在庫管理表をエクセルで作る際のポイントと手順、そして在庫管理の方法を分かりやすく解説します。
また、すぐに使えるエクセル在庫管理表の3種類のテンプレートを無料で配布しています。
無料在庫管理テンプレート特徴は以下の通りです。
- 業種を問わない:製造業や卸売業、小売業に限らず飲食店や薬局などでも使えます。
- 複数商品が管理可能:1シートで複数の商品を簡単に管理できます。
- 発注管理ができる:欠品しそうな商品が一目でわかります。
- 誰でも使える:知識のないパートやアルバイトでも簡単に使えます。
一見とてもシンプルですが、私のノウハウすべてを注ぎ込み重要なポイントをしっかりと押さえました。
簡単な在庫管理ならエクセルで十分対応できます。今回は難しい関数を使わずに誰でも作れる在庫管理表の作り方と活用方法を解説します。また、どんな業界でも使えるオリジナル在庫管理表「3欄式在庫管理表」を無料で配布中。その他2種類の在庫管理テンプレートも無料配布中です。
手書きの在庫管理表と違って、データの蓄積も可能です。
基本的な考え方を知ったうえで、運用さえ工夫すれば大がかりなシステムやバーコード管理をしなくても大丈夫です。
このページは在庫管理表のテンプレートの配布ページではありません。
あなたが、在庫管理表を自分自身で作れるように、在庫管理表の作り方を解説します!
私が作ったようなエクセル在庫管理表の作り方が分かります。
難しい関数やマクロは一切使いません。
簡単なエクセル関数だけなので、
在庫管理表を作ったことのない初心者でも簡単に作れます。
シンプルなのでメンテナンスやカスタマイズも楽々です。
シンプルで役立つ在庫管理表を作れるようになっていただくための
3つ大切な基本を解説。
- 在庫管理とは何か
- 在庫管理は何をすればよいのか
- 自社の在庫管理をどのようにすればよいのか
このページを熟読すれば、在庫管理の基本と方法が理解でき、
それを踏まえた誰でも使える在庫管理表が作れるようになります。
もう、手書きや作った人しか分からない複雑な在庫管理表とはおさらばしましょう。
もちろん、複雑なシステムやバーコード無しでも大丈夫!
規模によってはエクセルだけでも十分に管理できます。
もちろん、システムやバーコード管理と組み合わせると
より強力な在庫管理が可能です。
なお在庫管理表には、最低限必要な要素が4つあります。
「在庫品目」「数量」「場所」「在庫処理をした日付」です。
はじめて在庫管理表を作成される場合は、「在庫管理表の要素」に関する解説を、事前にご確認ください。
勘がいい人は、このページを見るだけで在庫管理に必要な
仕組みの構築ができるくらいの情報量があります。
ぜひ、最後まで熟読してください。
特に大切なのは、在庫管理で最も重要なのは下記目次の第1章~第2章です。ここをしっかりと理解すれば、在庫管理のエキスパートになれること間違いなしです。エクセル在庫管理表の作り方は、第3章をご覧ください。
以下、こちらのページの目次になります。
もくじ
第1章 在庫管理はなぜ必要?
在庫の問題は、人間が商売をはじめたころからあった問題です。在庫の問題は「古くて新しい問題」と言われており、未だに在庫の問題は解決されていません。
ですので、インターネットで調べても調べても、貴社の在庫管理の問題を解決する「決め手」となるような情報が見つからないのではないでしょうか・・・
では、なぜ在庫管理が上手く行えている会社とそうでない会社があるのでしょうか???
それは、在庫管理の基本を知っているかどうか、在庫管理の基本に基づいて忠実に実行をしているかどうかの違いです!
私は住友重機械系列のメーカーに入社後、調達の難しい材料を担当していました。前任者が作ってしまった長期滞留品(5年以上が経過)を引き継いでの担当でした。発注リードタイムも長く、需要変動も激しく、仕入先とのやり取りにも苦労しました。
この状況の中で、私が心掛けたのは、基本に忠実に進めることです。基本に立ち返り、やるべきことを忠実に行った結果、在庫削減にも成功し、長期滞留品を一切でなくなりました。
私がご支援先の皆様に常々、言っていることがあります。
- 在庫管理は難しいが、その基本は極めてシンプル
- 基本に忠実にやるべきことをコツコツと積み上げていく
- 在庫管理には華々しい劇的な改善策はない
一見、無駄で遠回りしているようなことが、実は、在庫管理の改善にとって一番の近道なのです!
第1章-1 100の会社があれば、在庫管理は100通り存在する
在庫管理の学習を始めるに当たり、在庫管理をどうやって学んでいけば良いかをお伝えします。
ただし、100の会社があれば、在庫管理は100通り存在するということは常に意識しておいてください。
資本、立地、設備、仕入先、販売先、商品の品目・数、等々、これらが全く同じ会社はひとつもありません。他社の事例をそのまま自社に応用するのは、様々な制約条件があるので、ほぼ不可能です。
そのため、基本をしっかりと理解することが非常に大切です。学びを定着させるには、次の6ステップで実践します。
第1章-2 在庫管理の学びを定着させる6ステップ
ステップ1【学ぶ】
まずは基本を学び、自分のものにすることがスタート地点です。例えば、このページや教材(教材名:在庫管理の教科書)で、まずは在庫管理の基礎や技術の考え方と知識を学びます。
「在庫管理110番」で学べるコンテンツ一覧をこちら
ステップ2【理解】
知識は知るだけでは意味がありません。在庫管理の本質を理解することが大切です。理解してはじめて知識が頭の中に定着します。
ステップ3【思考】
自社でおこっている問題や解決したい課題が、学んだ知識や技術のうち、何を使えば解決できるのかを思考します。思考にはコツがあります。問題や課題は、様々な大小の要因が複雑に絡み合っていることが普通です。
そこで、まずは、問題や課題をひとつひとつのパーツに分解していきます。分解していく際、工程表のようにフロー図の作成する方法やABC分析(在庫管理に必要なエクセルで具体的な方法を解説しています)などの手法を使います。
どんなに難しい問題でもひとつひとつのパーツに分解すれば、問題や課題は単純明快になってきます。分解したパーツをひとつずつ考えていき、浮き彫りになった問題や課題の中で取り組むべき「コアなもの」を見つけ出します。
在庫管理の心構えはこちらで解説しています。行動前に必ずご確認ください。
ステップ4【行動】
いよいよ、ステップ1から3で学んだ知識を実際の改善に適用します。行動のポイントは小さな問題から取り組むことです。学んだばかりで実践に慣れていない状態で大きな問題に取り組むと致命的な失敗につながりかねません。まずは小さな課題や失敗してもさほど大きな問題にならないことに取り組み、少しずつ慣れていくことをお勧めします。
ステップ5【検証】
100%思い通りの結果になることはめったにありません。必ず、想定外の出来事が起こります。その時に、間違ってしまったとその場限りで終わらせず、必ず原因を探ります。なぜ、想定外のことが起こったのか、計画とくるってしまったのか?手法の選択にミスがあったのか?あらゆる原因を考えます。
ステップ6【改善】
ステップ5の検証で突きとめた原因をもとに、二度と同じことが起きないようにします。ここでは、単に全く同じ事に対してだけでなく、似たような事例でも同じことが起きないようにします。これを水平展開と言います。同じことが二度と起きないようにしつつ、他にも同じようなことが起きないように予防をすることで、在庫管理は洗練されていきます。
以後、ステップ3からステップ6をぐるぐるとサイクルさせます。もし、基本が分からなくなってしまったら、ステップ1もしくはステップ2に戻り学習をすればいいのです。
この在庫管理の学びを定着させる6つのステップについては、教材(教材名:在庫管理の教科書)にて、より詳しく解説されていますので。
第1章-3 在庫管理ができていないとどうなるのか?
一般的に、在庫管理ができていないと在庫は増えていく傾向にあります。なぜ、増えていくのでしょうか?そのメカニズムは次のようになっています。
在庫の数を把握していないので、どれくらい発注し、どれくらい生産していいのか分かりません。発注管理の担当者や現場の作業者)は次のような「漠然とした不安」を感じます。
■欠品が怖い
一番怖いのは欠品です。在庫の量が分からなかったり、発注する際の基準が無いと確信が持てないため「少ないかもしれない」、「生産が止まったらどうしよう」という不安が常につきまといます。すると、必ず多めに発注してしまいます。
正しい発注数を決める発注管理には、現在庫数の把握とともに発注残の管理も必要です。
■生産工場の都合・言いなりで仕入ている
在庫管理ができていない会社では、生産工場都合の生産効率に振り回されていることがほとんどで、生産工場の言いなりで製品を仕入れています。なので、生産工場の生産効率が悪いと製品の仕入れが少なかったり、生産工場の生産効率が良すぎると製品の仕入れが多かったりします。
■不良が出るかもしれない
在庫が多いと、社内では「少しくらい不良品があっても大丈夫」という「甘い状態」にどうしてもなりがちです。そのような状況になると、生産工場への生産指示も杜撰になりがちです。さらに、不良が出た時の連絡体制が整っていないことも多く、不良の数がきちんとデータから差し引かれません。そのため常に在庫のデータと実数に差がでます。
このようにして使われずに残った在庫が徐々に増えていきます。さらに使われずに残った在庫は、品質が徐々に劣化し、ついには不良品となってしまいます。
在庫管理がおろそかになると起こる問題は、次の4つに分類することができます。
[1]時間の浪費
在庫を探しに行ったり、確認したりする時間がかかります。また、在庫が多いと在庫の入れ替えや取り出しにも時間がかかるので、通常作業においても時間がかかってしまいます。
[2]倉庫が必要
在庫が増えると、既存の置き場が手狭になります。そのため新たな倉庫を建設したり、外部倉庫を借りて、増えた在庫を保管します。倉庫の増設や外部倉庫は、さらなる在庫の増加の原因になります。
[3]品質の劣化
在庫が増えると、見込みで仕入れたが使われずに残ってしまった在庫や「先入先出し」が徹底されず、棚や倉庫に残りっぱなしになり、品質が劣化します。製品によっては、期限が存在します。当然、期限が過ぎたものは使えません。食品や食材などは消費期限が短いため、すぐに品質が劣化してしまいます。鉄や樹脂などの材料を扱っている場合は、「腐らないから大丈夫」とお考えかもしれませんが、鉄は錆びますし、樹脂類も紫外線や外気によって徐々に劣化します。「物は買った瞬間、作った瞬間から劣化が始まっている」と考えるのがいいでしょう。
[4]実数と記録の不一致
不良や劣化によって発生する「在庫の目減り分」をしっかりと、記録に反映させる仕組みになっていないと、事務所にある在庫の帳簿数と現物の数が合わなくなります。このほか、在庫をどこに置いたか分からなくなると「紛失」も発生します。その逆で、倉庫の隅の方や奥に追いやられた在庫を見つけることができず、帳簿上無いと思っていたものが、ひょっこりと見つかるケースもあります。
以上の4つの出来事は個別で発生するのではなく、複合して発生します。実数と記録の不一致を例に挙げると、いつも実数と記録が違うから、毎回現場に確認に行く。そうすると、在庫を「探す」という時間の浪費にもつながります。
最後にもうひとつ、知っておかなければいけない『在庫管理ができていない会社で起こり得る問題』があります。
それは経営の圧迫です。
在庫はお金を払って仕入れた製品です。「在庫=お金」ということを常に意識していなければいけません。目の前に高く積まれた在庫は全てお金が形を変えたものです。
しかし、在庫は現金のように自由に使うことはできません。市場で売れたときに現金になります。
在庫が多いということは、「社内にお金が滞留している」ということに他なりません。支払いが滞ってしまえば、「黒字倒産」で工場が無くなってしまうかもしれません。
実は、在庫の管理=お金の管理=会社経営の管理をしていることと同じなのです!
第1章-4 在庫管理をすると何が起こるのか?
在庫管理をはじめていくと、これまで問題になっていたことが、どんどん解消されて会社が良くなっていきます。問題の解消とともに在庫管理によって会社にとって良い効果がもたらされます。その効果は次の通りです。
[1]利益が出せる
在庫を探しに行ったり、確認していたり、入れ替えをしていた時にかかっていた人件費、外部倉庫にかかっていた外注費、不良や廃却で無駄になっていた購入費や処分費などの本来必要の無い無駄な費用の流出が止まります。費用の流出が減った分、利益が上がります。在庫管理の改善で営業利益率1%アップが目指せます。
[2]信用力がつく
会社の経営状態は在庫管理の現場に全て現れていると言っても過言ではありません。私が在庫管理の現場で特に重視するのは、現場に在庫がどのように置かれているかということです。在庫管理をしっかりと行っている会社の現場は本当に綺麗です。現場が綺麗だと「社員教育が行き届いている」、「品質面の管理も安心」という会社であることが分かります。現場が綺麗な会社になると、「見学させてほしい」、「取材させてほしい」という声が増えるので、広告や宣伝費用もかからなくなるという嬉しい副産物があります。
[3]資金繰りが改善する
仕入れ過ぎが無くなり、余剰在庫や不良在庫で滞留していた資金がなくなり、現金が手元に残ります。無駄な残業時間も無くなるので、労務コストも下がります。社員も早く帰宅できるようになるので、企業の社会的責任として叫ばれているワークライフバランスの実現への貢献にもなります。
[4]成長への投資ができる
無駄な作業が減り仕事効率が上がると、時間の余裕ができます。余剰在庫が無くなると、現金が手元に残ります。「お金が無い」、「忙しい」と言って、お客の注文やトラブル対応に必死だったのが、在庫管理の徹底により解消されていきます。浮いたお金と人員を新たな事業に投資することができます。
在庫管理は高収益を出している強い企業ほど熱心に行っています。日本を代表するトヨタ自動車は、「トヨタ式生産方式」などで徹底的に無駄を省いています。工場見学をすると分かりますが、現場はピカピカで、在庫置場にも余剰在庫が一切ありません。
静岡の沢根スプリングという会社は典型的な中小企業です。実は、この会社は「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で中小企業庁長官賞を受賞している非常に優秀な会社です。沢根スプリングという会社の在庫管理をしている現場はトヨタと同様にピカピカでした。社員満足度が非常に高く、ワークライフバランスも完璧です。月の残業時間は一人当たり6時間未満、社員の中には4ケ月の休暇を取って海外旅行をした人もいるくらいです。
売上が好調な工場は景気や流行に乗っていることが多いです。それは本来の実力ではありません。そのことを感じた事例をひとつご紹介します。
携帯電話の部品を作っている工場の話です。ほんの数年前まで携帯電話は折り畳み式が主流でした。携帯電話の折り畳み部分のヒンジを作っている工場は、携帯電話市場の拡大とともに業績もどんどんよくなりました。しかし、スマートフォンが流行し始めると、これまでの携帯電話市場が急速に縮み、ヒンジの出荷量は激減し、工場の売上も激減したそうです。会社の業績が絶好調の時、しっかりと在庫管理に取り組み、新規事業に人員とお金を掛けていたら、新しい製品の開発が行え、売上の減少を最小限にとどめられていたのです・・・
第1章-5 在庫管理は石垣作り
私は在庫管理をお城の石垣を作ることに例えます。
天守閣は華やかですが、石垣はとても地味です。
しかし、石垣がなければお城は立ちません。
在庫管理も1つずつ石を積み上げるように進めて行かなければいけません。時間もかかりますし、挫折しそうになり、根気のいる作業です。しかし、一度しっかりと在庫管理の仕組みや考えを会社に作ってしまえば、これほど強固なものはありません。あとは適切に維持・管理を行うだけで、在庫管理の効果は永続します。
第2章 在庫管理のポイント
在庫は次の公式で表すことができます。
在庫=入庫‐出庫
入庫というのは、材料の仕入れや生産完了した製品のことで、出庫というのは、仕入れた材料を生産現場に払い出すこと、製品を客先に出荷することです。この公式は当然といえば当然なのですが、この公式には大きな意味が込められています。
入庫・出庫をコントロールする方法は、こちらで解説しています。
第2章-1 在庫管理の学びを定着させる6ステップ
仕入れや生産をしない限り、在庫は生まれません。入庫したものは出庫しない限り、在庫として残り続ける。つまり、入庫も出庫も誰かの意思や決定によって生まれたものです。
特に大切なのが、入庫です。入庫のコントロールをすることが在庫管理のポイントになります。目の前にある余剰在庫の山は、意思や決定に問題があったからということになります。
言い換えると在庫は「行動の結果」です。行動は必ず人間の意思決定に基づいて行われます。その行動を探ることが在庫管理の改善のキーワードになります。余分な在庫が発生する例を挙げてみると、次のようなものがあります。
- やり忘れ
- 数量間違いのミス
- 不良品の処理忘れ
- 誤品
- 記入ミス、記入漏れ
- 決められたことができない
- ルールが無い
第2章-2 在庫管理の仕組み作りのポイント
上記の余分な在庫が発生する原因を見ると、ほとんどがヒューマンエラーです(ルールが無いのは論外です)。ミスをゼロにするのは事実上不可能です。生き物は必ずミスをします。ITシステムですらエラーが発生するのですから、人間なら、なおさらミスを防ぐのは不可能です。
在庫管理の仕組みを作るときは「ミスに対してどう考えるか」がポイントになります。ミスは必ず起こるものという考え方を前提にして仕組み作りをすると、必要なのは次の2点になります。
[1] ミスが起こりにくい仕組み
[2] ミスが起きても発見しやすい仕組み
この2点を押さえて仕組みを作れば、もし何かが起こったとしても問題を小さなうちに解決することができます。
一般的に問題を放置するとどんどん大きな問題になっていきます。そして、どんどん原因が分かりづらくなります。大きな問題は問題の対応にも原因の発見にも時間がかかります。在庫管理で起こる問題は、原因の発生源と問題の発生源が遠く離れていることも多く、小さなうちに問題を見つける仕組みは極めて重要です。仕組みは必ずしもITに頼る必要はありません。
私は在庫管理をしていた時、次のことを必ず意識して実行していました。
パートさんに在庫管理のためのデータ作成・入力・加工をお願いしていましたが、どうしてもミスが起こる・・・
そんな時、
- 仕事の手順をひとつひとつの小さな作業単位に分ける
- データ作成・入力・加工した箇所に色をつけてもらう
この2つの工夫をすることで、
色をつけるとデータ作成・入力・加工のミスが減り、手順を小さな作業単位にわけると、ミスが起こってもそれ以上進めない、進めても途中で止まるような仕組みが出来上がりました。
仕組みが出来上がってしまえば、ミスが起こっても小さな段階で発見できるのでミスの修正に時間がかからない、そして、間違った作業を最後まで進めてしまい時間を無駄にすることもなくなりました。
第2章-3 在庫管理担当者がやるべき3つの仕事
在庫管理担当者がやるべき事は大きく分けて3つあります。
[1]資産管理
まずは資産管理です。簿記などを勉強した経験がある方ならご存知だと思いますが、在庫は決算書の棚卸資産に計上されます。在庫は生産だけではなく、会社が銀行から融資を受けたり、投資家が投資をする時などの社会から評価を受ける際の極めて重要な判断材料にもなります。意識がなくても在庫管理担当者は、会社の資産管理を一部を任されているという認識が必要です。
[2]現状把握
今日は何が入荷されるのか、出荷は可能なのか?それらの情報を常に把握しておかなければいけません。在庫管理を行っていない会社は、ずっと在庫の把握に時間を取られています。会社全体の在庫量を知り、会社の入荷や出荷を安定させるのも在庫管理担当者の大切な役割です。
[3]未来予測
在庫管理がしっかりとできるようになると未来予測ができるようになり、未来予測をする精度も上げることができます。これが最終的な在庫管理の目的になります。
在庫管理を行っていない会社は一部の熟練者が勘で全てを決めます。人間の行動心理が働くため、勘は過去の悪い出来事の記憶(繁忙期は多めに在庫を抱えたほうがいいなど・・・)の影響を受けやすく、過去の悪い出来事の記憶が在庫を増やす原因になります。
未来予測の精度を上げるためには、様々な準備や改善が必要になります。即効性は期待できませんが、一度構築すれば製品が変わっても応用することができます。
私のノウハウを全て網羅した在庫管理の教科書には、
精度の高い未来予測ができるようになるやり方についても書かれています。
第2章-4 在庫管理で管理すべき基本項目は7つだけ
在庫管理において管理すべき項目は次の7つしかありません。まずはこれらの7項目をしっかりと押さえることが在庫管理の基本です。
[1]処理日
在庫に関する処理をいつ行ったのかということを記録します。ほぼ間違いなく全ての処理を処理日ごとに履歴として持つようにしています。入庫した時、出庫した時など、何か行うごとに処理日を記録することで、今後必要になる在庫分析や適正在庫の判断にも重要な素材になります。また、問題が発生したときにも処理日があれば、原因特定にさかのぼりやすいという効果もあります。ITシステムを組む場合は、必ず処理日を持つようにしましょう。
[2]品目
何に対して処理を行ったのか?ということを知るためには在庫品目の記録が必要です。処理日や数、場所が分かっても、それが「何なのか?」が分からないとデータの意味がありません。在庫管理項目の中でも一番重要になる項目です。
[3]入庫数
[4]出庫数
[5]現在庫数
3つの項目に分かれていますが、実質、一連の流れにある項目です。在庫数の大原則は、「現在庫数=入庫数-出庫数」と考えます。入庫数で仕入れがわかります。出庫数を記録することで、どれくらい売れているのかが分かります。現状把握はもちろんですが、未来予測をするためには数字の把握が不可欠です。また、入庫した処理日と組み合わせれば、入庫したものが長期滞留しているかどうかという判断材料にもなります。
[6]場所
在庫がどこにあるのかを明示することは、探し回ったり、紛失を防ぐために重要な情報です。同じ品目でも複数の場所に置き場があるのであれば、なおさら、場所を一緒に記録することが大切です。入庫や出庫といった数量の動きがなくても、在庫の場所を移動することによる場所の変更を記録することも大切です。保管場所を決めるということは、誰にでも保管場所が分かるような状態にするということです。分かりやすい例だと、地図や住所のようなものです。場所を明確にするためには番地などをしっかりと決めていかなければいけません。
[7]状態
在庫がどのような状態で存在しているのかを示します。在庫の状態は常に一様ではなく、状況によって様々な状態に変化します。例えば、食品が分かりやすく、消費期限や賞味期限というような品質保持期限があります。状態のうち、一番大切なのが良品と不良品の区分です。仮に100個在庫があっても、そのうち40個が不良品であれば実質使用できる在庫は60個ということになります。このように状態を明確にすることで、在庫の使用可否や廃却などやるべきことや判断材料が明確になります。
第2章-5 在庫管理の項目はシンプルでなければいけない
上記の7項目以外にも管理をしておきたい項目というのがあると思います。管理をする立場からだと、少しでもデータは多く欲しいというのが本音です。しかし、そのデータが本当に必要かどうかをしっかりと見極めなくてはいけません。
実務で様々なデータを取って分かったことは、
- 必要かもしれないデータは、ほぼ不要
- エクセルの表が大きくなり過ぎてデータが見づらくなり見落としが増える
在庫管理の項目をシンプルにするメリットは2つあります。
[1]データの見落とし防止
データが多すぎると、見落としにつながります。余分なデータを減らし、本当に必要なデータだけに絞ると見落としの防止になります。
[2]現場に負担を掛けない
実際にデータの記録するのは在庫管理をしている現場の人たちです。現場の人たちにとって、記録を取るのは、はっきり言って「面倒で手間」です。そのことも考慮して、できる限りシンプルで記録する項目も少なくすべきです。
記録する項目が多くなると、一番起こりやすいミスは書き忘れです。忙しくなってくると記録自体を止めてしまう、あるいは、適当にやってしまうのです。
そのようなことが起こってしまうと、絶対に必要な「基本管理の項目」がまともに記録されず、まさに本末転倒です。データの項目は、記録する作業の負担の大きさも考えて、シンプルにしましょう。
第2章-6 ITシステムは在庫問題を解決してくれません
ITシステムを導入すれば、在庫管理が効率化できる、会社が抱えている問題が解決できると考えている方も多いのではないでしょうか?
実は、その考えは「大きな間違い」です。
まず、在庫は実体のある「物」です。単なる情報ではありません。現品管理が基本であり、最も大切です。現品の管理ができないのであれば、ITシステムを導入しても意味がありません。
例えば、在庫を1個使ったとします。ITシステムが自動的に「1個使ったこと」を認識して、「1個使った」という入力をしてくればいいのですが、実際はそうではありません。何かしら、人的な操作が必要です。全てITシステム任せにしていると、ITシステムの誤認識によって、現品の在庫数とITシステム上の在庫数に差分が出てきます。
これまで入庫・出庫の記録をするルールがない会社の場合はどうでしょう?
おそらく入庫・出庫の記録をしません。システム化されるとその「ルールの無さ」を助長する危険性すらあります。これは、システムの中身は目に見えないからです。嘘でも「入力した」と言い張れば、その場を切りぬけることもできます。また、「面倒だから後からまとめてやろう」という行動も起こります。この行動で起こるのが入力漏れです。
ITシステムを導入するためには、「情物一致」が非常に大切になります。つまり、ITシステムは在庫管理をする手段のひとつであり単なる道具です。システムには自主性はありません。言われたことをやるだけです。しかし、ITシステムは人間の行動を制限することはあります(ある特定の処理をしないとエラーになる等)。ITシステムを導入して返って倉庫の現場が大混乱するケースもあります。在庫管理のIT化については、別のページで解説していきますので。
第3章 エクセル在庫管理表の作り方
第1章「はじめに」、第2章「在庫とは・・・」は、在庫を正しく扱うために必要知識で、現品管理の最も基礎的な部分です。エクセルで在庫管理表を作るという具体的な方法を知る前に、在庫管理のアウトラインを学んでおくことは非常に重要です。ー度といわず、二度三度読み返し、完璧にマスターしていきましょう。
在庫管理表以外にも、発注管理表やデータ分析などがエクセルで実現できます。
第3章-1 絶対にやってはいけない在庫管理表がこれ!
私は、在庫管理について多くの会社様から個別相談をいただく中で、いろいろな業種・業態の企業の在庫管理表を見る機会がありますが、「もう、在庫管理の仕方が複雑すぎて、目の回るような在庫管理表が多い」と、毎回驚きます。
だいたい、この5つが在庫管理表に共通しているようです。
- 作った本人しか分からない
- 入力間違えをしても、どこにミスがあったのか気づけない
- 継ぎ足し、継ぎ足しで作っていて複雑化している
- 作った本人ですら分からなくなる
- 担当者不在の場合、業務が止まる
しかも、データのあちこちで「こちらを参照」という注釈が多く、間違いが起こっても一体どこが間違っているのか非常に分かりにくく、せっかくのデータが役に立たなかったり、データの間違い探しに膨大な時間がかかっています。そもそも、在庫管理の基本を理解していないため、複雑で使えない在庫管理表になってしまっているのです。
第3章-2 絶対にやってはいけない在庫管理表がこれ!
在庫管理表で一番大切なのは、「何が(品目)」、「いくつ(数量)」という情報です。そして、「何が(品目)」、「いくつ(数量)」、「いつ(何月何日)」に入庫されたのか、出庫されたのかという情報を記録(入力)していくことです。
「在庫とは何か?」ということを考えてみましょう。
在庫は必ず次の3つのプロセス(流れ)の中間に位置しています。そのプロセスとは、入庫されて、保管されて、いずれ出庫される【入庫→保管→出庫】たったこれだけです。このうち、保管に当たるところにあるのが在庫です。
つまり、在庫とは、在庫=入庫-出庫の差となります。
在庫管理表を作る時のポイントは入庫と出庫を確実に押さえることが必要です。入庫・出庫のどちらかが欠けた途端に、その中間に位置する在庫は正しさを失います。
次に考えるのが保管した場所です。在庫には置き場があり、同じ品目でも複数の場所に置いてある場合があります。つまり、1品目を総量として管理をするのか、各場所で管理をするのかで管理方法が異なります。置き場が多い場合は、場所ごとに管理をしておかないと、「あるはずなのに無い!」ということがよく起こります。置いてある場所ごとの数量を把握するためには、管理項目に「どこに」を加えます。
「どこに」を加えるとより厳密な在庫管理が求められます。どこに入庫したのか、どこへ出庫したのか?あるいは、どこからどこへ在庫の保管場所を移動したのか?全てを記録し、管理しなくてはいけません。在庫管理レベルに不安がある会社は、まずは「どこに」よりも総量として管理をすることをお勧めします。総量の管理ができない会社に、場所までを含めた厳密な管理は不可能です。
第3章-3 エクセルで在庫管理表を作る際に必要なスキル
会社で役立つ在庫管理表をエクセルで作るためには、在庫の基本を理解する他にも次の2つのスキルが必要です。
[1]エクセルの基本的な機能や関数を使いこなせる
エクセルの機能や関数を知らない人は、とても複雑で難しい在庫管理表を作りがちです。しかも、その在庫管理表は、式の組み方に漏れやミスがあり、在庫管理表としてキチンと機能しないことが多々あります。
[2]データ処理のテクニックを持っている
在庫管理表の日常的な業務は記録です。つまり、ルーチン作業がメインになります。一度作ってしまえば、処理に時間を掛けるのはもったいないです。
私のノウハウが全て網羅されている「在庫管理の教科書」には、エクセルの基本的な機能や関数が使いこなせるようになるやり方についても書かれています。
第3章-4 シンプルかつ使いやすい3種のエクセル在庫管理表について
在庫管理表には以下のような形式があります。シンプルかつ使いやすい3種の在庫管理表をエクセルで作っています。在庫管理の基本を押さえていますので、多くの業種で使うことができます。在庫管理は厳密に、細かくすればするほど間違えにくく、状況がよくわかります。しかし、在庫管理を細かくすれば、それだけ在庫管理をしている現場や事務所の負担が大きくなり、時間がとられてしまいます。ABC分析などを行い、在庫の管理の重要度に応じて、管理方法を選択するのが理想です。
[1]6欄式在庫管理表
6欄式在庫管理表は、次の項目を一元管理できます。
- 注文残
- 入庫
- 出庫
- 引当
- 引当残
テンプレートは以下のような形式になります。
1つの品目を注文から実際の引当まで細かく管理することができます。しかし、品目数が多くなると作業量がとても多くなるので、事務処理に負担がかかります。管理する品目数が少ない場合や、重点管理をしたい部品に限って使えば有効な在庫管理表です。
[2]3欄式在庫管理表(入出庫管理)
3欄式在庫管理表は、次の項目を一元管理できます。
- 入庫数
- 出庫数
- 在庫数
テンプレートは以下のような形式になります。
3欄式在庫管理表は入庫数・出庫数・在庫数だけを管理するきわめてシンプルな在庫管理表です。私がメインで使っていた在庫管理表です。これ1つで1000点以上の部品を管理していました。
現品管理に向いていて、一覧性も高いので、使いやすい管理表です。また、「入出庫管理」だけにとどまらず、欠品の検出機能付きです。安全在庫を設定すれば、安全在庫を切った在庫が一目でわかる仕組みです。
下記の[3][4]のように「入出庫管理&歩留まり」、「発注管理」にも応用できますので大変便利な在庫管理表です。
商品点数の多い薬局や飲食店の食材管理にも応用できます。
[3]3欄式在庫管理表(入出庫管理&歩留まり)
3欄式在庫管理表に仕損数を加えたものです。次の項目を一元管理できます。
- 入庫数
- 出庫数
- 在庫数
- 仕損数
テンプレートは以下のような形式になります。
在庫が自動で減るいわゆる「歩留り」や「仕損」の修正機能付きです。
日常的に仕損がでるような在庫の管理に向いています。例えば、液体などであれば、少しこぼれたりして日常的に在庫が減るということが起こります。それを都度修正して、在庫数を適正に保つことができます。
[4]3欄式在庫管理表(発注残管理)
3欄式在庫管理表に発注残数を加えたものです。次の項目を一元管理できます。
- 入庫数
- 出庫数
- 在庫数
- 発注残数
テンプレートは以下のような形式になります。
3欄式在庫管理表(入出庫管理)が現品管理に対して、これは未来の計画まで含めた管理を行う場合に使います。
発注管理ができる!
未来の日付に発注数を入れれば発注残になり発注管理が可能です。
発注予測ができる
過去(当日以前)の数字が入出庫管理(実績)になります。
いつ、どれくらい使ったかが分かるので簡単な発注予測が立てられます。
計画を立てて過剰な発注・発注漏れを防ぐ発注管理が可能です。
[5]累積型在庫管理表(金額管理)
累積型在庫管理表は、次の項目を一元管理できます。
- 仕入単価
- 入庫数
- 累積入庫数
- 出庫数
- 累積出庫数
- 在庫数
- 在庫金額
テンプレートは以下のような形式になります。
入庫と出庫のそれぞれの累積数と在庫金額を併記した在庫管理表です。これは社員に在庫量の多さを金額で見て自覚してもらうための在庫管理表です。あまり多くの品目を管理するのには向きません。社員の在庫の扱いが悪かったり、不良が多い場合に有効です。
金額を見せることで、在庫の大切さを理解してもらうことができます。どんなに高価な在庫でも、社員にとって自分のものではないので管理がおおざっぱになることがあります。そこで、仕入単価を公開して、在庫金額を書きます。これだけの金額の在庫があるのか・・・と思ってもらえれば、大切に扱ってくれるようになります。
[6]複数の保管場所がある在庫の管理
在庫の保管場所が複数ある場合の在庫管理用書式です。次の項目を一元管理できます。
- 各倉庫別の入庫数
- 各倉庫別の出庫数
- 在庫数(各倉庫別の在庫数および総在庫数)
テンプレートは以下のような形式になります。
全体の在庫が100個あっても、保管場所が複数あればどこに、何が、いくつあるのかという情報がなければ意味がありません。そこで、保管場所別に在庫管理をしつつ、全体の在庫を見ることができる在庫管理表を作りました。
[7]在庫管理表を入庫と出庫で分ける
入庫と出庫を一つの表でまとめることも可能ですが、取り扱う品目の種類が多くなったり、入庫と出庫の頻度が多くなるとひとつの表ではまとめきれなくなります。
そして、データ量が増えてくると、商品の荷動き履歴を追う際、探すのに時間がかかったりして業務に支障きたすことにもなりかねません。
そこで、私は入庫と出庫を別シートでの管理を提案しています。
テンプレートは以下のような形式になります。
これだと、入庫の担当者と出庫の担当者を分けることができます。集計は、「在庫=入庫-出庫」で求められるので、集計の工夫をすれば、在庫数を算出することも難しくありません。チェック欄を設けておけば、入力したデータと現物の突き合わせも可能になります。入庫漏れや出庫漏れも防止できます。
※エクセル在庫管理表の実践的なノウハウが全て詰まった【教材:在庫管理の教科書】について知りたい方は⇒こちらから
第4章 エクセル在庫管理表のダウンロード【無料】
下記3種のエクセル在庫管理表をまとめて無料ダウンロードできます。
- 6欄式在庫管理表
- 3欄式在庫管理表(入出庫管理、入出庫管理&歩留まり、発注残管理の3パターン仕様)
- 累積型在庫管理表(金額管理)
第5章 知りたいことが全部わかる『在庫管理の教科書』
私、は、さかのぼること、住友重機械系列のメーカー勤務の当時、顧客によって仕様の異なる多種多様の製品を担当することで在庫管理の腕が鍛えられました。
以降、サラリーマン人生の全てを在庫管理に費やしてきたと言っても過言ではありません。
そして、在庫管理ができるだけ簡単にできる仕組み作りを徹底的に追求し続けてきた結果、在庫管理アドバイザーとして独立し、瀬戸内scm株式会社を設立しました。
「在庫管理で知りたいことが全部わかるバイブル的存在だ!」と絶賛
してくださった方もいます。(とても恐縮ですが・・・)
- 業界(メーカー、商社、小売など)
- 業種(製造業、卸売業、小売業など)
- 業態(小売店、通販など)
を問わず多くの会社様、ショップ様で選ばれる理由は、在庫管理の原理原則、本質に忠実な王道をいく教材だからです!