輸入品の関税は、企業の利益を左右する重要なコスト要因のひとつです。特に、輸入量が多い企業にとっては、関税の適切な管理が利益率の向上につながります。
また、最近は関税を取引材料にした国同士の争いも無視できず、急にコストアップになり、利益が一気に吹き飛んでしまう可能性もあります。
大手企業のように貿易や国際税務に関する専門部門の無い中小企業では、対処方法が分からずそのまま泣き寝入りになってしまうケースも多いようです。
関税は、商品を輸入するたびに発生する費用なので、チリも積もれば山になる大きなコストです。
そこで、本記事では、輸入品の関税を削減する方法について詳しく解説します。
国際税務の専門家が相談にのります!
目次
関税とは?
関税とは、海外から輸入される商品に課せられる税金のことです。国ごとに関税率は異なり、同じ商品でも輸入元の国によって関税率が変わることがあります。
関税には以下の種類があります。
- 従価税:商品の価格に対して課される関税(例:10%)
- 従量税:商品の数量や重量に応じて課される関税(例:1kgあたり500円)
- 混合税:従価税と従量税を組み合わせた関税
輸入品の関税を削減する5つの方法
関税を削減する5つの方法をご紹介します。
FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)の活用
FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を利用することで、関税の削減または免除を受けることができます。
外務省のホームページによると、日本は24か国・地域と21のEPA・FTAなどが発効・署名済みです。(令和7年1月現在)
締結国との取引があれば、関税を減らせる可能性があります。
多くの企業様は、EPA・FTA締結国から輸入すれば自動的に関税は安くなるんだと思いがちですが、
実際はEPA・FTA締結国から単純に通常通り日本へ輸入しているだけでは関税は下がりません。
EPA・FTAを利用した関税の削減方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
HSコードの適正化
HSコード(Harmonized System Code)とは、国際的に統一された貿易品目の分類コードで、貨物を輸出入する際の品目分類に用いる輸出入統計品目番号です。
HSコード(統一関税コード)が異なると、関税率が変わる場合があります。
乙仲業者や通関士に丸投げしている場合は注意が必要です。
自社の商品に適用されるHSコードを正しく分類することで、より有利な関税率を適用し、関税を下げることができるかもしれません。
保税制度の活用
保税倉庫や保税工場を活用すると、輸入時点での関税を一時的に免除することができます。
保税倉庫
関税を支払わずに保管できる倉庫です。保税倉庫に認定されるには、税関の許可を取得し、適切な管理体制を整える必要があります。一般的な要件には、厳格な在庫管理、税関への定期報告、適切なセキュリティ対策の実施などが含まれます。
自社で用意ができない場合は、保税倉庫を保管場所として活用することも視野に入れましょう。
保税工場
未納税の状態で加工・組み立てができる施設。保税倉庫と同じように認定が必要です。
門司税関の資料が分かりやすくまとまっていますので、興味をお持ちの場合はぜひご覧ください。
加工貿易の活用
一部の国では、輸入品を国内で加工・組み立てして再輸出する場合、関税が免除される制度があります。中国や東南アジアの国々では、こうした制度を利用することでコスト削減が可能です。
一部の国では、輸入品を国内で加工・組み立てして再輸出する場合、関税が免除される制度があります。これは、加工後に輸出されることを前提としており、国内市場での消費を目的としないためです。
関税が免除または削減される代表的な制度は以下のとおりです。
- 加工貿易優遇制度:様々な優遇措置がありますが、有名なのが主に発展途上国などに設置される「輸出加工区」です。設置する国の雇用増大、技術導入、外貨獲得を目的として輸入関税や法人税などの税制の優遇があります。
- 関税還付制度(ドローバック制度):輸出品製造に用いるために輸入した材料に係る関税納付額が払い戻される制度です。
中国や東南アジアの国々では、こうした制度を利用することでコスト削減が可能です。企業は事前に適用条件を確認し、適切な手続きを行うことで、関税負担を大幅に軽減することができます。
低関税国を経由する
同じ商品でも輸入経路によって関税率が異なることがあります。低関税国を経由して輸入することで、関税負担を軽減できる場合があります。
例えば、A国からB国に輸出したい場合、A国とB国がFTAなどの税制優遇協定を結んでいない場合は、高関税になります。
しかし、B国と協定を結んでいるC国を経由(A国→C国→B国)することで、関税を下げることも可能です。
実際に、中国は、アメリカへの輸出をFTAを締結しているメキシコを経由することで、低関税で自動車部品を多く輸出していました。
関税削減のためのアクションチェックまとめ
ここまで解説した5つの関税削減のアクションを簡単にまとめると次のようになります。
- FTA/EPA適用可否の確認:取引先の国との間にFTA/EPAが適用されるか確認
- HSコードの見直し:関税コードを最適化
- 保税制度の利用検討:保税倉庫や工場を活用できるか検討
- 加工貿易の可能性を探る:現地での加工・再輸出が可能か調査
- 輸入経路の見直し:関税の低い国を経由する方法を検討
関税を削減する方法は1つではありません。上記を複数組み合わせることで、輸入コストを削減できる可能性があります。
輸入コストが下がれば、結果的に利益が増大します。輸出入の多い企業はぜひ、今回紹介した方法を活用して関税削減を実現してください。
輸入品のコスト削減を専門家に相談する
大手企業のように貿易部門や通関士資格を持った担当者がいれば、その業務に時間を割くことは可能です。しかし、中小企業の場合はそういった部門や担当者がいないことが多く、余計な関税を支払っている可能性が非常に高いです。 下記のようなお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
- 自社の関税率が適切なのかを知りたい
- 関税を削減したい
- 適正な移転価格が知りたい
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