預かり在庫とは?預け在庫・委託在庫との違いとトラブルを防ぐ管理方法

預かり在庫とは?預け在庫・委託在庫との違いとトラブルを防ぐ管理方法 - 在庫管理110番取引先の商品や部材を自社で保管していると、「これは自社の在庫に含めてよいのか」「棚卸ではどう扱うのか」「破損や紛失が起きたら誰の責任になるのか」といった疑問が出てきます。

預かり在庫は、自社在庫と同じ場所に置かれることも多く、管理ルールが曖昧なまま運用すると、在庫差異や会計処理の誤り、取引先とのトラブルにつながります。

この記事では、預かり在庫の意味、預け在庫・委託在庫との違い、棚卸や会計処理の基本、トラブルを防ぐ管理方法を実務目線で解説します。

預かり在庫とは

預かり在庫の意味

預かり在庫とは、他社が所有する商品・原材料・部品などを、自社が一時的に保管している在庫のことです。現物は自社の倉庫や店舗、工場内にありますが、所有権は原則として取引先にあります。

たとえば、取引先から販売委託を受けた商品、顧客から預かって保管している部材、加工や検査のために一時的に受け入れた支給品などが該当します。

重要なのは、目の前に現物があるからといって、すべてを自社の棚卸資産として扱うわけではない点です。預かり在庫は、自社の販売用在庫や原材料とは分けて管理する必要があります。

預かり在庫が発生するケース

預かり在庫は、特定の業種だけで発生するものではありません。製造業、卸売業、小売業、物流業、EC事業など、他社の商品や部材を一時的に扱う事業では発生する可能性があります。

  • メーカーから商品を預かり、販売できた分だけ精算する
  • 顧客から部品を預かり、加工・修理・検査を行う
  • 取引先の在庫を自社倉庫で保管し、必要なタイミングで出荷する
  • 委託販売品やサンプル品を店舗・営業所に置いている
  • 長期契約の中で、顧客所有の部材を一定数保管している

このような在庫は、通常の入荷品と同じ棚に置いてしまうと、自社在庫と混ざりやすくなります。最初に「誰のものか」「何の目的で預かっているか」「いつ返却・出庫するか」を整理しておくことが大切です。

預かり在庫・預け在庫・委託在庫の違い

預かり在庫と混同しやすい言葉に、預け在庫や委託在庫があります。どれも「現物の場所」と「所有者」がずれる在庫ですが、視点が異なります。

種類所有者現物の保管場所主な管理者
預かり在庫取引先・顧客自社自社が現物を管理顧客から預かった部材、委託販売品
預け在庫自社取引先・外部倉庫など預け先と自社で管理外部倉庫に置いた自社商品、支給先にある部品
委託在庫契約内容による販売先・委託先など委託者・受託者で管理委託販売品、VMI対象品

違いは「誰の立場で見るか」で整理する

預かり在庫は、自社が他社の在庫を預かっている状態です。一方、預け在庫は、自社の在庫を他社に預けている状態です。

同じ商品でも、A社から見ると「預け在庫」、B社から見ると「預かり在庫」になることがあります。そのため、社内資料では「預かり」「預け」という言葉だけで判断せず、所有者・保管場所・管理責任者をセットで記録することが重要です。

委託在庫との違い

委託在庫は、販売や出荷、消費などを委託するために、取引先や販売先などに置いている在庫を指すことが多い言葉です。委託販売品やVMIのように、契約形態によって所有権や売上計上のタイミングが異なる場合があります。

そのため、委託在庫を扱う場合は、「どちらが所有しているか」「販売時点で所有権が移るのか」「売れ残った場合に返品できるのか」を契約書や取引条件で確認しましょう。

預かり在庫を管理しないと起こるリスク

自社在庫との混在で在庫差異が発生する

預かり在庫を自社在庫と同じ棚や同じ管理表で扱うと、棚卸時に数量を誤ってカウントしやすくなります。実在庫は合っていても、自社所有分と預かり分の内訳が分からなければ、帳簿上の在庫数や在庫金額がずれてしまいます。

特に、同じ品番・同じ荷姿の商品を扱う場合は注意が必要です。ラベルやロケーションを分けずに保管すると、出荷時に自社在庫と預かり在庫を取り違える可能性があります。

破損・紛失時の責任が曖昧になる

預かり在庫は他社の所有物です。保管中に破損や紛失が起きた場合、誰が費用を負担するのか、どのように報告するのかが決まっていないと、取引先とのトラブルになります。

たとえば、長期保管による劣化、棚卸時の数量差異、誤出荷、災害や盗難など、現場ではさまざまなケースが考えられます。契約書や覚書で責任範囲を明確にし、発生時の報告ルールを決めておきましょう。

棚卸・会計処理を誤る可能性がある

預かり在庫は、現物が自社にあるため、棚卸時に自社の在庫として数えてしまいやすい在庫です。しかし、所有権が自社にない場合、自社の棚卸資産に含めると、在庫金額や売上原価の計算に影響します。

会計処理は契約内容や実態によって異なるため、最終判断は税理士や会計士に確認する必要があります。ただし、現場管理の段階では「自社所有の在庫」と「預かり在庫」を明確に分けておくことが、会計処理の前提になります。

取適法・契約トラブルのリスクがある

預かり在庫そのものが直ちに違法というわけではありません。ただし、取引の実態によっては、保管費用の負担、返品、買いたたき、受領拒否などが問題になる可能性があります。

2026年1月から、従来の下請法は「取適法」として改正されています。公正取引委員会は、取適法について、発注者と受注者の取引適正化を目的とする制度として案内しています。預かり在庫や委託在庫を扱う場合も、契約上の立場や費用負担が一方的になっていないか確認することが大切です。

預かり在庫のメリット

取引先にとってのメリット

取引先にとっては、必要な場所に商品や部材を置けるため、納期短縮や販売機会の拡大につながります。顧客の近くに在庫を置くことで、急な注文や修理対応にも対応しやすくなります。

  • 必要なタイミングで出荷・使用できる
  • 自社倉庫の保管スペースを抑えられる
  • 販売先や加工先の近くに在庫を置ける
  • 販売機会や納期遅れを減らしやすい

自社にとってのメリット

自社にとっても、預かり在庫を適切に扱えば、取引先との関係強化やサービス品質の向上につながります。特に、加工・修理・販売・物流などの業務では、預かり在庫を正確に管理できることが信頼につながります。

ただし、メリットを得るには管理体制が前提です。保管料や管理工数が曖昧なまま預かり続けると、現場負担だけが増えてしまうため、契約条件と運用ルールを整えてから受け入れることが重要です。

預かり在庫の管理方法

契約・預かり条件を明確にする

預かり在庫を扱う際は、まず契約書や覚書で条件を整理します。口頭の約束だけで運用すると、在庫差異や破損が起きたときに責任範囲を確認できません。

少なくとも、以下の項目は事前に決めておきましょう。

  • 預かる品目・品番・数量・単位
  • 所有権の所在
  • 保管場所と保管期間
  • 入庫・出庫・返品・廃棄のルール
  • 破損・紛失・劣化時の責任範囲
  • 保管料や管理費の有無
  • 棚卸報告の頻度と報告方法

自社在庫と物理的に分ける

預かり在庫は、自社在庫と同じ場所に置くほど取り違えが起きやすくなります。可能であれば、専用棚、専用ロケーション、専用ケースを設け、現物の置き場を分けましょう。

保管場所を完全に分けられない場合でも、ラベルや色分け、管理札で「預かり在庫」と分かるようにすることが大切です。品番が同じ商品ほど、現物を見ただけでは区別できないため、ラベル管理が有効です。

システム上も区分して管理する

物理的に分けるだけでは不十分です。在庫管理表やシステム上でも、所有区分を分けて登録しましょう。

管理項目記録する内容
所有区分自社在庫/預かり在庫/預け在庫など
取引先名所有者・委託元・顧客名
品番・品名自社品番と取引先品番があれば両方
数量・単位個・箱・ケース・kgなど
保管場所倉庫・棚番・ロケーション
入庫日・出庫日いつ預かり、いつ動いたか
保管期限返却・出荷・確認の目安日
状態良品・保留・破損・要確認など

入出庫履歴を必ず残す

預かり在庫で数量差異が起きたとき、最初に確認するのは入出庫履歴です。いつ、誰が、何を、何個動かしたのかが分からなければ、原因を追うことができません。

手書きやExcelで管理する場合も、履歴の上書きは避けましょう。残数だけを更新するのではなく、入庫・出庫・返品・廃棄・移動の履歴を残すと、後から差異の原因を確認できます。

定期棚卸と在庫証明を行う

預かり在庫は、取引先から数量確認を求められることがあります。月次、四半期、決算期など、報告頻度を決めて棚卸を行いましょう。

必要に応じて、在庫証明書や在庫報告書を作成します。記載項目は、取引先名、品番、品名、数量、保管場所、棚卸日、確認者などです。決算や監査に関係する場合は、取引先が必要とする形式を事前に確認しておくとスムーズです。

長期滞留・廃棄・返却ルールを決める

預かり在庫でよくある問題が、長期放置です。担当者が変わった、取引が終了した、商品が古くなったなどの理由で、誰のものか分からない在庫が残り続けることがあります。

長期滞留を防ぐため、保管期限を設定し、一定期間動きがない在庫は取引先へ確認するルールを作りましょう。勝手に廃棄するとトラブルになるため、廃棄や返却は必ず取引先の承認を得て記録に残します。

預かり在庫の棚卸・会計処理

預かり在庫は棚卸資産に含めるのか

一般的には、所有権が自社にない預かり在庫は、自社の棚卸資産には含めません。現物が自社にあっても、他社所有であれば、自社の資産として評価する対象ではないためです。

ただし、契約上の所有権移転のタイミング、返品条件、販売委託の形態などによって判断が変わる場合があります。会計処理に関わる部分は、契約書と取引実態をもとに税理士や会計士へ確認しましょう。

売上計上・仕入計上のタイミングに注意する

預かり在庫に関する売上計上や仕入計上は、取引形態によって異なります。商品を預かった時点で売上や仕入を計上するとは限りません。

たとえば、販売委託の場合は、実際に販売された時点で精算する契約もあります。一方、すでに売買が成立しており、単に引き渡しや保管を代行している場合は、別の処理になる可能性があります。収益認識については、企業会計基準委員会が公表している「収益認識に関する会計基準」なども確認しつつ、実務では専門家へ相談するのが安全です。

現場管理と会計判断を分けて考える

現場担当者が行うべきことは、会計判断そのものではなく、判断に必要な情報を正確に残すことです。所有者、数量、入出庫日、販売・使用・返却の実績、保管状態が記録されていれば、経理や専門家が判断しやすくなります。

逆に、現場の記録が曖昧だと、経理側でも正しい処理ができません。預かり在庫の管理は、現場と経理をつなぐ重要な業務と考えましょう。

Excel管理とシステム管理の使い分け

Excelで管理できるケース

預かり在庫の品目数が少なく、入出庫頻度も低い場合は、Excelでも管理できます。取引先が限定されており、担当者も少ない場合は、管理表を整えるだけで十分なケースもあります。

ただし、Excel管理では、ファイルの更新漏れ、二重入力、担当者ごとの表記ゆれ、履歴の上書きが起こりやすくなります。Excelで管理する場合は、入力ルール、保存場所、更新担当者、バックアップ方法を明確にしましょう。

システム導入を検討した方がよいケース

次のような状態になっている場合は、在庫管理システムの導入や運用改善を検討した方がよいでしょう。

  • 預かり在庫の品目数や取引先数が多い
  • 複数拠点で預かり在庫を管理している
  • 現場と経理で数量や認識が合わない
  • 棚卸のたびに差異が発生する
  • 担当者が変わると管理方法が分からなくなる
  • 取引先への在庫報告に時間がかかっている

システム化の目的は、単にExcelを置き換えることではありません。預かり在庫を自社在庫と区分し、入出庫履歴を残し、必要なときに取引先別・品番別・保管場所別に確認できる状態を作ることです。

預かり在庫管理チェックリスト

預かり在庫を受け入れる前後で、以下の項目を確認しましょう。

確認項目チェック内容
所有者誰の在庫か明確になっているか
契約条件保管期間・責任範囲・費用負担が決まっているか
保管場所自社在庫と混ざらない場所を設定しているか
識別方法ラベル・棚札・管理番号で区別できるか
入出庫履歴日付・数量・担当者を記録しているか
棚卸定期的な数量確認と報告ルールがあるか
破損・紛失発生時の報告先と負担ルールが決まっているか
長期滞留返却・廃棄・確認の期限が決まっているか
会計連携経理へ必要な情報を渡せるか

よくある質問


質問する人
質問者
預かり在庫は違法ですか?


在庫管理110番
在庫管理110番
預かり在庫そのものが直ちに違法というわけではありません。ただし、取引先に一方的な負担を押し付ける、保管費用や返品条件を曖昧にする、契約内容と違う扱いをするなどの場合は、取引上の問題になる可能性があります。取適法や契約条件に関わる場合は、専門家へ確認しましょう。

質問する人
質問者
預かり在庫の英語は?


在庫管理110番
在庫管理110番
文脈によって異なりますが、「inventory held on behalf of another company」「consignment inventory」「custody inventory」などと表現されることがあります。契約書や海外取引で使う場合は、単語だけで判断せず、所有権や責任範囲を英文で明確にすることが重要です。

質問する人
質問者
預かり在庫証明書は必要ですか?


在庫管理110番
在庫管理110番
必ず必要とは限りません。ただし、取引先の決算や監査で数量確認が必要になる場合、在庫証明書や在庫報告書を求められることがあります。事前に必要な記載項目と提出時期を確認しておくと安心です。

質問する人
質問者
預かり在庫の保管料は請求できますか?


在庫管理110番
在庫管理110番
請求できるかどうかは契約内容によります。保管料を請求する場合は、保管期間、数量、スペース、管理作業の範囲を明確にしたうえで、事前に合意しておくことが重要です。後から請求するとトラブルになりやすいため、受け入れ前に条件を決めておきましょう。


まとめ

預かり在庫は、他社が所有する商品や部材を自社で保管している状態です。自社の倉庫や店舗に現物があるため、通常の在庫と混同しやすいものの、所有権や会計処理、責任範囲は自社在庫とは異なります。

管理で重要なのは、所有者を明確にし、自社在庫と分け、入出庫履歴を残し、棚卸や報告のルールを決めることです。預かり在庫を適切に管理できれば、取引先との信頼関係を保ちながら、在庫差異やトラブルを防ぎやすくなります。

一方で、契約条件や会計処理が曖昧なまま運用すると、現場負担が増え、経理処理や取引先対応にも影響します。預かり在庫が増えてきたら、管理表やExcelの見直しだけでなく、業務フローやシステム化も含めて管理体制を整えましょう。

参考・出典

公正取引委員会「取適法」

企業会計基準委員会「棚卸資産の評価に関する会計基準」

企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準」

在庫管理110番「実地棚卸の方法」

在庫管理110番「アナログで在庫管理をする方法とデジタル化」

預かり在庫の管理でお困りの方は在庫管理110番へご相談ください

預かり在庫は、自社在庫との区分だけでなく、入出庫履歴、棚卸、長期滞留、取引先への報告など、複数の業務を横断して管理する必要があります。

「預かり在庫と自社在庫が混在している」「棚卸のたびに数量差異が出る」「管理方法を見直したいが、どこから着手すべきか分からない」とお悩みではありませんか?

在庫管理110番では、在庫管理の専門家が現場の状況をヒアリングし、管理ルールや業務フローの見直し、必要に応じたシステム活用まで、課題に合わせてご提案します。預かり在庫を含めた在庫管理体制を整えたい方は、まずは無料相談をご利用ください。

【無 料】
在庫管理アドバイザーに相談する