改正下請法|5つの改正ポイント

下請法が改正されたらしいけど、何がどう変わったのか正確に把握できていない・・・
自社の取引が、新しい法律で違反にならないか心配・・・
知らないうちに違反して、会社の信用を落としたくない・・・

 

2025年5月16日に、改正下請法が可決・成立しました、さらに2026年1月には改正法の施行(一部の規定は公布の日から施行)も控えています。

これまで以上に親事業者の対象になる業者には、コンプライアンス遵守が厳しく求めらます。

従来の商習慣を続けていると、意図せず指導・勧告の対象になり、企業の信用を大きく損なうリスクが高まっています。

実際に、2024年は下請け法違反の勧告数が過去最多でした。

うちは大丈夫、関係ないと放置するのは非常に危険です。

 

そこでこの記事では、今回の法改正のポイントと、親事業者が今すぐ確認すべき注意点を解説します。

この記事を読めば、法改正の要点を正確に理解し、自社の取引に潜むリスクを洗い出せます。

【現役弁護士が解説】中小企業も対象になります!

下請法改正の背景

近年の労務費、原材料費、エネルギーコストの急激な上昇を受け、「物価上昇を上回る賃上げ」を実現するため、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図ることを目的としています。

取引の公正化と下請事業者の利益保護という既存の法目的に加え、価格転嫁を阻害する商慣習の一掃と取引適正化を目指しています。

なお、今回の改正に伴い、親事業者や下請事業者という言葉が無くなります。

  • 親事業者→委託事業者
  • 下請事業者→中小受託事業者

ちなみに、下請法の正式名称は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」になります。

5つの改正ポイント

今回の主な改正は以下の5点です。

  1. 協議を適切に行わない代金額の決定の禁止
  2. 手形払等の禁止
  3. 運送委託の対象取引への追加
  4. 従業員基準の追加
  5. 面的執行の強化

それぞれ詳しく解説します。

協議を適切に行わない代金額の決定の禁止

対等な価格交渉が確保され、コスト上昇局面における価格据置きへの対応を図ることが目的です。

(新第5条第2項第4号関係)

改正下請法|協議を適切に行わない代金額の決定の禁止

これまでは、価格を下げる(利益を削る)、対価引き下げ型が対象でした。

しかし、これからは、コストアップに見合わないことが対象となる「コスト上昇型」も対象になります。

つまり、原価が上昇したにもかかわらず、中小企業からの申し出があったにもかかわらず、

  • 価格を据え置きする
  • 価格上昇を拒む

といったような価格転嫁を阻害することが禁止されます。

委託事業者は、適切に協議に応じて、必要な説明を行う必要があります。

手形払等の禁止

中小受託事業者の資金繰り負担の軽減が目的で、発注者が受注者に資金繰りの負担を求める商慣習が続いている現状を是正するためです。(新第5条第1項第2号関係)

下請法改正|手形払等の禁止

 

委託事業者(親事業者)は、以下のような支払手段が禁止されます。

  • 手形払い
  • 支払期日までに代金に相当する金銭(手数料等を含む満額)を得ることが困難な支払手段(電子記録債権、ファクタリングなど)

補足

委託事業者(親事業者)は、給付を受領した日(役務の提供を受けた日)から60日以内でなければいけません。

支払期日の起算日はあくまで成果物の「受領日」なので、締め日では無いことに注意が必要です。

上記は、下請け業者から請求書の提出の有無に関わらず受領後60日以内の定めた支払期日です。

つまり、下請事業者の請求書の提出が遅れたとしても、期日内に支払いが必要です。

運送委託の対象取引への追加

立場の弱い物流事業者が荷役や荷待ちを無償で行わされている問題(荷主・物流事業者間の問題)に対応することが目的です。(新第2条第5項、第6項関係)

運送委託の対象取引への追加|下請法改正

発荷主が元請運送事業者に対して物品の運送を委託する取引が、本法の新たな対象類型として追加されます。

補足

在庫管理の現場でも、荷役や荷待ちを行わせているケースが多いです。

その原因を見ると、荷物を受ける、または出荷する業者の業務が「属人化」していることが非常に多いです。

属人化した業務の見直しのためにも、在庫管理システムの導入は有効な手段です。

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従業員基準の追加【新第2条第8項、第9項関係】

従業員基準の追加|下請法改正

従来の資本金基準に加え、従業員数(製造委託等で300人、役務提供委託等で100人)が適用基準として追加されます。

これは、実質的に事業規模が大きいにもかかわらず資本金が少ないために法の対象とならない事業者や、適用を逃れるために受注者に増資を求める行為に対応するためです。

補足

従業員数が少なくても、資本金が1千万円を1円でも超えていれば、委託事業者に該当します。

自社は従業員数の少ない中小企業だから関係ないと思っている会社は一度、自社の資本金を確認することをお勧めします。

面的執行の強化

事業所管省庁の権限を強化し、事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限が付与されます。

これによって、中小受託事業者が「報復措置の禁止」の申告先として、事業所管省庁の主務大臣を追加し、申告しやすい環境を確保されます。(新第5条第1項第7号、第8条、第13条関係)

 

現行法では、事業所管省庁(「トラック・物流Gメン」など)に調査権限のみが与えられているが、十分な連携ができない状態だったため。

その他の改正事項

重要な5つの改正事項に加えて、次の4チェンも押さえておきましょう。

  • 製造委託の対象物拡大:製品作成に用いられる木型や治具等も、金型と同様に製造委託の対象物に追加されます。(実は、金型保管が下請法一番多い違反です。木型や治具が追加されたことで、より摘発が増える可能性があります。)
  • 電磁的方法による情報提供:書面等の交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、必要的記載事項を電磁的方法により提供可能となります。(この改正は、委託事業者のコスト削減(郵送コストの低減や事務作業の効率化)が進みます)
  • 減額に対する遅延利息:代金を減額した場合も遅延利息の対象となり、減額した日から60日を経過した日から実際に支払をする日までの期間について遅延利息を支払う義務が生じます。(不良品などの返品や減額についても注意が必要です。)
  • 勧告に係る規定の整備:違反行為が既に是正されていた場合でも、再発防止策などを勧告できるよう規定が明確化されます

委託事業者(親事業者)にはより厳格な管理が求められる

今回の下請法の改正によって、委託事業者はより厳密な管理が求められます。

公正取引委員会も活発に動いており、実際に2024年は、21件で過去20年で最多となっているそうです。

下請法違反の勧告21件、過去20年で最多 金型を無償で保管させる

上記の件数は、一見少ないように見えますが、

指導の件数は1年間で8000件を超えており、返金額は2024年度の場合だと、約13億円となっています。

こんな取引は要注意

資本金が1千万円を1円でも超えている企業は以下のような取引を行っていないかを一度確認してみてください。

  1. 金型や治具、木型などを保管してもらっている。(24年度で一番多かった違反の多かったもの)
  2. 支払いサイトが2か月(支払い期限60日を超える可能性がある)
  3. 取引業者が、伝票無しで納品することがある(受領した時点から支払い期日は起算されます)
  4. 取引業者の請求書の出し忘れが多い(受領した時点から支払い期日は起算されます)
  5. 口約束(書面の発行が義務付けられています)
  6. 検品無しで不良品を返品、または代替品を要求している(検査を行わない場合は、不可)

たとえ、長年、取引のある業者で了承を得ていたとしても、法律は許してくれません。

中小企業も下請法に関する知識が必要

大企業では、従業員に「下請法研修」を行っているところが多く、一定の知識を持っていることが多いです。

中小企業は下請法=大企業が対象になるものと思い込みがちですが、そうではありません。

記事の冒頭で解説した通り資本金が1千万円を1円でも超えていれば対象です。

 

知らなかったでは許してもらえません。

たとえ、会社間で合意が得られていたり、昔からの慣習で行っていたといっても取り合ってもらえず下請法に違反していたら処分されます。

 

そこで、お勧めなのが現役弁護士による下請法セミナーです。

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法律は専門用語や特有の回りくどい表現も多いため、解釈や理解しづらいのではないでしょうか?

また、今回のような大改正だけではなく、小規模な改正は常に行われているため一般企業が情報を追い続けるのは難しいです。

 

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  • 検収をせずに受入をしている・・・
  • 伝票無しで納品を受け付けている・・・
  • 担当者がエクセルで管理している・・・

など、危ないな~と思う会社の共通点は、アナログな方法や属人的な管理が残っている会社です。

現場の担当者は、「法律は会社が考えること、自分には関係無い」と思いがちで情報管理が雑になりやすいです。

しかし、一度違反をしてしまえば、遅延金の支払い、信用を失う、場合によっては取引の停止等、リスクが非常に大きいです。

在庫管理システムを導入することで、重要な情報を一元管理できるだけではなく、より正確な在庫管理ができるので過剰在庫や欠品を減らすこともできます。

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また、今回の記事内容を踏まえ、自社に最適な販売管理システム選びや、在庫管理を含めた業務全体の最適化についてご検討の際は、お気軽にご相談ください。

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