製造業で多品種少量生産を採用(自然とそうなった)している企業は多いです。
しかし、多品種少量を維持しつつ、生産性を確保し、欠品も不良在庫も少なく抑えるといったことができている中小企業は少なく、どうやったらいいのか分からないという声を良く聞きます。
話を聞くと、うちは他と違って特殊だから・・・という回答を聞きます。(どんな会社に聞いてもほぼ100発100中でこの回答です!)
特殊だから=うちにはできなくても仕方がない=うちは悪くない。
という思考になり、問題から目を背けます。
実は、多品種少量生産がうまくいかない原因は、その会社独特の問題や特殊性ではなく、どの会社にも当てはまる共通の問題があります。
そこで、本記事では、多品種少量生産を成功(生産性を確保しつつ、適正在庫を維持)させるための方法を解説します。
多品種少量生産とは
多品種少量生産とは名称のとおり、「多くの種類の製品を、少量生産する」ことをいいます。
昭和時代の一般的な生産方式といえば、「少品種大量生産」です。
名称のとおり、少ない品種を大量に生産することを指します。
しかし現代では、以前にも増してユーザーのニーズが多様化しています。
そのため、従来の「少ない種類の製品をたくさん作るやり方」では、ユーザーニーズに対応しきれないという課題が浮き彫りになっているのが現状です。
こういった問題を解決するため、あらゆる企業がこの「多品種少量生産」を取り入れています。
目次
多品種少量生産を成功させるための6つのコツ
多品種少量生産は、コツを押さえれば成功率を大きくアップさせることが可能です。
成功させるためのコツは、主に以下のようなものが挙げられます。
- 作業環境を整える
- 受注分析をする
- 高使用頻度の部品を多めに確保する
- 在庫の精度を95%以上に保つ
- 生産計画を取り入れる
- 生産管理を導入し、指示と進捗を一元管理する
それぞれ解説しますので、ぜひ参考にしてください。
作業環境を整備する
またムダな時間を1秒でも省くために、段取りや組み立て手順をマニュアル化したり、必要な工具や機械を用意し、適所に移動させることも効果的です。
工程の流れ(部品の納入から製品の出荷までの動線)を一筆書きに配置することも、流れをスムーズにしていったり来たりを無くして無駄な時間を無くすコツです。
動作経済の原則を学び、それに基づいて現場を見てみると課題が見つかります。
受注分析をする
毎回どの製品が、どのくらいのペースやパターンで受注してるのかを分析・分類します。
現場や営業の「勘」で生産するもの、生産数を決めず、データによって、意思決定をする方法に切り替えていきます。
高使用頻度の部品を多めに確保する
受注分析をすれば、どの部品が多く使われているかもわかってくるでしょう。
部品の発注も適切に行い、過剰在庫、欠品を防ぎます。
在庫の量はメリハリを付けて、使用頻度の高い部品や材料を多めに確保することも、成功のコツのひとつです。
余裕を持って在庫を蓄えておくことで、注文を受け次第、いち早く製造に取り掛かることが可能になります。
ただし多品種少量生産においては、ひとつの品種の注文が多くないため、あまりに多くの在庫を抱えると、廃棄コストがかさむ恐れもあります。
そのため、どの製品がどのくらいのペースで受注するのか、パターンを分析しておくことは必須です。
在庫の精度を95%以上に保つ
いくら在庫をたくさん持っていても、在庫が合っていないと意味がありません。
多品種少量では、高い在庫の精度が必須です。
目標値は、在庫精度95%(在庫差異率が5%以下)です。
生産計画を取り入れる
場当たり的な生産ではなく、生産計画を立てます。
次のような状態は、生産計画があるとは言えません。
- おおよその生産数だけを伝えて、あとは現場にお任せ・・・(※生産計画は、会社全体で共有すべきものです)
- 都度、生産内容を変更している(生産計画は、決まった期間を固定し変えないもの)
生産計画を立てるためには、正しい在庫情報、部品の発注残・納入予定、生産進捗の把握が少なくとも必要です。
生産管理を導入し、指示と進捗を一元管理する
生産管理を導入し、生産統制を一元管理できる仕組みを取り入れます。
大手製造業と中小企業の製造組織体系で、最も違うのは生産管理部門の有無です。
中小企業では、生産数を少しでも上げるため、生産に関わらない生産管理はもったいないという意識が強いです。
しかし、現場を見てみると、生産管理の無い工場では、現場の人が生産以外のことをしている時間がかなり長いです。
ある工場で生産性が上がらないという依頼を受けて調査してみたところ、就業時間8時間のうち、現場の人が実際に生産に関わっている時間がわずか2時間・・・
という衝撃の事実でした。
生産管理が合ったほうが統制が効き、生産数を上げることが可能です。
大企業が生産管理部門を整備しているのは、人員が余っているからではなく、生産管理が合ったほうが「生産数も生産性も上がる」という理由があるからです。
多品種少量生産のメリット
多品種少量生産には、以下のようなメリットがあります。
- 多様化するニーズに対応できる
- 過剰在庫を避けられる
それぞれ見ていきましょう。
多様化するニーズに対応できる
多品種少量生産のもっとも大きなメリットといえるのが、多様化するニーズに対応できることです。
例えば、サブアッセンブリを仕掛品として持ち、受注に応じて必要なパーツを組み込む方法をとることで、従来の大量生産には難しかった柔軟性の向上を実現しています。
たとえばAppleの公式サイトでは、ユーザーはPCを買う際にメモリやストレージの容量を自由に選択できます。
その注文に応じて組み込むプロセスも、多品種少量生産の代表例といえるでしょう。
過剰在庫を避けられる
多品種少量生産のもう一つのメリットとなるのが、過剰在庫を避けられることです。
従来の少品種大量生産では、決められた種類のものを大量生産することから、大量の在庫を抱える必要がありました。
さらに、売れなかったものは破棄することを余儀なくされてしまいます。
一方の多品種少量生産は、「必要なものを必要な分だけ製造する」という方針の製造方式です。
在庫を大量に抱える必要がないので、過剰在庫をなる心配を軽減できます。
流行り廃りの激しい現代において、理にかなった生産方式といっても過言ではありません。
多品種少量生産のデメリット
多品種少量生産には、次のようなデメリットも存在します。
- 発注・管理コストが上がる
- 生産効率が下がる
- 多様な作業スキルが求められる
- 欠品と在庫が増える
それぞれ順を追って解説します。
発注・管理コストが上がる
コストの向上は、多品種少量生産のいちばんのデメリットといえます。
「必要なものを必要な分だけ生産する」という特性から、材料や部品の仕入れを少量ずつ行う必要があり、発注に手間がかかるからです。
また多品種を扱うということは、必然的に管理する材料や部品の数も増えます。
その観点から、管理コスト増加も避けられないことはデメリットといえるでしょう。
生産効率が下がる
生産効率が下がってしまうことも、多品種少量生産のデメリットのひとつとなります。
作る製品の種類が増えれば、必然的に設備を増やしたり、段取り替えなどによって生産ラインを調整する必要が出てくるためです。
そうなれば、作業時間が減ってしまうことから、生産効率は多少なり下がってしまいます。
多様な作業スキルが求められる
主に作業員にとってのデメリットになりますが、多様な作業スキルが求められることも挙げられます。
作る品種が増えれば、作業員が覚えるプロセスや部品の種類も増え、困惑を招いてしまう可能性も否めないからです。
作る量を増やすよりも、作る品種が増えることのほうが負担が大きいのが現実。
従業員が作業に慣れるまでには、ある程度の時間を確保する必要があるでしょう。
欠品と在庫が増える
統制の無い、行き当たりばったりの勘と経験の多品種少量生産は、
- 必要なものが無い
- あると思ったものが無い
- 昔のものが倉庫から出てきた
など、欠品と過剰在庫の温床になります。
現代において多品種少量生産が重要な理由
多品種少量生産が重要視されている理由は、前述した「ユーザーニーズの多様化」も大きいでしょう。
しかし理由はそれだけでなく、以下のようなものも挙げられます。
- インダストリー4.0が注目されているから
- マスカスタマイゼーションの実現が重要視されているから
インダストリー4.0とは、ドイツ政府が進めている「IT技術を導入し、工場を徐々に自動化させていこう」という方針・取り組みのことです。
マスカスタマイゼーションとは、従来の「少品種大量生産」の生産性やコストを維持しながら、多品種少量生産を実現する考え方・取り組みのことをいいます。
つまり「IT技術を導入し、多品種少量生産に対応していきましょう」というのが社会の流れです。
また、日本は世界と違って、少子高齢化や従業員の賃上げが加速しています。
少ない人員、少ない知識(ベテランが少ない)で、これまで以上の成果を上げなければいけないという待った無しの状況に追い込まれているのが日本です。
IT技術を導入し、生産性の高い多品種少量を実現するのは、日本の製造業の生き残る道です。
生産管理システムを導入する
多品種少量生産の成功させるためには、生産管理システムの導入は必須です。
これまで説明したことを、人力でやるのは不可能ですし、データが無いと絶対に進められません。
導入することで、ラインの調整や注文内容の確認、在庫容量の管理といった、現場のあらゆる業務を一元管理および自動化、さらにデータの蓄積ができるようになります。
まとめ
多品種少量生産を成功させる6つのコツをご紹介しました。
- 作業環境を整える
- 受注分析をする
- 高使用頻度の部品を多めに確保する
- 在庫の精度を95%以上に保つ
- 生産計画を取り入れる
- 生産管理を導入し、指示と進捗を一元管理する
昭和と同じ生産方法はもう通用しません。昔とは環境が違いすぎます。
商品から見ると、競合も多く、商品寿命も短いです。
経営環境からみると、少子高齢化で、採用しづらく、ひとりが長く勤める保証もなく、ベテランが育ちにくい。しかも賃上げ圧力が強い。
現場に任せる生産はやめ、生産管理部門を導入し、情報の共有と一元管理化を進めるのが多品種少量生産を成功させるためには必要です。
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現代では多くの企業に多品種少量生産が求められていますが、実際のところ生産管理システムなどのIT技術と併用しないと、成功は困難です。
多品種少量生産を確実に成功させたいのであれば、在庫管理110番にぜひご相談ください。
在庫管理110番では、現場の改善のコンサルティングとシステムの提供が同時に可能です。
つまり、現場の実務に即した仕組みづくりを、改善とITの両面から進められるということです。
成長する在庫管理システム
世の中には生産管理システムがたくさん存在しています。
しかし、在庫管理110番が相談を受けた企業様で、生産管理システム使いこなせている企業は0%でした。
「生産管理システム」自体は、悪いものではなく使いこなせばそれなりにしっかりと動くものばかりです。ではなぜ、そのような問題が起こるのでしょうか?
その理由は、次の2点に集約できます。
- 生産管理システムの機能で一体何ができるかを理解していない
- 生産管理システムに必要な情報の設定やメンテナンスができていない
自社の生産管理習熟レベルと、システムの持つ機能レベルに大きな乖離があり、ついて行けていないからです。
システム会社が「○○を設定すればできますよ」というのは正論ですが、「○○を設定する」という業務があなたの会社に存在していなければ使いこなすことは絶対に無理です。
在庫管理110番の専門家は、あなたの会社の実務レベルに合わせて、システムの機能を提案します。したがって、あなたが理解できる範囲、現状の業務の範囲内で生産管理システムを構築できます。
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