適正在庫を実現するPSI管理

PSI(生産・販売・在庫)管理とは?

PSI管理とは、これらを個別最適ではなく、全体最適
の観点でとらえ、計画と実績を管理していくことです。

はじめてのPSI管理を学ぶ方は、まずはこちらをご覧ください。

PSI管理の基本を理解する

製造業、流通業では、「生産、調達、販売、在庫」の
計画と実績の対比が極めて重要です。

なぜならば、PSI(生産または調達・販売・在庫)は
本来、連動しているからです。

個別最適でバラバラに動くと、

  • 調達は安い材料・・・製品を安価で大量に仕入れる
  • 生産は稼働率・・・収益を上げるため、多く生産する
  • 販売は在庫を持つ・・・機会損失をさける

結果、計画と大きく乖離し、資金繰りを圧迫させる
本社は結果が悪化してから、事実を知る。
最悪のシナリオは会社倒産です。

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PSIに対する日本と欧米の考え方の違い

日本では、SCМオペレーションを現場に任せます。
そして基本は数量が中心です。
経営陣は月次結果の報告を受けるだけで、
途中経過であるPSIには関与していません。

欧米企業では、サプライチェーンは資産管理と
位置付けられ、主にお金の動きに関与します。
つまり、PSIに対して意見を述べる立場にあります。
そして、計画と比較して、リスクを予見します。

PSI管理を導入しても、成果ができない企業の特徴はこちらで解説しています。

PSI管理で失敗する企業の特徴を知る

PSIの計画対比をしていないのが問題

事業計画は、PL(損益計算書)とBS(貸借対照表)
は企業の上場、非上場に関わらず、必ず作成します。

販売会社、製造事業所でもPL作成時には
売上、売上原価、在庫を算出します。

在庫額=期首在庫額+仕入額―売上原価になります。
売上の予実績管理はどの企業でも行います。

しかし、調達、生産、在庫の予実績をしている企業は
少ないのではないでしょうか?

PSI管理の目的は、予実管理にあります。
金額で縛ると、様々なひずみが発生します。

PSI管理のバランスを評価するのは在庫回転日数

売上が計画を大きく上回ると、調達も生産も
計画を大きく上回る必要があります。
逆に、売上が計画に対して、著しく下回った
場合、調達と生産は下方修正に走ります。

従って、適正調達金額、適正在庫金額は存在しない
といえます。なぜならどちらも絶対値だからです。
絶対値は変動に対して、追従できません。

一方、在庫回転日数は相対値です。
PSIバランスの適正を評価できるのは在庫回転
日数です。
ただし、在庫回転日数は将来の値でなければいけません。

PSI管理に在庫回転日数を指標として使う方法はこちら

在庫額を過去の売上実績や売上原価で割るとどうなるでしょうか?
傾向値はわかっても、将来の意思決定には使えません。
例えば、その期間、拡販又は在庫処分で売上をあげる場合、
期末在庫が適正かどうか、判断するのは危険です。

在庫額÷先行売上原価で算出することで問題は解決します。

拡販又は在庫処分を将来に計画するのであれば、
それを考慮した在庫計画が必要になります。
在庫回転日数は、意思決定を補佐する管理会計になりえます。

PSI管理を全社的に展開する方法はこちらをご覧ください。

PSI管理を財務・経営に活かす方法を学ぶ

PSI管理の実際(在庫金額と回転日数の予実管理)

PSI管理表
上記の表は1年間の

  • 売上
  • 仕入/生産
  • 在庫
  • 在庫回転日数

について、「計画、翌月の見込み、実績」をまとめたものです。
在庫回転日数に関しては、3通りを比較してみました。

A:在庫回転日数 = 在庫÷翌月売上原価×30日
B:在庫回転日数 = 在庫÷当月売上高 ×30日
C:在庫回転日数 = 在庫÷当月売上原価×30日

Aに関しては、予実績管理が可能であるため、
年初で定める在庫回転日数の数値をベースに販売調整、
仕入/生産調整を行います。
事業本部毎、商品カテゴリー毎に同じやり方をすることで、
在庫回転日数に合わせた調整を行います。

これに対して、B、Cは過去の売上高、売上原価を使うため、
予実績管理は不能になります。

グラフにするとさらに変動がよく分かります。

PSI管理表
在庫回転は目標30日に対して、4月から8月予実績は大きくかい離

さらに、ここから分かることを考察しました。

  • 販売は、1月から3月まで計画を大幅に上回るが、5月から下方
  • 仕入、生産は好調な販売を反映して計画を上回るが、5月から修正
  • 在庫回転日数は、A、B、Cともに5月が最も高い
  • Aについては、4月に見込んだ時点で既に在庫回転が悪化と予見

注:BとCの違いは売上高か売上原価(70%)の違いによる算出
10日以上も差が発生。売上高を使うのは不適切と言えます。

次に定番商品について説明します。
週次の場合、先行4週間(28日)の売上原価を使うと、
以下のようになります。

在庫回転日数=在庫金額÷売上原価(見込み、実績)×28日

企業によっては、簡便性から売上原価は翌月でなく
当該月を使うケースがあるようです。

単品を測定する限りにおいては、過不足ははっきりします。

しかし、企業で取り扱うすべての在庫(製品・商品、仕掛品、原材料等)
に適用する場合のデメリットは、品薄在庫、過剰在庫が相殺です。

結果的に全体では健全と誤った評価につながる。
本来、在庫回転日数は数量で測定しても、金額でも同じ数値
であるべきです。(単価を入れれば可能)

PSI管理の先行の売上見込みを使う理由

例えば、事業を新たに開始又は販売会社を設立して、
商品の売買を開始するとき、次のステップを踏みます。

  1. 販売見込みを立てる
  2. 仕入/生産計画を立てる
  3. 在庫計画を立てる
  4. 在庫回転日数計画を立てる

下表は、商品Aの予実績をまとめたものです。
予実管理

計画では、在庫回転日数が30日を下回るレベルを適正とします。
仕入/生産は先行4週間先の変更可能とします。

  • 販売:当初、計画を上回るが第6~9週に下方に向かう。
  • 仕入/生産:第4~5週と増やすが、その後、減産
  • 在庫回転日数:週末在庫÷先行4週間の販売 × 28日で算出
    30日を下回るために、仕入/生産調整を行うトリガーとなります。

PSI管理において在庫回転日数は意思決定を補佐するための指標

商品が増えていくに従い、数量ではなく、金額に
置き換えることで、全体の仕入額/生産額の調整
を実施する判断基準になります。

基本的に、新規のシステム投資は不要です。
ポイントは、PSIの計画/見込みの有無でしょう。

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高井先生はソニーにて、実際にPSI管理を行い、多数のご経験を積まれ
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