「棚卸をしても在庫数が合わない…」、「原因がわからず、毎回差異が出てしまう…」、「毎月棚卸をするのが大変で回数を減らしたい」
長年ずっと同じ状態、、そんなお悩みはありませんか?
棚卸差異の発生原因は棚卸ミスが原因になるのはごくわずかです。
原因の大半は、日々の業務の小さなミスや管理ルールの不徹底、伝票処理のタイムラグなどの積み重ねです。
私の経験上、棚卸差異の大きい(在庫が合わない)会社の大半は、欠品だけではなく過剰在庫も多い傾向があります。
放置しておくと、欠品による機会損失や過剰在庫によるキャッシュフローの悪化だけではなく、正確な利益が分からないといった問題もあるため、経営に影響を与えます。
この記事では、棚卸差異がなぜ発生するのか、その具体的な原因を深掘りし、実務に即した具体的な改善策を解説します。
私は、在庫管理の仕組み作りに20年以上携っており、現場での棚卸管理の実務経験に加え、改善支援の経験もあるため、理論だけではない実務ならではの妥協が重要なことも理解しています。
実際に在庫管理110番の事例で、在庫精度を30%から97%に改善できた事例もあります。
この記事では、棚卸差異の原因を無くすためには、「棚卸差異の主な原因」を知る必要があります。この記事を読めば、棚卸差異が見つけられるようになります。
具体的に改善する方法やポイントを知りたい場合は、棚卸差異の7つの原因と具体的な対策9選をご覧ください。
在庫精度と棚卸時間を短縮するノウハウが分かる!
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棚卸差異の原因を知る
在庫が合わない、棚卸差異が減らないという会社では、棚卸差異の原因調査が圧倒的に足りていません。
棚卸差異が発生する着目点が分かれば、棚卸差異の原因を見つけられるようになります。
棚卸差異が発生するタイミング
棚卸差異が発生するタイミングは、大きく分けて3つのタイミング
があります。それは、
- 棚卸の当日
棚卸当日に起こることです。 - 棚卸直前
棚卸の前日など直前に起こることです。 - 日業業務
日常業務の中で起こることです。
棚卸差異のカテゴリー
棚卸差異の発生原因についてカテゴリー化しました。
モノ自体や置き場、処理がポイントになります。
- 品番(部品・製品、仕掛品)
- 単位
- 不良品
- 入出庫
- 置き場
- システム
- カウント方法
- 棚卸当日
今回は特に業種を問わず挙げています。
中には、製造業特有と思われるものもありますが、流通加工などによる加工や組み立て、セット組みをしていると当てはまる場合があります。
品番
ここでは、品番(モノ自体)を対象とします。
- 品番が定まっていない。
- 1つの品番が複数の品番を持つ(部品メーカーに多い。自社品番・メーカー品番)
- 採番されていない(採番漏れ、採番が間に合っていない)
- 品番はあるが、表示が無い(限られた担当者しかわからない)
- 設計変更されたが品番が更新されていない
- 1物2品番(採番ミスなどにより、全く同一品に2つ以上品番がある。)
- 2物1品番が存在する(採番ミスなどにより、全く別の品に同じ品番が付けられている。)
- 同じものでも価値や状態が著しく違う(中古品や修理品など)
- 見た目がすごく似ていているが、違うもの(素材違い、穴や突起の数違いなど)
- 仕入れロットまで細かく管理(輸入品の仕入れ値違い等、品番よりも下位の管理単位)
- 棚卸するものとしないものが曖昧(梱包材などに多い)
- 棚卸するものとそうでないものが混在している。
- 試作品や研究開発したものが混じっている。(試作・開発品を資産計上しない場合は数えてはいけない)
- 伝票と現物の処理の不一致
- 仕入先が部品だなに補充納品する。(伝票処理と合わず不一致)
- 物理的に数えにくい(液体や粉体など)
- 目視できない(ピットの中の液体、山積みされた砂利)
- セット品の端数(通常セットで使用・販売するが、何らかの理由でセット品の一部を使用・販売したとき、またその時に残った端数)
- 加工などによる不可避の歩留り
- 液体や粉体などの不可避の蒸発や流出
品番(仕掛品)
モノの中でも状態変化が起こる仕掛品特有の棚卸差異の発生要因です。
- 仕掛品の概念(設定)が無く品番が無い(部品か製品で数えている)
- 仕掛品の概念(設定)が無く品番が無い(そもそも数えていない)
- 仕掛品の概念はあるが、定義が曖昧で認識が個々で違う(数えたり、数えなかったり)
- 工程が区切られていない
- 工程があっても一つとして扱う(仕掛品は進捗率がほぼ0%でも、完成間近の進捗率99%でも同じ仕掛品として扱う)
- 製品のように見えて仕掛品の場合がある(梱包したら製品にする等)
改造品 - システムの開始・完了(バラバラでも仕掛品として数えたり、見た目上製品として完成していても部品として数える等)
単位
見逃されがちですが、単位は棚卸の際に非常に重要な要素です。
単位は数えるときの基礎になります。
原則として棚卸の単位は、販売・使用の単位でなければいけません。
- 単位がついていない、決まっていない
- 購入単位と使用単位が違う(購入する時 巻き/使用する時:m、購入する時 箱/使用する時:個)
- 1つの品物に複数の単位があり数える単位が決まっていない。
- 切れ端のようなものがある。(反物から切り出して残った布など)
- 個数として数えられない(液体や粉体、長尺品)
不良品・不明品
不良品・不明品は棚卸を最も混乱させる存在です。不良品・不明品をきれいに
処理した状態から棚卸を始めましょう。
- 何年も置いてあって見た目上ごみのように見える(実際は数える)
- 数えるかどうかわからないものがある
- 簿外品(品番あるが前回数え忘れている)
- 棚卸対象リストに無いもの
- 伝票上、廃却処理したものを捨てていない(明示しておらず見分けつかない)
- 廃却処理せずに廃却
- 不良品の不良処理忘れ(ボロボロになっていても未処理なら正常品扱い)
置き場(移動)
せっかく品番がついてあっても、どこにあるのか分からなければ数えられません。
探す、見落とすの原因の大部分を占めます。棚をきちんと整備すれば格段に棚卸がやりやすくなります。
- 入庫後の置き場が決まっていない(フリーロケーションという意味ではない)
- 置き場が決まっていても守られていない
- 品物の奥に隠れていて見えない。
- 棚に貼ってある品番と置いてあるものが違う。
- 現物にも棚にも表示が無い
- 暗くて見えない
- 高くて見えない
- 箱を開けたら入っていない
- 箱の外に書かれている数と違う
- 1つのものが複数個所においてある(よくあるのは、倉庫と作業場)
- 移動処理されているが現物が動いていない
- 移動処理せずに現物が動いている。
- 横持ち移動中(自社の倉庫間を移動中)
支給品(無償支給)・委託品
製造業では部品を外注に渡して組立・加工などをしてもらいます。また販売先に商品を置かせてもらい、販売することもあると思います。原則、売上にしていないものは自社在庫なので、自社にあるものと同様に棚卸しなければいけません。
- そもそも管理されていない
- 外注先・販売先にまかせっきり
- 外注先・販売先に棚卸要請をしていない(帳簿在庫のみで実施」)
- 在庫移動はするが、加工後戻ってくるときに処理していない。(在庫が浮いたまま)
- 預かり品を誤ってカウント(自社の棚卸に計上してしまう)
入出庫(仕入れや出荷・販売を含む)
入庫・出庫は在庫数が変化する起点になります。実施する頻度も多く、在庫管理における日常業務のメインです。問題も最も起こりやすいです。
- 出庫済み品を数えてしまう(目の前にあるので)
- 出庫前の品を数えない(出荷済みとの思い込み)
- 伝票上は出庫したが、客先都合で自社で預かっている。
- 先に現物は発送したが、客先都合で伝票処理はまだ。
- 試作・研究用で部材を多めに出庫したが実際は使っていない。
- 入出庫の独自ルールのバラつき(開封したら出庫とする等)
- 担当者の作業場や机に置いてある。
- 移動中(洋上の積送品など)
- 仕入数の揺れ(納品数が伝票数と微妙に違う:ねじ等の小さいものに多い)
- 仕入れ品の返品処理(入庫取り消し)をしていない
- 販売品の返品後の戻入処理をしていない
- 仕掛品の入出庫をやっていない(部品→仕掛品、仕掛品→製品等)
- 社内利用の転用処理漏れ
- 営業の持ち出し
- サンプル(無料)として提供
- 仕入検収漏れ
- 出荷処理漏れ
- 誤品(品違い)
- 誤数(数量違い)
- 仕入れ返品代替品の検収漏れ
- 出荷返品代替品の出荷処理漏れ
- 分納処理漏れ
- 仮伝票による仕入れ(まだ正式には未入庫)
システム
ITシステムは在庫管理を便利にしてくれる便利なツールですが、使い方を
間違えると、棚卸差異を引き起こす原因になります。
- 入出庫して現物が動いているのにシステム入力をしていない
- 現物が動いていないのに、システムを入力している
- 構成の間違い(数量間違い、構成品自体が違う)
- システムのロジックミス(計算式の間違いなどのシステム構築のミス)
- 開始・完了を入力するタイミング(入力漏れ、先行入力)
- 開始・完了と在庫処理(開始で在庫が落ちるのか、完了で在庫が落ちるのか)
- 仕入れ・出荷を入力するタイミング(入力漏れ、先行入力)
- 仕入れ・出荷が計上されるタイミング(現物の入出庫とシステムの処理のずれ)
設計・指示
- 設計や指示内容と、実際に使ったり出荷したものが違う。
- 指示したものと、現場が使っているものが違う(部品の新・旧など)
- 設計で指示した数量と、現場が使っている数量が違う(設計不良または現場の独自判断)
棚卸当日
棚卸当日にしか起こりえない棚卸差異の原因です。
- カウント漏れ
- 計算違い(入り数×箱など、単位換算)
- 入力ミス(PC、棚卸原票)
- 二重カウント(ほかの人が数えたものをもう一度数えてしまう)
- 転記ミス
- 箱を開けずにカウント(箱の外の数を信頼)
棚卸当日は正しく数える
正しく数えるとは、漏れなく、ダブりなく、横着しないことです。
棚からモノを下ろして、中身をきっちりと確認して数えます。
棚卸当日は素早く数える
棚卸は短時間で終えられるようにします。
現場を止められる時間は限られているはずです。
在庫が動いている中で、棚卸をやるのは至難の業です。
棚卸に数日間かけていてはいけません。
1~2日で終わらせる体制を作りましょう。
在庫の精度を上げるための棚卸とは?
棚卸差異の原因を特定し、つぶさない限り在庫の精度は上がりません。
棚卸の回数を増やせばいいのでは?と思うかもしれませんが、
棚卸の頻度を増やしても、数え間違いが起こったり、数え忘れたり
と絶対に正しい在庫になることはありません。これは断言できます。
棚卸の大原則である棚卸の対象品を特定して、正しく素早く数えること
をしっかりと整備して守れる環境を作りましょう。
残念ながら在庫精度を上げるための、棚卸の方法を解説した実務的な
本はありません。現場経験が無いとなぜそんなミスが起こってしまうのかが
想像できません。
そこで、在庫管理110番では棚卸の準備から実施、事後の調査までの
経験を詰め込んだ在庫管理の教科書「棚卸編」を作りました。
これに従っていけば、正しく素早く棚卸ができる仕組みが構築できます。
ささいなことでもお気軽にどうぞ!
在庫管理アドバイザーに直接相談する
棚卸を早く正確に終える方法、棚卸精度の向上、棚卸差異の解消について、在庫管理アドバイザーに直接相談してみませんか?
初回無料で相談できます。お気軽にお問合せください。
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