欠品率(品切れ率)|最適な管理方法と在庫の持ち方

ipadを使った在庫管理

欠品(品切れ、在庫切れとも言います)は完全に防ぐことはできません。しかし、防げないからと言って放置してはいけません。

そこで管理したいのは、欠品率です。

この記事では欠品率の設定と管理、そして欠品に対してどのように対処したらよいのかも解説します。

ぜひ、自社の欠品率を考えるときの参考にしてください。

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欠品回避や適正在庫の維持にご活用ください。

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欠品率(品切れ率)の種類と計算方法

欠品率(品切れ率とも言います)とは需要(注文)に対し、商品を供給(納品)できなかった割合を示す指標です。

一般的な欠品率の計算方法は、「総注文商品数に対する欠品を起こした商品数の割合」です。

このほかにも、顧客や金額を使って欠品率を設定して計算することもできます。

欠品率の計算方法

仮に、欠品率を会社のKPIと掲げた場合も、顧客数なのか、商品数なのか、売上金額なのか・・・

はきちんと決めて明文化しておかないと、個々の担当者が勝手に解釈して、会社の思惑とは違うことにもなりかねません。

欠品率をどこまで許容するか

許容欠品率とは、欠品をどれだけ許すか・・・ということです。

許容欠品率の設定によって、メリットとデメリットがあります。

  • 欠品をある程度許容する(欠品率の上昇を重点管理しない場合)
    売上げ機会を逃す確率が高くなります。
    欠品率が高すぎると、事業としての信用力や魅力を失う可能性が高く、競争力が低下につながるリスクがあります。
  • 欠品を許容しない(欠品率をできるだけ下げようとする場合)
    欠品率を完全に排除しようとすると、膨大な在庫をもたねばいけません。在庫金額の増大による資金繰りの悪化、さらに在庫管理連コスト(保管等の管理コスト)がかさむうえ、不良・滞留在庫のリスクを抱えることにもなります。

このため、欠品による売上げ機会の損失と在庫コストなどのバランスを考えて、最適な許容欠品率を設定します。

設定例としては、

  • 売れ筋商品の許容欠品率を低く設定・・・機会損失の最小限化
  • 販売数の少ない商品の許容欠品率を少し高めに設定・・・不良在庫化するリスクを最小限化

しかし、現実問題として多くの企業では、定義や基準を設けていないため、どんなものでも在庫を持ちすぎていて、過剰在庫や滞留在庫に悩んでいることが多いです。

欠品を減らす方法 

欠品率を下げるためには、欠品を減らす(無くす)しか方法はありません。

そこで、安全在庫を持つという一般的な方法から、覚えておくと実務的に役立つ欠品対策の方法を解説します。

安全在庫を持つ

欠品を無くすためにまず考える必要があるのは、安全在庫です。

安全在庫

安全在庫とは、予測した需要数を超えた時に、欠品を防ぐためのバッファーとして持つ在庫です。

安全在庫の計算方法と、安全在庫特有の注意点はこちらの記事で詳しく解説しています。

安全在庫の計算方法と知られていない問題点を解説

欠品が発生する調査して欠品率を下げる

安全在庫を増やすことと同じくらい大切なのは、欠品が発生する原因を推定して、一つずつつぶしていく、先回りして予防することです。

つまり、売れ行き対して影響を与える要因を調べることが必要です。

そうすることで、余計なものまで大量に安全在庫を持つ必要が無くなります。

売れ行きに与えている要素をつかめば、安全在庫をむやみ増やして不良在庫のリスクを負う必要もなくなります。

下記は、ある会社で行った欠品率を20%から10%に減らすために作成しました。
(*シックスシグマはこちらで解説しているのでご覧ください

欠品の因果関係

上記は、特性要因図(フィッシュボーン)と呼ばれる分析手法で、洗い出しをするのに最適な手法です。

コツはまず、大きな要因を3~5つ程度洗い出すことです。

上記の場合は、大きな要因として次の4つの原因を挙げました。

  • 販売起因:販売予測精度と安全在庫(販売側で抱える在庫)の要素が大きい
  • 調達/生産起因:リードタイムと安全在庫(本部や工場側で抱える在庫)の要素が大きい
  • 物流起因:配送コスト(費用対効果)頻繁に配送することによるコスト
  • 同業他社の在庫状況:他社の売れ筋商品の品薄の有無

次に、それらを詳細に分解していきます。

例えば、販売起因で、欠品に影響を与えていると思われる要素は、

  • 販売予測精度
  • 安全在庫
  • 販売戦略
  • 債権問題などによる出荷抑制

といった具体的な原因をあげていきます。

上記の特性要因図から学べる点は、欠品率を改善して欠品を回避する方法は販売予測の精度を上げるだけではなく、販売、調達、生産、物流のそれぞれに起因する原因があるということです。

現在の会社の状態は、バランス・スコアカードの視点から評価できます。

  • 財務の視点: 収益性、キャッシュフロー等
  • 顧客の視点: 欠品率、顧客満足度、顧客不満足度等
  • 内部プロセスの視点: リードタイム短縮、販売予測精度、出荷遵守率等
  • 学習と成長の視点:データの可視化、要因分析と改善活動

販売予測精度の結果を検証する 

販売計画や需要予測が立てっぱなしになっていませんか?

作るのは良いですが、作って出すだけでは片手落ちで、販売予測精度の結果を次回の精度を高めるために、計画と実績との乖離要因を特定しましょう。例えば、計画と実績が乖離する原因には次のようなことが挙げられます。

  1. 商品の市場での反応(特に新製品導入時)
  2. セールや販促などのマーケティング要因
  3. メディアでの紹介
  4. 品質問題
  5. 物流上の問題、天災(台風、地震、気候変動)、インバウンド特需等

計画に対して、これまでの実績などから売れ行きを予測して仕入をコントロールしなければいけません。

商品ライフサイクルを意識した在庫管理を実施する

欠品率を低く保っておきたい売れ筋商品の管理でぜひ知っておいていただきたいのが、商品のライフサイクルです。

商品ライフサイクルには、導入期、成長期、成熟期、飽和期、衰退期があります。商品ライフサイクル

売れ筋商品は、成熟期にある商品であることが多いです。ということは、いつかは衰退期に入り売れ行きが悪くなります。

それに気づかなければ、大量の過剰在庫を抱えてしまうことになります。

定番商品であれば、最後まで欠品率は重要な指標になりますが、商品のライフサイクルの変化は欠品率だけでは管理できません。
そこで管理していただきたいのは、在庫回転日数です。

過剰在庫・滞留在庫を減らす

経験上、不思議なことに欠品が多発している会社は、過剰在庫や滞留在庫、不良在庫でも悩んでいることが多いです。

欠品の原因は、

在庫が無かった

ということに加えて、あるはずのものが無いということもよくある原因です。棚卸をしたときに見つかった・・・という笑えない話もよくあります。

欠品にも過剰(滞留や不良)在庫にも悩んでいる場合は、まず、過剰(滞留や不良)在庫の解消をお勧めします。

過剰(滞留や不良)在庫の改善方法の王道は、2S(整理・整頓)です。

整理・整頓に関する記事はこちらをご覧ください。

製造業は仕掛品(工程内在庫)改善を実施する

製造業の場合は、商品の販売だけではなく、生産(部品~仕掛品~製品)というプロセスがあります。

下図は、生産プロセス別にリードタイムと在庫の関係を表したものです。
リードタイムと在庫の関係

製造業の場合、受注から納品までこれだけの工程が必要になります。

製品の販売のための在庫だけではなく、生産が滞りなく進むように原材料や部品の在庫も必要です。つまり、製造業の場合は、部品や原材料の欠品率も管理しなければいけません。

注意しなければいけないのは、生産リードタイムが長くなればなるほど、生産工程にたまる在庫が増えるとともに、必要な在庫数の予測も難しくなります。
製造業でぜひ取り組んでもらいたいのは、生産リードタイムを短縮する改善を実施することが大切です。

リードタイム短縮は、在庫保有日数とも密接に関係するため、キャッシュフロー改善に寄与することになります。

仕掛品の具体的な管理と改善方法については、こちらの記事をご覧ください。

仕掛品の管理

欠品率は販売予測精度と安全在庫に密接に関係する

国内アパレル会社の在庫回転日数の推移
※在庫回転日数=四半期末在庫÷当該四半期の売上原価×90日

最後に、国内アパレル業界5社の過去14四半期の在庫回転日数(DIO)を確認してみましょう。

最も差がひらいているのは、20.1Qです。ファーストリテイリングが212日に対して、しまむらが74日です。

欠品率を重視するファーストリテイリング(海外売上比率は約50%)と売り切れ御免を貫くしまむら(国内中心)は好対照であることがわかります。

欠品率は、販売予測精度と安全在庫に密接に関係するため、総合的な評価が求められます。

  1. 販売予測精度の測定・分析と改善
  2. 安全在庫保有日数:許容範囲を決めることで資金繰りのインパクトがわかる

欠品しても機会損失を回避する方法

欠品の最大の問題点は、機会損失(売上を出すための機会を無くなる)ことです。

言い換えれば、欠品したとしても、機会損失を回避すればよいのです。

受注した時に欠品した際の流れについて、高崎商科大学商学部特任教授・梶田ひかる氏は以下のように整理しています。
欠品の流れの分類

必ずしも、これを見ると「欠品」したとしても、「調整」や「代替品」などで回避できる場合もあります。

これを実現するためには、受注担当者が提案や交渉する能力、代替品を提案できる商品知識が必要です。

欠品を完全に無くすことは不可能です。欠品は発生して当然ととらえて、対策案を考え備えることが必要です。

欠品の恐れすぎによる過剰在庫が問題になった2つの事例

欠品を恐れすぎて在庫切れを極端に嫌う業界として代表的なのは、アパレル業界です。

アパレルの半分は、売れ残りという厳しい現実があります。
2019年6月12日の日経新聞「衣料品、半分が売れ残り 「収益より売上高」の悪循環」のデータがこちらです。

衣料品の販売率

これを見てわかるのは、調達数量(仕入れ数)が年を追うごとに、どんどん増え、消費数量(販売数)との差が大きくなっていることがわかります。

2018年を例に挙げると、市場に投入された衣料品のうち、実際に売れたのは調達数量の46.9%にとどまり、約30年前と比べて半減しています。需給ギャップが広がり続けています。

この原因として指摘されているのは、

  • 輸入の比率が増えた(1991年は51%、2017年は97%)
  • 売上高を経営の主軸に置き、前年よりも高い目標を立てるため調達量の拡大に歯止めがかからない(2018年の仕入れ数は1990年の2.5倍)
  • セール頼みの販売(定価販売の比率は73.3%しかない。※生鮮食品は95%)
  • 発注数を需要ではなく、生産数を基準にして計画を立てている(一定数量の発注が必要なので)
  • ブランドごとに予算を立てて無理に販売しようとする習慣が根付いている。(ブランドの独立意識が強い)

レナウンの倒産

「暖冬で冬物コートなどの販売が振るわなかった。19年2月期の定価販売率は65.4%と前の期より1.8ポイント下がり、営業利益は25億円の赤字(前の期は2億円の黒字)に沈んだ。」

この報道から一年後、レナウンは破産手続きに入りました。

一方で、しまむらは在庫管理を徹底して業績を回復させました。

これまでの考え方・やり方を変えたしまむら、変えられなかったレナウン・・・両者の明暗が鮮明になりました。
しまむらのコロナ禍におけるオペレーションの状況については、以下を参照ください。
コロナ禍における在庫と運転資本の関連性2(アパレル業界)

過剰在庫は信用問題にもつながる

過剰在庫、不良在庫は会社の売上や資金繰りの問題だけではなく、信用問題にもつながります。

近年、10~20代を中心に消費者の環境意識が高くなり、廃棄するということに対して敏感です。

ファッション・アパレル業界は、過剰生産・大量廃棄や温暖化物質の排出などにより、石油業界に次ぐ2番目に環境負荷が大きい業界だ。日本でも年間29億着が供給されるが、半分以上の15億着が売れ残り、約100万トンが廃棄されています。

売り方を変えたり、シーズンの見直しを行うなど、これまでの商習慣や業界の常識を変えていかないといけない場合もあります。

「半分以上が売れ残る」アパレル業界が直面する絶望的状況(2020年6月22日 週刊エコノミストOnline)

先進的な取り組みが行われれば、顧客からの信頼を獲得することも可能でしょう。

欠品率とともに在庫回転日数を管理する 

機会損失のみを考え、欠品率だけを管理するのは、絶対にお勧めしません。

欠品率は指標の一つとし、他の指標と連動させて一緒に管理することをお勧めします。

下の図を見ていただくとわかるように、欠品率(赤枠で囲っています)は在庫を管理する指標の一つにすぎません。

在庫回転率改善の効果

全ての在庫管理に指標を束ねているのが、在庫回転日数です。

欠品率とともにぜひKPIとして管理していただきたい指標です。

「売れ筋商品だから多少、大目に持っていても特段、問題なし」ではありません!

欠品率を気にしすぎるあまり、在庫を持ちすぎるというのが一番危険です。

この場合、欠品率という点では問題ないかもしれませんが、企業として資金繰りに悪影響を及ぼすリスクがあります。

欠品率の対象となる売れ筋商品こそ、在庫金額が大きいため、在庫回転日数を管理し、在庫回転日数が適正範囲内であることを常に管理します。

一方でまた欠品率の対象とならない商品についても滞留在庫リスクを意識して、在庫回転日数を監視します。

在庫回転日数を適切に管理すれば、売れ筋商品もそうでない商品も管理することが可能です。

すべての商品に対して、許容欠品率とともに在庫回転日数で許容範囲を設定することをお勧めします。

欠品かどうかは会社が決める

最後に、欠品の定義についてお話します。

品物が無くなった時に注文が入った場合、「欠品」ととらえるかどうかは、会社によって考え方が違います。

あなたの会社が欠品ととらえていても、ほかの会社は欠品と思っていないかもしれません。

例えば、下記のような場合は欠品ではありません。

  • 「数量限定販売」や「受注販売」で、売り切ったら終わり!という売り方
  • 「完全受注生産」で、在庫を持たないと決めて納期をもらう売り方。

つまり、会社の販売戦略によって欠品かどうかが決まります。

実際に、全てのものを欠品させないというのはほぼ不可能です。

欠品を恐れすぎると、あらゆるものの在庫をある程度の数で、持ち続けなければいけないため、会社が倒産する大きな原因にもなります。売上や利益を増やすための在庫が、会社を苦しめる・・・。何のために欠品を防いでいるのかがわかりません。

したがって、商品ごとに適正在庫を設定して、

  • 欠品率のコントロール
  • 在庫数量の上限
  • 在庫を持つ/持たない

全ての商品で在庫を持つ必要はなく、在庫を持つもの、持たないものを戦略的に決める必要があります。

これらは、担当者個々の判断に任せてはいけません。会社の方針によって決め、統一した意思決定の下で運用しないといけません。

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適正在庫の決め方と誰にでもできる在庫管理の仕組みづくりのコツ

欠品を重視する/重視しない会社の事例(ユニクロ対ZARA)

ここで、欠品を重視する企業、欠品を重視しない企業の例をご紹介します。

同じ業界や似たような商品を扱っていても、欠品に対しての考え方が違います。

先ほどの例で挙げた、アパレル業界の大手企業がとっている方法です。

  • ユニクロ
    「作ったものを売る」という考えを持っています。
    したがって、毎シーズンに需要期に店頭在庫を欠品させないため、欠品率を重要視します。商品は、ベーシックな商品が多く、商品点数は少な目です。
  • ZARA
    「売れるものをつくる」という考えを持っています。
    常に最新のファッション商品を店頭に並べることに注力して、売れ筋商品を欠品させないように補充するという考えはありません。常に最新の商品を並べるために、飛行機で輸送しています。(通常は船で運ぶことが普通です)

欠品率とサービス率の関係

最後に補足です。欠品率とともにサービス率という言葉があります。

サービス率は、欠品率の逆です。例えば、欠品率が 5%の場合、サービス率に言い換えると95%になります。

欠品率とサービス率の関係

どちらを使っても同じ意味ですが、意味を取り違えないように注意しましょう。

自社の適正在庫を知る方法

欠品は企業にとって、ずっとある課題です。一方で、欠品を恐れるあまり在庫を持ちすぎると過剰在庫や不良在庫になってしまう危険もあります。過剰在庫・不良在庫は、会社の資金繰りを悪化させ、最悪の場合は黒字倒産の原因になります。

他社との比較も大切ですが、まずは自社の適正在庫を知って、それを設定することができるようになることが大切です。

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