在庫管理において、品目コード(商品コードや部品番号、品番とも呼ばれています)の管理は最も重要です。
適当に決めてしまうと、間違いなく後々に痛い目にあいます。(運用を開始して、2年くらい経過した時に気づきます)
品番の管理で行き詰まり、見直しで膨大な労力がかかっていることもよくあります。(あまり表に出てこない地味な話題なので、知られることが少ないです)
しかし、実務的な解説をしたものがほとんどありません。
大手メーカーでも採番やコード体系に頭を悩ませていることが多いことが在庫管理110番への相談でも感じられます。
ぜひ、痛い目に合わないようにするために、採番方法とコード体系を作る参考にしてください。
目次
商品コードを設定する理由
名前があるのに、なぜわざわざ商品コードが必要なの??と疑問に思うかもしれません。
しかし、世の中に流通しているものを見ると、バーコードや型番などほとんどのものにコードがついています。
わざわざコードを設定する最大の理由は、共通認識の下で、間違いなく商品を特定するためです。
名前でも特定ができると思われがちですが、名前をそのまま使うのはとして次のような事が挙げられます。
正しい名前で呼ばれない
- 略称を使用する
- ひとつのものに複数に読み方がある(方言、部門内での用語など、一部地域や内部でしか通用しない)
- 読み間違える
- 聞き間違える
上記のようなことが起こるため、勘違い、聞き逃しなどが発生してしまいます。
システム化になじまない
商品コードは、一般的に半角英数文字です。
商品名だけの管理は品番が無いのと同じです。日本語は、半角英数文字ではないため、商品コードにはなじみません。
コードの寿命はシステムよりも長い
コードが重要だと言われる理由はもう一つあります。
それは、コードの寿命です。
コードの寿命とは、設定したコードを一切使わなくなることです。(履歴にも残さず完全に捨てるまで)
たとえば、システムの入れ替えする時、商品コードなどのマスタ-情報を新システムに移行するのは普通です。
つまり、途中でシステムを変えてもコードはずっと使い続けるという場合が多く、会社にある情報の中でももっとも寿命の長い情報の一つと言えます。
寿命の長い情報なので、短期的目線で付けてしまうと、後々とても後悔することになります。
コード体系は短絡的な考え方で作ってしまうと、メンテナンスやコード体系の見直しで膨大な労力が必要になるケースがよくあります。
だからこそ、商品コードをどのように付けるか(採番するか)?は実はとても大切なことです。
この時にかけた時間は、日々の在庫管理業務の作業時間を必ず削減するので無駄にはなりません。
システムの入れ替えは、10年単位で行われることが多いので、少なくとも20年くらい持つコード体系を考えておく必要があります。
一度決めたコードを全て見直してメンテナンスするとなると、とても膨大な労力がかかります。
大手企業でも、グローバルレベルで、採番体系や同一品が複数品番になっていたりと、苦労しているケースが多々あります。
昔と違って今はインターネットで一元管理が可能な時代になりましたが、採番体系や同一品複数品番の状態では、正しく一元管理ができません。
これからシステムを導入して品番を採番する場合は、この機会に採番ルールを決めることをぜひお勧めします。
逆に、すでにシステムがあるものの採番ルールに問題がある会社は、1日でも早く見直しを開始すべきです。
日々採番されていきますので、時間が経てば経つほど、見直し労力が増えていきます。
商品・部品の採番ルール
品目(商品・部品)マスターを作るときに、最も重要なのはIDのコード体系です。
コードを作るときの原則は以下の通りです。
- 一物一品番
- 品番は品番(コード)で管理する
- 品番は意味なしとする
- 十分な桁数(拡張性)を確保する
一物一品番
採番の大原則は一物一品番です。
一物一品番とは、1つのモノに対して1つの品番を採番するという意味です。
当たり前だと思われるかもしれませんが、実はこの大原則が守られていないことがとても多いです。
よくあるのは、違う部署で同じ部品を使っているものの、別品番になっている場合です。
1つのモノに複数の品番があると次のような問題が起こります
- 会社全体で集計をするときに、正しくできない(会社の業績・財務の一元管理の阻害)
- 同一品の存在に気づかず、余剰調達をしてしまう
- 調達がバラバラに行われるため、単価の高止まり、適正在庫の阻害(在庫の部署間による偏在)
- 商品の設計変更がうまくいかない
品番(コード)で管理すべき理由
在庫管理は名前ではなく、必ず品番(コード)を使いましょう。
品番管理の最大の目的は、正確に、一意に、特定することです。
在庫管理がうまくいっている企業は、例外なく在庫を品番(コード)で管理しています。
よくある問題は、現場用語が乱立していて、同じものなのに呼称が人それぞれ、部署それぞれで違う場合です。
品番を使っていない企業は、採番が面倒だ、意味がないと主張しますが、それは間違いです。
在庫を名前で管理するデメリットには次のようなものがあります。
- 聞き間違える
- 表記ゆれが起こりやすい
- 聞いても何かがわからない
- 集計ができない
管理する部品や商品が少ない場合は、名前による管理をしていても気になりません。
しかし、商品が増えてくると、類似品や似たような名前のものが増えてきます。
それに従って、上記のようなミスが増えていきます。
在庫管理上のミスは、生産遅延や出荷ミスにつながるので、会社の信頼にも大きな悪影響があります。
在庫をID(コード)で管理をすると、間違いがなくなります。
また、IDを付けることによって、データの分類や並び替えも簡単になります。
表記ゆれを防ぐ
名前を使うことで一番起こりやすい問題は、表記ゆれです。
(表記ゆれとは、同じ読み方や意味を持つ言葉で、表記が混在している状態のことを指します)
同じ読み方で複数の表記
例えば、「りゅう」という言葉を聞くと、
- りゅう
- リュウ
- ryu
- 竜
- 龍
など、同じ読み方に対して様々な表記があります。間違いに気づかなければ、同じものにも関わらず別表記に
なったり、まったく違うものを仕入れ、出荷してしまう可能性もあります。
また、漢字の場合は、1つの文字に複数の読み方があります。
例えば、「龍」は、「たつ」と読むこともできます。
数値
数字には、全角・半角があります。
人の目から見れば、全角であっても半角であっても、数字の判断ができますが、システムから見れば全角と半角は違います。
スペース(空白)
一番タチが悪いのは、スペースです。
システムにとって、スペースは、文字の一種です。誤ってスペースを入れてしまうと、認識されない、エラーになってしまう・・・
などの問題が起こります。
品番で読むことを浸透させるシンプルな方法
名前ではなく、品番を浸透させるための一番良い方法は、品番で読むことを徹底することです。
たとえば現場から
現場:「ボルト○○の納期を教えてほしい」
という質問があった時に、
調達担当者:「品番は何ですか?」
と聞き返すことです。これをとにかく徹底します。
私が所属していた会社では、品番はあったものの、名前で読むことが横行していました。
それが原因で、聞き間違い、発注ミス、払い出しミスが多発していたため、「部品は品番で読むこと」を徹底しました。
例えば、課長がパートさんに部品名を言っても、パートさんが品番を聞き直すというくらいの徹底です。
運用開始直後は、慣れず、「品番を確認するのが手間!!」と怒っていた人が多かったですが、2か月もすれば浸透しました。
浸透後は、ミスが一切なくなりました。
品目コードを意味ありにしてはいけない理由
まず、最初に採番することになると決めなければいけないのが、品番を
- 意味ありにする
- 意味なしにする
です。
意味ありコードとは、例えばBK(ブラック:黒)のように、品番を見れば、品番の情報がわかるようにすることです。
在庫管理110番に寄せられる採番ルールに関する質問で一番多いです。
結論から言えば、採番頻度の高い品目コードには意味ありコードは使わないほうが良いです。
意味ありコードを使えば、品番を見ただけで必要な情報がわかるので、短期的に見ればとても有効です。
しかし、長期的な観点で見ると、いいことばかりではありません。意味ありコードの問題点は大きく分けて2つあります。
意味付けに無理が生じる
よくあるのは、その品番が属する分類(カテゴリー)や工程や頭文字のアルファベットを品番の頭につけて、採番するケースです。
しかし、この方法だと、これまでにない分類のものがでてきたり、どちらに属せばよいかがわからないもの、同一のアルファベットから始まるものなどが出てきたときに、無理が生じます。
その結果起こるのが、意味のない適当な採番です。
意味のないものが混じった瞬間に、意味ありコードの信頼性はゼロです。
桁数が足りなくなる
長く使うために必要なのは、十分な桁数です。
設定当初は必要だと思って設定した意味ありコードが、ほとんど使われなかった場合は、無駄になってしまいます。
長く使うことを前提に考え、十分な桁数を確保しておくことが大切です。
意味ありコードを使ってもよい場合
意味ありコードを使ってもよい場合は、意味づけが増える可能性が極めて低い場合です。
意味あり品番の問題点は、意味づけに無理が生じるようなことが起こるからです。
例えば、下記のような場合は、意味ありコードにしても比較的問題無いでしょう。
- 都道府県名(増減することは考えにくい)
- 材質(木材、金属など基本的な性質)
- 性別(男女、生物学的な性別。)
- 国名(消滅、統合、分割は滅多にない)
採番方法(コードのつけ方)
それでは、具体的に品番のつけ方を解説します。
連番で付ける
最初に採番したものから、若い順番でつけていきます。
注意点は、桁数を決めておくことです。
例えば、1~1000までの品番をつけるときは、
1、2・・10・・・・1000とつけるのではなく、
0001、0002・・0010・・・1000としておき、桁数を統一します。
また、連番で採番するのはメリット、デメリットがあります。
メリット
- 古いものから順番に番号を付けていくのでルールがとても単純である
- 空き番号が出ないので、桁をフルで使える。
デメリット
- 番号は意味を持たないので、IDを使って分類が不可能。
- 同一品のマイナーチェンジ品(改良品など)などが、離れた位置に来てしまう。
連番が避けられる理由は、同一品のマイナーチェンジ品(改良品など)などが、離れた位置になってしまうためわかりにくい・・・
というのも一因です。
桁で分類
連番によるデメリットを緩和するのが、桁に役割を持たせる方法です。
例えば、上記のように全7桁に対して、
- 1桁:カテゴリ
- 2~5桁:連番
- 6~7桁:レビジョン
といった感じです。
メリット
- コードの意味が分かりやすい
- グループ化しやすい
桁に役割を持たせると、先ほどのマイナーチェンジ品や改良品で品番がはなれるという問題を回避することができます。
デメリット
- 空き番号が多く出る可能性がある
- 桁数が長くなる
桁数が長くなると、実務的に入力ミスや書き間違いなどが起こりやすくなります。
この場合は、カテゴリーなどを品目マスターではなくサブマスタ(分類マスタ)として登録することもしておいてもよいでしょう。
また、桁数の間にハイフン「-」を入れることで、区切りをわかりやすくするのもよいでしょう。
特に、レビジョンは、ハイフンをつけて枝番として管理するとわかりやすいでしょう。
同一品番を別物として管理をする時はロット番号を採番する
ロット管理とは、同一品を別物として管理する際に有効な仕組みです。
ロット管理は次のようなときに使われます。
- 品質管理:トレーサビリティ(どの原材料から作ったなどを追うため)
- 原価計算:仕入によって原価が違う場合、仕入ごとに仕入れ原価を管理する
ロット番号は、採番頻度が高いため自動採番がおススメです。
ロット管理と関係の深い、トレーサビリティについて解説した記事はこちらです。
トレーサビリティの手法と特徴、管理する際のポイントを専門家が解説
絶対にやってはいけない品番管理
採番して一度でも使った品番は、永久欠番にしなければいけません。
その理由は、履歴を資産化するためです。
在庫管理で蓄積した、仕入れや販売のデータは会社の財産です。
過去のデータを使った分析は、在庫管理では必須業務です。
履歴を資産化するために、絶対にやってはいけない品番の管理を2つご紹介します。
廃番による品番の削除
廃番とは商品の終売などによって、その品番を使わなくなることです。
廃番で、品番を完全削除するのはやめましょう。
廃番処理は、品番を削除するのではなく、品目マスタに廃番フラグを設けたほうが良いです。
品番を完全削除してしまうと、品番の情報がすべて消えてしまいます。
ただし、現在使っているシステムに廃番フラグのような機能がない場合は、名前で判断できるように工夫します。
例えば、「【廃】M8ボルト」といったように、表記を決め、一目でわかりやすいようにするのがコツです。
品番の使いまわし
使いまわすと、過去と現在がごちゃ混ぜになってしまい、その品番が新しいものか、古いものかがわからなくなります。
面倒だと思うかもしれませんが、データの活用という観点からみたときにとても重要な考え方です。
廃番や品番の使いまわしは、システム導入当初では全然考えない要素ですが、必ず生じます。
品番の採番・管理は1か所集中させる
品番管理を破綻させないために、採番と管理は、一部署に集中させることをお勧めします。
簡単な流れとしては、次のようにすると良いでしょう。
- 採番の依頼を担当部署に申請する
- 担当部署が採番する
- 依頼部署に採番した品番を連絡する
- 依頼部署が採番した品番を使用する
やり取りには、フォーマットを決める、メールに残すなど必ずやり取りの履歴が残る仕組みにしましょう。
なお、採番後は、品番や名称以外にもマスター項目の設定が必要ですが、設定項目にも担当を設けておくとよいでしょう。
とにかく、商品コードは特に慎重に扱い、一物一品番であり、設定がルール通りになるように心がけましょう。
採番を自動化する
採番ルールを決めておき、自動化しても良いでしょう。
連番管理であれば、比較的自動化はしやすいはずです。
品目マスタで管理しておきたい項目
品目マスタは、在庫管理の中で、一番大切なマスタです。
品目マスタをしっかりと整備することは、今後の在庫管理を円滑に進めることにつながります。
品番や品名のほか、下記のような項目を整備しておくとよいでしょう。
- カテゴリー(分類)※サブマスタ化
- 廃番
- 単位
- 発注方法(発注点、MRPなど)
- リードタイム
- 標準仕入れ先(マスタ)
- 廃番日
- 共通部品(共通部品かどうか)
サブマスタの活用
単独では活用できず、品目マスタなどと一緒に使うマスタのことをサブマスタといいます。
特に、品目マスタでいうと、サブマスタとして登録しておくとよいでしょう。
マスタ化をする意義
マスタ化をする意義は、「表記ゆれ」がなくなりデータの抽出や集計がしやすくなることです。
例えば、部品や商品のカテゴリー別の仕入れや売上を集計するといったことはよくあります。
手入力だと、表記ゆれで集計がうまくできません。(データクレンジングが必要になります)
一方で、マスタ化をしておけば、選択式になるため表記ゆれが起こりません。
後から集計する可能性がある項目は、マスタ化しておくとよいでしょう。
システム導入は長期目線で考える
この記事では、採番について取り上げましたが、システムは短期目線で考えず長期目線で導入を考えないといけません。
そんな中で、今回の採番のように、最初につまづくと、運用始めてすぐは問題にならないが、運用を始めて数年後に必ず問題になることというものがあります。
システム会社は導入までが仕事ですが、あなたの会社は導入後の運用が重要です。
在庫管理110番は、在庫管理の実務を知っている専門家です。ユーザーもシステム会社も知らない、将来起こりうる問題も見据えたご支援が可能です。
在庫管理システムの導入や入れ替えをお考えの場合はご相談ください
あなたの会社で在庫管理システムの導入や入れ替えを検討している場合は、ぜひ一度ご相談ください。
在庫管理システムの導入は、とっかかりがとても肝心です。導入後、こんなはずじゃなかった・・・
と後悔しないように対策しましょう。
ささいなことでもお気軽にどうぞ!