在庫管理システム導入に失敗する5つのパターン

在庫管理アドバイザーの岡本です。

在庫管理システムに関するお問合せをたくさんいただいています。

元々、私はプログラマーでもないですしSEでも無いのでシステム屋としては門外漢です。

しかし、導入したシステムについては成功しています。その差を分ける理由を考えてみました。

成功の要因はわからないが、失敗の要因は決まっている・・・とよく言われます。

つまりまずは、失敗のパターンを学んでおけば失敗する確率を劇的に下げることが可能です。

在庫管理システム導入に失敗する5つのパターン

1. 目的があいまい

目的があいまいな状態とは、目的を達成した時の状態のこたえを関連する人たちに聞くと答えや解釈が微妙に違う状態です。

たとえば、「業務効率を上げる」という目的はとてもあいまいです。どの作業の効率を上げるのか、どの程度上げるのか?

またシステム化の範囲も決めておかなければいけません。

ここはシステム化の軸になる部分です。この部分が曖昧でぶれていると、「こうなると思っていなかった」、「私はこう思っていた」などずれがあらゆるところで噴出します。

さらに、要望だけが膨らみ、解決の手段として取り入れたはずのシステムなのに、いつの間にか導入が目的になってしまっていることもあります。

目的を曖昧にしないための秘訣

  1. 目的は、誰に聞いても全く同じ認識を持てること
  2. システム化の範囲が決まっていること

2. 前例踏襲(これまでやっていたから、習慣だから)

一番多い失敗パターンです。これまでやっていた業務をシステムに置き換えるだけのシステム導入はほぼ100%失敗します。システム導入前の業務は、属人的(人それぞれによってやり方が違う)であることが多く、様々なパターンが乱立しています。それらを網羅し整理して、見える化しなければいけません。ここでいう見える化とは「言語化=文章で書く」です。文章で書けないことはシステム化できません。

システム導入を成功させるためには、今までの業務を捨てることが大切です。

特に、SaaS型システムを導入する場合は、自社の業務に合わせたカスタマイズ等ができないケースが大部分です。これまでの業務をいかに捨てられるかが導入成功のカギになります。

前例踏襲に陥らないための秘訣

次の手順を踏みます。

  1. まずは目的とシステム化の対象範囲を明確にする。
  2. システム化対象範囲の仕事の流れ(業務フロー)とやっていることを見える化(言語化)する(頭の中で想像するだけではダメ)
  3. 目的に照らし合わせて、捨てることを決める。

ちなみに、システムを導入したにも関わらずエクセルを併用している場合は前例踏襲ケースが多いです。

3. やりたいことだけやろうとしている

システム化するときに「やりたいこと」があるのは当然ですが、「やるべきこと」が整っていることが前提条件としてなければいけません。

前提条件を整えずに「やりたいこと」だけをやってしまうと、運用が開始できないかどこかで必ず行き詰ります。

在庫管理でこれが多く起こっているのは「原価管理」です。

「原価管理システムを入れようと思っているのですが、どうすれば良いか?」

「原価管理システムを入れたがうまく運用できない、どうすれば良いか?」

といったような内容で相談が来ます。

相談時に、「原価管理システムを導入・運用するための前提事項」について確認をしますが整っている企業がほとんどないのです。

問題なのは「前提条件が何か?」という事を知らない事です。いくらやりたいことがあってもやるべきことをやっていなければ、出来るはずはありません。

やりたいことを実現するための手順

  1. やりたいことをするために必要な事をリストアップ
  2. やりたいことにたどり着くためのステップを作る
  3. ステップを後戻りすること無く進める

前提条件を整えたうえで導入したやりたい仕組みは、耐久性があって長持ちします。

ちなみに「原価管理」でシステム導入以前に最低限必要なことは、次の3つです。(詳しいことはこの解説とはそれるので割愛します)

  • 品番の整備
  • 部品表の整備
  • 品番・部品表のメンテナンス

4. 短期視点

「今、目の前で起こっていること」しか考えられていないケースです。業務システムは一度導入すれば、5~10年間と長く付き合います。今、起こっていなくても将来起こりうることは想定しておく必要があります。

私がよく聞く問題は、「分類などのカテゴリーが足りなくなる」ケースです。商品コードなどを見て品物をすぐに判別できるように「意味あり」にしたときによく起こります。今あるカテゴリーのみに固執してしまい、今後の拡張を考えておらず、数年後に必ず行き詰まります。

私はシステム構築を家づくりに例えます。

今、夫婦2人、子供1人の家族だったとしても将来二世帯住宅にしたい場合、建築設計の時点で考慮しておけばリフォームも安く済みます。

例えば、増築や改築をしたいと言っても、建築設計時に考慮されていないと柱が邪魔になり増築ができない、柱を除去すると強度が足りなくなるので、補強工事が必要になる・・・

といったような具合です。

将来起こりうる可能性が高いことを盛り込んでおけば、生涯コストを抑えられます。

5. 個別化・部分化

ある特定の部署・担当者の業務だけが楽になり、その他がしわ寄せを受けるケースです。

よくあるのは、声の大きな人(主張が激しい、逆らうと厄介)や、権力のある人に過度に配慮したケースです。

システム導入は、全体最適でなくてはいけません。システムを導入する囲内において、全体が目的達成を実感できている状態です。

先ほど、システム導入には「捨てる」ことが大切だとお伝えしましたが、システム導入をすれば必ず「やるべきこと」も発生します。

やりたいことばかりを主張して、やるべきことをやらなければシステムは思い通り動いてくれません。

業務システム導入を成功に導く5つの方法

  1. 捨てる
  2. 目的が明確
  3. やるべきことを優先する
  4. 全体の俯瞰
  5. 長期視点

システムの役割

  1. データを登録する・取る
  2. データを貯める
  3. データを使う

現場がやるべきこと(主に体を使って仕事をする)

現場では主に、体を使って行う作業が多いです。

  1. 持ち場(機械や設備、作業場所)で付加価値作業に専念する
  2. データを取る、登録するはできる限り現場しかできないことする
  3. データを取る・登録するはできるだけ短時間で行える(手数最小・移動最小)

現場が使うデバイスの特徴

主に現場で使われているデバイスのできること、出来ないことをまとめてみました。

現場が使うデバイスの特徴とできること・できないこと
  • リーダー(バーコードリーダー等):バーコード等決まった値を読んだり、記録するもの
  • ハンディターミナル(タブレット・スマホのような画面や入力機能が付いたもの):リーダーのように決まった値だけではなく、数字や文字の入力や、項目の選択ができるもの。現場が使うデバイスで汎用性は一番高い。
  • 帳票(いわゆる紙):指示書や発注書等。発行後、修正や加工ができない。また共有化も難しい。ただし、扱いやすさ・見やすさは最も良い。
  • スイッチ:押すことでデータを蓄積する。センサーと似ているがセンサーが自動なのに対してスイッチは手動で、取る・登録できるデータは1種類のみ
  • センサー:一定の条件を満たした時にデータを取得する。条件付けによっては同一箇所で複数のデータを取ったり登録できる。ICタグもここに含まれる。

目的と照らし合わせて最良のデバイスを選ぶのがベスト

現場の端末としてはタブレットやスマホなどが先進的で良いイメージを持たれがちですが、目的に照らし合わせて考えるとオーバースペックだったり、過度な負担をかけることにもなりかねません。

実際に弊社の事例で現場の倉庫作業で、「ピッキング作業をタブレットを使って操作したい」というご要望がありました。

しかし私は反対し「帳票」を提案しました。

私が帳票を提案した理由は次の3つです。

  1. 現場作業者が高齢なので、タブレットの文字が見えない可能性が高い(現実、指示書をA3に拡大して使っていた)
  2. 指示内容が単純かつ、現場作業者が情報の入力や修正をする必要が無い
  3. 翌日出荷する荷物のピッキング作業を行っているため、ピッキング完了情報をリアルタイムで知る必要が無い

ピッキングの目的は指示されたものを正しくピッキングしていて、その作業が完了していることです。

紙を配布してから回収(完了を確認する)運用の仕組みまでを作り、紙でピッキング指示を行うことにしました。

問題無く目的を果たしました。「タブレットにしなくてよかった」と喜んでいました。

タブレットだから指示内容をやってくれる、紙だからやってくれないという事はありません。

機能が豊富だから、先端技術だからといった理由で選ぶのは、目的と手段の混同です。(失敗パターン)

目的をしっかりと果す仕組みさえあれば、デバイスはアナログでも全く問題無いことを実証済みです。

事務所がやるべきこと(主に頭を使って仕事をする)

  1. 現場支援
  2. 俯瞰作業
  3. データ活用

最小のコストで最善の結果を得るためのシステム導入方法

  1. 失敗パターンをやらずに成功に導く方法で進める
  2. やるべきことをステップ化して実行する
  3. システムの強み・弱みを知っている

成長する在庫管理システムの強み

  • やるべきことと優先順位を知っている
  • データ活用に強い
  • 各システム間の連携ができる

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