本記事は、製造業において以下のようなお悩みがある方にオススメです。
- 在庫・在庫管理の基本的な理解をしたい
- どうすれば在庫削減ができるのか?
- 適正在庫を目指すには何をすればいいのか?
- 製造業のビジネスモデルには、どんな在庫管理システムが最適か?
- どうすれば在庫管理システムによって、適正な在庫管理ができるのか?
在庫とは何かという本質的なことを理解すれば、適正在庫や在庫削減、製造業における在庫戦略・在庫管理に役立てることができるようになります。
目次
在庫には3つの役割がある
在庫とは、販売または使用することを目的として、保管・所有しているものです。
販売・使用の観点からみると、
- 必要としている人を待たせない
- 手配中の欠品を防ぐ
- 調整役(バッファー)になる
この1つ1つの意味がわからないと、在庫管理・生産管理において、どこを改善すべきかがわからなくなります。
それぞれについてご説明します。
必要としている人を待たせない
在庫の役割で真っ先に思いつくのがこれです。在庫を持っていれば、すぐに渡すことができます。
例えば、あなたが「コーラが欲しい」と思って、コンビニに行ったとします。
コンビニの商品棚にあるコーラをとって購入すればすぐに入手できます。
しかし、「コーラ」が商品棚に並ぶまでは多くの時間が必要なことは想像できると思います。
まったく何もない状態からコーラを作るのに90日かかるとします。
在庫がなければ、90日間待たないといけません。しかし、在庫があれば待つ必要はありません。
在庫を持つことで、「待ち」を無くせるため、機会損失を防ぐことができます。
ただし、「待たせること」が必ずしも悪いわけではありません。戦略的に待たせることや、待ってもらうことが当たり前の状態にするのも一つの方法です。
手配中の欠品を防ぐ
これは、発注(調達)リードタイムの長いものほど、在庫が多く必要ということです。
例えば、商品A、Bともに1日に5個売れるとします。
- 商品Aの発注リードタイム:10日間
- 商品Bの発注リードタイム:30日間
商品Aを切らさないようにしようとすれば少なくとも、50個(5個×10日間)の在庫が必要です。一方、
商品Bを切らさないようにしようとすれば少なくとも、150個(5個×30日間)の在庫が必要です。
調達するリードタイムに合わせて在庫を持つ必要があります。
輸入品を扱う会社は、在庫が多くなりがちです。
調整役(バッファ)
調整役とは、「不測の事態に備えるため」という意味です。
不測の事態とは、さまざまなものがあります。
- 販売が実需の差
- 不良や破損
- 納期遅れ
- 歩留まり
など、予定と違うことが起こった時に、在庫を持っていれば対応可能です。
調整役の在庫は、予定と区別するため安全在庫として持つことが普通です。
なお、ばらつきや変動を抑える手法には「シックスシグマ」があります。改善にシックスシグマを導入したい場合はこちらをご覧ください。
在庫の本質は時間差を埋める存在
在庫の3つの役割の本質から在庫を考えると、在庫は時間の差を埋める存在だと言えます。
在庫があれば「待つ」ということが無くなります。
コーラの例でも説明した通り、在庫を持っていればお客様を待たせることは少ないです。
また、バッファとしてたっぷりと在庫を持っていれば、何かあった時にも在庫で対応できます。
在庫が多い会社と少ない会社の違い
在庫が少ない会社は、この3つを抑えています。在庫が少ない会社として有名なトヨタ自動車で在庫の3つの役割を見てみると、
- 必要としている人を待たせない:生産リードタイムが短い、高い復旧力
- 手配中の欠品:ジャストインタイムなので、そもそも調達リードタイムが短い
- 調整役:カイゼン活動や精度の高い計画
いかがでしょうか?
トヨタ自動車は在庫を減らすために努力を重ねているため在庫を少なく保つことができています。
在庫が多い会社は問題も多い
これまでいろいろな企業様の在庫相談に乗ってきましたが、
在庫が多い会社は、例外なく問題も多い
ということです。在庫の多さと問題の多さは比例どころか、指数関数的に関係します。
在庫が多いというのはそれぞれの会社によって違います。まず、自社の適正在庫を知っておく必要があります。
適正在庫の定め方や計算方法を解説する在庫管理セミナーを定期的に開催しています。
製造業の在庫管理は複雑
業種によって在庫管理は様々です。
- 小売業や卸売業:販売するためのものを在庫している(商品)
- 建設業や医療業:自社で使用するためのものを在庫している(いわゆる資材在庫)
- 製造業:販売する製品のほか、製品を作る材料を在庫している
特に、製造業は、製品を作るために、原材料(部品)、仕掛品といった製造業独特の在庫管理が必要なので他の業種に比べて複雑です。
製造業の在庫は3種類
製造業は、仕入れたモノを加工する「生産」といプロセスがあるのが他の業種と大きく違うところです。
製品を生産するための在庫が必要になります。
製造業の3種類の在庫について解説します。
部品・原材料
部品・原材料は、製品を生産するために必要なものです。
会計上は「原材料」と呼ばれていますが、実務的には部品と原材料、原料で言葉を使い分けていることが多いです。
部品
仕入れたら、ほとんど加工をせずにそのまま使えるもの指します。ボルトやナットなどがそれにあたります。
機械や自動車など作っている組立系メーカーが、生産のために購入する在庫のほとんどが部品です。
原材料
原材料も製品を生産するために必要なものです。
原材料は、そのまま使えないことがほとんどで、加工や調合といったプロセスが必要です。
代表的な原材料の例として、インゴット(鉄や金などの塊)や液体、衣類の生地などです。
組立に対して、「装置」を使って原材料を加工することが多いです。
仕掛品(半製品)
仕掛品とは、工程内または、工程間にある複数の部品や原材料を組み合わせた生産途中のモノのことです。
状態がどんどん変わるため、管理が最も難しい在庫です。
仕掛品の管理方法などより詳しい説明はこちらをご覧ください。
仕掛品と半製品の違い
仕掛品と半製品には明確な言葉の違いがあります。
- 仕掛品:製品を作る過程に一時的に生まれるモノで、そのままでは販売できないもの。
- 半製品:製品を作る過程に一時的に生まれるモノで、そのままでも販売するもの。
仕掛品と半製品は、製品を作る過程で出来上がるものということは同じですが、
半製品は、販売刷ることができるものです。
例えば、補修用パーツやオプションとして、生産途中のモノを販売することになれば、それは「半製品」になり、
販売しない(しなくなる)のであれば、「仕掛品」になります。
仕掛品の在庫削減
仕掛品の在庫を減らしたい場合の方法は大きく分けて2つです。
- 工程間の見込み生産を減らす(次工程のための作り置きを減らす)
- 生産リードタイムを縮める
どちらを実現しようとしても、仕掛在庫の在庫削減で必ず把握しておかなければいけないのは、製造(生産)リードタイムです。
製造リードタイムについて解説した記事はこちらです。(仕掛在庫を減らしたい方は必見です!)
5.製品(完成品・商品)
製品とは、顧客に販売できる在庫のことです。
大体の場合、卸売業や小売業に出荷することが多いと思います。
中には工場直売のようなかたちで、製造業が直接販売しているケースもあります。
また、最近は製造業がEC(ネット)販売に挑戦することも増えています。
そんな中で、通常の出荷とECで販売した在庫数が合わないという問題が多発しています。
製造業の在庫管理ノウハウだけでは、この問題を解決するのは難しいため、最近はご相談が増えています。
ネット販売を始めて在庫が合わず、困っている・・・
在庫はモノであり、お金である
これまでは、「モノ」としての在庫について解説しましたが、在庫はお金でもあります。
どちらか一方の見方だけではだめで、両方の見方が必要です。
在庫がないと、販売できずお金が稼げない一方で、在庫を持ちすぎると、在庫としてお金が滞留するため
キャッシュフロー(資金繰り)が悪化します。
在庫は無くてはいけないが、ありすぎてもダメ・・・
適量が必要です。これを適正在庫といいます。
会社によって適正在庫は違う
会社に必要な在庫量は適正在庫といいます。
適正在庫は、一律に決まるものではなく、会社によって決まるものです。
つまり、会社の戦略によって決まります。
在庫戦略
適正在庫は、会社の方針や戦略から導き出される財務戦略と在庫戦略から決まります。
まったく同じ業界で同じような商品を売っていても、戦略の差によって在庫戦略が決まります。
例えば、イタリアで自動車を売っているフィアットとフェラーリは、まったく在庫戦略が違います。
また、アパレル大手のユニクロ、ZARA、しまむらも全く在庫戦略が違います。
在庫をもたない在庫戦略
身近で分かりやすい例は、スーツです。
スーツには、
- 吊るし売り
- パターン(セミ)オーダー
- フルオーダー
があります。
吊るし売りは、店頭に在庫を置いて、訪れたお客様に販売します。
お客様は、すぐにスーツを手に入れることができます。
一方で、フルオーダーの場合は、生地やボタンなどを選んで、自分だけの一着を作ります。
フルオーダーの場合、1~3か月程度、納品を待つ必要があります。
どちらが在庫をたくさんもたないといけないかといえば・・・・
すぐにわかるのではないでしょうか?
自社の適正在庫を知りたい、定めたいという方には、在庫管理110番で定期的に開催している在庫管理セミナーがおすすめです。
これまでに300人以上が受講している人気の在庫管理セミナーです。
製造業で在庫管理システムは必要?エクセルで十分?
製造業で、在庫管理システムの導入・構築を検討している方も多いでしょう。
在庫管理システムとは、リアルタイムで工場・倉庫内の在庫情報が確認できるツールです。
効率的に在庫状況を把握するだけではありません。
- 受注・納期管理
- 入庫登録・出庫登録
- マスタ管理
- 棚卸(棚卸差異の表示など)
- 在庫分析
- 会計システム・販売管理システムなどの基幹システムとの連携
- ハンディターミナルやバーコードを使った棚卸や検品、ピッキング(リアルタイム管理「)
なども可能です。
在庫管理システムが初めての方は、基本をまとめているので、こちらもご覧ください。
☑在庫管理システム|導入の完全ガイド(機能・メリット・特徴・注意点)
最新の在庫管理システムは不要
結論から言えば、どんなに高価な在庫管理システムを入れても、Iotなど最新の方法を使っても、うまくいかないのが在庫管理です。
なぜなら、多くの企業・製造業が2つの失敗をするからです。
- 在庫管理システムの選び方
- 在庫管理システムの導入方法
なぜ、この2つで失敗するかというと、在庫は何か?という役割を理解して、プロジェクトを進めていないためです。
在庫の基本を徹底的に理解して、会社で実践する必要があります。
逆に在庫管理の基本がしっかりとできていれば、高価な在庫管理システム、最新の多機能な在庫管理システムは不要です。
在庫管理システムを導入するポイント
在庫管理110番にも在庫管理システムのお問い合わせを多数御寄せいただいています。
選定を間違えがちな間違えがちなポイントは以下のようなものです。
- 多機能・高機能だった
- 高価・高額なシステムがいいと思った
- 導入実績が多いから
- 大手だから安心した
- 自社の業種専用システムだった
- 営業トークに負けた
これらが悪いわけではありません。
重要なのは「自社に合っているのか」「自社の課題に解決しているのか」という点です。
中小企業のほとんどは、「必要最小限の機能」で十分ですし、「誰もが使いやすい」操作性ものを選ぶべきだと考えています。
つまりコストパフォーマンスの良いものを選ぶべきということですね。
9-2.在庫管理システムの間違えた導入
- システム任せになってしまう
- 事前準備ができていない
- 人的ミスには対応できない
在庫管理システムを導入しただけでは何も解決しません。
業務効率化や生産性向上にはつながりません。
在庫管理はデータ管理だけではなく、現品管理とのバランスで成り立っているからです。
そのために現場では、「在庫の流れの把握」「情物一致」「基準を作りルールを守る」などが求められます。
こういった対策をせずに在庫管理システムを導入するのはご法度です。
製造業で在庫管理システムを導入するポイントに触れましたが、あくまでも重要なのは「在庫の役割」です。
これを機能させるために、手段として在庫管理システムを使っていきましょう。
在庫管理システムを導入して、在庫管理を効率化させるには、間違いとは真反対の選択をすることです。
ポイントをまとめておきます。
- 必要最低限の機能で十分
- コストパフォーマンスの良さを重視
- 現場に精通したプロが手掛ける在庫管理システムが最適
- 導入にあたり事前準備を実施すること
- システム任せにならないルールづくり
何度も言いますが、在庫管理システムは、自社の在庫管理レベルにあっていて、シンプルなものがベストです。
在庫管理110番では、在庫管理の専門家の観点から、あなたの会社の在庫管理レベルにあった在庫管理システムをお勧めします。
在庫管理システムの新規導入・入れ替えをご検討ならお任せください!
エクセルを在庫管理システムの代わりにする
2~3人くらいの規模であれば、在庫管理システムは不要で、エクセルでも十分な場合があります。
無料のテンプレートも出回っているので、コストをかける必要はありません。
「在庫管理110番」でも在庫管理表の無料テンプレートを配布中です。作り方・使い方も解説しているので、ご活用ください。
しかし、エクセルの在庫管理システムは、本格的な在庫管理には絶対に向いていません。
一時的ではなく、ずっと在庫管理が必要ならたとえ自社が小規模だったとしても、在庫管理システムの導入をお勧めします。
在庫管理のご相談なら「在庫管理110番」がおすすめ
在庫管理に関するお悩み解決なら、在庫に関する総合窓口「在庫管理110番」への相談がおすすめです。
在庫管理110番は、以下のような強みがあります。
生産管理、設計変更、発注管理、現場改善、在庫削減などで実績のある在庫管理アドバイザーがアドバイスします。
- 誰にでもできる在庫管理の仕組みを作りたい
- 在庫削減をしたい
- 在庫管理システムを導入したい
- 棚卸の精度を上げたい
- 在庫とは何かに関連するページ
など、あなたのお悩みにお答えいたします。
実務経験豊富なアドバイザー