製造業や物流業、卸売業では生産管理業務のシステム化が進んでいます。
しかし、小さな会社では、直接生産に関わらないのでムダ、うちには必要無い、導入したいけどどうすれば良いかわからない・・・という会社が多いと思います。
実は、生産管理はその歴史が長いために「基本理論」がほぼ確立しているので、基本を守ればどんな企業でも導入可能です。
生産管理の導入を成功させるポイントは、基本理論に基づいた「実践」をどう効率的・効果的・低コストで行っていくかがです。
この記事では生産管理の基本的な考え方を解説しながら、特に中小企業の生産管理のシステム化のポイントを解説します。
目次
生産管理は中小企業にこそ導入してほしい
生産管理は大企業だから必要な仕組みでありません。
人手不足、賃上げ、原材料高騰で悩んでいる中小企業こそ導入してほしい仕組みです。
大手製造業が生産管理を導入している理由は、少なくとも次の3点が一度に実現するからです。
- 生産性の向上(少ない人員で利益率の向上)
- 適正在庫(機会損失の削減と、キャッシュフローの改善)
- 生産リードタイムの短縮(納期短縮と在庫削減)
大手企業は、生産管理によって上記の恩恵を確実に受けています。
生産管理の情報を専門書やウェブでの情報を見ると複雑で難しく書いてあるので、ある程度大きな企業だけに必要な仕組みと関係すると思われがちです。
そのため、中小企業の多くは、片手間の管理や、作業者任せの生産を行っていることが多く、統制された生産管理を行っていないのが現状です。
また、生産管理を導入するために、は、システム会社に進められるがままに、生産管理システムを導入したものの、ほとんど使いこなせず生産管理の効果を実現できていない会社はとても多いです。
繰り返しになりますが、生産管理はその歴史が長いために「基本理論」がほぼ確立しているので、基本を守ればどんな企業でも導入可能です。
生産管理の導入を成功させるポイントは、基本理論に基づいた「実践」をどう効率的・効果的・低コストで行っていくかがです。
ポイントさえしっかりと押さえれば中小企業でも生産管理は必ず導入できます。
システム化とデジタルトランスフォーメーション
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)化が社会全体で進んでいます。
社会全体で進んでいる理由は、単なるブームではなく、人手不足や生産性向上の実現に、確実に効果のあるからです。
DXとは「組織や企業がデジタル技術を活用して、業務や、顧客体験、および組織自体の変革を進めるプロセス」を指します。
つまり、デジタル技術(コンピュータやインターネットなど)を利用して、業務のやり方を変えて、効率を上げるとともに顧客満足度を向上させることが可能です。
具体的には製造業でいえば、例えばCADシステムの導入によって設計業務の効率が劇的に上がった例などが挙げられます。そして、生産管理のシステム化もDX化の一種と言えます。
生産管理とシステム化はとても相性が良いので、生産管理の導入する際に一緒にシステム化することをお勧めします。
中小企業でシステム化が進まない理由
このように業務のDX化は、飛躍的に業務の効率をあげ、顧客満足度を向上させることができます。
生産管理のシステム化は、人力だけでは煩雑な生産管理業務の効率を上げることができます。
システム導入にはそれなりにコストがかかります。さらに、最初は人の教育にも手間がかかります。
また、今までのやり方や習慣を変えたくないと、新しい試みに対して否定的な場合もあります。
しかし、それにも関わらず、大手企業が生産管理のシステム化を強力に進めている理由は、成功した時のメリットが非常に大きいため、競争力の維持や人手不足の解消の観点から様々な分野でDX化が進んでいるのです。
生産管理のシステム化が中小企業で進まない理由
しかし、中小企業ではDX化やシステム化が思ったほど進んでいません。これはなぜでしょうか。いくつか原因が考えられますが、主な理由は以下のようなものです。
導入コストの問題
すでに述べましたが、生産管理システムの構築には、初期費用がある程度かかります。
この負担が、多くの中小企業では無視できません。本来の業務での採算があまり良くないのに、結果のはっきりしない新しい試みにあまりお金を使いたくないというのが多くの中小経営者の本音ではないでしょうか。
システムの規模の問題
これは先ほどの導入コストとも連携する問題です。
生産管理システムの規模が大きすぎたり、機能が多すぎて使いこなせなかったり、操作が複雑になったりして、あまり活用されない場合があります。
提案された生産管理システムが、導入した企業の規模やレベルに見合った適切なものではないことが多いです。
思い込みや変なこだわりがある。なじみが薄い
経営者や社員に、変なこだわりや思い込みがある場合があります。
「うちの仕事はデジタル化できない」とか「デジタル化すると社員の仕事が減る」といった思い込みがある場合があります。
さらに、「昔から、そうしてきた」とか「今更、仕事の流れを変えたくない」と思っている場合もあります。
つまり、職人気質が強すぎて新しいものに拒絶反応を示す場合もあります。また、単純にシステム化の経験が無く、なじみが薄いという場合もあります。
デジタル技術を信用していない場合
そもそもデジタル技術そのものを信用していない場合もあります。
例えば独力で生産管理システムを導入したが思ったほど成果が出なかった経験があったとか、インターネットを使用していて嫌な経験をしたことで、デジタル技術そのものを信用していない場合もあります。
積極的なシステム化が必要ない場合
零細企業や工房的な企業の場合など、業務量(件数)があまり多くない場合、積極的なシステム化を行うとかえって仕事の効率や質が低下する場合があります。
また、課題によっては、積極的なシステム化を行うまでもなく、考え方や見方を変える、作業改善を行うだけで効率を上げられる場合もあります。
生産管理のシステム化を行う際のポイント
以上のように、中小企業が生産管理をシステム化するには様々ハードルがあります。
そして、これらのハードル・リスクを乗り越えるためには工夫が必要です。効果的な工夫は以下の通りです。
業務の棚卸で自社の生産工程を理解する
生産管理は業務プロセスそのものです。生産管理の仕組み作り、システム導入の前に、現在の業務の客観的な分析を行う必要があります。
自社の生産プロセスを明らかにしましょう。
スモールスタートで失敗リスクを避ける
中小企業が生産管理システムを導入する場合は、欲張らずに最初は最小限の機能で導入し、業務規模の拡大に伴って機能を拡大できるように設計されているものを選定しましょう。
従来の生産管理システムは規模が大きすぎて、自社の規模やレベルに合わず導入が難しい場合がほとんどです。
生産管理は段階的な導入が可能です。生産管理システムも企業規模に合わせて開発規模を調整できるものもあります。
補助金や助成金の活用で導入コストを下げる
生産管理システムの導入には、補助金が使える可能性が高いです。
有名な補助金は、次の2点です。
- IT導入補助金
- ものづくり補助金
また、生産性の向上もシステム導入の理由になることから、助成金も活用できます。
国の補助金、助成金だけではなく、会社のある県や市町村が独自の補助金や助成金を実施していることもあります。
取引先との連携
まだFAXでやり取りをしていませんか?
取引先との連携も重要です。取引先が「紙」でのやり取りを要求しているのに、こちらでは「オンライン」でのやり取りを望んでいたのでは取引そのものが成り立ちません。
もっとも、最近では納入先から電子化を要求され、こちらがそれに対応できないといった場合も多くなってきています。
生産管理に詳しいコンサルタントの支援を受けることがおすすめ
冒頭でお伝えした通り、生産管理は「基本理論」がほぼ確立しています。
裏返せば、「基本」をきちんと理解せず、手順を守らず、自社の我流だけで生産管理を導入しようとすればほぼ間違いなく失敗するということです。
中小企業が、生産管理の導入がうまくいかない理由はこの1点です。
こだわりや思い込みでやりたいことを優先するあまり、「基本」を無視して疎かになっているため、生産管理の導入に失敗します。
基本を守ればどんな企業でも導入可能です。
生産管理の仕組み作り、自社の規模やレベルにあったシステムの導入は、経験豊かなコンサルタントに依頼するのが一番いいです。
その意味でも、コンサルタントには中小企業の「現場を知っている」ことが要求されます。
現場経験の無い、システム会社には適切な規模の生産管理システムの選定と設計を主導することはできません。
また、コンサルタントは補助金や助成金の制度に詳しいことも多く、導入コストを抑えながら、自社の規模にあった効果的な生産管理ができるようになります。
コンサルタントには様々なタイプがいます。コンサルティング会社のセミナーをいくつか受講し、自社に合っているコンサルタントを探してみましょう。
もっとも、最近では中小企業の事情を良くくみ取った生産管理ソフトや、実践を重視したコンサルタントが増えてきています。まずは理論だけではなく「現場で揉まれた」コンサルタントを探してみてはいかがでしょうか。
【無料】生産管理の仕組み作り、システム導入について相談する
とかく中小企業は経験と経験だけに頼って動きがちです。また、日常の業務に追われてしまうか、現状に慣れてしまって、状況が悪化してから慌てて対応策を考えがちです。そして、多くの場合、システム化やDX化は導入した翌日から成果が出るものではありません。焦ってシステムを導入しても成果は絶対に出ません。
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