工場のIoTの失敗しない導入手順と具体的な方法

近年IoTは、製造業においてもその存在感を増しています。

工場の生産性向上、コスト削減、品質管理の向上、見える化など、IoT技術はさまざまな面で大きな効果を発揮しています。

しかし、IoTの導入は一律ではなく、各企業の状況や目標に応じて異なります。

そこで今回は、製造業におけるIoTの普及状況とその具体的な導入方法について詳しくご紹介いたします。

この記事を読むと分かること
  1. IoTがもたらす7つのメリット
  2. 製造業におけるIoTの普及状況
  3. 失敗しないIoT導入のステップ
  4. 【難易度別】IoT導入を導入する6つの方法

些細なことでも遠慮なくご相談ください!

そもそもIoTとは?

IoTの基礎知識

IoT(Internet of Things)とは「モノのインターネット」を意味し、さまざまなデバイスや機器がインターネットを介して相互に通信し、データをやり取りする技術を指します。

つまり、IoTは物理的な世界にインターネットのようなネットワークを拡張し、さまざまなデバイスをつなげ、情報を収集・処理・共有することで、幅広い領域で革新的なサービスや機能を実現する技術です。

 

具体的には、センサーやアクチュエーターを含むさまざまなデバイスがインターネットに接続され、リアルタイムのデータ収集や制御が可能になります。

これにより、生産ラインのモニタリング(見える化)、スマートホームの自動化、社会のインフラ管理、医療機器のリモートモニタリング等、さまざまな応用が実現されます。

 

IoTの基本的な仕組みは、デバイス間やデバイスとクラウドサーバーの間での通信です。

センサーからのデータ収集、クラウド上でのデータ処理、そして応用ソフトウェアやアプリケーションを通じたデータの利用などが含まれます。

 

工場は昔からIoTが使われている?

製造業では、昔からセンサーを使った品質チェックやFA(ファクトリーオートメーション)の機器等があり、自動化されていました。

例えば、生産ラインに赤外線センサーなどをつけて、生産の完了数をカウントしたり、検査したりする技術が昔からある自動化技術です。

ただ、過去の自動化技術は、「その場」のみのデータでした。先ほどの例だと生産数は転記したり、データを取り出してパソコンに取り込むなどの付帯作業が必要でした。

 

IoTが従来の自動化技術と違う点は、インターネットを通じて機器同士のデータの連携、データの共有化、一元管理が可能になることです。

 

IoTがもたらす7つのメリット

IoTの導入には多くのメリットがあり、特に製造業をはじめとするさまざまな分野でその効果が顕著に現れています。

以下に、IoTの導入によって得られる主な7つのメリットを詳しく説明します。

 

生産効率の向上

  • リアルタイムモニタリング
     IoTデバイスは機器や設備の稼働状況をリアルタイムで監視し、データを中央システムに送信します。
    これにより、機械の稼働率や生産速度を常に把握でき、迅速な対応が可能です。
  • 自動化の推進
     IoT技術を利用して生産ラインの自動化を進めることで、手動作業の削減や生産プロセスの最適化が可能になります。
    これにより、作業効率が向上し、コスト削減につながります。

コスト削減

  • 予知保全
     センサーやIoTデバイスを用いて機器の状態を監視し、故障の予兆を検知することで、計画外のダウンタイムを削減できます。
    これにより、メンテナンスコストの削減が可能です。
  • エネルギー管理
    IoTデバイスはエネルギー使用量をリアルタイムで監視し、エネルギーの無駄を削減します。
    これにより、エネルギーコストの削減が期待できます。

 品質管理の強化

  • リアルタイム品質監視
     IoTセンサーを使用して製品の品質をリアルタイムで監視し、不良品の早期発見と迅速な対応が可能になります。
    これにより、品質のばらつきを最小限に抑えられます。
  • トレーサビリティの向上
    製品の製造過程を詳細に記録し、トレーサビリティを向上させることで、問題発生時の迅速な原因究明やリコール対応が可能になります。

安全性の向上

  • 従業員の安全管理
     ウェアラブルデバイスや環境センサーを使用して、作業環境や従業員の健康状態をリアルタイムで監視します。
    これにより、労働環境の改善や事故の防止が図れます。
  • 危険エリアの監視
     IoTカメラやセンサーを設置することで、危険エリアの監視を強化し、異常発生時には即座にアラートを出すことができます。

データ駆動型の意思決定

  • データ分析とインサイトの提供
     IoTデバイスから収集されたデータを分析することで、経営層や管理者は生産のボトルネックや改善ポイントを特定し、データに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。
  • リアルタイムフィードバック
    現場のデータをリアルタイムで分析し、フィードバックを即座に現場に返すことで、継続的な改善(カイゼン)を実現します。

顧客満足度の向上

  • カスタマイズ生産
     IoTを活用することで、顧客のニーズに応じたカスタマイズ生産が容易になり、顧客満足度を向上させることができます。
  • 製品のトラッキングとサポート
     製品の使用状況をIoTでモニタリングし、顧客に対して適切なサポートやメンテナンスサービスを提供することが可能になります。

新しいビジネスモデルの創出

  • サービスの提供
    IoT技術を利用して、製品の利用状況に基づいた新しいサービスを提供することができます。
    例えば、機器の稼働データに基づくメンテナンスサービスや、使用量に応じた料金設定などが考えられます。
  • データの活用
    IoTから得られるデータを活用して、マーケティング戦略の強化や新商品の開発に役立てることができます。

 

製造業におけるIoTの普及状況

「他社はどこまでIoT化を実現しているの?」というお問い合わせをよく受けます。

実際のところ、製造品・製法・規模によって状況はさまざまです。

しかし、成熟している業界や大量生産を行っている工場では、IoT技術がかなり発展しています。

日本で「IoT」という言葉が使われ始めたのは2016年頃と言われていますが、IoT技術が発展している企業は2000年前後から現場のIoT化や見える化を早期に進めていました。

これらの企業がどのようにIoT化を進めてきたかを簡単に説明します。

 

最初は生産性改善のための局所的な見える化からスタートしていました。

そして、工程間の相互通信や自動制御が可能になり、企業によってはAIによる自動補正機能まで実現しています。

一方で、2020年現在でも100人を超える現場作業者がいる企業の中には、現場のIoT化が進んでいない企業も存在します。

このように、状況は対照的です。その理由は何なのでしょうか?

 

実態として、IoT化を進めたいが進め方が分からない企業が多く存在します。

IoT化が進んでいない企業に現場で行っている改善方法をヒアリングすると、現場でストップウォッチを持ってサイクルタイムを計測するという昔ながらの実態調査を行っているケースもありました。

対照的に、IoT化が進んでいる成熟した企業(自動車業界など)では、理想とするスマート工場にかなり近づいているのが現状です。

各業界の導入事例はこちらの記事で紹介しています。

自社の導入イメージを持つためにぜひご活用ください。

【関連記事】
【事例】重量IoTの導入(オフィス・飲食店・宿泊施設)

 

失敗しないIoT導入のステップ

「理想のIoT化とは?」と聞かれたとき、皆さんは何を想像しますか?

私の考える理想は、経営層が工場のリアルタイム情報を瞬時に把握し、最適な意思決定をゲームのように行えることです。

 

もちろん、この“理想”は人や立場によって異なります。

しかし、製造業における「品質・納期・コスト」の最適化に関わることは、どの立場でも共通の目標といえます。

この理想を実現するためには、次のステップが必要です。

 

1.現場の情報をデータベースで収集する
まずは、現場の生産実績値をIoT化し、データベースに収集します。

  • センサーとデバイスの設置: 適切な位置にセンサーやIoTデバイスを設置し、データ収集の準備をします。
  • データベース構築: 収集したデータを蓄積するためのデータベースを設計・構築します。

2.実績値を見える化する
収集したデータを、瞬時に理解できるような値やグラフで見える化します。

  • ダッシュボードの作成: 視覚的にデータを表示するためのダッシュボードを作成し、関係者が簡単にアクセスできるようにします。
  • アラート機能の設定: 異常値や重大な変化があった場合にアラートを発信する機能を設定します。

3.工場のシステム化を図る
見える化を繰り返し行い、設備だけでなく、作業者の行動も含めて工場全体のシステム化を進めます。

  • 作業フローの最適化: データに基づいて作業フローを見直し、最適化します。
  • 自動化の推進: 可能な部分は自動化を進め、作業効率を向上させます。

4.リアルタイム情報を連携し、計画情報と実績を可視化する
最後に、生産、販売、在庫などの管理システムと現場のリアルタイム情報を連携させ、計画と実績の情報を統合して可視化します。

  • システム統合: 各種管理システムとIoTシステムを統合し、一元的に管理できるようにします。
  • データ分析とフィードバック: 集積したデータを分析し、改善点をフィードバックする仕組みを構築します。

この第4ステップまで達成できれば、経営的な判断がリアルタイムで可能になります。

一般的にIoT化といわれるのは、このステップ1~2に該当しますが、真のIoT化にはさらに先のステップが必要です。

このように、理想とするIoT化は一朝一夕で達成できるものではなく、段階的な取り組みが重要です。

それぞれのステップをしっかりと進めることで、最終的に理想的なIoT化が実現できます。

 

【難易度別】IoT 6つの導入方法

もし、あなたの会社がこれからIoT化を進めたいと考えているなら、さまざまな方法があります。

ここでは、これからIoT技術の導入を目指している企業様向けに、代表的な手法を難易度の低い順にご紹介します。

  1. IoT機能付きの機器からデータを収集する
  2. 現行システム(ハンディ端末/オペレータ端末)からデータを収集する
  3. 外付けのセンサー(ラズベリーパイなど)からデータを収集する
  4. 設備付属の制御PCからデータを収集する
  5. タッチパネルからデータを収集する
  6. 設備PLCからデータを収集する

下にいくほど難易度は高まりますが、導入できればそれ相応のメリットが得られます。

上記の方法を導入するには、難易度に関わらず仕様検討から導入までの準備が必要です。

また、多くの工程・設備がある工場では、それぞれの工程や設備ごとに適した方法を導入する必要があります。

大切なのは、いずれの手法にもメリット・デメリットが存在し、自社の工場に適したIoTを検討・推進することです。

 

私がIoT化をご提案する際の大前提は、「従業員の負担を0.1秒でも増加させない」ことです。

例えば、製品や中間品ができるたびに作業者がボタンを押してサイクルタイム情報を取得するような方法は、IoT化として不適切です。

 

このような場合には、次のようなIoT手法を考えるべきです。

  • マットスイッチによる位置情報の取得
  • 光センサーによる作業完了情報の取得
  • カメラによる作業完了情報の取得
  • 音センサーによる作業完了情報の取得
  • 付属PLCや前後コンベアからの作業完了情報の取得

 

これらの機器を用いて、誤作動が最も少ないセンサーを選び、サイクルタイムを取得するべきです。

このように作業性を考慮しながら実験し、横展開していくには相応の時間がかかります。(もちろん、簡単にできる方法もありますので随時ご紹介します。)

導入コストコストと作業効率のバランスを考えて導入を進めます。

 

まとめ

以上、製造業におけるIoTの普及状況とその具体的な導入方法についてご説明しました。

導入においては、工場の規模や設備、予算に応じて適切な手法を選択し、徐々に進めていくことが重要です。

 

また、作業者の負担を増加させないことを前提に、センサーや自動化技術を適用することが求められます。

各企業が自社の現状を見つめ、適したIoT化を進めることで、品質、納期、コストの最適化を目指すことができます。将来的には、リアルタイムで工場全体の情報を把握し、迅速な意思決定を行えるスマート工場の実現を目指しましょう。

 

IoT化は改善効果のあるところから少しずつ!

私はさまざまなセンサーを用いて、実際に自動車業界の現場でIoT化を導入し、その改善を行ってきました。

私が関わった企業は、20年以上にわたり現場のIoT化やスマート化を継続し、現在も進めています。

その結果、作業者・設備・工場・サイズ・直などの条件に基づいて、サイクルタイムや品質の比較分析が可能となり、省人化・品質改善・生産性改善・トラブル削減などのさまざまなメリットを獲得してきました。

 

IoT化は、一度に大規模に進めるのではなく、改善効果が見込める部分から少しずつ取り組むことが重要です。

先ほどご紹介した4つの導入ステップと、6つのIoT化の方法を参考に、少しずつ取り組んでみてください。

 

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