食品工場の改善活動が形骸化する原因とは?|歩留まり改善で廃棄ロスを80%削減した現場の実例

なぜ食品工場の改善活動は「形骸化」するのか(その場限りで終わる構造)

これは、私だけが経験した特殊な話ではありません。富士電機が食品製造業を対象に実施した実態調査でも、改善活動の課題として「現場への浸透・周知」「改善活動の形骸化」が挙げられており、自由回答では「進捗管理が形骸化しているような気がします。

改善活動の資料を作るのがメインになって実際が出来てない」「活動することが目的となり、提案をするが果たせない」といった声が報告されています。

【調査結果】富士電機による食品製造業の実態調査
  • 改善活動の課題として「現場への浸透・周知」「改善活動の形骸化」が挙げられている
  • 自由回答では「進捗管理が形骸化しているような気がする」「活動することが目的となり、提案をするが果たせない」といった声が報告されている
改善活動が「全体で定着している」と回答した企業は39.4%にとどまり、約6割の企業が完全には定着できていないという結果も出ています。

「改善提案をしたのに、いつの間にか元に戻っていた」——食品工場の現場で、こんな経験をしたことはないでしょうか。

 

改善策そのものは間違っていなかったはずなのに、数ヶ月後には元のやり方に戻ってしまう。多くの現場が抱えるこの悩みは、実は「改善の中身」ではなく「改善を定着させるやり方」が足りていないことが原因だと、私は考えています。

 

私は食品製造業で30年、うち製造責任者として12〜13年、150名規模・24時間365日稼働・多品種短納期という現場で、複数工程を横断するマネジメントに携わってきました。

 

今回は、私が実際に経験した歩留まり改善・廃棄削減の取り組みを、包み隠さずお伝えします。テーマは「改善そのもの」ではなく、「改善を現場に定着させること」です。

【食品工場 改善事例】毎日10kgの原料が、理由も分からず廃棄されていた

私が携わっていたのは、コンビニ向けの弁当・寿司・おむすびを製造する食品工場です。

製造初日、決まって約10kgの原料が廃棄される日が続いていました。金額にすれば決して小さくない額ですが、誰も「おかしい」とは言いませんでした。それが「毎日のこと」として現場に染みついていたからです。

原因は"標準化されていない歩留まり基準"にあった(昔の数字がそのまま生き続けていた)

詳しく調べていくと、原因は商品登録の歩留まり基準にありました。

 

登録上の歩留まりは60%に設定されてしましたが実際の歩留まりは約85%、25%もの乖離です。

企画担当者が新商品を登録する際、過去の古いデータをそのまま流用していたことが原因でした。

 

誰かがサボっていたわけではありません。「昔からそうなっている」という理由だけで、誰も疑わずに引き継がれてきた数字でした。

項目数値
登録上の歩留まり(基準値)60%
実際の歩留まり約85%
乖離25%

なぜ「属人化」させない仕組みにこだわったのか

私が現場で見てきたのは、能力にばらつきがある人たちの働き方です。

 

仕事は早いけれど、正確性にどうしても欠けてしまう人。

逆に丁寧だけれど遅い人。

 

私が勤めていた会社で多く見られたのは、「やれ」と言うだけで「なぜできないのか」を誰も考えていない、という光景でした。

苦手な部分を精神論で埋めさせようとしても、絶対に長続きしません。

だから私は、仕組み・スキームで対応することを軸にしました。

 

ポイントは「仕事の流れに組み込むこと」。

単発の指示ではなく、日々の作業の中に自然と組み込まれている状態を作ることです。

現場でどんな会話をしたか

登録基準を見直す際、現場にはこう伝えました。

「これをやっとけば責任は俺が負ってやる。ただ、できなかったときには全部ぶん投げるよ」

毎日の廃棄量(10kgだったり8kgだったり)を、とにかく書き出せと言い続けました。

「書くのなんて5秒もかからないだろう。その5秒が惜しいのか」——実際にそう伝えた場面もあります。

 

厳しく聞こえるかもしれませんが、責任を引き受ける代わりに、現場にも最低限の一手間を求める。

そのバランスが仕組みを回すには必要でした。

失敗したこと

最初からうまくいったわけではありません。

頭ごなしに「やれ」と言うだけでは人は動かないと、他の人のやり方を見ていて痛感したことがあります。

 

私自身も、「忙しいから」と日々の作業に追われ、改善のための"考える時間"に手が回らなかった時期がありました。

改善は、やる気だけでは続きません。自分自身のリソースをどう確保するかという問題でもあるのだと、身をもって感じました。

成功するまで繰り返したこと

うまく回るまでには、仕組みの"仕様"を何度も調整しました。

記録を紙に書かせるか、パソコンに直接入力させるか。

現場にパソコンはないので、そのたびに事務所まで上がってもらう必要がある。

 

だからといって「1週間分をまとめて入力すればいい」というやり方にはしませんでした。

それでは実態が見えなくなるからです。

日々のデータを積み重ねさせつつ、判断や振り返りは毎日ではなく週に一度、まとめて見る。

この「集める頻度」と「見る頻度」を分けたことが、現場の負担を増やさずに続けられた理由だと思っています。

標準化と属人化解消|「定着」に対する私の考え

定着とは、属人化の反対にあるものだと私は考えています。

特定の"できる人"に頼るのではなく、仕組み・スキームとして誰がやっても同じ結果になる状態を作ること。

 

もちろん、人に合わせた微修正は必要です。

しかし、メインとなる仕組みそのものが、現場に負担をかけるものであってはいけません。

 

データを集めさせ、それを定期的に見て、改善の材料にする——このサイクル自体を、現場の日々の作業量の中に無理なく組み込むことこそが、定着の本質だと思っています。

結果と、今も続いていること

こうした取り組みの結果、初日の廃棄ロスは10kgから2kgへ、80%削減されました。

金額にして月間30〜40万円、年間で約480万円の改善です。

 

そして何より、この仕組みは担当者が交代した今も、現場の標準手順として続いています。

改善効果
初日の廃棄ロス:10kg → 2kg(80%削減)
金額換算:月間30〜40万円、年間約480万円の改善

もう一つの実例|"仕組みで定着させる"は、別の課題にも同じように効いた

この「仕組みで定着させる」という考え方は、歩留まり改善だけでなく、まったく別の課題でも同じように機能しました。

当時の工場では、処分ロス・包材ロスも慢性化していました。

品名シールの残数を、担当者が目視で判断して発注していたのです。

「足りないかもしれない」という不安から余剰発注が常態化し、余ったシールはそのまま廃棄されていました。

改善前の処分ロス率は1.5%、月商1.2億円換算で月あたり約180万円にのぼっていました。

 

ここでも、精神論で「無駄をなくせ」と言うのではなく、仕組みで解決することにしました。

毎週金曜、製造終了後に資材担当がシールの重量を実測し、残枚数を概算した上で使用予定数と照合する。

 

発注する本人がその場で測定する設計にすることで、伝達ミス自体が起きない状態を作りました。

 

判断が微妙なケースだけ、最終的に製造責任者である私が確認するというルールも加えています。

歩留まり改善が現場の登録データを変えることだったのに対し、こちらは資材担当という別の役割・別の部署を巻き込んだ仕組みでした。担当者任せの目視判断から、実測に基づく客観的な基準へ切り替えたことで、判断のばらつきそのものをなくしたのです。

結果、3ヶ月で112万円の改善につながり、処分ロス率は1.5%から1.2%(年間換算で約432万円規模)へ改善しました。

その後、私が係長を務めていた時期にはさらに1.1%まで改善が進みました。

この仕組みも、発注・測定の標準手順として今も引き継がれています。

時期処分ロス率
改善前1.5%
改善後(3ヶ月・112万円改善)1.2%(年間換算 約432万円規模)
係長時代にさらに改善1.1%

 

歩留まりも処分ロスも、原因はまったく別の場所にありました。

しかし共通していたのは、「なぜそうなっているのか」を誰も疑わずに放置していたという点です。

仕組みとは、この"疑わなさ"を可視化し、断ち切るために作るものだと、私は考えています。

食品工場の改善がうまくいかないとお悩みならお気軽にご相談ください

改善案そのものは、実はそれほど珍しいものではありません。同じような気づきを持っている現場担当者は、どの工場にもいるはずです。難しいのは、その改善案を「仕組み」に変え、現場に根付かせ、担当者が変わっても続く状態にすることです。

もし「改善提案をしたのに、いつの間にか元に戻ってしまう」「新しい仕組みを入れても現場が使いこなせない」「部署間の連携がうまくいかず、どこに手をつければいいか分からない」——こうした課題でお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

    【無 料】
    在庫管理アドバイザーに相談する