「毎日必死に働いているのに、なぜか利益が残らない…」
「売上は上がっているはずなのに、資金繰りが楽にならない…」
「どこから手をつければ経営を立て直せるのか、もうわからない…」
もしあなたが今、このような「闇の中を手探りで進むような感覚」に陥っているなら、この記事はあなたのためのものです。
多くの経営者が陥りがちな「部分最適の罠」から抜け出し、事実と数字に基づいた客観的な判断で、会社を「赤字体質」から「高収益体質」へと導く具体的な方法をご紹介します。
目次
あなたの会社の努力が利益に繋がらないのは部分最適が原因
多くの真面目な経営者ほど、様々なセミナーに参加したり、専門家の話を聞いたりして、自社の経営改善に取り組んでいます。
例えば、
- 経理を固めれば会社は良くなる
- DXを進めれば利益は倍増する
- 営業研修で売上は必ず上がる
セミナー講師はその道のスペシャリストであり、これらはすべて、ある側面では正しいことです。
経営の一部を直すのも大事ですが、経営の全体像や本質を理解しないまま、部分的な改善に終始してしまい、肝心の「会社全体の利益向上」には繋がらないのです。
この「部分最適」こそが、努力が報われない最大の原因です。
まずやるべきは経営の「見える化」|事実と数字で全体像を把握
では、どうすれば全体像を掴み、正しい一手を打てるのでしょうか。
答えはシンプルです。事実と数字で自社を正しく把握すること。つまり、経営の「見える化」です。
かつて「社長の教祖」とまで言われた経営コンサルタントの一倉定氏は、「自社を正しく把握している社長は数千人に一人」と指摘しました。
言い換えれば、自社を正しく「見える化」できた企業だけが、生き残れるのです。
暗闇で刀を振り回すような経営から脱却し、どこに敵がいて、どこを攻めるべきかを知るために、まずは羅針盤を手に入れましょう。
経営の羅針盤になるのが管理会計です。
一般の財務会計との違いを表にまとめました。
財務会計の目的は、外部の人が評価することが目的なので決まったルールに基づいて一律の尺度で作らなければいけません。
一方、管理会計はあなたの会社のためのもの、つまり経営判断をするためのツールです。
特に私が提唱する管理会計は、人時生産性(S賃率)をベースとしたものです。
経営の羅針盤となる2つの武器と「商品マトリックス戦略」
経営の「見える化」には、複雑なツールは必要ありません。まずは2つのシンプルな指標に注目します。
武器1:年計グラフ
お客様からの「率直な評価」が時系列でわかるグラフです。売上のトレンドや顧客の動向を客観的に捉えることができます。
武器2:付加価値由来賃率(S賃率)
自社の「本当の収益性」を測るための最重要指標です。どの商品が、どれだけ「儲かっている」のかを時間あたりで正確に把握します。
商品分析マトリックス
年計グラフや付加価値由来賃率(S賃率)を使って作成するのが商品分析マトリックスです。
自社の商品・サービスを
- 儲かる主力商品
- 育てるべき商品
- 改善が必要な商品
- 撤退すべき商品」
などに分類することで、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)をどこに「選択と集中」させるべきかが一目瞭然になります。
「儲かる」とは?
獲得付加価値額(売上高-変動費)に対して、投入する経営資源が少ないことです。
「儲かる」を評価する指標を付加価値由来の賃率といいます。
脱・どんぶり勘定!「S賃率」で本当の儲けを把握する
本当の儲けを把握するうえで、特に重要なのがS賃率です。
これは、よく使われる「チャージ(社内レート)」とは全くの別物です。
※単位(=円/人・時間)が同じなので、混同され易いので注意が必要です。
チャージとS賃率の違い
- チャージ(原価計算):かかったコスト(費やした金額)の積み上げ。「当該製造部門費用÷作業時間」となり、経費の配賦など、どんぶり勘定になりやすい。
- S賃率(収益性判断):会社の基準となる賃率との比較で、収益性“レベル”の判断に用いることができ、商品ごとの「時間あたりの儲け」がわかる。
S賃率の算出方法(製造業の場合)
自社の「本当の収益性」を測るための最重要指標です。
S賃率=獲得付加価値額÷投入作業時間
このS賃率を商品ごと、顧客ごとに算出することで、「A商品は売れているけど実は儲かっていない」「B社との取引は手間がかかるだけで利益を圧迫している」といった、驚くべき事実が見えてきます。
この事実に基づいて、「儲かる商品・顧客」にリソースを集中し、「儲からない商品・顧客」からはリソースを引き上げる。これが、赤字脱却と高収益経営の核となる戦略です。
補足
S賃率を計算するためには、
事前に、財務会計様式を管理会計(変動損益計算)様式に組み替える必要があります。
付加価値額=売上高-変動費(外部仕入など)
営業利益 =付加価値額-固定費(内部費用)
S賃率の利点と変動損益計算方式を使う3つの利点
- 全体(全社)と個別部門・商品等がそのまま連動(共通経費配賦の必要なし)※1年間で確保しなければならない付加価値額を、(年間の)想定作業工数で稼ぐ
- 商品・顧客個別の収益性確認と今後の対策構築および具体化容易 ※事実(付加価値、工数)のみで構成され、原価計算のような裁量情報がないため
- 価格設定や見積根拠がS賃率から逆算できるので妥当でありかつスムーズ
まとめ:事実に基づけば、打つべき手は自ずと見えてくる
経営とは「これからどうするか」を決めることです。そして、そのヒントは過去の実績、つまり「事実と数字」の中にしかありません。
孫子の兵法に「彼を知り己を知れば、百戦殆うからず」とあるように、経営では「顧客を知り(市場評価)、己を知る(自社の収益性)」ことで、負けない経営が実現できます。
やみくもな努力や、部分的な改善策に時間とコストを浪費するのは、もう終わりにしましょう。
まずは自社の「S賃率」を算出し、経営の「見える化」から始めてみませんか?事実に基づいた羅針盤があれば、あなたの会社は必ず高収益経営へと舵を切ることができます。