エクセル販売計画表で過剰仕入、適正値付けでキャッシュフローを改善

仕入販売計画ナビシート

今回ご紹介するエクセル販売計画書仕入れ販売計画ナビシートは、流通業界一筋40年以上の実務経験者が考案したものです。

実際に、80億円までふくれあがった在庫を、仕入れ販売計画ナビシートを使って70%削減し25億円まで減らした実績があります。

システム不要!エクセルだけで使える

皆さんの会社(お店)ではどのように値下げを決定したり管理していますか?
私が知っている例では、会社で決まった毎月の値下げ金額予算があり、何かの商品を値下げしたい場合、その範囲内で値下げが承認されているケースです。

値下げは会社の利益を削るものですから、予算は潤沢にある訳ではありません。
早いもの勝ちで使われ勝ちで、後発の値下げが出来なくなることも発生します。

時には会社の表面上の利益達成見込みを優先するあまり、「一律な値下げストップ」という指示が出たりします。

しかしこのような値下げの制限というのは、売る機会を自ら喪失する事です。当然売上のダウンと高い価格のままの不良在庫という次期への大きなツケを残すこととなります。

仕入れた商品が当初の価格のまま売切れれば値下げの必要もありません。しかし現実はそれ程甘くありません。

 

エクセル販売計画で値下げしても利益を確保

私が開発したエクセル販売計画「仕入販売ナビシート」を使えば、

簡単にわかるいつ、いくらに値下げをすれば、利益とキャッシュがどれくらい増えるのかがわかります。

今回は、このエクセル管理表を使って、効果的な値下げシュミュレーションを行う方法を解説します。

実際にこの表を使って改善を推進、不良在庫を発生させない仕組みを作り、数十億円規模のキャッシュフローを改善した実績があります。

 

仕入の段階で値下げシュミュレーションが重要

当初の価格で売り切るのが難しいのが現実的に難しいということが想定できるなら、

理想よりしっかりと現実を見ておかなければいけません。

商品を仕入れるに当たって、本来は当初の仕入れ販売計画の段階で売切りの為の値下げを盛り込んでおかねばいけません。

そこで今回は、仕入れ販売計画ナビシートを使ってケーススタディを3つのシュミュレーションを行いました。

今は2020年11月30日、緊急営業会議真っ最中です。

当初売れると見込んでいた商品が計画の30%しか売れていなからです。

今議論されているのは9月から販売開始した多機能防寒コートの今後の展開です。

下は当初の販売計画(2020年9月~2021年2月)と実績(2020年9月~11月)です。

販売計画と実績値

当初の販売計画との乖離が70%と非常に大きいため、このままでは計画通りに売れない可能性が高いため、今回の営業会議で対応を検討し、上層部に見込み値の提出をします。

上層部としてはコロナの影響で全般的に販売が不振でもあり、出来るだけ値下げを抑制して利益高を確保したい意向です。

商品の情報は以下の通りです。

  • この商品は9月から販売を開始している
  • この商品は昨年から人気急上昇の撥水、防風、防寒等の多機能を備えていて商品力がある。
  • 仕入原価は、6000円で価格は10,000円(昨年より3割ほど安い)
  • 販売計画(シーズン末の2月末までの計画)は、仕入れた1000枚を完売し、売上高600万円、粗利益高見込400万円

ところが、9~10月の売れ数は、

9月20枚、10月30枚、11月100枚、合計150枚でした。

計画の500枚の30%しか売れていない・・・という状況です。

売れない要因として考えられることは、

昨年の人気商品だった為、競合各社も類似の商品を品揃えしてきた。

価格は当社と同様か多少安い価格で販売している事が考えられます。

そこで考えたのが、3つの販売計画です。

  1. Aプラン:値下げをせずに販売を継続する販売計画
    値下げせずに当初価格で販売継続する
  2. Bプラン:価格競争に負けないため価格を大きく割り引販売計画
    値下げをして競合に対抗するプラン
  3. Cプラン:価格を随時値下げしてでも売り切る
    売り切るために値下げを随時行う販売計画

さて、あなたはどのプランが良いと思いますか?その理由も考えてみてください。

この3つのプランを仕入れ販売計画ナビシートを使ってそれぞれを具体的に検証します。

 

プランA:値下げをせずに販売を継続する(問題先送り型)

値下げせずに当初価格で販売継続する

そのまま2月末まで値下げ無しで販売する計画をシュミュレーションした結果です。

最終見込みは、売上高:650万円、差益高(粗利益高)260万円と当初計画の65%です。

メリットとしては値下げ原資を使わなくてよい事です。

 

プランAのような選択は実際に起こりがちです。なぜなら報告するにあたり一番耳触りが良い(差し障りがない)からです。その時点での見込み値は会社の意向に沿った形で提出できますが、問題先送りで実情に目をつぶってた選択です。

12月以降は回復する計画になっていますが、競合店との価格競争に負けている訳なので12月以降売れるはずがありません。したがって合計の売上高見込も、差益高見込もAプランで提出した数値とは大きく異った見込値となるのは必至です。9~11月の実績を織り込んで、販売数が減ってしまうとうことを予測値として入れてみます。

販売実績と予測値との乖離

注目してほしいのは2月末の在庫数です。
実勢予測では当初1000枚仕入れたにもかかわらず、シーズン末に750枚も残る見込みです。

これが意味することは2つあります。

仕入投資が回収できない

1000枚の仕入れに600万円支払ったのに、手元に入った金額(売上)は250万円です。

キャッシュフローを見ると次のようになります。

値下げせずに価格維持で販売した時のキャッシュフロー

言い換えれば600万円の投資に対して回収が250万円、つまり350万円が未回収です。

銀行からの借入だとしたら350万円の借金が残り続ける、という事です。

在庫コスト

この在庫は次のシーズンまで倉庫に眠る不良在庫となります。

当然、長期間保管するわけですから、倉庫などの保管コスト、さらに劣化や流行が過ぎてしまい全く売れなくなってしまう在庫陳腐化リスクもあります。

表面上差益高見込が100万円あってとしても、手元にはキャッシュは全く無く、あるのは売れ残った倉庫の在庫だけ。。。
その在庫ですら次シーズンに販売して借入を返済出来るだけ売れる保証は無く、結局2年間商売をして残ったのは借金だけ、になりかねません。

こんな分かり切った事はしないよ”と思われるかもしれません。

しかし、実際の売り場ではこういった問題先送り型の決定は多いです。

もっとひどいのは、動きの良くない商品があるにも関わず対策を取らずに放置してしまった。

あるいは気が付きもしなかった場合もこれに当たります。

 

上層部を満足させるためだけに、出来るだけ波風をたたせない「その場しのぎの見栄えの良い販売計画」は、水面下での大きな問題を隠しているに過ぎません。

 

プランB:競合に対抗できる価格に値下げ(検討不足型)

値下げをして競合に対抗するプラン

12月から競合に対抗できる価格(7000円 30%値引き)に早急に値下げし、販売数量を回復させるプランです。

この販売計画の最終見込みは、売上高:444万円、差益高102万円です。

競合対策での3割引きにより12月の販売見込み数を増加させる計画となっており、必要な対策をとったように見えます。
この計画で注目してもらいたいのは、合計売上高見込と差益高見込です。

値下げをした分差益率見込みは40%→23%へ下がりますが、売上高見込、差益高見込共にAプランの実勢見込み値を上回る様になっています。
シーズン末の在庫見込みも430枚と、Aプランより大きく減少しています。

キャッシュフローは次のようになります。

値下げをして競合に対抗した販売戦略

プランAでは、仕入投資600万円に対して、マイナス350万円でしたが、プランBでは156万円まで減少します。これでもまだ仕入投資を回収できません。

機敏に値下げしたのはよかったですが、あと一歩踏み込みが足りませんでした。

 

Bプランは一見対策をとった様に見えますが、しかしこれもシーズン末での430枚の持越し在庫という点でAプラン同様問題先送りと言えます。

 

プランC:値下げを随時行う(完全売り切り型)

売り切るために値下げを随時行う販売計画

この販売計画の最終見込みは、売上高605万円、差益高5万円、在高0円。

このプランはBプラン同様に12月に3割引き販売後、1月に半額、2月では7割引きで売り切ろう、というプランです。

合計の差益高見込は当初計画の260万円に対して5万円しかなく、差益率見込みも0.83%という極めて低い見通しとなりました。ただし持ち越しの在庫見込みは0となりました。

利益高見込を確保したい、という会社意向とは正反対の、一見商売を度外視したプランに見えますが、キャッシュフローを見てみましょう。

売り切り販売計画のキャッシュフロー

プランAとBが仕入投資を回収できずマイナスに沈んでしまいましたが、プランCではかろうじて5万円のキャッシュを確保してプラス。さらに、在庫を持ち越さなかったので、次のシーズンに持ち越すための在庫コストが発生しなかったことを喜ばないといけません。

 

営業会議があった11月末時点でこのプランを提案したり選択するのは相当勇気が必要です。
会社の意向とは正反対に、最終見込みもかなりショッキングなレベルの低い数値です。

5万円と極めて低い差益高見込みではありますが、

このプランの最大の利点は

  • 仕入投資を当期内で回収しきったこと
  • 在庫を残さなかったので、次シーズンに持ち越す余計な在庫関連コストが発生しないこと

A,Bプランが次年度を考慮していない見せかけの数値である事に比べ、余程安全な数値と言えます。

 

次のシーズンで販売したらどうなるか?

ここでは詳細は触れていませんが、Aプラン実勢値見込みの残数を翌年5000円、3000円で売り切った時の試算もしてみました。キャッシュフローベースでみると次のようになります。

次のシーズンで値下げをした販売計画

結果としては次のシーズンで売り切ったとしても差益高見込みは-115万円という異常な結果となり、2年間の通算でも-15万円となりました。結果として得たキャッシュは仕入れ代金の返済にも足りない金額です。上記には織り込まれていませんが、保管代などの在庫管理コスト等様々な費用が掛かっています。これを加えると-15万円ではすまないでしょう。

 

早期の値下げ判断が傷口を浅くして利益を確保する

上記ケースは動きの悪かった商品を3か月経ってから対策を検討したケースでした。
参考までに、同じ商品の3割引きセールを12月まで待つのではなく、11月から開始した場合と10月から開始した場合をシミュレートしてみました。

 

11月に値下げを実施(1か月早い値下げ)

早期値下げを実施した販売計画1

10月に値下げを実施(2か月早い値下げ)

早期値下げを実施した販売計画2

シミュレーション結果を見てみると、双方とも12月開始より良好な数値を見込めています。
特に、競合に先駆けて10月から値下げした時の方がキャッシュが600万円も増加しており(11月値下げの場合は450万円の増加)、最も良い見通しとなります。

 

仕入販売計画ナビシートを使った値下げシミュレーションの手順

値下げ判断をするためには以下の10項目くらいは把握できていなくてはなりません。

  1. 何時値下げを行うのか
  2. 新売価をいくらにするのか
  3. その場合販売数量の増加をどれくらい見込むのか
  4. 在庫数はどう変化していくのか
  5. 売上高見込はいくらになるのか
  6. 利益高見込はいくらになるのか
  7. 粗利益率はどうなるのか
  8. 在庫手持ち日数をどれくらいになるのか
  9. GMROIはどれくらいになるのか
  10. この商品としてのキャッシュフローはどうなるのか

まず、上記項目の1~3でいくつか仮説を設定します。

その結果として4~10のシュミュレーション結果ができあがります。

最も現実的で会社にとって最良の方法を選択する事が可能になります。
(同時に”値下げ”に関する貴重なノウハウが蓄積されていきます)

数多くの商品の値下げを検討する場合は値下げ差額上位20%を対象にする

数多くの値下げ判断を現実問題として困難という場合、値下げ差額の上位20%の商品に関してはシミュレーションをしてください。

20%というのはパレートの法則(上位20%の品目で全体の80%を占める)に基づきます。

それまでの山勘的な値下げでの営業数値結果と比較にならない良い結果を期待できます。

 

ちなみに、パレートの法則は値下げに限らず、売上でも仕入れでも在庫でも、数値を分析してみると割とよくあてはまります。私自身、長年実務の中で様々なデータを分析してきましたが、パレートの法則が良くあてはまっていると感じています。

 

仕入計画の時点で売り切るための値下げ計画を織り込まなければいけない

当初の価格で売るのが現実的に難しいということが想定できるなら、

商品を仕入れるに当たって、本来は当初の仕入れ販売計画の段階で売切りの為の値下げを盛り込んでおかねばいけません。

今回のプランAのように、仕入の担当者は、自分の仕入れた商品が会社に利益をもたらすかを誇示したい為、値下見込や結果としての利益率を下げる見込を計画に盛り込みたくない、あるいは出来るだけ小さく見せたい・・・と考えるのは普通だと思います。

しかし、現実として値下げは必然的に発生するのですから、仕入販売計画を作成する段階で値下げ計画を盛り込んでおき、機動的に価格を変えることが結果的に在庫リスクを避けて、会社に利益とキャッシュを残すことになります。

 

チラシ特売の様な一定期間だけの値下げも同様です。
その上での最終利益見込み等を提示しなければならないのです。

販売計画通りに売れるはずがないと考え現実的に対応する

小売り商売は生き物です。

私の長年の経験上、実際にその商品を販売して計画とすべて一致する事はほぼありませんでした。

したがって販売動向をモニターだけではなく、当初の計画値との乖離と残り販売期間等を考えておかないといけません。

 

そのうえで、値下げのタイミングや値下げ巾、それに伴う販売増を予測する事が必要です。
同時に期末在庫や新たな粗利益高、現金回収高(売上高)の見通しを立てます。
それら予測値をシミュレーション出来て初めて値下げ等の方法や優先順位を判断できるといえます。

販売計画ナビシートを使えば、シュミュレーションが比較的簡単にできます。

 

今、あなたの会社ではどのような値下げが行われていますか?

今回のようなシミュレーションをせずに、山勘的な値下げや、玉石混淆の一律値下げ、或いは先の見通しを持たない値下げのストップ等が行われていないでしょうか?

値下げ計画は仕入投資の回収計画

仕入れは投資です。
値下げはその投資(仕入れ)回収(売上)計画の変更に他なりません。
値下げの仕方次第で回収度合いは大きく変わります。
重要なのは、値下げの判断に当たって、長年の経験とか山勘ではなく、数値的シミュレーションの上での判断を行えるか、です。

 

計画的な値下げはキャッシュフロー確保のための重要な意思決定

  • 暖冬の上コロナで外出自粛、コートが売れない!どうしよう?
  • 倉庫にマスクが大量に積んであるけど、どうする?
  • 売り出しの期間だけ価格を下げて売れ数を伸ばしたいけど、幾らまで値段をさげよう?!
  • マフラーは値下げしないでシーズン末に格納し、来期再販しよう!
  • 上層部から今後「値下げストップ」の指示が出そうだ!

小売りという商売をして行くうえで「値下げ」は避けて通れない営業上の一大事です。
それなのに現実に値下げの現場では、目の前に差し迫った対応を急ぐあまりに、結果として方向を誤った安易な結論を出していないでしょうか。

昨今のコロナ、緊急事態宣言で消費動向が大きく変化することがわかったと思います。

客数の大幅な減少、想像もしていなかった売れ行きの悪化も生じました。

 

コロナ前も同じようなことが起こっていたはずです。

シーズン商品の末期や、トレンドから外れた商品、市場の価格競争に負けた商品等・・・

原因は違えど、やらなければいけない施策は同じです。

 

このような状況に直面した時、あなたが当事者だったり、管理する側の上司だったら、どう判断していますか。
「値下げする場合」どう値下げをしていくのか、あるいは「値下げしない」という判断をするのか。

今回のシュミュレーションでお分かりいただけたと思います。
値下げ判断は会社の利益計画やキャッシュフローを直接左右する非常に重要な意思決定です。

 

数十億円規模のキャッシュフローを改善、仕入れ販売計画ナビシート

今回のケースの様に当初の計画と大きく乖離した、いわば失敗商品は速やかに撤退戦略を講じる必要があります。その際の幾つもの選択肢の中から決める時に重要なのは”こうすれば、こうなる”的な正しいシミュレーションの実行です。どの選択肢をとるかは、それぞれのシミュレーション結果を見て初めて決定できる事なのです。

  • ベテランに頼らない仕入れ計画を立てたい
  • キャッシュフローを改善したい
  • 不慮在庫を減らしたい

という方は、ぜひ仕入れ販売計画ナビシートをお試しください。

 

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