在庫管理を月次から週次に変える

PSI管理と週次オペレーションの重要性

 

ビジネス環境はリアルタイムの時代に突入しています。
資材調達、製造、物流、販売、物流、販売見込、流通在庫(=店頭在庫)
はリアルタイム又は日次で刻一刻と変化しています。

一方で在庫(自社在庫と流通在庫)の管理サイクルについては、
未だに月次で管理している会社が多いのではないでしょうか?

特に中小企業の場合、ヒト・モノ・カネに限りがあるため、
一気通貫で確認するのは難しいでしょう。

PSIバランスとは?

PSIバランスとは、P(調達・生産)、S(販売)、I(在庫)のオペレーションが健全であることを意味します。ここに在庫回転を加えます。
調達から実売まで週次で把握し、相関を確認するも、経理実績に合わせると月次になり、要因分析から、改善活動につなげる時間的余裕ない企業が多いのではないでしょうか?
特に、売上が月末偏重型の企業によくあるケースとして、在庫は月初に積み上がり、月末に向けて下がる傾向にあります。月次と週次では見える景色が違ってきます。

在庫情報は共有できていない

在庫情報の共有状況
現場では週次管理できていても、それが経営陣と共有できている会社
はごくわずか(20%)というアンケート結果もあります。

在庫管理を月次で行うとどうなるか?

PSIバランス_月次

  • P(調達・生産):販売動向に合わせて若干生産(調達)の調整をした。
  • S(販売):3月は2月より若干下がるが、4月には一段と下がると予測。
  • I(在庫):徐々に悪化し、3月末は1月の倍近くまで上昇

在庫回転日数(ここでは翌月の販売で割って算出。本来であれば売上原価が理想)
在庫回転は今後の悪化状況を示しています。

在庫管理を週次で行うメリット

A社が月でなく週単位で確認しているとどのようなことがわかるのでしょうか?

PSIバランス_週次販売
まず販売ですが、3カ月間とも、月の後半(3-4週)に6-7割を集中していることがわかります。

PSIバランス_週次
次にPSIをそれぞれ見てみると次のようになります。

  1. P(調達・生産):販売に合わせて調整はしているものの、月内は同じ量を調達・生産
  2. S(販売):上述のように、月に第1週、第2週は全体の3-4割
  3. I(在庫):生産と販売は連動していないため、在庫は加速度的に増加しています。
    在庫回転日数:先行4週間の販売で割って算出。仮に適正レベルを30日と決めておけば販売動向に合わせて、調達・生産調整を小刻みに行うことになります。
    資金繰りを改善するためには、支払いを遅らせ、在庫を極力減らし、入金を速めることです。

キャッシュサイクルとオペレーションサイクルの関係

キャッシュフローとオペレーションサイクル

支払いを遅らせる:
日本の商慣習で、月末締め、翌月払いがあります。日本の商慣習では、7月1日から7月31日の間の売上は翌月払いとなりますので、8月31日となります。資金が眠っている期間は最長で最短31日、最長61日となります。これは調達でもいえることです。支払い期間を最大限延長しようとしたら、7月1日にまとめ買いしておけば、支払いは8月31日になります。

下表は日本と海外を比較したもので、調達から支払までの期間を示しています。
商習慣_締日

支払い期間のことを最優先するのであれば、2か月分の在庫をまとめて購入しておくことが考えられます。その分、瞬間的に在庫は増えますが、その分、販売を伸ばすことができれば在庫回転力は高まるだけでなく、キャッシュインも早まり、結果、運転資本の圧縮につながります。

在庫管理を週次で行っている事例

週単位で調達・生産、販売、在庫を確認することで、月に4-5回、見直す機会があります。週次決算で有名な日本電産では、損益の週次管理を行っております。

損益を週次管理:日本電産

計画未達をなくすには、「フォロー」の徹底をやればよい。PDCAを月1回回すのではなく、全社、全組織で月に4回回せば、管理のメッシュは4倍になり、会社から「慢性未達病」は消えていく。

在庫の週次管理:しまむら

2015年12月末決算短信に約8割の売り上げを占めるしまむら事業で、「在庫管理を月次管理から週次管理に変更することにより、大幅に業務効率を改善した」という記載がありました。

私はこの記事に大変興味を持ち、効率経営のしまむらが週次管理を本格的に導入した背景と内容について徹底的に調査しました。

しまむらの当時の課題
『仕組みの限界』500店舗の時は、「超高速回転」でうまく機能していたが 同じやり方で1300店舗を運営。結果、無駄な在庫がたまり、前のシーズンの商品の値引き販売の常態化。結果、収益を圧迫。

改革の目的
不良在庫をためないような仕組みを作り直し、グループ3000店の目標に向けて布石を打つ。2015年初めにスタート

しまむらの不良在庫をためない対策

  1. 改革その1:売れ残りは処分する。
    店舗内のすべての商品に販売期限を設け、それを過ぎたものに関しては処分し、売り場をすっきりさせた。
  2. 改革その2:コントローラーの権限を強化。商品の在庫管理を担うコントローラーの発言力を強化。商品部から独立させ、商品の仕入れ価格や量の妥当性を監視できるようにした。バイヤーの過剰な仕入を防ぐ役割を果たすようにし、コントローラーに人数を増やして一人あたりの担当店舗数を減らし、その代わりに担当する商品分野を広げた。改革の成果として、在庫のたまりにくい体質へと立て直しを果たし、グループ店舗数3000にむけての仕組みが確立できた。

しまむらのキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

しまむらのCCC
2016年度は運転資本が前年比約32%も減少。
2017年度は売上前年比△0.1%に対して、運転資本は6%増加。
2016年3Qと2017年1Qにおいては、買掛債務の額が増えたため、
当該四半期のCCCは大幅に改善していることがわかります。

それを除けば、比較的安定しているようです。

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高井先生の記事一覧

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