在庫とは、「最終的に販売または使用することを目的として、保管・所有しているもの」です。
小売店での在庫は「完成品」のみですが、製造業の在庫は「部品・原材料」「仕掛品」「完成品」を含みます。
あなたの会社・工場では、なぜ在庫を持つ必要があるのでしょうか。
この問題に答えるには、「在庫の意味・役割」を理解していなければなりません。それは次の3つです。
- 必要としている人を待たせない
- 手配中の欠品を防ぐ
- 調整役(バッファー)になる
この1つ1つの意味がわからないと、在庫管理・生産管理において、どこを改善すべきかがわからなくなります。
ここでは、製造業における3種類の在庫と、その3つの役割を在庫管理アドバイザーの立場から説明します。
私は、在庫の本質は「時間の差を埋める存在」だと考えています。これが理解できれば、適正在庫の実現が近づくでしょう。
本記事は、以下のようなお悩みがある方にオススメです。
- 在庫・在庫管理の基本的な理解をしたい
- どうすれば在庫削減ができるのか?
- 適正在庫を目指すには何をすればいいのか?
- 製造業のビジネスモデルには、どんな在庫管理システムが最適か?
- どうすれば在庫管理システムによって、適正な在庫管理ができるのか?
また、在庫管理を効率化させるために、在庫管理システムが注目されています。
「在庫の見える化」「キャッシュフローの改善」「人為的に発生するミスの防止」などのソリューションとして活用するためです。
工場・倉庫など、製造業の現場で、どのように在庫管理システムを活かすべきか、選び方・導入方法をお届けします。弊社の実績事例は、以下の記事で紹介しているので、あわせてご覧ください。
在庫管理についてどんなことでもお答えします
1.在庫とは、最終的に販売するためのもの
まず、在庫とは何かを理解しておきましょう。
在庫とは「最終的に販売または使用することを目的として、保管・所有しているもの」という意味があります。
例えば、小売業(スーパーやホームセンター、雑貨店など)が持っている在庫は、仕入れた製品だけが在庫です。この製品をお客様に直接販売します。
病院や介護施設などであればトイレットペーパーなどの資材は使用するための在庫です。これらは「商品在庫」と呼ばれます。
どんな在庫であっても自然には発生しません。在庫ができて、適切な管理をしなければ余分に蓄積されます。過剰になった在庫は、減らすための活動が必要です。
また私は「在庫とは会社の脂肪」「在庫の多さは、会社の問題の多さ」であると考えています。
脂肪はエネルギーに変われば役立ちます。しかし、溜まりすぎると支障をきたすことになります。
詳細は以下の記事をご一読ください。
2.製造業の在庫は3種類
一番複雑なのは製造業です。
仕入れた在庫(部品や原材料)を加工する「生産」といプロセスがあるのが他の業種と大きく違うところです。
商品を生産するための在庫が必要になります。製造業には、3種類の在庫が存在しています。
それは、次の3種類です。
- 部品・原材料
- 仕掛品(半製品)
- 完成品(製品)
製造業における在庫管理は、この3つの在庫を扱います。
これらの在庫は、会社にとっての「資産」です。
会計上において棚卸資産(流動資産科目)として計上されます。
詳しい評価方法は「棚卸差異の6つの評価方法」で解説しているので、ご確認ください。
今後、利益・キャッシュフローを生み出すために在庫は存在します。
しかし、在庫は各所に散らばっているので、管理するのが大変です。
- 倉庫内の棚
- 工場内の棚
- 生産ラインの上や脇
など。
管理を誤れば、不良在庫や過剰在庫を発生させてしまいます。
したがって、正しく在庫管理をするためにも、基礎から学ぶ必要があります。ノウハウを一から身につけたい経営者や在庫管理担当者は、以下の記事をお役立てください。
製造業における3種類の在庫について解説します。
3.部品・原材料
部品・原材料は、製品を生産するために必要なものです。
会計上は「原材料」と呼ばれていますが、実務的には部品と原材料、原料で言葉を使い分けています。
3-1.<部品>
仕入れたら、ほとんど加工をせずにそのまま使えるもの指します。
ボルトやナットなどがそれにあたります。
機械や自動車など作っている組立系メーカーが、生産のために購入する在庫のほとんどが部品です。
3-2.<原材料>
原材料も製品を生産するために必要なものです。
原材料は、加工や調合といったプロセスが必要で、
そのまま使えない場合がほとんどです。
工場・設備を使って調合や分解などの化学的な処理や切削などの加工をすることで製品や部品になります。
代表的な原材料の例として、インゴット(鉄や金などの塊)や液体、衣類の生地などです。
3-3.<部品と原材料の違い>
また、部品の用途はほとんどの場合ひとつなのに対して、
原材料はひとつのものから複数の部品や製品が生み出されることが多いのが特徴です。
例えば・・・
製油メーカーの場合、原油というひとつの原材料から、ガソリンや重油、ナフサなどの複数の製品が生み出されます。
鉄鋼メーカーは鉄鉱石を溶解し、整形・加工することで鉄道のレールや自動車の鉄板などを作ります。
部品や原材料は、発注リードタイムやサプライヤーとの関わり合いが大きな在庫です。
4.仕掛品(半製品)
仕掛品とは、工程内または、工程間にある複数の部品や
原材料を組み合わせた生産途中の在庫のことです。
より詳しい説明はこちらをご覧ください。
4-1.仕掛品
仕掛品はそのままでは販売できません。
製品を作る過程に一時的に生まれるのが特徴で、生産
工程の中で、次々と状態が変化します。
4-2.半製品
半製品は仕掛品と同じで製品の完成途中物のものです。
仕掛品は売れませんが、半製品は売ることができます。
仕掛品は、製造(生産)リードタイムと関わりが大きな在庫です。
5.製品(完成品・商品)
製品とは、顧客に販売できる在庫のことです。
部品・原材料や仕掛品は工場の中にあるのに対して、製品はお客様に届けられたり、店舗・ecサイト内に並んだりします。
製品は、出荷リードタイムに影響して、顧客と関わりが大きな在庫です。
すぐに使える在庫管理のノウハウが満載
6.在庫の3つの役割
冒頭で在庫の役割をご紹介しました。
もう一度振り返っておきましょう。
- 必要としている人を待たせない
- 手配中の欠品を防ぐ
- 調整役(バッファー)になる
それぞれを詳しく解説します。
6-1.必要としている人を待たせない
在庫は「待たせない」ために必要な存在です。
「お客様が欲しい!」とか、「使いたい!」
という時に在庫があれば、すぐに渡せる(使える)といえば分かりやすいと思います。
これは、人に限らず機械などでも同じです。
工場では、材料を加工して次の工程に次々と送っていきますが、
前工程の加工が終わっていなければ、次の工程は開始できず、機械が作業できません。
製造業では、「後工程はお客様」という言葉があります。
これは後工程をお客様と考え、待たせないようにするという意味が込められています。
6-2.手配の欠品を防ぐ
在庫は、手配(発注中)の欠品を防ぐ役割があります。
例えば、発注してから納品まで10日間かかる場合、在庫が無くなってから注文すると、10日間欠品状態です。
その間に注文が入っても受付できません。
しかし、10日分の在庫を持っていれば、その間に注文が入ってきても安心です。
6-3.調整役(バッファー)になる
在庫は調整役としての働きもあります。
想定外(ルールや取り決めなどの決まり事とは違うこと)や計画外のことが起こった際、
在庫を持っていれば助かります。
想定外や計画外のことを「ばらつきや変動」と呼びます。
例えば、
- 機械トラブルで止まってしまう
- 実際の需要が販売計画と違う
- 納期通りに商品が入ってこなかった
などが挙げられます。
仮に在庫の数量を余分に持っていれば、機械トラブルや納期遅れがあったとしても、在庫によって救われる可能性があります。
なお、ばらつきや変動を抑える概念を「シックスシグマ」と言います。シックスシグマを改善に役立てる方法はこちらをご覧ください。
6-4.在庫の本質は「時間差を埋める存在」
3つの役割の本質を考えると、
在庫は「時間の差を埋める存在」だと言えます。
在庫があれば「待つ」ということが無くなります。
事例を挙げて説明します。
【お客様から注文があった場合】
もし材料在庫が無ければ、材料を注文し、製品を作って、出荷しなければいけません。
そのためには時間が必要です。(お客さんに待ってもらわなければいけない)
しかし、あらかじめ材料を買っておいたり、製品を作ったりしておけば、
材料が届くまでの時間や、製品を作るための時間を短縮でき、
お客様に早くおとどけできます。
7.適正在庫を実現する方法
会社の経営者、在庫管理を担当する人、営業、店頭に立つ人・・・
皆さんの思いは、次の3つに集約できるのではないでしょうか?
- 欠品を無くしたい
- 在庫を減らしたい
- 適正在庫を実現したい
この話になると、需要予測や販売計画の正確さがフォーカスされがちです。
しかし、実はそれよりももっと大切なのが在庫の役割をきちんと理解し、実践することにあります。
7-1.在庫をもたない方法
逆説的に言えば、お客様に待ってもらってよい(待ってくれる)のであれば、在庫を持たなくても構いません。
例えば、大型の船舶や注文住宅メーカーなどがそれにあたります。
高級品も待たせることが多いですね。
顧客から注文があってから始めて、設計を開始して調達・生産を行います。
身近なところだと、オーダーメイドのスーツです。
採寸して生地を見本から選んで、完成を待ちます。
8.製造業で在庫管理システムは必要?エクセルで十分?
製造業で、在庫管理システムの導入・構築を検討している方も多いでしょう。
在庫管理システムとは、リアルタイムで工場・倉庫内の在庫情報が確認できるツールです。
効率的に在庫状況を把握するだけではありません。
- 受注・納期管理
- 入庫登録・出庫登録
- マスタ管理
- 棚卸(棚卸差異の表示など)
- 在庫分析
- 会計システム・販売管理システムなどの基幹システムとの連携
- ハンディターミナルやバーコードを使った棚卸や検品、ピッキング
なども可能です。
こういったメリットから、アパレルや食品、物流など各業界で導入する工場・企業が増えています。
在庫管理システムが初めての方は、基本をまとめているので、こちらもご覧ください。
☑在庫管理システム|導入の完全ガイド(機能・メリット・特徴・注意点)
8-1.最新の在庫管理システムは不要
では、製造業の現場で在庫管理システムは役立つのでしょうか?
結論から言えば、どんなに高価な在庫管理システムを入れても、Iotなど最新の方法を使っても、うまくいかないのが在庫管理です。
なぜなら、多くの企業が2つの失敗をするからです。
- 在庫管理システムの選び方
- 在庫管理システムの導入方法
なぜ、この2つで失敗するかというと、在庫は何か?という役割を理解して、プロジェクトを進めていないためです。
在庫の基本を徹底的に理解して、会社で実践する必要があります。
逆に在庫管理の基本がしっかりとできていれば、高価な在庫管理システム、最新の多機能な在庫管理システムは不要です。
そもそも簡易的な在庫管理システムであれば、エクセルでも作成できます。
無料のテンプレートも出回っているので、コストをかける必要はありません。
「在庫管理110番」でもフリーのテンプレートを配布中です。作り方・使い方も解説しているので、ご活用ください。
しかし、エクセルの在庫管理システムは万能ではありません。問題・限界を知ったうえで利用しましょう。
9.在庫管理システムを導入するポイント
先ほど、製造業で在庫管理システムの導入がうまくいかない理由を伝えました。
それぞれで間違えがちなポイントを、一部紹介しておきます。
9-1.在庫管理システムの間違えた選び方
- 多機能・高機能なシステムを選んでしまう
- 高価・高額なシステムを導入してしまう
- システム開発会社のシステムや導入実績No1が良いと思ってしまう
これらが悪いわけではありません。
重要なのは「自社に合っているのか」「自社の課題に解決しているのか」という点です。
中小企業のほとんどは、「必要最小限の機能」で十分ですし、「誰もが使いやすい」操作性ものを選ぶべきだと考えています。
つまりコストパフォーマンスの良いものを選ぶべきということですね。
9-2.在庫管理システムの間違えた導入
- システム任せになってしまう
- 事前準備ができていない
- 人的ミスには対応できない
在庫管理システムを導入しただけでは何も解決しません。
業務効率化や生産性向上にはつながりません。
在庫管理はデータ管理だけではなく、現品管理とのバランスで成り立っているからです。
そのために現場では、「在庫の流れの把握」「情物一致」「基準を作りルールを守る」などが求められます。
こういった対策をせずに在庫管理システムを導入するのはご法度です。
製造業で在庫管理システムを導入するポイントに触れましたが、あくまでも重要なのは「在庫の役割」です。
これを機能させるために、手段として在庫管理システムを使っていきましょう。
在庫管理システムを導入して、在庫管理を効率化させるには、間違いとは真反対の選択をすることです。
ポイントをまとめておきます。
- 必要最低限の機能で十分
- コストパフォーマンスの良さを重視
- 現場に精通したプロが手掛ける在庫管理システムが最適
- 導入にあたり事前準備を実施すること
- システム任せにならないルールづくり
10.製造業の成長をサポートする在庫管理システム
世の中には、開発会社によって手がけられた在庫管理システムが出回っています。
今後さらに成長を遂げたい企業には、成長に応じた耐久性のある在庫管理システムが適しています。
なぜならパッケージ化されたツールは、柔軟性に欠けるためです。
ダイナミックな変化についていける在庫管理システムが必要です。
『在庫官110番』では、小規模事業者・中小企業向けの在庫管理システム「成長する在庫管理」を開発しました。
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シンプルな画面で操作が誰でも簡単ですし、現場の声に合わせてカスタマイズも可能です。
現品管理とデータ管理のバランスで、在庫管理システムを運用できるようにしっかりとサポートも致します。
11.在庫管理のご相談なら「在庫管理110番」がおすすめ
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在庫管理110番は、以下のような強みがあります。
11-1.経験豊富な在庫管理アドバイザー
生産管理、設計変更、発注管理、現場改善、在庫削減などで実績のある在庫管理アドバイザーによる提案が受けられます。
- 誰にでもできる在庫管理の仕組みを作りたい
- 在庫削減をしたい
- 在庫管理システムを導入したい
- 棚卸の精度を上げたい
- 在庫とは何かに関連するページ
など、あなたのお悩みにお答えいたします。
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11‐2.お悩みに合わせたソリューション
在庫に関する総合窓口として、コンサルティングだけでなく、
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在庫に関する問題の原因を突き止めて、その解決を根本からはかることができます。
11-3.無料相談(初回のみ・人数限定)
「在庫管理110番」では、無料相談を受け付けています。
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