業務システムのカスタマイズの最適化｜費用対効果の見極め方

業務システムの導入を検討する際、あるいは既存のシステムを改修する際に必ず議論になるのが「カスタマイズ」です。

カスタマイズとは、「自社の業務に合わせて使いやすくする」ために、既存のシステムの機能を修正するまたは、元々無い機能を追加することです。

今のやり方に合わせて使いやすくしたいという思いは当然ですが、安易なカスタマイズはコスト増を招き、システムの複雑化の原因になります。

実際に、これまで500社以上の相談を受けてきた経験では、システムを自社に合わせてカスタマイズをしたものの、「システムが使い物にならない」といった事例が本当に多いです。

システムが業務に合わない！といって、何でもかんでも今の業務に合わせるカスタマイズは、『システムの導入が失敗する定石』と言っても過言ではありません。

そこで、本記事では、システム導入を支援の中で見てきた成功例と失敗例の経験から、業務システムのカスタマイズがそもそも必要なのか？

そして、カスタマイズする場合の最適化を必要性を見極めるための考え方を解説します。

なぜカスタマイズを検討するのか？

多くの企業が業務システムのカスタマイズを検討するのは、既存のパッケージソフトの標準機能だけでは、自社の独自の業務フローや要件に対応しきれないと感じるからです。

例えば、次のような要望が出てくることがあります。

• 独自の帳票フォーマットを使いたい
• 特定の業務プロセスに特化した機能を追加したい
• 他システムとの連携をよりスムーズに行いたい

これらの要望に応えるためにカスタマイズは有効な手段となりえます。

ちょっと待って！そのカスタマイズは本当に必要？

しかし、カスタマイズを行う前に立ち止まって考えるべきことがあります。

1. 標準機能で本当に対応できないのか？
   • システムの標準機能を深く理解していますか？設定の変更や、業務フローの一部の見直し（標準化）で対応できる可能性はありませんか？
2. カスタマイズによって得られる効果は？
   • カスタマイズによって、どれだけの業務効率化やコスト削減が見込めますか？その効果は、カスタマイズにかかる費用に見合うでしょうか？
3. 将来的な影響は？
   • 一度カスタマイズを行うと、システムのバージョンアップが困難になったり、追加の保守費用が発生したりする可能性があります。長期的な視点での影響も考慮する必要があります。

標準機能と個別開発、あなたの会社にとっての最適解

業務システムの導入・改修の選択肢として、「標準機能の活用」と「個別開発（カスタマイズを含む）」があります。

それぞれにメリットとデメリットが存在するため、自社の状況に合わせて最適な選択をすることが重要です。

標準機能活用のメリット・デメリット

• メリット
  • 導入コストを抑えられることが多い
  • 比較的短期間で導入できる
  • ベンダーによるサポートやアップデートが受けやすい
• デメリット
  • 自社の業務フローに完全に合致しない場合がある
  • 独自の要件に対応できないことがある

個別開発（カスタマイズ）のメリット・デメリット

• メリット
  • 自社の独自の業務フローや要件に完全に合致したシステムを構築できる
  • 他システムとの連携など、柔軟な対応が可能
• デメリット
  • 導入コスト、保守費が高くなる
  • 開発期間が長くなる
  • バージョンアップ時の対応や保守に手間とコストがかかる

どちらが良い悪いではなく、自社の業務の特性、予算、将来的な展望などを総合的に考慮し、最適なバランスを見つけることが重要です。

まずは標準機能を最大限に活用することを検討し、どうしても対応できない部分に絞ってカスタマイズを検討するというアプローチが良いです。

「うちの会社は特殊だから」は本当？カスタマイズの最適解を見つけるために考えること

「うちの会社は特殊だから」という言葉をよく聞きます。

実は、長年の習慣やこだわりによる思い込み、担当者が業務を変えるのが面倒くさいと考えて、それを理由にどうしてもカスタマイズが必要だと思い込んでいることも多いです。

本当にその機能が必要なのでしょうか？カスタマイズを検討する前に、以下の４点を改めて考えてみましょう。

1. 1. 業界の標準的な業務プロセスは？
      • 自社の業務プロセスが、実は業界の標準的なものと大きく変わらない可能性はありませんか？標準的なプロセスであれば、システムの標準機能で十分にカバーできるかもしれません。
   2. 業務プロセスの見直しはできないか？
      • システムの仕様に合わせて、既存の業務プロセスを見直すことはできないでしょうか？業務プロセスを見直すせば、カスタマイズの必要性がなくなります。
        業務プロセスを変えたくないと感情的に拒むのではなく、業務プロセスを変えると「何が起こるのか？」を考えてみると良いでしょう。
   3. 本当に「今」カスタマイズが必要なのか？
      • 導入当初は標準機能で運用を開始し、運用していく中で本当に必要な機能が見えてくることもあります。
        在庫管理110番が支援したケースでも、クライアント様がどうしても開発が必要！とこだわってカスタマイズして導入したものの、運用を始めてみると、結果的に使わなかった機能というものも存在します。「まずは小さく始める」という考え方も重要です。
   4. 本当に「システムに組み込む」必要があるのか？
      • システム化＝全てをシステムに組み込む必要はありません。費用対効果が低い、または現状で本当の意味でうまく回っているのであれば、アナログやエクセルを使った方法でも構いません。
        在庫管理110番が支援したケースでも、在庫管理のシステム化に合わせて「ピッキング作業でタブレットを使いたい」という要望がありましたが、業務プロセスから考えると、どう考えてもオーバースペックでした。そこで、紙の帳票を使った方法を提案。結果的に、紙の帳票で全然問題ありませんでした。

ムダなカスタマイズを無くすポイントは標準化

「うちの会社は特殊、うちの会社だけ」という思い込みにとらわれず、客観的に自社の業務を見つめ直すことが、無駄なカスタマイズを防ぐ第一歩となります。

業務プロセスを見直して標準化することを考えてみましょう。

段階的カスタマイズという選択、小さく始めて効果を検証する

最初から大規模なカスタマイズを行うのではなく、「段階的カスタマイズ」という考え方があります。

1. まずは標準機能で運用を開始する
2. 運用していく中で課題や要望を明確にする
3. 優先度の高いものから小さくカスタマイズを実施し、効果を検証する

このアプローチのメリットは、

• 初期投資を抑えられる
• 実際にシステムを利用しながら、本当に必要なカスタマイズを見極められる
• 小さいカスタマイズで効果を実感できれば、その後のカスタマイズへのモチベーションにつながる

段階的に進めることで、リスクを抑えながら、より費用対効果の高いカスタマイズを実現することができます。

まとめ

業務システムのカスタマイズは、適切に行えば業務効率化に大きく貢献しますが、安易に行うとコスト増やシステム複雑化のリスクを招きます。

本記事でご紹介した考え方を参考に、自社にとって本当に必要なカスタマイズを見極め、費用対効果の高いシステム運用を目指してください。

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