商品評価損とは?発生原因と対策方法

現代のビジネス環境において、在庫管理は企業の競争力を左右する重要な要素です。

棚卸資産の価値(金額)を下げる代表的な会計処理として、商品評価損と棚卸減耗があります。

多くの企業が棚卸減耗には注意を払っていますが、特に中小企業は商品評価損にはあまり注意を払っておらず、適切な処理をしていないのが現状です。

その理由は、棚卸減耗よりも商品評価損の方が分かりにくいためです。

 

しかし、商品の価値が低下した際に発生する「商品評価損」も、棚卸減耗と同様に、企業の財務に直接影響を与えるため、その管理と対策が欠かせません。管理を怠ると、経営判断を誤りかねません。

また、商品評価損を計上すれば棚卸金額が減少するので利益を減らせるため節税が可能です

商品評価損の処理をせずに価値の無いものをずっと持ち続けることは、税金を無駄に払うことにもつながるため、正しく商品を評価することは経営コスト削減にもつながります。

 

そこで今回の記事では、
商品評価損と棚卸減耗の違いと発生した場合の処理方法、さらには、商品評価損を発生させないために、発生原因、そして効果的な対策方法についてご紹介します。

 

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この記事を読むと分かること
  1. 商品評価損はどのような時に発生するのか?
  2. 商品評価損と棚卸減耗の違いと具体例
  3. 商品評価損が発生したときの会計処理方法
  4. 商品評価損が発生する原因
  5. 商品評価損を予防するための対策

 

商品評価損とは?

商品評価損は、在庫として保有している商品の価値が市場の変動や需要の変化によって減少した場合に計上される会計処理です。

以下、商品評価損の定義と具体的な内容、そしてなぜ必要なのかその背景について詳しく解説します。

商品評価損の定義

商品評価損とは、商品の市場価値が減少したときに、その価値の低下分を会計上で損失として計上することを指します。

これは、商品の物理的な品質に問題がなくても、社会的な価値が低下した場合に発生します。

商品評価損の具体例

商品評価損は、以下のような状況で発生します:

  • 市場価格の下落
    市場全体で特定の商品カテゴリーの価格が下落した場合、在庫として保有している商品の価値も下がります。
    例えば、家電製品の新モデルが発売されると旧モデルの市場価値が下がり、その分の評価損を計上する必要があります。
  • 流行の変化
    ファッションアイテムや季節商品など、流行や季節に強く依存する商品の場合、流行が過ぎたり季節が変わると価値が急激に低下します。
    例えば、前年のデザインの服が流行遅れになると、その価値は大幅に下がります。
  • 技術の進歩
    技術革新が進む分野では、新技術の登場により旧技術の商品が急速に価値を失うことがあります。
    例えば、コンピュータやスマートフォンの分野では、新しいモデルが登場するたびに旧モデルの価値が減少します。

商品評価損は健全な財務処理に不可欠な処理

貸借対照表に記載される在庫金額は、仕入品であれば取得金額、製造品であれば製造原価です。

在庫として保有する商品や製造品は、購入時や製造時には一定の価値を持っていますが、時間の経過とともに市場の動向や消費者のニーズの変化により、その価値が減少することがあります。

この価値の減少を無視して帳簿上に反映しない場合、企業の財務状況を正確に把握することが難しくなります。

そのため、適切な評価損の計上は、企業の健全な財務管理に不可欠です。

商品評価損の意義

商品評価損の適切な計上は、企業の財務状況を正確に反映し、経営判断を下すための重要な指標となります。

また、評価損の計上により、将来の利益やキャッシュフローの予測がより現実的なものとなり、企業の健全な経営を支えることができます。

商品評価損を適切に管理することで、企業は在庫の適正な管理と適切な財務報告を行うことができ、健全な経営を維持することが可能となります。

 

商品評価損と棚卸減耗の違い

在庫管理において「商品評価損」と「棚卸減耗」はいずれも在庫の減少に関連する用語ですが、それぞれ異なる原因と処理方法を持ちます。

ここでは、その違いを詳しく解説します。

 

棚卸減耗は在庫の物理的な減少の時の処理

棚卸減耗とは、在庫の物理的な減少を指します。この減少は、以下のような理由で発生します。

  • 品質の問題
    商品が破損したり、品質が低下した場合。
  • 紛失
    在庫管理ミスや盗難により、商品が実際に失われた場合。
  • 破損
    保管中や運搬中に商品が物理的に損傷を受けた場合。

これらの場合、在庫の数量が物理的に減少するため、棚卸減耗として会計処理が行われます。

 

商品評価損は、社会的価値が低下したときの処理

商品評価損は、商品の市場価値が減少した場合に発生する会計処理です。

物理的な品質には問題がないものの、社会的な価値が低下したときに計上します。

具体的には以下の状況が該当します。

  • 市場価格の下落
    市場全体の価格が下落し、在庫商品の市場価値が減少した場合。
  • 流行の変化
    ファッションや季節商品のように、流行や季節の変化により価値が下がる場合。
  • 技術の進歩
    新しい技術が登場し、旧型商品が市場での価値を失った場合。

【具体例】商品評価損と棚卸減耗の使い分け

以下に具体的な例を挙げて、棚卸減耗と商品評価損の違いを説明します。

  • カレンダーや手帳
    年度が変わると、未使用のカレンダーや手帳は価値を失います。
    これは商品の物理的な品質に問題はないものの、社会的な価値がなくなったため商品評価損として計上されます。
  • 衣類
    季節や流行が変わると、前シーズンの衣類は価値が下がります。
    →商品評価損に該当します。
  • 食品
    賞味期限が過ぎた場合、品質が低下し消費できなくなります。
    →棚卸減耗に該当します。
  • 電子機器: 新モデルが発売された後、旧モデルのスマートフォンやコンピュータの市場価値が下がることがあります。
    →商品評価損です。

商品評価損の適用方法と具体的な処理手順

具体的な商品評価損を会計処理をご説明します。

会計基準とその適用方法

商品評価損の会計処理には、企業会計基準に従う必要があります。具体的には、以下の基準が適用されます。

  • 企業会計原則
    企業会計における基本的なルールであり、商品評価損の計上に関しても基本的な指針を提供します。
  • 企業会計基準第1号「棚卸資産の評価に関する会計基準」
    これは、棚卸資産(商品や原材料など)の評価方法を定めた基準です。
    この基準に基づき、在庫の評価損失を計上する必要があります。
  • IFRS(国際財務報告基準)
    日本企業が国際的に事業を展開する場合、IFRSに従う必要がある場合があります。
    IFRSでは、在庫の評価減はコストと正味売却価額(Net Realizable Value)のいずれか低い方で評価することを求めています。

具体的な処理手順

商品評価損の会計処理には、以下の具体的なステップを踏む必要があります。

  1. 在庫の評価
    在庫の現時点の価値を把握します。
    これには、市場価格や使用可能性を考慮する必要があります。
    必要に応じて、専門家の評価を依頼することもあります。
  2. 正味売却価額の算定
    在庫の正味売却価額(Net Realizable Value, NRV)を算定します。
    NRVは、通常の販売価格から、完成に必要な追加コストと販売にかかる見積もり費用を差し引いた金額です。
  3. 比較と評価損の計上
    在庫の取得原価とNRVを比較します。
    NRVが取得原価を下回る場合、その差額を評価損として計上します。
    評価損は「棚卸資産評価損」として、損益計算書に反映されます。
  4. 会計記録の更新
    評価損を計上した在庫の帳簿価額を減額します。
    これにより、会計記録が現状を正確に反映するようになります。
  5. 開示と報告
    財務諸表において、評価損の内容を開示します。
    これには、評価損の理由や計算方法の説明も含まれます。
    必要に応じて、株主や投資家に対する報告資料にも反映します。
  6. 定期的な見直し
    評価損を計上した後も、定期的に在庫の価値を見直し、必要に応じて追加の評価損や評価益を計上します。
    特に四半期決算や年次決算の際には、在庫の評価を再確認することが重要です。

 

期首と期末における商品評価損の財務的な影響

商品評価損は、企業が保有する在庫の価値が実際の取得原価よりも低下した場合に生じる損失です。

これは、財務諸表における損益計算書や資産の価値に影響を与える重要な要素の一つです。

特に、期末と期首という時間的な概念は、商品評価損の計上と企業の財務状況に与える影響において重要な役割を果たします。

 

期末における商品評価損の影響

期末に近づくと、企業は在庫の評価を行います。

この際、在庫の正味売却価額(NRV)が取得原価を下回る場合、企業は商品評価損を計上する必要があります。

この計上された評価損は、企業の損益計算書に直接反映され、売上や利益に影響を及ぼす可能性があります。

 

期首における商品評価損の影響

期首では、前の期間で計上された評価損の影響が見られます。

前の期間で大きな評価損が計上された場合、新しい期間の始まりである期首において、企業の財務状況に影響を及ぼす恐れがあります。

この影響は、将来の売上や利益の見通しにも影響を与えることがあります。

売上と仕訳の関連

商品評価損の計上は、売上や仕訳にも密接に関連しています。

売上が減少した場合や在庫の評価が下がった場合、それに応じて仕訳が行われます。

一般的に、商品評価損は売上原価に算入します。

例えば、売上が減少すると、在庫の評価が下がり、評価損が生じる可能性があります。

特別損失として計上される場合もある

特別な理由で金額が大きな場合は、特別損失として計上することもあります。

特別損失として計上されると、税引前当期純利益が減少します。つまり、営業利益には影響をあたえません。

特別な理由の例

  • 自然災害や家事などの不可抗力によって、商品が全損又は一部損失
  • 事業リストラや部署の統廃合などによって、商品の販売や生産の停止や廃棄をした場合

 

決算書は対外的な資料です。適切な計上方法をすることで、誤った印象を与えないようにしましょう。

企業の財務状況や将来の経営戦略に大きな影響を与えることがあります。

商品評価損が発生する原因

商品評価損は、在庫管理において避けられない問題の一つです。

商品の市場価値が減少する原因にはさまざまな要因があります。

以下に、具体的な原因とそれぞれの詳細について解説します。

製品のライフサイクル

製品のライフサイクルも商品評価損に影響を与える要因です。
特に以下のような状況が挙げられます。

  • 技術の進歩(モデルチェンジ、マイナーチェンジ)
    技術の進歩が早い分野では、新しい製品が市場に出るたびに旧製品の価値が下がります。
    例えば、スマートフォンやコンピュータのような電子製品は、新モデルが発売されると旧モデルの需要が急減し、在庫が評価損に直面することがあります。
  • 製品の成熟
    製品が成熟期を迎えると、市場の需要が減少し、在庫の価値が下がります。この場合も、売れ残りが評価損を引き起こします。

需要予測の誤り

需要予測の誤りは、商品評価損の主要な原因の一つです。

これには以下のような具体的な状況が含まれます。

  • 過剰発注
    需要を過大に見積もってしまい、実際の需要よりも多くの在庫を発注した場合、余剰在庫が発生します。
    この余剰在庫は売れ残りとなり、市場価値が下がることで評価損が発生します。
  • 過剰生産
    生産計画が需要予測に基づいていない場合、過剰に製品を作りすぎることがあります。
    この場合も同様に、売れ残りが発生し、評価損につながります。

需要予測に関する記事はこちら

流行の変化

流行の変化は特にファッション業界や季節商品で顕著です。
以下のような状況が商品評価損を引き起こします。

  • ファッションの移り変わり
    ファッション業界では、流行の変化が速いため、シーズンが終わると急激に価値が下がることがあります。
    例えば、前年の流行の衣類は、次のシーズンには売れ残る可能性が高くなります。
  • 季節商品の需要
    季節に依存する商品(例:冬物の衣類や夏のビーチ用品)は、そのシーズンが終わると価値が急激に下がります。
    シーズンオフになると在庫が売れ残り、評価損が発生します。

市場価格の変動

市場価格の変動も商品評価損の重要な要因です。以下の具体例があります。

  • 市場価格の下落
    商品の市場価格が下落した場合、在庫商品の価値も下がります。
    例えば、農産物の市場価格が下がると、農家が保有する在庫の価値が減少し、評価損が発生します。
  • 需要減少
    競合商品の登場や消費者の嗜好の変化により、特定商品の需要が減少することがあります。
    例えば、新技術を搭載した競合商品が市場に登場すると、旧技術の商品の価値が下がり、在庫が売れ残る可能性があります。

規制や法改正

政府の規制や法改正も商品評価損を引き起こす要因となることがあります。

  • 規制変更
    例えば、安全基準の変更により、既存の在庫が規制に適合しなくなった場合、その在庫は市場価値を失います。
    この結果、評価損が発生します。
  • 税制の変更
    税制の変更が商品に影響を与え、需要や価格が変動することがあります。
    これも評価損の要因となり得ます。

商品評価損の対策

商品評価損の発生を最小限に抑えるためには、いくつかの具体的な対策を実施することが重要です。

以下に、これらの対策について詳しく解説します。

リアルタイム在庫管理

まず、真っ先に取り組んでいただきたいのは正確な情報を持つこと、つまりリアルタイム在庫です。

 

在庫管理システムを利用して、在庫状況をリアルタイムで把握し、適切な在庫レベルを維持します。

在庫管理システムの導入 ERPシステムやWMS(倉庫管理システム)を導入し、在庫の動きをリアルタイムで追跡します。

IoT技術の活用 IoTセンサーを使って、在庫の状況をリアルタイムでモニタリングします。

ダッシュボードの利用 在庫状況を一目で把握できるダッシュボードを作成し、迅速な意思決定をサポートします。

セールやプロモーション 在庫一掃セールやプロモーションを活用して、評価損が発生する前に在庫を売り尽くす戦略を取ります。

正確な需要予測

正確な需要予測は、過剰在庫を防ぎ、評価損のリスクを軽減するための最初のステップです。

データ分析の活用 過去の販売データ、季節的な変動、市場トレンドなどを分析し、需要予測を行います。

予測モデルの導入 機械学習やAIを活用した予測モデルを導入することで、需要の変動をより精度高く予測できます。

需要予測の頻度 定期的に需要予測を見直し、最新の市場状況に基づいて調整することが重要です。

シーズンオフセール

季節商品の価値が下がる前にセールを実施し、在庫を早期に処分します。

プロモーションキャンペーン 商品の需要を喚起するためのキャンペーンを展開し、在庫を減らします。

パーソナライズドマーケティング 顧客データに基づいてターゲティングしたプロモーションを行い、効果的に在庫を販売します。

ダイナミックプライシングの導入 市場の需要に応じて価格を柔軟に変更することで、在庫の売れ残りを減らし、評価損のリスクを軽減します。

アルゴリズムの活用 需要と供給のバランスに基づいて価格を自動的に調整するアルゴリズムを導入します。

リアルタイムデータ分析 市場の需要データをリアルタイムで分析し、適切な価格設定を行います。

競合分析 競合他社の価格動向を常にチェックし、それに応じて価格を調整します。

モデルチェンジセール

新商品が出ると旧商品の売れ行きは極端に減少します。

新商品を出すタイミングは、あなたの会社が決められることです。

次の2つの方法が考えられます。

  • 新商品を出すスケジュールから逆算して、旧商品を売りつくすようにセールを仕掛ける
  • 旧商品が無くなるタイミングを見計らって、新商品のリリース時期を決める

いずれにしても、新商品の販促を実施する企画部隊との密接なコミュニケーションが必要です。

製造業の場合は、製品に加えて、部品の使い切りも合わせて考えなければいけません。

サプライチェーンの最適化

効率的なサプライチェーン管理により、在庫の過剰や不足を防ぎ、評価損の発生を抑えます。

供給計画の精緻化 サプライチェーン全体の計画を精緻化し、需要に応じた適切な供給計画を策定します。

柔軟な供給ネットワーク 供給チェーンを柔軟に運用できるようにし、需要の変動に迅速に対応できる体制を整えます。

リードタイムの短縮 サプライチェーンのリードタイムを短縮することで、迅速な供給を可能にし、在庫の過剰を防ぎます。

まとめ

以上、今回は商品評価損についてご説明しました。

今回の記事を簡単に整理をすると

  1. 商品評価損とは、社会的価値が無くなった時に行う会計処理
  2. 棚卸減耗と同様、適切に処理をしないと経営判断を狂わせることになる
  3. 商品評価損の発生原因は、商品のライフサイクル(モデルチェンジ、マイナーチェンジ)や、季節・流行の変化などがある。
  4. 商品評価損を予防する方法として、リアルタイム在庫の把握、セール、正確な需要予測などがある

分かりにくいところがあれば、ぜひ読み返してみてください。

商品評価損は企業にとって大きな問題ですが、適切な在庫管理システムを導入することでそのリスクを大幅に軽減できます。

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