在庫回転率は適正在庫の指標におすすめ!過剰在庫を削減する方法

在庫管理において経営層と実務担当者に共通するのが「自社の適正在庫を知りたい」という悩みではないでしょうか。

在庫を適正化するメリットは、欠品の予防だけではなく、過剰在庫の削減と抑制です。経営改善に限らず、実務レベルでも指標を取り入れ業務改善効果が発揮できます。

適正在庫が実現できないのは、蓄積した入出庫履歴などの在庫データを使って在庫分析をして改善や設定値の見直しができていないことが原因です。適正在庫実現のために大切なポイントは、在庫状況を在庫回転率で数値化して把握することです。

この記事では、在庫回転率の目的や計算方法などの基礎知識から、適正在庫を計算して過剰在庫を削減する方法までを詳しく解説します。

 

在庫回転率で在庫の入れ替わりの早さがわかる

「在庫回転率」とは、在庫がどのくらいの早さで使われているかを見る指標です。同義語として「商品回転率」や「棚卸資産回転率」と呼ばれることもあります。

主に製造業をはじめ小売業や卸売業で在庫管理の要となる重要な指標です。在庫状況を数値化し、ムダなコストの発生を抑えることに役立てます。

在庫回転率は高いほど良い

在庫回転率が高いと適正在庫が維持できている

在庫回転率は、数値が高いほど良いとされ良好な在庫状況を意味します。反対に、数値が低いほど作業場や倉庫に在庫が滞留してしまっている状況だと言えます。

在庫回転率が高いと、在庫を早くお金に換えてキャッシュフローに余裕ができ、安定した資金繰りにつながります。

製造業なのか小売業なのか、それぞれ業種や扱う商品によって目安にすべき適正値は大きく異なります。在庫回転率の改善に取り組む際には、自社の特性を十分理解しておく必要があります。

在庫回転率の目的

在庫回転率の目的として、主に次の3つが挙げられます。

  • 在庫の動きを可視化できる
  • 経営状態を判断できる
  • 顧客ニーズを分析できる

在庫回転率で在庫の動きを把握すると、経営状態を判断する目安になるだけなく、ニーズ分析をして在庫量のコントロールができます。

在庫の動きを可視化できる

1つ目の目的は、在庫の動きの可視化です。商品の仕入れや製品の完成から出荷するまで、実際にどのように在庫が入れ替わっているかを把握します。

在庫回転率は、在庫が動く早さを把握できる点がメリットです。たとえば月に1度、毎月継続して在庫回転率を記録すれば、1年間の在庫数の推移が把握できます。

必要在庫数を長期的に予測できるようになると、仕入れや生産のスケジュールに余裕が生まれ、在庫の不足といったトラブルを避けられます。また、過剰在庫を未然に防いで作業場や倉庫が商品であふれる心配はいりません。

経営状態を判断できる

2つ目の目的は、健全な経営ができているかを判断することです。健全な経営とは、仕入れや製造コストを、想定する期間内に滞りなく適切に回収できている状態のことです。在庫回転率を使ってキャッシュフローを把握します。

在庫が早く売れるほど、在庫回転率が高くなり早く収益につながり、キャッシュフローが良くなります。一方で、売れるのが遅いほど、在庫回転率は低くなり在庫をなかなかお金に変えられず収益は上げられず、キャッシュフローが悪化します。

在庫の動く早さを把握できていなければ、気付かないうちに資金が在庫に固定化されるので、過剰に在庫を抱えて資金の不足に陥ってしまい、資金繰りが悪化します。

在庫とは言い換えればお金そのものです。在庫の動きを具体的な数字で可視化することで、ムダなコストが表面化しやすくなります。在庫回転率は、経営改善の目安として最適で、自社のキャッシュフローを把握し、安定した資金繰りを続けていくために必要な指標です。

顧客ニーズを分析できる

3つ目の目的は、ニーズ分析です。抱えている在庫の中で需要が高いものはどれか、反対にあまり必要とされていないものはどれか、商品ごとの在庫回転率をみることでニーズの把握が可能です。

収益を最大化するために、在庫回転率が高い商品は在庫切れを防ぎ優先的に確保し、一方で在庫回転率が低い商品は在庫を減らす必要があります。

たとえば、ニーズの低い商品は不動在庫として長期間作業場や倉庫に残ってしまうリスクがあります。不動在庫は保管スペースを圧迫するだけでなく、処分や値引き販売で管理コストが掛かるばかりで、メリットはひとつもありません。

在庫の収益性を示す指標として、交差比率があります。交差比率は在庫が儲かっているのかどうかを見る指標のことで「交差比率=在庫回転率×粗利率」で求められます。在庫回転率を使ってニーズ分析をすると、過剰在庫のリスクを抑えるだけでなく、市場やニーズの変化にも対応できる柔軟な在庫管理体制を整えていけます。

 

在庫回転率と在庫回転日数の計算方法

在庫回転率とは、一定期間に在庫がどれだけ回転したかを示す指標で、売上原価または在庫数を使って計算できます。どちらの計算方法がより良いかは、必要とする立場やどのような目的で求めるかによって選びます。

在庫回転率の計算方法

在庫回転率を使って、在庫回転日数を求めることも可能です。在庫回転日数とは、在庫がどのくらいの日数で一回転したかを示す指標です。分析の視点が異なるので目的に合わせて使い分けができます。

在庫回転率を金額で計算する方法

金額を使って計算する場合は、次の計算式で求めます。

在庫回転率の計算方法(金額で計算)

1年間の売上原価が 50,000円、そして平均在庫金額10,000円とすると、

計算式は「50,000÷10,000」となり在庫回転率は「5」と算出されます。

すなわち、1年間で5回在庫が入れ替わっていることが分かります。

 

売上原価および平均在庫金額の計算式は次の通りです。

  • 売上原価 = 期首在庫金額 + 仕入れ在庫金額 - 期末在庫金額
  • 平均在庫金額 =(期首金額 + 期末在庫金額)÷ 2

金額での計算が経営層に向いている様に、決算書に基づき1年単位で考えるケースが多く見受けられますが、月次決算、四半期決算、半期決算でも計算できます。

例えば、1カ月で計算する場合は、期首在庫金額は月初在庫金額、期末在庫金額は月末在庫金額、売上原価は1カ月間の売上原価になります。

在庫回転率を数量で計算する方法

数量を使って計算する場合は、次の計算式で求めます。

在庫回転率の計算方法(数量)

平均在庫数は、金額を数に置き換えて「平均在庫数 =(期首在庫数 + 期末在庫数)÷ 2」で計算します。

1年間に出庫した個数が600個、期首在庫数が60個、期末在庫数が20個の場合は、平均在庫数が40個となり、在庫回転率は「15」と分かります。

在庫回転日数の計算⽅法

 

在庫回転日数を求める計算式は次の通りです。数値が小さいほど在庫が社内に滞留している日数が少なく、早くお金に換えられていることを示します。

前述の例を使って説明すると、在庫回転率が「5」で、日数は1年なので「365」です。計算式は「365 ÷ 5」となり、在庫回転日数は「73」と計算できます。

つまり73日かけてお金に換えているということを意味します。

▶️在庫回転率と在庫回転日数の計算方法については、こちらで詳しく解説しています。
在庫回転率と在庫回転日数の求め方

 

適正在庫とは欠品や過剰在庫にならない在庫数

適正在庫とは過不足のない理想の在庫状況を意味します。言葉の通り、欠品だけでなく過剰在庫にならない状態でなければいけません。在庫回転率が適正であれば、在庫の過不足がない状態を保っていると判断できます。

ちなみに、適正在庫と安全在庫とは違うので、注意してください。

  • 安全在庫:不足しない在庫数のこと。在庫数の下限を決める。(過剰在庫のコントロールはできません。)
  • 適正在庫:過不足の無い在庫数のこと。在庫の上限・下限を決める。

適正在庫の計算方法は2種類のアプローチがある

適正在庫は、経営的観点と実務的観点の異なるアプローチで考えられます。2種類のアプローチの主な違いは、計算に活用するデータの違いです。

経営的観点から適正在庫を求める場合は、売上金額や在庫データなどから計算します。売上目標や在庫削減目標といった理想の財務状況をもとに、在庫回転率と在庫回転日数を計算、そして理想とする在庫回転日数を数値化します。

実務的観点では、需要数をもとに求める方法が一般的ですが、需要数を用いて計算する場合は注意が必要です。正確な需要数を用いることでムダがない在庫管理を実現できますが、需要数の想定が当たらなければ、適正在庫の維持は期待できません。

より実用的な数値を求めるには、リードタイムを使うのがおすすめです。発注、生産、出荷にかかる合計日数のリードタイムが適正な在庫日数の目安になるという考え方です。リードタイムと在庫回転日数を比較して、在庫回転日数がはるかに大きいようであれば、過剰在庫であると判断できます。

▶️適正在庫の計算方法については、こちらで詳しく解説しています。
適正在庫の計算方法と実現・維持する方法

 

在庫回転率は適正在庫の指標におすすめ

次の点から、在庫回転率は適正在庫の指標におすすめです。

  • 現場改善の目標設定に活用できる
  • 過剰在庫を削減できる
  • 数量で計算した在庫回転率を指標にできる

ここでは、現場改善や業務効率化におけるポイントを中心に紹介します。

現場改善の目標設定に活用できる

在庫回転率は、現場改善の目標値や適正値の設定に役立ちます。商品の入出荷記録とあわせて在庫回転率を計算すると、商品ごとのニーズや特徴など、一定期間における在庫の動きを客観的に把握できます。

在庫管理の現場において、部署や担当者によっては多めに在庫を持ちたいなど主観的・属人的な判断のバラつきが見られるケースは少なくありません。同じ商品のこれまでの在庫回転率を比較することで、どこからが過剰在庫にあたるのかを同じ尺度で客観的に評価でき、具体化していけます。

実務レベルでの共通理解として理想の在庫数を数値化しておくことで、適正な在庫数の維持を実現できます。

過剰在庫を削減できる

在庫回転率は1回計算して終わりではありません。定期的にデータを取って、モニタリングを続けることで過剰在庫の削減・抑制に効果があります。

過去のデータと比較して現在の在庫状況が適正であるかを確認すると同時に、市場やニーズの変化に早いタイミングで気が付くことができます。

在庫回転率が低くなり動きが悪化した商品は入荷数を減らしたり、場合によっては取り扱いをやめるなど、早期判断を可能にして過剰在庫に陥るリスクを抑えられます。

数量で計算した在庫回転率を指標する

在庫回転率の計算方法(数量)

実務レベルの指標には、数量で計算した在庫回転率を使ってください。

在庫数であれば在庫管理の延長でデータを拾えるので簡単に計算できます。

金額で計算した在庫回転率を使ってはいけない理由

金額で計算する在庫回転率は、価格変動などの外的要素によって増減する可能性もゼロではありません。改善においては、現場の改善を正しく評価する必要があるため、数量以外の要素に左右されない数値で目標設定をすべきです。

 

適正在庫の定義は自社で決める

適正在庫には明確な定義はありません。

お客様が欲しいというものをタイミング良く用意でき、しかも過不足なく・・・

というのが理想ですが、それを実現できる会社はこの世に1つも存在していません。

適正在庫は、自社の在庫の持ち方や販売戦略、市場や取引先のニーズなどさまざまな要因に基づいて決めるものです。自社の戦略に合った適正在庫が必ずあるはずです。

 

会社の戦略として決めた適正在庫を維持していくために、在庫回転率は、経営層と実務担当者の共通目標に最適の指標です。

組織全体で過剰在庫のリスクを十分理解し、協力して適正在庫の検討を行う必要があります。

 

まとめ:在庫の適正化にお悩みの経営者・実務担当者は在庫管理セミナーへの参加がおすすめ

適正在庫の決め方が分かる在庫管理セミナー

今回解説したように、在庫回転率は、経営の健全度合いを示すほか、欠品を避けつつ、過剰在庫を削減するための効果的な施策につながる重要な指標です。

適正在庫を数値化するために具体的にどう計算したら良いかわからない、適正値を正しく見極められるか不安といった場合には、在庫管理セミナーへの参加がおすすめです。

在庫管理セミナーでは、この記事で解説した在庫回転率を使った適正在庫の決め方と適正在庫の実現に必要な改善方法を詳しく解説します。セミナー後には、専任の在庫管理アドバイザーによる無料の個別相談を実施しています。自社の適正在庫の悩みを直接相談が可能です。適正在庫を実現するきっかけづくりとして、ぜひご参加ください。

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