今回は、ECRSの原則について解説します。
ECRSの原則は、業務フローを改善する手法の一つです。人口の減少、物価高騰で
少ない人数で高い利益を上げるためには、無駄を省き、効率を上げるために原価低減が必須で、生産性向上、DXは避けて通れません。
そのためには、システムや今はやりのクラウドが打開策になります。
ただし、ITツールを導入するだけでは生産性の向上は実現できません。
実際に、在庫管理110番には「システムはあるけど、うまく使いこなせていない」、「システムを導入したが何も変わっていない、むしろやることが増えた」といったお悩みをお寄せいただいています。
生産性向上やDX化を実現するためには、現状業務の改善は必須です。
目次
業務改善は引き算→標準化でシンプルにするのが定石手順
業務改善はシンプル化の一言に尽きます。
一言でシンプル化といってもどうやったらいいのか・・・と思うはずです。
シンプル化は、「引き算→標準化」で進めるのが基本定石です。
手順は、
- 引き算:業務プロセスの数や遂行方法(仕事のやり方)を減らす
- 標準化:業務プロセスと遂行方法を標準化する
業務プロセス(仕事のやり方)が属人化していると、個人仕様で無数の業務プロセス(仕事のやり方)が存在しています。また、「念のため業務」、「個人的なこだわりだけでやっている業務」、「昔からの習慣でやっている業務」といった本質的に不要な業務(ムダ業務)が数多く存在します。まずはそういった業務を見つけ、それらに対してECRSの原則を適用します。
不要な業務を見つける際に役立つのが4大ロスの視点です。
4大ロスに関してはこちらで説明しています。
ECRSの原則は業務の引き算に最適な手法
業務改善のアイデア出しを行う際に役立つフレームワークがECRSの原則です。
ECRSとは、それぞれワードの頭文字をとっています。
- Eliminate:無くせないか?
- Combine:一緒にできないか?
- Rearrange:順序はこれでいいか?
- Simplify:簡素化できないか?
ECRSの原則の使い方
それではECRSの原則の使い方をご説明します。
ECRSの原則を使う場合は、「ECRSのどれが適用できるかな?」と使うのではなく、
E→C→R→Sの順番で適用できないかを検討します。
なぜ、その順番で考えるかというと、
E→C→R→Sの順に効率削減の効果が高いからです。
それでは、仮に部品に関する業務を想定して、ECRSを解説します。
(あくまでも「現在の業務プロセスで考えられる問題点と改善による効果」は例です。あなたの会社の状況によって状態は異なります)
Eliminate:その業務自体を無くす
例)部品確認の依頼を受けたときに、現場で部品を探すことをやめる。
業務プロセスで考えられる問題点と改善による効果
部品探しが終わるまで、そのあとの工程は「手待ち(4大ロスの一つ)」が生じます。
部品を探すことをやめれば、後工程の手待ち時間を減らせることと、「部品探し」自体に使っていた時間を他に振り向けることができる。
Combine:業務を一緒にして一元化する
例)バラバラの置き場を1か所に決めてまとめる。
現在の業務プロセスで考えられる問題点と改善による効果
同一行程の部品の場所がバラバラなので、集めるのに時間がかかる。
工程の作業場所の近くに部品をあつめることで、部品集めの時間を減らす。生産着手も早くなる効果があります。
Rearrange:順序を変える
例)生産指示をしてから生産用の材料があるかどうかを確認するのではなく、材料があるかどうかを確認してから生産指示を出す。
現在の業務プロセスで考えられる問題点と改善による効果
生産指示を出してから部品が無いと、また生産指示を出し直しになります。
生産指示に必要な部品があるかどうかを事前確認してからだと、もし部品が無い場合は、指示を出す前に変えることができるようになります。出し直しも無くなりますし、現場の段取りのし直しもなくなります。
Simplify:簡素化できないか?
例)部品発注の際の承認を減らす、無くす。
現在の業務プロセスで考えられる問題点と改善による効果
社長、部長、課長などといくつもの承認待ちプロセスがあると発注が遅れる、または期日内にできる時間が無くなってしまいます。
具体的には、承認を思い切って全て無くすという方法が考えられます。
しかし、一気に全ての承認を無くせない・・・
という場合は、10万円以下は課長承認のみ、10万円以上の発注の場合は、社長承認までといったように、承認が必要になる対象を減らすことから始めます。
具体的な改善方法は別の方法で考える
ECRSは、「こういったことができないか、実施するとどんな効果が得られるのか」を考えるための改善フレームワークです。具体的な改善プロセスを示す手法ではないのでご注意ください。
例えば、先ほど挙げた「部品確認の依頼を受けたときに、現場で部品を探すことをやめる。」の具体的な改善手法は、2S(整理・整頓)です。
改善は具体的な方法を知ることも大切ですが、まず問題を見つけて、改善のアイデアを出すことが第一歩です。ECRSはそういった意味で役立つ改善手法です。(4大ロスを知ることは、問題を見つけるために役立ちます)
業務改善は従来の考え方を変え、習慣を見直すこと
ECRSの原則で、改善できるところに目を付けるのですが、それを妨げるのが習慣です。
今、やっている業務をゼロベースで考えないといけません。今までのやり方や習慣が染みついているとこれがなかなか難しいのです。
さらに厄介なのが、不要なことが業務化しているケースです。
例えば、「部品を探す」というのが業務化しており、「部品探し担当者」が置かれているといった場合です。このような場合は、「在庫を探すこと=業務=必要なこと」と思い込みがちです。
冒頭でECRSの主なターゲットは、「4大ロスを見つけること」とお伝えしました。
習慣にとらわれず改善対象の業務かどうかを見極めるためには、その業務に長く時間をかけることで、売上や利益が増えるかどうかということを考えます。
例えば部品を探すのに、
- 1分かかる
- 10分かかる
掛かる時間を比較したとき、10分かけて部品探しをすれば、10倍の売上や利益につながるでしょうか?
間違いなく「NO!」でしょう。むしろ1分で探せた方が良いはずです。
このような観点から無駄・時間を減らすべき業務を洗い出し、ECRSで業務自体を検討します。
業務改善で50%以上の効率化も見込める
業務改善に取り組めば、業務効率が50%以上改善できることも珍しくありません。
ある会社で、弊社がコンサルティングをして作業時間の改善に取り組んだのですが、当初の作業時間の合計が460分以上だったのに対して、改善後は210分まで改善できました(約55%削減)。
現場の人たちははじめは絶対に無理だろう・・・と思っていましたが、達成できたので実践した当事者が一番驚いていました。
改善で得られたのは結果だけではありません。
改善に取り組んだ従業員の皆様にも次のような良い効果が得られました。
- 改善の目が養われた:どういうところが改善できるのかを見つけること
- 自信:自分たちでもできる!という自信ができた
今回のコンサルティングで改善習慣ができたので、今後も弊社の支援無しで自律的に改善を続けることができるでしょう。
あなたもぜひ改善に取り組んみ、改善の目を養って、結果を出して自信をつけてください。
業務改善に助成金を活用して低コストで進める
改善の推進役は経営者や役員ではなく、従業員です。従業員教育=改善といっても過言ではありません。従業員教育には、助成金という形で様々な支援が国や自治体から出ています。
助成金は3000種類以上もあるので、自社の課題に使えるものは必ずあるでしょう。
しかし、実施母体(国、県、自治体等)や発表時期も様々で、探すのがとても大変です。
在庫管理110番では、「今、どんな助成金が出ているか、自社で使える助成金は何か?」ということを無料でお調べする「助成金無料診断」を実施しています。
業務改善はエクセルだけでOK
業務改善に役立つ、様々なクラウドツールやシステムがあります。
しかし、そんなものは重要ではありません。業務改善で大切なのは、次の4点です。
- 現状を把握すること
- 着実に実行すること
- 実績を記録すること
- 効果計測をすること
業務改善はプロジェクトなどで行われることが多く、日常業務とは違います。
日常業務は、情報の更新が頻繁に発生するので、システム化をお勧めします。
例えば、現在庫数の把握は、仕入れや出荷などで刻々と変化するので、エクセルではなくシステムを使うことをお勧めします。
一方で、改善はリアルタイム管理は不要です。改善結果を定期的にみることだけで十分なのでエクセルだけでも十分対応できます。先ほどの作業時間を55%削減した事例では、全てエクセルのみで管理しました。
生産性の向上、業務改善、DX化のご相談、お問合せ
物価高騰に対して全て原価低減のために業務改善をしたい、少ない人数でも同じ同じパフォーマンスで業務を遂行したい。。といったお悩みはありませんか?どんな会社でも必ず業務効率の改善は可能です。今回のようなECRSだけではなく、あなたの会社の課題や実態にあった改善方法をアドバイスします。
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