倉庫のどこに何があるか、担当者しか分からない 、部品を探すために、毎日現場を走り回り時間を浪費している、高い在庫管理システムを入れたのに、在庫の数が合わない・・・・
もしあなたの会社の現場がこのような状態なら、それは整頓されていないことが原因になっている可能性が高いです。
整頓は在庫管理において、基本中の基本で絶対にやっておかなければいけないことです。
5S活動の要である「整頓」の正しい意味から、現場の生産性を劇的に向上させるための具体的な手法「3定管理」まで、実務に即したノウハウ、そして維持する方法まで詳しく解説します。
在庫管理の改善がなかなか進まない、特定の人ではなく誰でもわかる倉庫にしたいという方は、ぜひこの記事を見て取り組んでみてください。
- 整頓の前に必ずやらないといけない「整理」
- 整頓は、「3定」を軸に進める
- 品番は、一物一品番にする。
- 場所は、会社が持っている保管場所の広さで決める
- 表示は、シンプルに!必要な情報だけを盛り込む
目次
整頓とは「探すムダをゼロにする仕組み」である
私はセミナーやコンサルティングの現場で整頓とは何をすることでしょう?と質問することが多いですが、言葉は知っていても、正しく理解していることが少ないのが現状です。
そこで、まず「整頓」の定義をお伝えします。
整頓とは 「必要なモノを、必要な時に、必要なだけ、誰でもすぐに取り出せる状態にしておくこと」
家庭での「片付け」との決定的な違いはここにあります。
家庭の片付けは「見た目の美しさ」や「収納」が目的になることが多いですが、倉庫や工場における整頓の目的は、徹底的な「効率化(スピード)」の追求です。
「誰でもできる」がゴール
熟練の担当者ならすぐに見つけて取り出せるが、新人がやると時間がかかる、は「整頓」されている状態とは言えません。
今日入ったばかりの新人や、急に応援に来た他部署の人間であっても、「迷わず、探し回らず、取り出せる」状態を作ること。これが整頓のゴールであり、これを実現することで企業の生産性は大きく向上します。
実際に私が支援した会社の物流センターでは、棚卸の際に支店・営業所から人員をかきあつめて、1日かけて棚卸をしていましたが、整頓実施後は、棚卸時間を50%短縮することに成功しました。
高価なシステムを導入しなくても、現場の生産性を急激に改善できるのが整頓の力です。
整頓できていない状態が引き起こす3つのムダ
現場が整頓されていないと、経営に直結する3つの大きなムダが発生します。
- 探す時間のムダ(生産性の低下)
「あの部品どこだっけ?」と探す時間が1日合計30分あるとします。従業員が10人いれば、毎日5時間分の人件費をドブに捨てているのと同じです。整頓はこの「探す時間」をゼロにします。 - 作業ミス・事故の発生(安全性の低下)
通路にモノがはみ出していると、転倒事故やフォークリフトの接触事故を招きます。また、置き場所が決まっていないと、類似品を取り違える「誤出荷」や「部品の組み付けミス」の原因になります。 - 在庫管理の不備(コストの増大)
モノの置き場所が決まっていないと、在庫があるのに見つけられず追加発注してしまう「二重発注」や、逆に在庫切れに気づかない「欠品」が発生します。これらは直接的な金銭ロスにつながります。
整理と整頓の違い
現場改善は5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が欠かせません。
なかでも整理と整頓は5S活動の核になる改善活動です。
整理と整頓は、「整理整頓」とひとまとめにされがちですが、この2つは全く異なるアクションであり、行う順番(整理をしてから整頓)が極めて重要です。
- 整理:不要なモノを「捨てる」こと
- 整頓:置き場所を決め、迷わず、探し回らず、取り出せる状態にすること
失敗する現場の共通点は、「整理」を飛ばして「整頓」から始めてしまうことです。
整頓の前に必ず整理を行う
整頓するためには、スペースが必要です。
不要なゴミや何年も使っていない在庫が混ざった状態ではおきたい場所に置きたいものがおけません。 まず「整理」で不要なものを徹底的に排除し、スペースを確保した上で、初めて「整頓」の効果が発揮されます。
整理のやり方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
生産性を上げる「整頓」の具体的な進め方とコツ
実際にどのように現場を整頓すればよいのでしょうか。精神論ではなく、物理的に現場を変えるための具体的なフレームワークが「3定(さんてい)管理」、「表示(ラベリング)」です。
3定管理
3定とは、整頓するために絶対に必要な3つの要素です。
- 定品(ていひん):何を置くか決める
その場所に置くべき「現物」を決めます。 - 定位(ていい):どこに置くか決める
モノの「住所(ロケーション)」を決めます。 - 定量(ていりょう):何個まで置けるかを決める
無限に置くことはできません。最大何個まで置いてよいか?といった基準を決めます。
3定の詳しいやり方はこちらをご覧ください。
表示(ラベリング)
3定の状態を誰でもわかるように表示や区画を使って見える化します。
棚札
保管品自体または、品番の容器などに、品番・品名などを書いた表示を貼り付けて、保管しているものが「何であるか?」を特定できるようにします。
写真を使った表示(類似品対策)
特に、見分けがつきにくい類似品は、特徴が分かりやすいように現物の写真などを使用して、誤保管・誤ピッキングを予防します。
棚番地(ロケーション)の明示
倉庫の棚に「A列-3段-2番」といった住所(番地)を振り、ラベルを貼ります。在庫管理システム上のデータと現物の場所を紐付けます。
整頓を維持し「仕組み化」する方法
整頓で最も難しいのは「維持すること」です。
忙しいからとりあえずここに置いておこう、すぐに出荷するから保管場所に入れるのが面倒・・・
一度きれいにしても、一週間後には元通り……という事態を防ぐために、精神論で「きれいに使おう」と言うだけでは定着しません。具体的なルールを設け、見える化を実施します。
とりあえず置きの禁止
必ず決めた置き場に置くこととを徹底して、それ以外の場所においてある「とりあえず置き」は絶対に認めてはいけませんし、見逃してはいけません。
置き場に置く時間がもったいないと思うかもしれませんが、探している時間の方が間違いなく多いことに気づきましょう。
5Sパトロールの実施
定期的に管理者が現場を回り、3定が守られているかチェックします。
私の支援先では、整頓の維持徹底ができているかどうかを確認するために、毎日終業時に倉庫の写真を撮ってもらっていました。
ビフォーアフターの掲示
改善前と改善後の写真を現場に掲示します。「自分たちの職場がこれだけ良くなった」という実感(成功体験)が、維持するモチベーションにつながります。
まとめ
この記事では、整頓の状態を実現するためにやるべきことを解説しました。
整頓は、単なる片付けではありません。
今日入ったばかりの新人や、急に応援に来た他部署の人間であっても、「迷わず、探し回らず、取り出せる」状態であることです。
整頓を実施して維持することは、作業効率を最大化し、従業員の過度な業務負担を減らし、会社の利益に直結します。
まずは「整理」で不要なものを捨て、次に「3定」でモノの住所を決めることから始めてみてください。整頓された現場は、間違いなくあなたの会社を強くします。
整頓について自分で学ぶ

在庫管理110番では、あなたご自身で在庫管理の基本を学べるように、在庫管理の教科書を御用うしており、今回解説した整頓は、現品管理で詳しく勉強できます。
在庫管理の教科書は、次の全4巻です。
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