もう棚卸差異に悩まされない!基礎知識から5大原因・改善方法を紹介

あんなに気をつけていたのに、在庫数がデータと合わない

棚卸のたびに棚卸差異が発生していて、毎度ストレスでしんどい

そんなやり場のない焦燥感や、経営者や上長への報告を控えて辟易しながらも、棚卸差異を正しく理解した上で解決したいと思い、この記事へたどり着いたのではないでしょうか?

結論から申し上げると、棚卸差異は「帳簿在庫と実在庫」が一致していない状態のことです。

アナログな対応により発生しやすいため、発生時は速やかに原因を特定して帳簿・在庫上の処理を正しく行い、今後発生しないよう対策することが大切です。

ほとんどの企業でも、棚卸差異はゼロにすることが難しく、解決していくことが大変な課題のひとつです。

ですが、棚卸差異はよくあることでも、「原因究明が面倒だ」「怒られるのが嫌だ」という理由で後回しにしたり、放置したりしないでください。

少しの差異が他の差異を引き起こしたり、「在庫探し」という無駄な時間を増幅させるだけでなく、キャッシュフローの悪化や顧客の信頼失墜したりするリスクがあるからです。

棚卸差異の原因は、単なる不注意だけでなく、現場のアナログな管理や杜撰な管理体制などに潜んでいる可能性もあります。

そこで本記事では、棚卸差異の基礎知識から一般的な許容のライン、棚卸差異の適切な処理から原因、解決の糸口まで、網羅的に解説します。

この記事を読むと分かること
  1. 棚卸差異の状況や差益・差損について理解できる
  2. 今目の前で起こっている棚卸差異の深刻度や重要性を理解できる
  3. 棚卸差異が起こる原因を把握し、適切な対処方法がわかる

この記事を読み終えるころには、きっと目の前の帳簿や在庫のズレに対して怯えることなく、冷静に判断して対処できるスキルが身についているはずです。

早速、解説していきます。

目次

1. 棚卸差異の基礎知識

まずこの章では、

  • 棚卸差異を理解する上で実務担当者が押さえておくべき「定義」
  • 帳簿処理上の「種類」

について、一つずつ解説してまいります。

1-1. 棚卸差異とは「帳簿在庫と実在庫の不一致」

棚卸差異とは、システムやエクセル上で管理・記録されているデータの在庫数量(帳簿在庫)と、倉庫や店などにある在庫数量(実在庫)が一致していない状態を指しています。

棚卸差異とは帳簿在庫と実在庫の不一致

在庫管理においては、「帳簿在庫 = 実在庫」の状態が理想です。

ですが、人の手による作業が介在する以上、ズレ(差異)は発生しやすく、実務上、差異が生じていることも珍しいことではありません。

特に多くの在庫を保有している企業ほどよく起こります。

しかし、業種によっては、原材料から仕掛品、完成品までさまざまな在庫があり、差異が広範囲に及び、経営の根幹に悪影響を与える可能性があります。

目的を持って定期的に棚卸を実施して、在庫のズレを発見し、発生原因を調査して、できる限り発生しないようにすることが重要です。

1-2. 棚卸差異の種類

続いて、棚卸差異の種類についてです。

棚卸差異には、実在庫が帳簿より「少ない」か「多い」かによって、損と益の2種類に分かれます。

種類棚卸差損(帳簿 > 実在庫)棚卸差益(帳簿 < 実在庫)
状態帳簿上の数字よりも、実際の在庫が少ない状態(マイナスの差異)帳簿上の数字よりも、実際の在庫が多い状態(プラスの差異)
具体例帳簿上は100個だが、お店には98個しかない(-2個)帳簿上は100個のはずなのに、実際には102個ある(+2個)
会計上の扱い損失(-)収益(+)
発生要因
  • 紛失
  • 盗難
  • 破損・汚損による廃棄 of 報告漏れ
  • 出荷ミス
  • 入力漏れ
  • 出荷処理の失念
  • 検品ミス
  • 数え間違い

それぞれ会計上の扱いや発生する要因が異なるため、まずはどちらの棚卸差異に該当するのかを把握しましょう。

棚卸差異を正確に把握するためのポイント

現場で起きている本当の問題を正しく把握するためには、必ず「商品(部品・パーツ)・製品ごとに分けて計算」することが大切です。

棚卸時に棚卸差損と棚卸差益を混合しやすくなるためです。

あくまで一例ですが、以下のように、合計は一致していても、商品(部品・パーツ)ごとに見たとき、差異が生じている可能性があります。

棚卸は損益を区別して集計する

現場で起きている本当の問題を正しく把握し、後の改善に活かしていくためにも、商品・製品ごとに確認・計算しましょう。

2. 棚卸差異は「差異率」を算出して追及することが重要

棚卸差異の管理は、ただ数値のズレを把握するのではなく、差異率として状況を可視化し、客観的に判断・評価することが大切になってきます。

差異の「個数」は、母数によって大きく変わるためです。

この章では、棚卸差異の目安となる一般的な「許容範囲」と、差異をゼロにすることが困難なケースについて解説します。

2-1. 一般的な棚卸差異率の許容範囲は5%以下

棚卸差異率は、少なければ少ないほど理想ですが、一般的な許容範囲は±5%が目安とされています。

棚卸差異率の計算式

5%を超える場合、入力漏れの常態化や盗難、杜撰な保管ルールなど、管理体制に重大な欠陥がある可能性が考えられます。

ただし、管理体制が整っている企業(特に製造業や大手物流)では、1%〜0.1%以下を目標値として設定しているケースがあります。

法律等で定められているわけではなく、業種や企業方針によって異なりますが、許容範囲を超える差異が発生している場合は、早急に原因を究明し、対策することが大切です。

2-2. 差異が構造的に生じやすい業種は「許容枠」と「評価基準」を設定

棚卸差異率の目安を紹介しましたが、ある程度の差異は構造的に仕方がないとされるケースがあります。

▼差異を限りなくゼロにすることが難しいケース

ケース背景
薄利多売・多品種少量商品が小さく、数が多い(雑貨、衣料品、小部品など)場合、正確にカウントし続けるのが困難なため、納品がアバウトなケースがある
生鮮食品・化学品蒸発、乾燥、変質、細分化によるロスが発生しやすく、物理的な要因で帳簿と一致しないケースがある

他にも、万引き、内引き(従業員の盗難)などが発生しやすい業種は、棚卸差異が発生しやすいとされています。

ただし、上記のようなケースでも棚卸差異0を目指さないわけではないため、発生を前提とした「許容枠」と「評価基準」をあらかじめ設定しておくことが大切です。

例えば、「不可避な商品」と「絶対にズレてはいけない商品」を分けて管理し、差異が発生する場合は過去の実績値に基づいた現実的な目標値(例:前年実績値 - 0.1%など)を算出しましょう。

3. 基本的に棚卸差異の放置はNG!速やかに報告すべき理由

棚卸差異が発覚したときに「怒られたくない」「原因を調べるのが面倒」といった理由で報告を後回しにしたり、ごまかそうとしたりしたくなるかもしれません。

心理的なストレスがあるかもしれませんが、棚卸差異を隠したり、放置したりすると、事態はより深刻化し、以下のように会社経営に大きなダメージを与える可能性があります。

棚卸差異を速やかに報告すべき4つの理由

次項で、速やかに報告し、是正すべき理由について解説します。

3-1. 財務への影響(キャッシュフロー悪化、利益の不正確さ)

棚卸差異を放置すると、会社の利益を正しく計算できず、財務面に影響を与える可能性があります。

財務への影響例

・棚卸差損が発生した状態で放置すると、帳簿上よりも実際の在庫が少ないため、会計処理上は損失として計上される

・結果的に利益が減少し、キャッシュフローの悪化につながり、最悪の場合、資金繰りにも影響する

在庫は、会計上の「資産」です。

決算書に記載されている在庫資産の金額が曖昧になると、財務状況を正しく把握できないだけでなく、決算書の信頼性も低下させてしまう可能性があります。

3-2. 業務効率の低下(在庫探しの手間、原因究明の作業増)

棚卸差異が改善しないまま日々の業務を続けた場合、現場の生産性や業務の効率を著しく低下させるリスクがあります。

業務効率低下の例

・「データ上にある」ものの、実際には部品や材料が不足しており、存在しない在庫を探すという無駄な時間や工数が発生する

日々の業務前に棚卸を行っている場合、差異が生じたことでコア業務を停止して、在庫を数え直したり、原因を特定したりする作業に追われます。

これにより、本来業務すべき時間に作業ができなくなり、生産計画の遅延や機械の稼働率を低下させる原因にもなります。

また、差異を確認した直後であれば、記憶をたどるのも容易でしょう。

しかし、数か月放置した後に調査をしても、原因の特定が難しくなり、業務負担が増加して本来の業務にも支障をきたしてしまいます。

放置するほど、在庫を探して見つけるまでに時間や労力、コストもかかるため、差異を発見した時点で報告・対応することが大切です。

3-3. 顧客満足度の低下(欠品による納期遅延、過剰受注によるキャンセル)

差異は、最終的に顧客の満足度にも影響する可能性があります。

欠品による納期遅延の例

・帳簿上の在庫がある前提で受注したのに、実際には帳簿上と実在庫にズレがあり、出荷のタイミングで現物がないという状況を起こす

・商品提供がスムーズに行えないだけでなく、お客様に対して欠品や発送遅延の連絡をしなければならなくなり、顧客からの信頼も低下する

過剰受注によるキャンセルの例

・在庫が過剰だった場合、商品の長期保管による品質低下や使用期限切れのリスクが高まり、キャンセルを余儀なくされる

・在庫の単作や確認に時間がかかり、納期の遅れにつながる

顧客や取引先に大きな支障をきたし、顧客満足度を低下させないためにも、できる限り差異を少なくする取り組みを行いましょう。

3-4. 企業の信頼失墜(取引先からの不信感、ガバナンスの欠如)

棚卸差異の放置は、最悪の場合、対外的な信用問題の失墜を招きます。

企業の信頼失墜の例

・度重なる欠品や納期の遅延により、「あの会社は納期を守らない」「管理が杜撰で信用できない」というレッテルを貼られる

・結果的に、今後の取引や契約を白紙にしてしまう

万が一、税務調査や外部監査で大きな差異が発見されると、「意図的な利益の操作」という疑いをかけられ、最悪の場合、法的・社会的信頼を揺るがす事態に発展してしまいます。

実際、棚卸資産絡みで利益操作をしたとして確認された例があり、公に報道されると企業の信頼失墜は免れません。

差異が出たことよりも、放置や隠すことの方が罪は重くなります。自分や会社を守るためにも、傷口が浅いうちに対策のための行動を取ることが大切です。

4. 業種・商品特性上以外の棚卸差異の要因は「アナログ対応による」もの

自然減耗や盗難など、業種や差異をなくすことが困難なケースを除けば、棚卸差異の多くはアナログな対応による人為的ミスやシステム的なプロセスの不備がきっかけです。

気をつけて作業しているつもりでも、アナログな運用・管理体制では、多段階のステップを踏み、関わる従業員も複数います。

例えば、どんなにマニュアルで整備しても、全員の認識を100%統一することは難しくなります。

人間の「目」と「記憶」に100%依存するため、同じ数字の羅列を見ているうちに脳が情報を正しく処理できなくなる現象(ゲシュタルト崩壊)が起きやすいです。

すると、脳が「見ている数字」と「認識している数字」をすり替えてしまう可能性もあります。

人の手を介するほど、正確に情報を伝達することが難しく、途中で事実が歪んでしまうリスクが高いです。

つまり、アナログな運用フローそのものが差異を生む温床となっているのです。

5. 棚卸差異が発生する具体的な原因

アナログな対応が棚卸差異のきっかけになるとお話しましたが、その発生要因は、現場のいたるところに潜んでいます。

差異が発生する主な原因は、次の5つです。

以下で具体的なケースとともに原因を解説します。

各原因の対策については、後ほど紹介するため、まずは原因から特定していきましょう。

5-1. 入出荷時のミス

入出荷時は、商品の流動が最も激しく、差異が発生しやすいタイミングのひとつです。

入荷・出荷の記録漏れ、誤った品目や数量の入荷・出荷など、多忙な現場での目視や人の手による管理・確認の限界が主な要因となっています。

【出荷時】出荷数量間違い
  • 注文数より多く、あるいは少なく発送(出荷)してしまう
【出荷時】品番 of 取り違え
  • 形状や型番が似ている別の商品を発送してしまう
【出荷時】出荷内容ミス
  • A社に送るべき荷物をB社へ、B社宛の荷物をA社に送ってしまう
【出荷時】セット品の解体
  • セット品をバラしてしまい、1セット1個のものをバラ1個で出荷してしまう
【入荷時】現物確認を怠る
  • 「仕入れ先からの情報(伝票)」を鵜呑みにして確認・検品をしないまま受け入れてしまう
  • 外箱や商品パッケージが似ている「色違い」や「サイズ違い」を間違えて受け入れてしまう
【入荷時】ステータス管理ミス
  • システム入力担当者が処理する前に、「入荷待ち」の在庫を「入庫完了」にしてしまう

在庫管理も自社で行う場合、ルール整備ができていなければ入荷時・出荷時の確認作業も俗人的になります。

また、コア業務も行いながら棚卸をする場合、「今日中に全ての棚卸を完了させる必要がある」というような時間的な制約もあり、気持ち的な焦りからミスも発生しやすくなります。

5-2. 事務・システム上の入力ミス

現場での作業が正しく行われていても、システムへ反映させる事務処理のプロセスでミスにつながる可能性があります。

特に、紙媒体からのデータ化や転記など、人の手を介する場合に起こりやすいです。

桁数の入力ミス
  • テンキーの打ち間違い

※「102個」を「120個」と入力するなど

入力の重複
  • 処理済みの伝票を未処理の束に混ぜてしまい、2回入力してしまう
入力の漏れ
  • 事務処理中に別の作業に気を取られ伝票を紛失し、入力を忘れてしまう
単位の履き違え
  • 「1ケース(12本)」で管理している商品を、バラの「1本」で登録してしまう
日付のズレ
  • 前月末に動いた在庫を、今月の数字として計上してしまう

5-3. 現場の管理不備によるミス

現場の管理・保管状態の乱れも棚卸差異に直結する原因です。

整理整頓がされていない管理環境下や、現物の状態を誰も管理・把握していない体制など、現場の管理不備も棚卸差異が起こりやすくなります。

管理場所の未徹底
  • 決められた場所以外に商品を置いてしまい、迷子在庫になる
整理整頓の欠如
  • 在庫の配置が不規則で、在庫のカウント間違いをおこしてしまう
破損・汚損の未報告
  • 現場で破損させた商品を報告せず、勝手に処分してしまう
俗人的なルール
  • 正式な手続きを行わず、営業用のサンプルや備品を持ち出してしまう

5-4. 仕入れ先によるミス

棚卸差異は、自社だけの問題ではなく、仕入れ先によるミス(受入時の不備)で起こる可能性もあります。

入荷した時点で、既に数字がズレているケースもあり、仕入れ先側を信頼しきって、受入時のチェックを怠ることが差異の原因です。

送り状と中身の不一致
  • 伝票には100個とあるが仕入れ先が103個送ってきた(入荷時の検品を怠る)
誤品納入
  • 注文した商品Aではなく、外箱が似ている商品Bが送られ、棚に入れてしまっていた
伝票の重複発行
  • 現場で破損させた商品を報告せず、勝手に処分してしまう
俗人的なルール
  • 仕入れ先が1つの納品に対して伝票を2枚発行し、そのまま両方受け取ってしまった

5-5. 実地棚卸時のミス

システム上の管理を正確にしていたとしても、棚卸作業でミスをしてしまうと元も子もありません。

短時間で集中して作業する必要があり、単純な作業の繰り返しなので、数の数え間違いや記録ミス、ラベルの読み間違いなどが発生しやすい傾向があります。

ダブルカウント(二重計上)
  • どこまで数えたか分からなくなり、同じ棚を2回数えてしまった
カウント漏れ
  • 棚の奥や床に置かれた未開封の箱を見落としてしまった
読み取り・聞き取りミス
  • 数える人と書く人を分けて作業しており、聞き間違えて記入してしまった
俗人的なルール
  • 単純な計算ミスで合計を書き間違えてしまった

6. 棚卸差異が発覚した直後の対応

さまざまな原因で発生してしまう棚卸差異ですが、見つけたら、まずは今起こっている差異の処理を適切に行うことが大切です。

対応は、必ず下記の2つを順番に実施しましょう。

  1. (1)現場の数字を正すこと(在庫数の修正)
  2. (2)お金の数字を正すこと(会計仕訳)

以下で詳しく解説します。

6-1. 現場の数字を正すこと(在庫数の修正)

棚卸差異が発生し、その原因が入力ミスやカウントミスによるものであれば、改めて数え直して、帳簿やシステム、実在庫の数値が一致するように修正をしましょう。

具体的に5章で示した、各要因ごとの入力ミスやカウントミスに当てはまるケースは以下の通りです。

棚卸差異が発生する要因入力ミスやカウントミスに当てはまるケース
1.入出荷時のミス
  • セット品をバラしてしまい、1セット1個のものをバラ1個で出荷してしまう
  • 「仕入れ先からの情報(伝票)」を鵜呑みにして確認・検品をしないまま受け入れてしまう
2.事務・システム上の入力ミス
  • テンキーの打ち間違い(「102個」を「120個」と入力するなど)
  • 処理済みの伝票を未処理の束に混ぜてしまい、2回入力してしまう
  • 事務処理中に別の作業に気を取られ伝票を紛失し、入力を忘れてしまう
  • 「1ケース(12本)」で管理している商品を、バラの「1本」で登録してしまう
  • 前月末に動いた在庫を、今月の数字として計上してしまう
3.現場の管理不備によるミス
  • 決められた場所以外に商品を置いてしまい、迷子在庫になる
  • 在庫の配置が不規則で、在庫のカウント間違いをおこしてしまう
  • 現場で破損させた商品を報告せず、勝手に処分してしまう
  • 正式な手続きを行わず、営業用のサンプルや備品を持ち出してしまう
4.仕入れ先によるミス
  • 現場で破損させた商品を報告せず、勝手に処分してしまう
  • 仕入れ先が1つの納品に対して伝票を2枚発行し、そのまま両方受け取ってしまった
5.実地棚卸時のミス
  • どこまで数えたか分からなくなり、同じ棚を2回数えてしまった
  • 棚の奥や床に置かれた未開封の箱を見落としてしまった
  • 数える人と書く人を分けて作業しており、聞き間違えて記入してしまった
  • 単純な計算ミスで合計を書き間違えてしまった

数え直して数が一致した場合は、すぐに帳簿や在庫管理システムの数が一致するように処理することが大切です。

6-2. お金の数字を正すこと(会計仕訳)

入力ミスやカウントミスだと思っていたけれど、何度数えても数が一致しない場合は、他に原因がある可能性が高いです。

差異がある場合は、以下の手順で処理をしましょう。

6-2-1. 在庫数の修正(帳簿を実在庫に合わせる)

まずは、今目の前にある在庫数を正として、管理システムやデータを修正しましょう。

原因が特定できた場合もできなかった場合も、在庫数の修正は必要です。

以下の流れを参考に、対応しましょう。

在庫修正時の対応内容
【必要に応じて】1. 入出庫の停止
棚卸と並行してコア業務を行っている場合、更新作業が終了するまで、入出庫を一時的に停止する※その際、「外部取引先への停止説明・連絡」が必要
【マスト】2. 実在庫への書き換え
帳簿上の数字を消去し、実際にカウントした確定数に上書きする※一般的には「棚卸更新」「在庫調整」という
【マスト】3. 履歴の保管
修正理由や対応の証跡(いつ、誰が、どれくらいの差異を修正したか)をシステムや報告書に残す
【必要に応じて】4. 入出庫の再開
入庫・出庫を停止していた場合は、再開の連絡をする

修正作業中に商品の動きがあると再びズレが生じるため、可能な限り、入出庫の停止を行った上で、迅速に帳簿上の在庫数を実在庫数に合わせましょう、

6-2-2. 会計上の仕訳(棚卸減耗損、雑収入などの処理)

帳簿上の在庫数を修正したら、会計上の仕訳を行います。

棚卸差異が発生した場合、在庫の修正によって生じた資産の増減を正しく帳簿に記録していきます。

ここでは、期末時の棚卸を例に紹介します。

▼原因不明含む一般的な棚卸差異の仕訳例

項目棚卸差損の場合棚卸差益の場合
モデルケース帳簿100個:実在庫95個(帳簿 > 実地)帳簿100個:実在庫105個(帳簿 < 実地)
勘定科目棚卸減耗費棚卸受入益
お金の流れ帳簿在庫から金額を引く帳簿在庫へ金額を足す
仕訳借方)棚卸減耗損 5,000円
貸方)商品 5,000円
借方)商品 5,000円
貸方)棚卸受入益 5,000円

ただし、勘定項目は会社の経理方針によるため、棚卸減耗費、棚卸受入益以外の勘定項目で処理するケースがあります。

勘定項目が異なるケースの例棚卸差損の場合棚卸差益の場合
一般的な処理(原因不明含む)棚卸減耗費棚卸受入益
金額が僅少などの例外雑損失雑収入
過年度の計上ミス過年度修正損益-
明らかな事務処理誤り特別損失-
盗難による差異盗難損失-

原因不明でも、不足が「棚卸減耗費」、過剰が「棚卸受入益」で処理されるのが一般的です。

ただし、軽微なズレの場合、「雑収入・雑損失」で処理をしたり、原因が明らかで明確な異常損失がある場合は、特別損失・盗難損失などで計上したりするケースもあります。

会計処理の勘定科目は、原則は前期踏襲です。自社の経理規程・会計処理マニュアルを確認し、前期・前々期の決算書や総勘定元帳も確認して対応しましょう。

もし不安がある場合は、税理士や顧問会計士に相談するのが安心です。

7. 棚卸差異の発生率を下げる予防策

棚卸差異の原因がわかり、正しく処理したとしても、それは一時的な対応に過ぎません。

同じことを繰り返して、心理的なストレスを抱えるのは避けたいですよね。

原因が特定できたら、システムやデータ管理といった帳簿上の処理から棚卸のプロセスまで、根本から見直しをして、そもそ後の発生率を下げる対策を講じることが大切です。

ここでは、棚卸差異の発生率を下げる予防策として5つを紹介します。

原因に合った予防策で、棚卸差異の根本から解決を目指しましょう。

7-1. 棚卸運用の改善

入出荷時のミスは、棚卸自体や運用プロセスを見逆すことで改善できる可能性があります。

検討すべき選択肢は、「自社での改善」と「アウトソーシングの活用」です。

まずは自社で体制を整え、うまくいかない場合や、社内対応に限界を感じた段階でプロの手を借りるというステップで検討するのがおすすめです。

ステップやること
1.自社で賄い、体制を立て直す
  • マニュアルの刷新
  • 棚卸プロセスの再設計
  • 現場の教育
2.限界を感じたら「アウトソーシング」へ切り替える
  • 経験豊富な専門業者へ依頼

アウトソーシングにはコストがかかりますが、限界を感じたらプロの力を借りるのが、解決の近道です。

棚卸を従業員で行う場合、マニュアルの作成からプロセスの改善までを自社で賄う必要があります。

専門知識がないまま、自社オリジナルのやり方で棚卸をしている場合、フローに欠陥があっても気が付かず、非効率的なやり方やミスしやすい方法が受け継がれてしまいます。

ですが、経験豊富な専門業者に依頼することで、客観的かつ高精度な棚卸作業を効率的に行うことが可能です。

従業員にとっても現場負担が軽減され、棚卸していた時間にコア業務ができます。

その結果、業務効率が高まり、運用コストの効率化も期待できるため、まずは自社で賄いながら、うまくいかないときは外部 of 力を借りましょう。

7-2. IT・システムの導入

事務・システム上の処理で人為的なミスが発生し、差異が生じているのであれば、IT・デジタル化を進めてアナログな管理からの脱却を図りましょう。

棚卸差異の改善に使える具体的なIT・システムとしては、以下が挙げられます。

IT・システムバーコード・QRコード管理RFIDタグ(ICタグ)重量計
スキャン方法商品に貼られたコードをスキャンする電波を利用して複数のタグを一度に読み取るセンサーで重さを検知し、在庫数を自動計算する
特徴
  • 「目視」と「手入力」の作業が不要
  • 即時データ反映され、情報のタイムラグが少ない
  • 在庫数に関係なく一瞬でカウントできる
  • 数え漏れが物理的に発生しづらい
  • スキャンすら不要
  • 商品が減ると自動で検知
  • 数える行為自体をなくせる

それぞれの特徴を踏まえたおすすめのケースは、以下の通りです。

IT・システムおすすめのケース
バーコード・QRコード管理
  • 商品数が多い
  • 品番の打ち間違い(入力ミス)が頻発している
RFIDタグ(ICタグ)
  • 棚卸の「カウント作業」に膨大な時間がかかっている
  •  作業スピードに課題を感じている
重量計
  • ネジやボルトなどの細かい部品を扱っている
  • 液体などの個数のカウントが難しい商材が多い
  • 補充頻度が高く、常にリアルタイムの在庫を知りたい場合

棚卸作業自体を自動化でき、在庫管理システムのツールと連携すれば、棚卸自体の自動化も可能です。

現場における商品の流れも即座にデータに反映され、入力のタイムラグによるミスも軽減できるので、棚卸が合わないなどのミスそのものを減らす効果も期待できます。

在庫管理システムや自動認識技術の利用を考えている方は、導入の方法や注意点について詳しく紹介している『 「在庫管理」にバーコード・自動認識技術を活用する方法と注意点 』もあわせてご確認ください。

7-3. 現場の整理整頓

自動化できる部分は機械化しつつ、現場の煩雑な在庫管理を見直し、整理整頓することも物理的な予防方法のひとつです。

例えば、以下のような手順で整理整頓を始めてみましょう。

ステップ現場の環境を整える上での確認ポイント
1.不要物の廃棄とエリア分け
  • 在庫や不要物を置くスペースを確保する
  • 良品・不良品の混在を防止する
  • 必要な数のエリアがあり、明確に分ける

例)「良品」「不良品」「出荷待ち」等が混ざらないように、床にテープなどを貼って区画を明確化する

2.ロケーション管理の徹底(住所決め)
  • 全ての在庫に住所を与える
  • 商品マスターにロケーション番号を紐付け、その場所にし、かない状態にする
  • 棚の目立つ位置にロケーションラベルを貼る
  • 棚に置くときは、一定の向き(ラベルが前など)で整列し、どの商品かを瞬時に把握できるように並べる

例)倉庫の棚ごとにA-01-1(A列-1段目-1番目)のような番号を割り振り、商品ごとの置き場所を定める

3.定数・定量管理(数え方のルール化)
  • パッと見て在庫数を把握できる置き方にルール化する
  • 管理単位(セットか単体か)は現場の共通認識として統一する

例)10個単位で袋詰めし、5セットごとに目印をして「このラインまであれば50個ある」ことがパッと見でわかるようにする

4.運用テスト・定着化
  • 実際に運用し、1~3の整理整頓ルールが守られているかの確認をしながら、厳守されていないルールを調整する
  • 整理整頓された状態を写真に撮り、見比べるなどの対応で改善できているかを確認する

例)在庫の住所を決めたが、適当な場所に置かれたままの商品があったため、ロケーション管理の徹底を全社員に周知する

まず、決められた場所以外に置かないルールを徹底するだけでも、誰でも一目見ればどこに何があるかがわかる状態を維持でき、整理整頓につながります。

残りの個数が把握しやすいよう、数えやすい状態を維持することで、カウントしやすくなり、現場の管理不備による人為的なミスの減少が期待できるでしょう。

一気に全てを進めることは難しいため、まずはよく商品が出入りするエリアや差異が発生しやすい商材があるエリアから、3〜4週間かけて段階的に進めていきましょう。

7-4. 日次棚卸の実施

棚卸は大掛かりな作業となるため、年に1~2回というケースも少なくありませんが、日次や週次、月次など、できる限り短いサイクルで棚卸を実施するのも有効です。

棚卸の間隔が長いほど、ミスの原因をたどるのが困難になるからです。

日次棚卸を実施していた場合、「今日のどの作業で間違えたか」を即座に特定できます。このように棚卸の間隔が短ければ、棚卸にかかる作業時間も短く、万が一ずれが発生しても、傷口が小さくて済みます。

また、何度も繰り返すことで、現場従業員の管理意識が高まり、管理スキルも定着してミス自体を減らす好循環サイクルを生み出します。

仕入れ先によるミスが多い場合や、ミスが多発しているような場合には、日次棚卸を実践してみましょう。

7-5. ダブルチェックの導入

実地棚卸時にカウントのズレが生じやすい場合は、ダブルチェックを徹底しましょう。

棚卸時の一般的なダブルチェックは、以下の通りです。

実地棚卸のダブルチェック

2人1組の場合は、ペアで「数える」「入力する」の作業を入れ替えるペアチェックを行います。チームで作業する場合は、商品①と商品②をお互いに数えて数が一致しているかを確認しましょう。

8. まとめ

棚卸差異の基本から発生時の対応、差異を無くすための対処法までを紹介しましたが、いかがでしたか?

改めてポイントをおさらいしましょう。

  • 棚卸差異は珍しい現象ではなく、ほとんどの企業で起こる
  • 棚卸差異の一般的な目安は5%以内とされているが、業種や企業の方針で異なる
  • 棚卸差異には「損」と「益」があり、会計処理上の仕訳が異なる
  • 棚卸差異を放置することは、最終的に会社の信用失墜につながる
  • ズレの原因は多岐にわたるが、アナログ対応ほど起こりやすいため、管理体制や環境を整備することが問題解決の近道

棚卸差異をゼロにすることは難しいです。

しかし、発生原因を把握し、適切な対処と対策を講じることで棚卸差異の拡大を防ぎ、ズレを最小限に押さえられる可能性があります。

棚卸差異という物理的・精神的なストレスや負担から本当の意味で解放され、あなたが本来行うべきコア業務を遂行できるよう祈っています。

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