システムを導入する(それまでは紙とエクセルだけでやっていた)ので、商品登録をやらなければいけない。
- 商品コードの採番が必要だが、なぜ必要かを伝えられず現場から面倒だと渋られている
- 商品登録を丸投げされており、商品コードのほかに何を管理項目として登録すれば良いのかわからない。
というご相談がありました。
その方は、漠然とシステムを導入する=商品登録が必要
と思っているようで、「とにかくやってほしい」という考えしかありません。
商品マスタ(品目マスタ)は、在庫管理システムの中で最も重要なマスタで、手を抜いてはいけません。
そこでこの記事では、
- 商品コードを取らなければいけない理由、無いとなぜ困るのか?
- 商品マスタをしっかりと整える理由。きちんと整えていないとどうなるのか?
という事を、これまでの経験やコンサルティング、個別相談から在庫管理システムの専門家の視点からお伝えします。
採番方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
目次
システムでやりたいこと・知りたいことから考える
その方にまず質問をしたのは、やりたいこと、知りたいことは何ですか?
でした。システムの導入は目的ではなく手段のはずです。
まず、システムを導入するということは、何かやりたいことがあるはずです。
やりたいことは大きく分けると次のようになります。
- 今までやっていたことをもっとできるようにしたい(楽にしたい、もっと細かく知りたい)
- 今までできなかったことをやれるようにしたい(やるべきだったがシステム無しには不可能だった。やれるが手作業では膨大な時間がかかった)
分類するとこんな感じになります。
大切なのは「何をやりたいか?」という事を具体的にしていくことです。
やりたいことも立場によって変わります。例えば、
- 経営者は全体・各部門の売上や経費や利益率
- 管理者は、自部門・他部門の売上や実績値(販売数量)、商品分類ごとの売上金額(数量)
- 担当者は、発注数の手がかり、データの照合、転記(書き写し)
それぞれどんなことをやりたいかを聞きます。
これをすることで、どんな管理項目が必要かが分かります。
もっと細かく・具体的に知る
管理項目で一番代表的なのが、商品分類(カテゴリー)です。
例えば、理美容用品を扱っている卸売業で、売上を知りたい!というニーズがあったとします。
商品分類を登録していなければ分かるのは、各商品の売上と全商品の売上だけです。
品分類群ごとの販売数や金額を知ることで、商品ラインナップの改廃やもっと売り上げを伸ばすこともできるでしょう。
例えば、理美容であれば商品分類(カテゴリー)を登録します。
- シャンプー・リンス類
- カラー剤
- カット用品(ハサミ・バリカン等)
です。
分類を分ければ、自社が強化していった方が良い商品群、逆に切り捨てて行った方が良い商品群を分けることもできます。
ちなみに、分類を細かくすればするほど詳細な分析ができるようになります。
分類以外にも、商品管理で登録する項目を工夫すればいろんなことがもっと細かく、具体的に知れるようになります。
手作業で管理できなくはないが楽に・簡単にしたい、正確にしたい
特にシステムを入れることで楽に・簡単になるのは、次の2点です。
- 探す(検索)
- 集計・照合作業
- アラート(お知らせ)
データ検索
システムの導入で最もわかりやすいメリットは検索です。
登録する商品が膨大になった時、探す作業は大変です。
私が実際にシステム化して助かった事例は、発注書の検索です。
私がいた会社は、毎週2回、500枚以上の発注計画書を作成して、ファイリングしていました。
背表紙の厚さが6cmもある分厚いチューブファイルが毎週2冊出来上がるイメージです。
過去の発注計画を探す際は、いつもチューブファイルを引っ張り出して、1枚ずつめくって探していました。
しかし、これをシステム化して、一発で検索できるようになりました。ちなみに時間にして、
- チューブファイルから手作業で検索:約50秒
- システムで検索:約5秒
効率化は明らかです。
集計(データまとめ)や照合(突合)
毎月売り上げをまとめているなど、定期的にデータをまとめる作業はありませんか?システムがあれば、そういった作業はボタン一つ
でできるようになります。(設定次第では、自動で作成も可能です)
データの照合(突合せ)もよくある作業です。システム化することで、照合作業が自動化されたり、そもそもいらなくなる可能性もあります。
また、人間がやるとどうしても起こりがちなミスについても、システムで行うことでほぼ0にすることができます。
お知らせ・アラート(基準値・期日管理)
このほかにも考えられるのは、アラート管理です。アラートとは基準や期限管理です。
在庫管理で最も一般的なアラート管理は、「発注点」でしょう。
発注点を登録しておくことで、設定数に達した商品をお知らせし、欠品を防ぎます。
また、扱う商材によっては、使用期限や消費期限が決まっているものもあるでしょう。
期日管理が必要な代表的な品目は食品関係ですが、塗料やバッテリーなども期日管理なことがあります。
システム無しで手作業で管理しようと思えば可能です。方法としては、使用期限を仕入れたときに貼っておき、
それを定期的に点検、期日が来たものを廃棄する・・・という方法です。
しかし、やれなくは無いですが、やるのは時間もかかるし大変です。そして見落としもあるでしょう。
管理項目として、期日を設定しておけば、仕入れ日から登録した日数を経過した商品を計算して、自動でお知らせするという事も可能です。
将来にわたって考える(やりたいことだけではなく起こることも)
「やりたいことを教えてください」というと、たいていは、今やりたいことだけつまり、目先の事だけ考えがちです。しかし、少し先の事まで考えておくと良いでしょう。
例えば、セット品(複数の商品を組み合わせて1つの商品にする。お歳暮などが分かりやすい。製造業なら製品を作るための部品や原材料)を今後作る可能性が高いなら、セット品が作れるようにマスタを準備しておきます。たいていのシステムは、導入時に準備しておいた方が、設定やカスタマイズが安く済みます。後から追加すると、システム内部の設計を大幅に変更しなければいけない・・・ということもあり、膨大な費用がかかるどころか、最悪の場合行き詰まってしまい実現すらできないこともあります。
こういった事が起こらない(絶対に起こらないとは言えないので、起こる可能性をできる限り小さくする)ように準備しなければいけませんが、そもそも「知らない」と準備すらできません。
システム導入初期で大切なのは、業務に詳しく将来起こり得ることを想定できる人です。
システム屋さんに丸投げはとても危険です。商品マスタは特に長い視点で考えておかないといけません。
システム化は家づくりに似ている
私は、在庫管理システムの導入や入れ替えのご相談を受けるときに、「システム化は家づくりと同じですよ」とお伝えしています。
その理由は2つあります。
- 家は一生に1度あるかどうかの買い物なので、経験値を詰めないので専門家に助力してもらった方が良い。(ただし、大工=システムを構築できる人だけではなく、設計=仕組みを考えられる人が必要)
- システムは長期的に使うので、将来プランを考えておくこと
例えば、家でも
- ずっと単身(夫婦2人+子供1人、子供は20歳くらいで家から出る)
- 今は単身だけど将来二世帯(夫婦2人+子供1人、子供は20歳くらいで家から出る、自分の親を受け入れる)
という場合はどう考えても作りが違うでしょう。つまり設計が違います。
そして2の場合も2パターン考えられます。
- 二世帯を見越しておいて、部屋やトイレを先に作っておく(将来に備えオーバースペックで作っておく)
- 現状は単身用として、二世帯にリフォームできるようにしておく(現状は単身に最適、親を受け入れたときにも最適にできるようにする)
1の場合は、長い間オーバースペックの状態が続きます。もっと言えば、もしかすると親が一緒に住まないかもしれません。
そうすれば、オーバースペックで作ってしまったところは使われないので、コストも無駄、単身には広すぎるので掃除なども大変になるでしょう。
2の場合は、設計当初に工夫をしておきます。
例えば、トイレの増設を考えるのであれば水回りを増設できるようにしておく、壁を取り払うのであれば、壁をとっても耐震性に問題が無いように
しておく等です。こうしておけば、リフォームの際に余計な費用をかけなくても、最小限の費用でリフォームができます。
システム化も同じです。将来起こりうることを知っておく(想定できる)ことができれば、余計な費用をかけなくても済みます。
システムを構築する際は、単に「システムをつくれる人」だけでは不十分です。在庫管理であれば、在庫管理システムの事を知っている人、在庫管理で将来的に起こりそうなことを予見できる人が必要です。
コードの採番は識別のために必要
システムを作る際に、必ず必要なのはコードを採る(採番する)ことです。
中でも大切なのは、商品マスタに登録する品目コード(品番ともいう。商品1点1点にコードを付けること。)ことだと考えています。コンサルティングやシステム導入でまず確認するのが、品目コードです。それくらい重要だと思っていただいて構いません。商品名や他の管理項目の事を考える前に一番に考えてほしい項目です。
ただ、次のような疑問を持っていたり、重要だと思っていても説明ができない方が多いようです。(あなたはいかがですか?)
- 商品名があるのに、なぜコードが必要なのか?
- コードを見てもどの商品かわからないのになぜコードが必要なのか?
コードを付ける最大の目的は、「識別」です。
商品を一意に特定する。(間違いなく、1つのものと指定する)ことです。
例えば、全く同じ商品でも、昨年のバージョンと今年のバージョンを分けたい場合は、品目コードを分けます。分けることで区別ができます。
(さらに、商品マスタに登録項目で、年度などがあると分類・集計もしやすくなります)
コードを採らないと、楽にならず返ってミスの原因が増える(表記ゆれ)
先ほど、システムを導入したらできることをお伝えしました。
しかし、コードを採らないとその恩恵が受けられなくなる可能性があります。その理由は、現状のシステム(デジタル)は曖昧を許さないからです。
人間は曖昧さを許すので、見るだけで修正ができます。たとえば、次の違いは何かわかりますか?
- カレンダー2022年度版
- カレンダー 2022年度版
- カレンダー 2022年度版
- カレンダー2022年度版
- カレンダー2022ねんど版
人間から見れば、全て2022年度版のカレンダーだということは当たり前にわかります。
しかし、システムから見ればすべて違うものとして認識されます。集計をする際に全て別のものとしてカウントされます。システムで集計しても信じられなくなります。
もちろん、エクセルや紙を使って「カレンダー2022年度版」と入力するように!というルールは作れますが、守れるかどうかは本人次第です。
つまり、集計の際は、事前にデータが合っているかどうかの確認をしなければいけません。
データを蓄積して活用(過剰在庫や欠品の防止)
コードを採っておくことで、商品の仕入れや販売・使用のデータがどんどん蓄積できます。私は業務システムの本質は、蓄積したデータの活用と考えています。
蓄積したデータを分析することで、過剰在庫や欠品を防ぐこともでき、特定の担当者にしかできなかった発注業務が、誰でもできるようになるといったメリットもあります。
20世紀は石油の時代と言われるように、企業の成長や競争にとって欠かせないものでした。21世紀は、データがその役割を果たすと言われています。
データの蓄積は一朝一夕ではできません。今急速に普及しつつあるAI(人工知能)も、データが無ければ、何もできません。
データを持つ企業とそうでない企業の差は大きく開くでしょう。そして焦って取り組んでも絶対に追いつけません。やっておけばよかったと後悔しても取り戻せません。
コードを採番して、今からデータの蓄積を始めましょう。
採番・マスタを維持するための注意点
最後に裁判をする際の注意点をお伝えします。
番号の持たせ方は主に2通りあります。
- 意味ありコード
- 意味無しコード
身近な例だと電話番号です。
例えば、アメリカから日本の携帯電話に電話をかける場合は、
011-81-90-XXXX-XXXX
となります。
意味ありコードは、
- 011:国際電話ですよという意味
- 81:国番号(日本ですよという意味)
- 90:携帯電話ですよという意味(最近は足りなくなったので80もある)
となっています。
それ以後の8桁は意味無しコードです。
それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。
私のおすすめは、原則意味無しコードにすることです。どうしても意味ありコードを使いたい場合は、次のように考えます。
- 採番する数が増える可能性が高いもの:意味無しコード(商品コード)
- 採番する数が増える可能性が低いもの:意味ありコード(分類コード等)
意味ありコードを使う際は、コードがパンクする(コードが足りなくなる)こと、意味付けの破綻が注意点です。
意味ありコードを振る際の注意点
意味ありコードを使う2つの問題点を解消するための注意点です。
- 余裕を持つ
- 当てはめるルールを決める
余裕を持つ(コードがパンクしないように)
システムを運用し始めた当初は問題が起こりませんが、将来的に起こりうる可能性が高いのがこれです。
例えば、ワイヤーハーネス類はWにして、コードを見ただけですぐにわかるようにしよう(頭文字をコード化することはよくある事です)
としたとします。しかし、運用を始めて他にもWで始まるもの(たとえば、単なるワイヤーとか)が出てきたらどうでしょうか?
この時点で、Wがワイヤーハーネスだけを示すというルールは破綻します。つまり、せっかく決めた意味ありコードが、意味をなさなくなってしまうという事です。
この問題はとても頻繁に起こっている問題です。これを回避するために予め、桁数を多くとって、破綻に備えます。
例えば、W01:ワイヤーハーネス、W02:ワイヤーといった感じです。
ルールを決める
例えば、ワイヤーハーネス類の分類コードはW、本体関連部品のコードはHだったとします。ここで質問です。
もし、本体に使うワイヤーハーネスがあった場合、その部品の分類コードは、Wでしょうか?それともHでしょうか?
正解は、決まっていなければどちらでも良いという事になります。
これは実際に私が実体験した話です。その時の状況です。
上司にワイヤーハーネスの使用頻度を調べたいから集計を取ってほしいという依頼を受けました。
集計をしてみると、結果が明らかに少なくておかしい・・・(作っている機械の台数と全く合わない)
部品マスタを調べてみると、ワイヤーハーネスの分類コードがWだったり、Hだったりと登録がバラバラでした。
このような状態では、分類コードが信用できません。(これだけではなく全て)
このようにならないためにも、分類コードを使う際のルールを決めておかなければいけません。
また、わからない場合は、わからない(たとえば、99:未分類)を作っておいて、その都度決めていくという方法もあります。
このように、コードの決め方にもある程度のテクニックがあります。システムを構築できる人だけではこの辺りは難しくて、システムを使うと何が起こるのか?
という事を考えられることが求められます。
メンテナンス
最後にメンテナンスの方法です。商品コードは長く使うものです。設定時と内容が変わってくるかもしれません。
その内容をきちんとマスタに反映する仕組みも作っておきます。
例えば、どんな業種でも必ず起こりうるのは、品番の廃番(その商品や部品を取り扱わなくなってしまうこと)です。
事業が続く限り、品番は減ることなくどんどん増えます。
廃番の仕組みを入れておくことで、生きてる品番と死んでいる品番を分けることができます。
廃番を分かるようにすることで、間違って発注をしたり、サイトに掲載してお客様の困らせたりすることを防げます。
また、品番登録日(更新日)から○○日という設定をしておいて定期的に見直すのも良いでしょう。
設計変更
このほか、製造業の場合は、設計変更で部品が変わることもよくあるでしょう。
設計変更を管理する仕組みを構築しておけば、新旧部品の切り替え時に、旧品が大量に余ってしまったとか、新品番が入ってこないという事を防ぐことができ、
スムーズな切替が可能です。
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