「うちの会社、生産管理システムを入れたいんだけど、予算がなくて...」
こんな悩みを抱える中小企業の経営者や現場責任者は少なくありません。
専用システムの導入は高額な投資が必要で、二の足を踏んでしまうのも無理はありません。
そこで注目したいのが、身近なツール「エクセル」を活用した生産管理システムです。
「えっ、エクセルで生産管理ができるの?」
そう思った方も多いでしょう。
実は、工夫次第でエクセルは強力な生産管理ツールになるんです。
目次
エクセルのメリット - 使い慣れた道具で始められる
エクセルの最大の魅力は、会社で使用しているパソコンに導入されていることがほとんどで、多くの人が日頃から使い慣れているという点です。
新しいシステムの操作を一から覚える必要がないので、導入のハードルがグッと下がります。
「でも、本当に使えるの?」という疑問に答えるため、エクセルで作る生産管理システムの具体例を見てみましょう。
実践!エクセルで作る生産管理表
まずは基本的な生産管理表から始めましょう。
以下の項目を含めるとよいでしょう:
1. 製品名
2. 生産数量
3. 納期
4. 作業工程
5. 担当者
6. 進捗状況
これらの項目を縦軸に並べます。
セルの色分けや条件付き書式を使えば、進捗状況が一目でわかるようになります。
例えば、進捗状況に応じて以下のように色分けすることができます:
- 未着手:白
- 進行中:黄色
- 完了:緑
- 遅延:赤
また、条件付き書式を使用して、納期が近づいている項目を自動的にハイライト表示することも可能です。
この表では、
- 製品ごとに行を分け、作業工程ごとに詳細を記載しています。
- 生産数量と納期は製品ごとに設定しています。
- 作業工程は各製品で共通の4段階(設計、部品調達、組立、検査)としています。
- 担当者は各工程に1名ずつ割り当てています。
- 進捗状況は「完了」「進行中」「未着手」の3段階で表しています。
ガントチャートで生産管理の進捗を視覚的に把握できる
ガントチャート(Gantt chart)は、プロジェクト管理において計画や進捗を視覚的に示すためのツールです。
横軸に時間を、縦軸にタスクや活動を配置し、各タスクの開始日と終了日を棒状のバーで表現します。
各予定や生産の全体像を視覚的に理解しやすく、スケジュール感や進捗状況を一目で把握することができます。
エクセルの機能を使えば、簡単にガントチャートを作成できます。
生産管理にガントチャートを使用する場合は、
各製品の各工程の開始日、終了日、期間を視覚的に表現します。
エクセルの条件付き書式を使えば、現在日付を基準に、遅延している作業を赤く表示するなど、さらに視認性を高めることができます。
(上記のガントチャートでは、条件付き書式を使って遅延している工程の日付をグレーに、各工程の進捗率をグレーで示しています)
これにより、プロジェクト全体の進捗を簡単に把握できます。
このようなガントチャートは、単純な工程管理には極めて有用です。
しかし、大規模なプロジェクトや複雑な工程管理には限界があるので、専用の生産管理システムの導入を検討するのが良いでしょう。
さらに一歩進んで、在庫管理や部品表の管理、原価計算の機能を追加することも可能です。
VLOOKUPやSUMIF関数を使えば、データの自動計算や参照が簡単にできるようになります。
生産進捗管理表に使えるガントチャートをご用意しました。無料でダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
ほかにも在庫管理に役立つフォーマットを多数ダウンロードできます
エクセルのマクロを活用して自作する
もっと複雑な生産管理をしたい、「毎日同じ作業の繰り返しで、時間がもったいない...」
そんな悩みを解決してくれるのが、エクセルのマクロ機能です。
ボタン一つで日報を作成したり、在庫データを更新したりできるようになります。
VBAの知識が必要で、最初は難しく感じるかもしれませんが、徐々に覚えていけば大きな味方になってくれます。
エクセルの弱点 - 注意点も忘れずに
便利で使いやすいエクセルにも次のような弱点はあります。
- 大量のデータを扱うと処理が遅くなる
- 複数人での同時編集が難しい
- セルに埋め込まれた関数などを誤って消してしまう
- 誤ってファイルを削除してしまう
これらの問題を回避するには、定期的なバックアップや、アクセス権限の設定が欠かせません。
また、データが大きくなってきたら、古いデータを別ファイルに移すなどの工夫も必要です。
Accessを使用して生産管理システムを自作する
エクセルは表計算ソフトなので、大量のデータの保管・操作が不得意です。
一方、Access(アクセス)はデータベース管理に特化しており、大量のデータの保管・操作が可能です。
Excelよりも少ない工数でシステムの自作が可能で、入力ミスやシステムエラーを防ぎやすいのが特徴です。これにより、より効率的な生産管理が実現できます。
ただし、Accessにはエクセルには無い特有の機能を覚える必要があるため、少しハードルが上がるでしょう。
Accessを使って生産管理システムを作るためには、
- データベースの設計:テーブルの作成とリレーションシップの設定
- フォームの作成:データの入力や検索、表示をするためのフォームを作成する
- クエリの設定:特定の条件に基づいてデータを抽出・操作できます。(例えば、在庫が一定量以下の製品をリストアップする)
- レポートの作成:データの視覚的なレポートを作成します。(例えば、生産状況の報告書や在庫状況のレポートの生成)
Accessは小規模組織に最適
Accessには「共有モード」という機能があり、同時に複数人が同じファイルを操作を可能です。
ただし、Accessも一人で使用することを想定して設計されたソフトなので、同じファイルを使用する場合は小規模(~5人くらい)くらいにとどめておいた方が良いでしょう。
データが反映されなかったりなどエラーが発生する場合があります。
セキュリティ面の注意点
生産管理データは、企業の運営に直結する重要な情報を含むため、外部からの不正アクセスや内部の情報漏洩を防ぐ必要があります。
エクセルやアクセスで自作した場合は、自分達でセキュリティ対策をしなければいけません。主な注意点は以下の通りです。
- ウィンドウズアップデート:ウィンドウズアップデートを行い、常にWindowsを最新に保ちます。
- セキュリティソフトの導入:ウイルスやマルウェアからデータを守るために、信頼性の高いセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保ちます。不正プログラムの侵入やデータの破損を防ぐことができます。
- アクセス権限の管理:ユーザーごとにアクセス権限を設定し、機密情報へのアクセスを制限します。例えば、データの閲覧、編集、削除などの権限を役職や業務内容に応じて細かく設定し、不必要なデータ操作を防止します。
- データの暗号化:保存されるデータや通信されるデータを暗号化することで、外部からの盗聴やデータの改ざんを防ぎます。エクセルは、シートやセルをパスワードで保護を施できます。Accessもパスワードを使用してデータを暗号化できます。
- 定期的なバックアップ:ファイルが突然壊れたりしてこれまでのデータの損失を防ぐために、定期的にバックアップを行います。クラウドストレージや外部ハードディスクを使用して、定期的にデータをバックアップし、万が一のトラブルに備えます。
将来を見据えて - 専用システムへの移行
「事業が大きくなってきたら、エクセルじゃ限界がある」
そう感じる時が来るかもしれません。その時こそ、専用の生産管理システムの導入を検討するタイミングです。
エクセルで管理していた時期のデータや経験は、新しいシステムを選ぶ際の貴重な判断材料になるはずです。
専用システムへの移行を検討する際のポイント:
- 現在の業務フローを詳細に分析し、必要な機能を明確にする
- 将来の事業拡大を見据えて、スケーラビリティのあるシステムを選択する
- クラウド型システムの導入で、初期投資を抑えつつ最新機能を利用する
- 自社の生産形態にあった、自社に最適なシステムを選定する
エクセルは生産管理を始めるのに最適なツールですが、事業規模が大きくなるにつれて限界も見えてきます。
その時こそ、クラウド型システムへの移行を検討するタイミングです。
エクセルで培った経験を活かしつつ、より効率的な生産管理を目指すならクラウドシステムがおすすめです。
生産管理システムの導入は難しい
残念ながら、生産管理システムを導入してうまく運用できている会社はごく稀です。
生産管理システムというよりは、「生産指示書発行機」になっているケースが多いです。
その原因は、
- 自社の生産形態にあわないシステムを選定している
- システムの機能が多すぎて理解できていない
- 自社の運用レベルに合わないシステムを選定している
- 今までの管理方法を引きずっていてシステムを利用していない
システム会社は、たとえあなたの会社が自社のシステムにあっていないとしても、「正しい設定や運用をやることを前提で」様々な見栄えの良い便利機能を見せて何とか導入にこぎつけようとします。
「自動化」だったり「○○業界向け」という言葉には特に気を付けましょう。
成長する在庫管理システム
成長する在庫管理システムは、生産管理機能が導入できるシステムです。
製造業で生産管理を担当していた実務を知る専門家が、あなたの会社の課題と業務体制、情報整備状況を考慮してあなたの会社の課題を解決し、かつきちんと扱えるシンプルなシステム構築をご支援します。
低コストで自社に必要な機能を持ったシステムが導入できる