PSI管理を経営のために全社展開する方法

PSI管理を財務・経営に生かす方法

 

木を見て森を見ないPSI管理では全社展開できない

多くの企業ではPSI(生産・販売・在庫)を実務者が数量単位で
生産計画、購入計画、在庫計画をするために使っています。

実務的な単品管理では数量単位で充分です。
しかし、全社展開するためには、経営に直結する金額換算が必須です。

今回はPSI管理を財務・経営に生かす方法を解説します。

木を見て森も見るPSI管理とは?

キャッシュフローのサイクル
ビジネスの資金の流れを見てみると、
仕入れ、生産、販売と売上代金が回収されるまで、ずっとキャッシュアウトが続きます。

欧米の企業では、月中の取引に対しても経営管理が金と物の流れを把握し
ているのが一般的です。

必ずキャッシュの動向を注視して適宜、指示を出しています。

しかし、多くの日本企業では、月末の結果だけが集計しています。
資金繰りが苦しくならない限り、経営管理担当者は、過剰な生産や仕入れに対
して口をはさむことはないようです。

PSI管理を経営管理に生かすにはどうすればよいのか?

日本の企業が、 金と物の流れを把握できていない原因は、

PSI管理を社内で十分に共有できていないという点が挙げられます。

仮に、PSI管理を導入していたとしても実務者の元で止まっており、
経営管理に生かせていません。

なぜPSI管理でうまく行かない企業があるのか、その原因はこちらで解説しています。

PSI管理で失敗する企業の特徴を知る

PSI管理を経営管理に生かすためには、数量を金額換算しなければ
いけません。

つまり、PSI管理に金額情報(標準原価)を加えることで、
実務者が現場で使っているPSI管理を経営管理、財務経理関係者と
共有できるようになります。

PSI管理を経営管理・実務者の間で共有するドリルダウンチャート

PSI管理のドリルダウンチャート

上の図は、在庫管理のドリルダウンチャートです。

本社の在庫管理の見込みを、A~E事業部まで分解します
さらに各々の事業部では、更にそれを製造事業所、販売会社と
さらに細分化してブレークダウンします。

PSI管理において在庫回転日数が判断指標

PSI管理において、在庫はPSIの一部です。

PSI管理をはじめて学ぶ方・詳しくない方は、まずこちらをご覧ください。

PSI管理の基本を学ぶ

特にI(在庫)から得られる在庫回転日数は意思決定の判断基準となり、
とても大きな意味を持ちます。

PSI管理のドリルダウンチャート

上記のドリルダウンチャートからシュミュレーションしてみましょう。
仮に、目標を在庫回転日数30日。在庫100億円と設定します。

A~E事業部まで分解し、各々の事業部では、更にそれを製造事業所
販売会社と細分化してブレークダウンします。

目標在庫回転日数=当月末在庫÷目標翌月売上原価×30日
となりますので、見込みは以下の通りです。

在庫回転日数見込み=当月末在庫見込み÷翌月売上原価見込み×30日
となりますので、上図では全社の在庫回転見込みは目標30日に対して35日
となっています。

これを事業所別にみてみると、D事業部を除きすべての事業部で目標を上回っています。
ここから、どこの事業所で悪化しているのかを具体的に確認できるので、
対策を打たなければいけない事業所が明確になります。

PSI管理と在庫回転日数を連動させると経営に与える影響が見える

在庫回転日数は、PSI管理から得られる結果です。
在庫回転日数を算出するP、S、Iそれぞれのの値を確認すると、
経営に与えるインパクトが明白になります。

こうすることで欧米企業同様に、お金とモノの流れが把握できるようになるため、
マネジメントが関与できる環境が整います。

PSI管理に在庫回転日数を指標として使うには?

PSI管理の金額換算で資金の流れが見えてくる

PSI管理のドリルダウンチャート

PSI管理表からどこで資金が偏在しているのか、
各事業所がどんな課題や問題を抱えているのかが見えるので、問題を特定できます。

黄色で示したところが各事業所の問題点です。
ドリルダウンチャートを見ることで、以下のような疑問が見えてきます。

  • B事業部:在庫回転日数は先行の販売に問題はないか?
  • C事業部:販売に問題があるのではないか?
  • D事業部:在庫が少なくないか?
  • E事業部:在庫は少ないが、先々の販売に問題があるのではないか?

PSI管理サイクルは月次ではなく週次が理想

PSI管理を月次でまわすのと、週次でまわすのでは、判断スピードに
圧倒的な差が出ます。月次と週次でどれくらいの差が生まれるのかを
比較してみましょう。

PSI管理を月次で行うとどうなるか?

PSI管理を月次で行う
月次のPSI管理を見てみると、在庫回転日数が悪化傾向に
あることがわかります。

在庫回転日数の悪化(57日)に気付くのは3月結果が出る4月
従って、行動は4月に入ってからになります。

この会社の1~3月の売上構成比を週次(1か月を4週で分割)で見てみると、以下の通りでした。
売上構成比を週次で見る

週次に分解することで、売上げの6割強が後半になる傾向が分かりました。
週次管理に切り替えるだけで、月次管理では見えない傾向が見えてきます。

PSI管理を週次で行えば見えなかったものが見えるように

週次のPSI管理

先ほどのPSI管理を週次に置き換えて作成してみます。

週次のPSI管理
月次を週次に変えることで、2月の後半(6週、7週)には
在庫回転日数の悪化を感知できます。
検知してから実際の行動を起こせるのは、2月最終週(8週)になります。

月次で行った場合3月末まで、在庫回転日数の悪化に気付きません。
月次PSI管理と週次PSI管理を比較すると、実際に行動するまでに約2か月の差異があります。どちらが経営にとって最善かは明白です。
現在の経営は変化に対応するスピードが求められますので、月次で判断し、アクション
を起こしていては遅すぎるのです。

在庫回転日数を使った予実管理はこちらで解説しています。

PSI管理で適正在庫を実現する方法を知る

PSI管理は変化対応型のオペレーション

週次のPSI管理
PSI管理を週次で行うためには、以下の3つを意識する必要があります。

ライフサイクル別に合わせたPSI管理

商品のライフサイクルによって求められる在庫管理は違います。

  1. 導入期の在庫管理
    市場に投入されたばかりの製品は、導入期に当たる。
    この時期にある製品や商品は、売上や利益に対する貢献も
    高くないため、それほど厳密に在庫管理を行う必要はない。
    (ただし、戦略商品は除外)
  2. 成長期の在庫管理
    市場に投入されてからある程度時間が経過して、市場での
    認知度が高まる段階。この時期、需要も急激に拡大するため、
    在庫の入出庫が激しくなる。それとともに次第に厳密な在庫
    管理が必要になる。
  3. 成熟期の在庫管理
    投入した製品や商品が、市場に行きわたり売上高も高い位置で
    安定し、利益貢献も高い時期。
    この時期は、品切れによる販売機会の損失を防ぐため、成長期
    と同様に厳しい在庫管理が必要になる。
  4. 衰退期の在庫管理
    どんな商品でもいつかは売り上げも下降傾向を見せ始める。
    必然的に、この時期にある製品は、緩やかな在庫管理の対象に
    なるが、不良在庫にならないような在庫管理が必要。

PSI管理の推進体制

PSI管理の推進体制
PSI管理では、ビジネスで重要なP:生産・仕入れ、S:販売、I:在庫が関係
するため、推進体制は、オペレーションを評価できる体制が求められます。

経営管理が中心となって、カンパニー、事業部の経営管理と連携する
必要があります。

実務者が使っているPSI管理を金額換算することで、サプライチェーンを
全社的に推進できるようになり、資金繰りを意識した在庫管理が可能になります。

問題解決PDCA

PSI管理の推進体制
従来の「計画達成のPDCA」は、「Plan(計画)」を軸にサイクルが回します。
対して、「問題解決のPDCA」は、「Problem(問題)」を中心に回します。

問題解決PDCAが回せる自律的問題解決型組織を目指すためには、
「Plan(計画)」だけでなく、実行上の「Problem(問題)」に着目します。
そしてDは「Display」、すなわち問題や異常を「見える」ようにすることです。
問題を発見するだけでなく、見える化して周知することが極めて重要です。

多くの企業では、問題や異常が発見できないわけではありません。
多くの場合、それらがさらけ出され、組織の共通認識となっているか
どうかがポイントで、問題解決のPDCAサイクルを回し続けることによって進化する現場が生まれます。

PSI管理でスピード経営を実現

PSI管理を実施することで、問題が見える化できます。
それらを数量・金額の両面から見ることで実務・経営で共通認識になります。
さらに、PSI管理を週次で実行することで変化対応型の組織になり、時代が求める
スピード経営ができる企業に生まれ変わります。

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高井先生の記事一覧

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やPSI管理などに関する経験と深い知見を有しており、当サイトに数多くご寄稿いただいてます。

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高井先生は実務的なキャッシュフロー管理、PSI管理のスペシャリストです。
ソニーにて多数のご経験を積まれ、実績を残されています。
欧米ではスタンダードな経営指標であるキャッシュ・コンバージョン・サイクル精通している数少ない専門家です。
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