総枠管理と単品管理を実践する
管理手法の総枠管理と単品管理について解説します。
これは私が海外の販売会社で実際に企画、推進したものです。
20年以上前のものですが、まだ十分に通用する方法です。
目次
在庫管理のことなら何でもご相談ください
総枠管理と単品管理とは?
総枠管理とは、会社全体や事業部、商品カテゴリーなど、複数の商品や品目をグループ単位で一括して在庫を管理する手法です。
金額をベースとした管理が多く、会社や事業部などの目標設定、進捗管理(例:目標の○○%達成)などに使用します。
一方、単品管理とは、1つ1つの商品を管理することです。
日々の入出庫の管理、発注、安全在庫の算出、需要予測などが単品管理の一例です。
それぞれの違いを簡単に表でまとめました。
項目 | 総枠管理 | 単品管理 |
---|---|---|
管理対象 | 商品群やカテゴリごとの在庫総量 | SKU(単一品目)ごとの在庫 |
管理頻度 | 月次や週次など定期的 | 日々の在庫管理 |
目的 | 簡易で迅速な全体把握 | 正確な在庫把握と個別の需要対応 |
メリット | 管理が簡単、低コストで導入が可能 | 欠品や過剰在庫を抑制し、正確な発注が可能 |
デメリット | 細かい在庫情報の不足、欠品リスクがある | 管理に手間がかかり、コストが高い |
適用例 | 多品種少量生産、コスト重視の現場 | 品目数が多い、正確な需要対応が必要な現場 |
単品管理の積み上げが総枠管理となり、総枠管理を目標値に近づけるための活動は単品管理になります。
どちらが優れているということではなく互いに補完しあう存在です。
単品管理の結果を総枠管理に落とし込めるように、パワークエリなどを活用して集計や分析業務を効率化しましょう。
Power Query(パワークエリ)の使い方【実例・練習用エクセルあり】
総枠管理と単品管理の活用方法
簡単な活用方法をご紹介します。
総枠管理と単品管理は、「在庫÷翌月売上見込/実績」で計算、
総枠管理と単品管理は、いずれも金額がベースであるため、売れ筋、滞留在庫の中身がわかる。
ここでは、単品管理を商品単品ではなく、「カテゴリー」としています。
- ポイント1.総枠管理は月末の総在庫÷翌月売上原価で算出
- ポイント2.単品管理は機種ごとの回転をABCDランク付け(割合は、カテゴリー内に含まれる商品のランク)
- ランクA:回転日数30日未満
- ランクB:回転日数40-74日
- ランクC:回転日数75-119日
- ランクD:回転日数120日以上
在庫スコアカード (-12から+12まで)
ランクAB比率、ランクD比率、在庫回転日数、売上の4項目
- 単品管理(質的管理)は、前月との改善度合いを評価
- 在庫回転日数は計画に対して達成度合いを評価
- 売上に関しては、市場動向に合わせて達成度合を評価
管理による改善結果(5か月)
- 売上構成比の高いカテゴリーの改善が顕著にみられました。
(全体で9カテゴリー 売上構成は5カテゴリーで8割) - カテゴリー間で競争意識が生まれ、ゲーム感覚で進めた
- 特に滞留在庫の機種は、月次棚卸後、1週間 倉庫内に開示
オフィスが倉庫内にあったため、全従業員に開示。 - 意識が変わる→習慣が変わる→結果につながる
エクセルを活用する
今回、ご紹介した単品管理と総枠管理はエクセルを使って実現できます。
在庫管理システムのデータをエクセルのパワークエリとピボットテーブルを駆使すれば、今回紹介したような集計や分析は比較的短時間でできるようになります。
総枠管理の結果を見るだけではなく、総枠管理の結果から、次月の単品管理をどうすればよいかという活発な議論も生まれます。
在庫管理110番では、データを活用するための集計・分析研修を行っています。
自社のデータを活かせるようになる!
月次実地棚卸で正しい在庫を把握する
そもそも在庫の数が間違っていると、総枠管理・単品管理の意味がありません。あくまでも在庫の精度が高い(差異が小さい)ことが総枠管理・単品管理を意味あるものにする前提です。
- 前月の議事録の確認と進捗結果報告(上記のチャートと詳細版)
- リスト配布 ※(全機種の在庫回転状況一覧 ランクABCD別)
- 現物確認
課題在庫については、担当者より説明 - 製品だけでなく、販売促進用展示在庫、販促物(カタログ、展示台等)も確認
- 数量のカウントはこの場ではしない。
在庫の見える化、在庫の質を示すのに、在庫回転は有効です。
※ 在庫回転は、リスト上、2種類を提示して、リストを配布
- 月末在庫を過去3か月の販売で割って算出した回転日数
- 月末在庫を先行1か月の販売見込みで割って算出
販売見込みは、営業/マーケティングが策定したものを使用実績が確定したら置き換えて、在庫回転確定版とする。
結果は、できれば全社員が揃う全体会議で紹介してください。
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管理の見える化と自律の見える化
ローランド・ベルガー日本法人会長の遠藤功氏のメッセージを紹介します。
在庫管理は、正に管理の見える化と自律の見える化が一体となって取り組むことが肝要です。
資産の管理状況について
あなたは会社の資産が適切に管理されているかどうかどのように確認できますか?
- 建物:破損があれば、あなたの従業員が教えてくれます。
- オフィス機器や設備:現場を管轄するスタッフが教えてくれます。
- 車両:メンテナンススタッフが教えてくれます。
- その他の資産: 弁護士が教えてくれます。
- 在庫:誰も教えてくれません。
棚卸資産を適切に管理するために必要なこととは?
- 意識改革
先ず、在庫を金額として認識することです。
時間軸を設けて、失敗を認めることです。
(楽観的な強気な買付、販売戦略の失敗、事業計画など) - 問題在庫の特定
死に筋商品を特定してください。(コスト分析を含め)
在庫評価損等の処理を進め、一掃するアクションプランを立ててください。 - 毎月、結果をフォローしてください。
- 棚卸を行い正しい在庫を把握する
- それはデータだけではなく、実際に現物で確認してください。
在庫管理は、ネットワークとフットワークです。
三現主義:現物、現場、現実
在庫管理に関するお問合せ・ご相談
今回解説した単品管理や総枠管理の導入、在庫削減、適正在庫の決め方など、在庫管理・業務改善に関するあらゆる相談を受付中です。
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中小企業でも実践できる!