発注点とは、在庫が決まった数量になった時に、「補充せよ!」という指令を出す在庫量のことです。
次のイラストにある黄色の部分が発注点になります。
「発注点」とは、補充のきっかけとなる在庫数のことです。とくに発注点を利用した発注方法を「発注点発注」と言います。
例えば、次のように発注点を3個とした場合、在庫が3個になった時点で、発注を出します。(3個が発注点)

発注点発注を取り入れるメリット
- 専用のシステム不要:仕組みがシンプルなので運用方法を工夫すればエクセルや現場などでも簡単に実施できる発注管理方法です。
- 個人の感と経験に頼ることなく、誰でも簡単に発注できるようになる。
- 欠品・過剰在庫を防げる
正しい運用方法をすれば、複雑なシステムを入れなくても発注点は十分機能します。
もくじ
発注方法は4つある
発注点方法には、「発注する時期」と「発注量」の組み合わせによって大きく分けて4つあります。
- 発注する時期
定期 :決まった日付や曜日に発注する
不定期:何等かのトリガー(きっかけ)で都度発注する - 発注する量
定量:決まった量を発注する
不定量:発注時に発注量を決める
4つの発注方法はこちらで難易度順に紹介しています。
発注点発注は、不定期・定量発注になります。
つまり、発注点に達した時に、決まった数量を発注するのが発注点発注です。
不定量発注のように、発注時に発注数を決めなくても良いので、ベテランの発注担当者でなくても誰でもできる発注方法です。
それでは、発注点の決め方を解説します。
発注点の計算方法
発注点は以下の計算式で求めることができます。
発注点=平均出庫数量×(発注リードタイム)+安全在庫数
【注意点】
平均出庫数量、 発注リードタイムの単位は揃えてください。
単位とは、日、月、年等です。
例えば平均出庫数量を「日」(1日当たり○○個)で計算した場合、発注リードタイムも「日数」で計算します。
発注点を決める3つの要素
発注点を決める要素はたった3つです。
- 平均出庫数量:1日当たりの出庫数(使用数や販売数)
- 発注リードタイム:発注してから納品されるまでの日数
- 安全在庫:需要の変動を吸収するための在庫(平均出庫量の上ブレを吸収)
発注リードタイムを設定する際の注意点
材料の発注点であれば、発注してから納品されるまでの発注リードタイム、仕掛品の発注点であれば、生産着手から完了までの製造リードタイムが対象になります。発注リードタイム・製造リードタイムについて、以下の記事をご覧ください。
安全在庫数を設定する際の注意点
安全在庫は想定外の変動を吸収するものです。
ここでいう想定外とは、平均出庫量の上ブレ(思ったよりも多く使った、売れた)やリードタイム(納期遅れ)です。
安全在庫はそういった増減を吸収して欠品を回避します。
安全在庫が不要な場合は、設定する必要はありません。(安全在庫数=0)
安全在庫の計算方法はこちらを参照してください。
安全リードタイムを設定したい時
安全在庫を日数で持ちたい場合は、安全在庫リードタイムを設定します。
しかし、通常の発注点の計算式では、安全リードタイムを計算にいれられません。
そこで、次のように工夫をします。
発注点=平均出庫数量×(発注リードタイム+安全リードタイム)
発注リードタイムに安全リードタイムを加算することで、安全リードタイムを設定します。
初めて発注点を使って発注する場合
これから発注点を使って発注をしてみようと思っている場合は、発注リードタイムにもよりますが、1~2か月間ほど次の記録を取ってください。
- 毎日の出庫数量の記録:平均出庫数量を知るため
- 発注日から納入日までの日数:発注リードタイムを知るため
なお、安全在庫は上記の記録を使って、計算しましょう。
3つの管理項目の中で一番大切なものはわかりますか?
出庫数量(需要)ではありません。
リードタイムです。
なぜなら、リードタイムは管理可能だからです。出庫数量(需要)は、お客様次第なのでコントロールできません。
リードタイムは、仕入れ先や製造ラインが相手なので、需要を読むより断然ハードルが低いといえます。
記録から発注リードタイムを決めることもできますが、本来は仕入先との取引を開始する際に、発注条件の一つとして発注リードタイムを取り決ると良いでしょう。(これを標準リードタイムと言います)
標準発注リードタイムの設定は必須
発注点を設定するために絶対に欠かせないのが、標準リードタイムです。
発注点の計算式を見ると明らかなように、発注リードタイムが決まっていなければ発注点は計算できません。
つまり、発注リードタイムが決まっておらず、都度決めていては発注点は使えません。
発注リードタイムの設定無くして、欠品や過剰在庫を無くすことはできません。ましてや発注の効率化や自動化は程遠いです。
まずは標準リードタイムを設定しましょう。
発注点はメンテナンスが必要
需要状況は刻々と変化します。変化に合わせて発注点のメンテナンスが必要です。
発注点発注は、決まった数量を発注する定量発注なので、需要の変化に弱いのが弱点です。
一度定めた発注点をずっと使い続けることはできず、定期的な見直しが必要です。
安全在庫を増やすという方法もありますが、それでは単純に在庫が増えるだけなので得策ではありません。
発注点の見直し方
発注点を見直すタイミングをどう捕まえればよいのでしょうか?
それは、次の2点です。
- 発注頻度が増えた(減った)
- 発注頻度(発注間隔が短くなる)
上記のような現象が起こるのは、当初設定した平均出庫数よりも実際の出庫数が増減している証拠です。
私のお勧めは、1~3か月に1回、上記の指標に関係なく定期的に見直すことをお勧めします。特に周期的な需要変動(季節商品)のある商品の場合は、季節の変わり目などに必ず定期的な見直しは必須です。
安全在庫を増やしてしのぐという方法をとっている会社もあるようですが、これはお勧めできません。
安全在庫はあくまでも平均出庫量とリードタイムの変動を吸収するためのものなので、想定外のバッファー在庫にしておきましょう。
システムに任せてはいけない
在庫管理システムで「在庫を適正在庫にできますよ」といううたい文句がある時は、だいたい発注点の設定ができるということを
言っているだけです。在庫管理システムに正しい設定値を登録しておかなければ、どんなに立派な在庫管理システムでも動きません。在庫管理システムを設定するのはあくまでも人間です。それよりも大切なこと(平均出庫数の算出、標準リードタイムの設定)をまずは優先しましょう。
発注点発注はエクセルでもできる
実際に発注点発注は、「在庫が決まった数量になったら発注する」というシステムなので、専用システムではなくてもエクセルだけでも運用可能です。発注点発注方式は、しっかりとしたシステムが必要なMRP方式の発注よりも、中小企業で採用しやすい発注手法です。
もっと極端なことを言えば、システムが無くても運用可能なのが発注点です。例えば、現場に補充カードを用意しておき「5個になったら発注!」という記載をしておけば、エクセルが無くても、現場だけで発注点発注を運用可能です。
システムを使わない場合は、運用設計がとても大切で、誰にでもできる仕組みをつくればシステムは不要です。
この方法を使って、在庫削減と誰でもできる在庫管理の仕組みを実施した事例があります。
発注点発注に向いているもの・向かないもの
発注点発注はどんな商品や部品にも使える発注方法ではありません。
発注点発注をするための大前提として、発注をすれば仕入先が発注を受け入れてくれ、かつ発注リードタイムを守ってくれるものに限ります。仕入先の事情や輸送方法の事情で、発注を受け付ける日が決まっている、出荷する日が決まっているというものについては、発注点発注は使えません。代表的な発注点発注を使えないものは、船を使って輸送している輸入品です。船便は週に1回や2回といったように、運航スケジュールが決まっています。この場合は、発注点発注が使えず定期不定量発注(MRPなど)を利用しなければいけません。
2点目は発注リードタイムです。私の経験ではあまり発注リードタイムが長いものも不向きです。私の見立てでは、発注リードタイムが30日以下のものと相性が良いと考えています。
3点目は補足ですが、細かな在庫管理をしたいものにも不向きです。重要品や単価の高いしなもの、需要変動が激しすぎる品がこれに当たります。発注点発注はどうしても「定量」を発注するため、在庫が少し多くなる傾向にあります。不定量発注であればそういったことは起こりません。やはりその場合は、定期不定量発注を採用しましょう。
発注点を自動計算するエクセルフォーマット

発注点を自動計算するエクセルフォーマットを作りました。
発注点を設定するための3つの要素を入力するだけで、発注点を自動で計算できます。
さらに、目標の在庫回転日数を設定することで最適な発注ロット数や発注リードタイムをお知らせする機能も搭載しており、適正在庫化に役立ちます。発注点を計算するフォーマットが欲しい方はこちらからどうぞ。
発注点発注で適正在庫と在庫管理の効率化を
発注点発注には向き・不向きもありますが、採用する品を適切に選択して、適切な運用ができれば、最大限のメリットを享受できます。勘による発注がなくなり在庫削減が期待でき、ベテランでなくても発注できるようになるため、発注作業の効率化・自動化も実現可能です。
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