デジタルトランスフォーメーション、いわゆるDXというキーワードが浸透しつつある現在、企業では、経費削減や作業効率化、業務改革を目標として、情報システムの再構築が盛んに行われています。
しかし、システム導入したにもかかわらず、当初予定していた成果を上げることができないケースが本当に多いです。
それでは、どうしてシステム導入が失敗の結果となってしまう場合があるのでしょうか。
本記事では、実際のシステム導入でよく発生する失敗例とともに、原因・対策をご紹介していきます。
さらに、システム導入を成功に導くための重要なポイントも解説します。
この記事に書いていることは、システムを導入する企業にとって例外なく役立ちます。
システム導入でよくある失敗例と3つの原因
システム導入でよくある失敗例とその原因を3つご紹介します。
- システム導入目的、認識の不一致
- システムの複雑化
- 「○○だろう」による認識のズレ
【よくある失敗例1】システム導入目的、認識の不一致
複数の部門(担当者)がシステムを使用する際、各部門によってシステム導入の目的が異なり、結果として「何のためのシステム導入なのか分からなかった」と終わってしまうケースです。
- 営業の考え:毎月の予算ノルマがあるので、月次営業予算達成後の受注実績を翌月実績として延期したいと考えていた
- 情報システム部の考え:正確な受注実績の積み上げが必要という会社の方針に基づき、「営業予算達成後の受注実績を翌月実績として入力」は受け付けない設計とした。
このように両者が食い違った考えのままで、システムを開発し、運用を開始してみると、
営業から「実際には生産部によって生産が始まっているため、システム登録をしないわけにはいかないが、翌月の予算達成の都合で入力を延期したい。この場合、どのようにシステムを操作したらよいのか」
といった問い合わせが殺到することが予想されます。
原因
この例で、失敗の原因は、営業部と情報システム部のシステム導入の目的意識の不一致です。
情報システム部は、「事実に基づいた正確な情報の取得」という開発コンセプトへの理解を、営業部に丁寧に説明して理解をえるべきでした。
しかし、会社に求められた期日を守ることを優先するあまり、丁寧なヒアリングをする余裕が無く、ユーザー対応が困難になってしまいました。
結果として、営業の業務フローは今までと変わらず、現場で混乱が多発します。
現場の混乱を抑えるため、受注の仮登録機能を追加対応などを必要になります。
しかし、会社が本来考えていた当初考えていた業務改革方針である「正確な受注実績の積み上げ」の意義は失われ、システム導入の目的は果たせません。
【よくある失敗例2】システムが複雑化してしまった
様々な機能を追加してシステム導入したものの、ユーザーが複雑なシステムを使いこなせないため、想定した運用が出来ずに終わってしまうケースです。
例えば、地方営業所等では、営業2~3名とアシスタントだけという少人数の構成も少なくありません。
このような営業所では、担当地域が営業の人数に対してとても広く、日中は営業活動で忙しく、営業
自らが基幹システムの入力を行わず、アシスタントに商談情報をメモ書きにして入力依頼しているなどということもあるでしょう。
その場合、このアシスタント社員が業務フローすべてを理解できていない場合も多いことが考えられます。
しかし、情報システム部では、そういったアシスタントまでをシステムユーザーとして想定しておらず、営業担当者自らが入力するものと想定してシステム開発を進めていたため、アシスタントには操作が難しいシステムになってしまいました。その結果、アシスタントが複雑な業務情報を入力することは難しく、結果、営業担当者が直接入力せざるを得なくなってしまったため、基幹システムへの登録が滞ることで、営業所を管轄する地方支店での管理が遅れ、ひいては全社の管理や集計が遅れてしまうこと予想されます。
原因
この例の場合、営業部と情報システム部の使用ユーザーの認識不一致が失敗の原因と考えられます。
機能は多い方がシステムとして優れていると考えてしてしまったシステム側の意図に反し、ユーザー側はその機能の多さ故に、必要な機能までも使いこなせなくなってしまいました。
また、このように機能はたくさんある方が良いとの誤解があると、本当は必要ではない機能を追加してしまう原因になります。機能が多いと、それだけマニュアルが多くなり、ユーザー教育も多くなってしまうので、結果として無駄な費用が発生します。
このような状態になってしまうと、本来の目的であった「業務効率化」を達成することもできません。
【よくある失敗例3】「○○だろう」による認識のズレ
「○○だろう」がシステム導入を失敗します。
- システム開発者の○○だろうは、一般的な業務の進め方はこうだろう、だからこの機能ははこう開発すれば良いだろう。
- 業務をしている人は、うちのやり方はこうだから、自社のやり方をわかってくれているだろう
在庫管理110ではシステム開発を行っていますが、「発注(仕入れ)管理」一つとっても、各社微妙にやり方や要望が違います。
一般的な発注管理に求められる機能では、不足であることがほとんどです。
システム開発でありがちなのは、開発者への丸投げです。
開発者は、システムを作るプロで一般的な業務の流れは知っていても、あなたの会社の業務は知りません。
しかし、一般とは違う自社ルールによる個々の会社のやり方が必ず存在します。(長くいる人ほど自分たちのやり方が一般的だと信じていますが・・・)
例えば、一言で機械組み立て業の「生産管理システム」といっても、会社によって持っている設備や外注の使い方、部品の調達方法なども本当に様々です。
不明瞭な部分を「○○だろう」で進めてしまうと、うちのやり方と違う、分かっていると思っていたのに!!と必ず認識のズレが起こり、システム導入は失敗します。
システム導入を成功させるための対策
費用と時間をかけてシステムを導入しても、その結果が出なければ、元も子もありません。
システム導入を失敗で終わらせないために、どんな対策をとればよいか見ていきましょう。
システム導入の目的を明確にし、具体的な共通認識で一致させる
システム導入時は、企業の考えとして、次の点を必ずドキュメントとして明示します。
- 何を目的にシステム導入を行うのか
- どこまでの業務範囲をシステム化するのか
- 業務を行う上での課題
上記は、システム導入に関わる人だけで共有するのではなく、関係する社員皆さんに周知徹底して、同じ方向(共通認識)を向く必要があります。
またその際は、「業務効率化のため」などと抽象的に伝えるだけではいけません。
例えば、「業務時間を50%削減する」といったように具体的に、かつ全員が同じ認識を持った回答を言えることが必要です。
業務の課題洗い出し・業務フローの整理・業務標準化を行う
システム導入の前に、必ず実施しなければいけないのは、次の3点です。
- 現状の業務の課題洗い出し
- 業務フローの整備
- 現状の業務の標準化
これらの作業は、「現在、企業にどんなシステム機能が必要なのか」を明確にすることができるため、ベンダーへの適切な要件定義(ユーザーからの要望のシステム機能への落とし込み)の依頼や最適なベンダー選定にも有用な手段です。
また、複数の部門に跨ったシステム導入を行う場合、会社全体で業務効率化を達成するために、関係する部署間で何度か議論を重ねることも大切です。
事前に業務フローを整理することで、システム導入をよりスムーズに進めることができます。
開発コスト面でも有効
業務の課題洗い出し、業務フローの整理、標準化は
- 複雑化・属人化した業務を標準化することは、システムをシンプルにすることができます。その結果、開発コストを下げられる。
- ベンダーが行う要件定義ができるので、見積の精度が高まり、予期せぬ内容による追加開発費、見直し開発費などが発生にしくくなり、見積に近い金額での開発が可能になります。
- シンプルなシステム機能、追加・見直し開発が無くなるため、開発期間も短くなります。
開発と現場(ユーザー)が協力してシステムを構築する
システム開発者は、システムを開発するプロであっても、あなたの会社の業務を知り尽くしていません。
一方で、あなたはその会社で仕事をしているため業務のプロです。
丸投げせずに、協力して進めていきます。
協力して進めるためには、システム導入を推進する会社幹部、プロジェクトリーダー、システム開発者は、
システム導入をすることで作業負荷が軽減されることや、残業時間抑制に繋がることを伝え、システム導入が双方のメリットになることをアピールしましょう。
その上で、システムユーザーの意見を適切に取り入れ、ユーザーにとって有用となるシステムを構築していきます。
システム開発部門が先頭に立って働きかけることは必要ですが、現場とシステム部門が協力して導入を進めることで、より本来の目的達成ができるシステム構築ができるでしょう。
まとめ:失敗例から学び、システム導入を成功に導く
システム導入は、業務効率化や働き方改善のきっかけにもなりますが、失敗に終わる可能性もあります。また、システム導入は企業にとってお金も時間もかかるため、絶対に失敗は避けたいはずです。
今回解説した内容をまとめますと、
システム化でよくある3つの失敗は、
- システム導入目的意識の不一致(何のためのシステム導入なのか分からなかった)
- システムが複雑化してしまった(機能をとりあえず、詰め込む。)
- ユーザーと開発側の認識の不一致(~だろう)による思い込み)
失敗を防ぎ成功させるための対策方法は、
- システム導入の目的と範囲をドキュメントで明確にして、全員が具体的な共通認識を持つ
- 課題の洗い出し、業務フローの整理、標準化の実施
- 開発と現場(ユーザー)が協力してシステムを構築する
上記がどんな企業にも起こり得る失敗と、それに対応するための方法です。
在庫管理システムの構築・導入は専門家にお任せください
システム導入を企業にとって良い結果とするためには、本記事を参考にしていただき、システム導入を失敗で終わらせないための対策をきちんと立てていきましょう。
しかし、多くの会社では長く会社にいると、自社のやり方が当たり前になりすぎていて、課題や本当はやらなければならないことに気づけません。
そんな時に役立つのが実務知識を持った外部専門家の活用です。
一般的なシステム会社は、当然ですが業務経験はないため、実務のことを全く理解していません。言われた要望を機能化することしかできません。
一方、在庫管理110は在庫管理のコンサルティングを行う、実務と在庫管理の原理を知っている専門家です。
- 自社が課題と思っていない「当たり前のこと、習慣、昔からのやり方」が、実は会社の大きな課題だった
- 全く気づいていない(知らなかったこと)を実はやる必要があった
上記の2点は、在庫管理システムの導入を検討していたり、導入していてもうまく使いこなせず入れ替えを検討している会社にも共通して多い問題です。
専門家の目から、
- システム化を成功させるために必要なあなたの最大の課題の指摘
- あなたの会社の在庫管理レベルにあった機能や運用の提案(自社レベルとシステムが要求する設定レベルがかけ離れていると、使えない)
- システム導入をステップアップ方式でやっていき、シンプルかつ低コストでシステム化を進める提案
を実施できます。
在庫管理110番は、実務経験に基づく的確なカイゼンの支援とシステム化サービスを提供しています。
単に一般的な知識を発信するのではなく、経験者・実務者ならではの情報を元に、システム導入を成功導きます。
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今回、ご紹介したような失敗を避け、成功するための対策を自社だけで進める自信が無い・・・
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使い切れるシステムとは、システムに搭載されている機能を全て使うことができるシステムです。
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