、身体的負担が一番少ない特等席だからです。

このスペースには、全在庫の中で「最も頻繁に使用・出荷する、回転率の高い部品」をできる限り優先して配置しましょう。ピッキング作業の大部分がこの高さだけで完結するようになれば、作業スタッフの疲労度は大幅に軽減されます。

最上段(180cm〜)と最下段(〜60cm)の使い分けルール

体勢に無理がかかる上下のスペースには、安全面と重量のバランスを考慮した「リスクの低い物品」を割り当てるのが鉄則です。

最下段(床〜60cm:重量物スペース)

ここには、どっしりとした「重たいもの」を配置します。

重いものを高い場所に置くと落下の危険がありますが、最下段であれば安全です。

ただし、頻繁にかがむと腰を痛める原因になるため、できる限り「出荷頻度の低い重いもの」に限定するのが現場改善のポイントです。

最上段(180cm〜:低出庫頻度スペース)

ここには、万が一の落下時にも大怪我につながらない「軽くて、あまり動き(出荷頻度)の無いもの」を配置します。

無駄な動線を無くし歩数を減らすための棚レイアウトを実現する4つのコツ

最後に、手作業の現場で「保管スペースを減らしつつ、収納力とスピードを維持する」ための、具体的な倉庫のレイアウトの基本的な4つの設計テクニックをご紹介します。

物流動線は「一筆書き」が基本!入り口と出口を分ける

倉庫内のピッキング動線は、基本的に入庫側と出庫側を「一筆書き」をイメージして設計します。

その理由は、スタッフや台車同士が同じ通路で正面から鉢合わせ(交錯)してしまうと、その都度ブレーキがかかって大きなタイムロスになるからです。

一筆書きレイアウト

上の図のように、動線を一方通行の「ワンウェイ型」や「Uターン型」にします。

空間設計として、保管倉庫の「入り口」と「出口」は必ず分けましょう。

入口は「受入場の近く」に配置し、出口は「供給先(製造業であれば現場、卸売業や小売業であれば出荷場)」の近くに配置して完全に分離するのが理想です。

棚は背中合わせに置く両面取り

今回のレイアウト改善で最も大きな効果を生むのが、棚の配置方法です。

棚の配置には、棚の後ろから入れて前から出す「片側取り」と、棚の前側からのみ入れて前から出す「両面取り」の2種類があります。

片面取りと両面取りの違い

手作業の部品倉庫では、基本的に「両面取り(背中合わせ配置)」に統一してください。

棚を背中合わせに配置して前面のみを通路にすることで、本来棚の裏側に必要だった無駄な通路を丸ごとカットできます。

シミュレーション(棚の奥行き60cm、通路幅90cmで計算)の結果がこちらです。

 

通路の数を50%近く削減することができます。

棚を両面取りで配置することで通路数を50%削減できる

 

 

倉庫全体の占有面積を最大30%も削減(保管効率を最大化)できることが分かっています。

両面取りで幅を30%削減できる

まさに「保管能力はそのままで、現場のスペースを減らす」ための大本命のテクニックです。

ちなみに、「片面取り」は、入庫とピッキングを分けることができ、先入れ先出しが容易なので、作業場への部品供給などに役立ちます。

棚をびっしり並べずスキマを作って逃げ道を確保

敷地が広い倉庫の場合、スペースがもったいないからと長い棚を中抜けなしでびっしりと一列に並べてしまいがちです。

しかしこれは逆効果です。スタッフが「隣の通路にある別の棚」へ移動したいときに、わざわざ列の端まで大回りしなければならず、累積すると膨大な歩行ロス(時間の無駄)が生まれるためです。

特に広い倉庫では、棚の列の途中に適度な「スキマ(中通路)」を空けて、スタッフや台車が通り抜けられる「逃げ道」を作ってあげましょう。

棚をスキマなくびっしり並べずに、スキマを分ける

これにより、どの棚からでも目的の棚へ最短ルートでアクセスできるようになり、ピッキングのフットワークが格段に軽くなります。

④ 誤ピッキングを防ぐ「照明の配置」

見落とされがちですが、非常に重要なのが照明の位置です。

倉庫内や棚の奥が暗いと、部品の類似した品番やロット数の見落とし、カウント間違いといった「誤ピッキング」を引き起こす原因になります。

照明器具は、棚の真上ではなく、必ず「通路上部」に並ぶように配置してください。

棚の真上に照明があると、棚自体が光を遮ってしまい、肝心の収納スペースや通路に濃い影ができて真っ暗になってしまいます。

通路と棚の正面をしっかり照らす位置に光を配置することが、作業ミスをゼロに抑えるインフラ的な基本条件です。

まとめ:最適な棚と通路幅で倉庫作業現場の生産性を最大化しよう

手作業主体の現場における倉庫 レイアウト 効率化の鍵は、現場で動くスタッフの「身体サイズ」や「台車の幅」といったリアルな数値に徹底的に合わせることにあります。

「保管スペースを減らしつつ、保管能力は落とさない」という一見難しそうな課題も、今回ご紹介した以下の具体的なステップで確実にクリアできます。

  • 棚の高さは無理のない180cmを基準にする
  • 通路幅は台車幅(45〜65cm)を考慮し、交通量に応じて60cm・90cm・120cmを使い分ける
  • 棚を背中合わせにする「両面取り」で、通路面積を最大30%カットする
  • 動線は交錯のない「一筆書き」にし、棚の列には適度な「逃げ道」を作る

まずは明日、メジャーを片手に現在の倉庫の「通路幅」と「棚の高さ」を測ることから始めてみてください。

現場の作業スタッフが安全かつ主役としてスピーディーに動ける、最高の部品倉庫を構築しましょう!

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