近年、注目されているのがAI技術を使った在庫管理です。
AIは人工知能と呼ばれる、 人間の知能を持たせたテクノロジーのことを意味します。
この記事では、AIを活用した在庫管理をテーマに特徴と問題点を解説します。
それは以下の通りです。
<特徴>
- 在庫状況をリアルタイムに把握
- 高精度の需要予測
- 棚卸の計数ミスを防止
<問題点>
- 大量のデータがなければ分析が困難
- 需要予測が当たらない可能性
AIは上手く導入できれば、在庫管理を効率化させる技術です。しかしビッグデータの特性上、失敗する可能性は大いにあります。
在庫管理アドバイザーの立場から、具体的な特徴や問題点だけでなく企業の最新事例や導入の注意点についても取り上げます。
「AIによる在庫管理に興味がある」
「人工知能で本当に在庫管理が効率化するのか」
「人間によるサポートはどこまで必要なのか」
といった疑問にお答えします。
なお、在庫管理にはさまざまな業務フローがあり、手を煩わせている人は少なくありません。煩雑な作業を効率化するために、現場では最新技術が導入されています。
在庫管理システムやIoT技術など、「在庫管理110番」でも、各ツールを紹介してきました。無料で利用できるツールもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
目次
1.AI(人工知能)とは
AIは、人間の知能や知覚の一部を、ソフトウェアによって人工的に再現したものです。
Artificial Intelligence(アーティフィシャル インテリジェンス)の略称で、一般的には人工知能と呼ばれています。
簡単に言えば、人間と行うような判断・行動をコンピューターに作動させることができます。
機械学習やディープラーニングという言葉を聞いたことがあるかもしれません。これらもAIの機能の一部です。機械学習は、AIの計算プログラムを活用して、大量のデータを分析することができます。
たとえば、
- パターンや傾向、ルールの認識
- 精度の高い予測・判別
などが挙げられます。
ディープラーニングとは、深層学習と呼ばれている、機械学習の1種です。人間が無意識でおこなっている行動を、コンピューターに学習させることができます。
AIの活用事例として、チャットボットによる問い合わせ対応や音声認識によるコールセンターの自動化などが挙げられます。また、自動車の自動運転やお掃除ロボットなども有名です。
ほかにもAIや機械学習、ディープラーニングを活かしたサービスをあげれば枚挙にいとまがありません。私たちの日常からビジネスシーンまで幅広く導入されているのです。
では、在庫管理の分野においては、どうでしょうか。
2.AIを活かした在庫管理の特徴
AIを在庫管理に導入することで、以下の業務改善に役立ちます。
2-1.在庫状況をリアルタイムに把握
在庫数の確認画像認識(AIカメラ)で、棚の状況を、リアルタイムで把握・管理できます。
さらに在庫状況を見える化して、滞留在庫の検知や、発注ミスを防いでくれます。AIによる自動発注も可能です。人的なミスや過剰在庫・在庫不足を事前に防ぎます。
2-2.高精度の需要予測
需要予測機械学習のアルゴリズムによって、過去の売上や季節による変動、顧客属性から、精度の高い需要予測を実現します。
担当者の観による主観的な判断ではなく、客観的なデータに基づいた分析が可能です。現在だけでなく、将来的な視点に立って、適正在庫を維持させることができます。
2-3.棚卸の計数ミスを防止
棚卸し実地棚卸でよくあるのが、計数ミスです。膨大な工数や、難しい工程があると、当然のことながらミスが発生します。初心者には任せづらく、ベテランの作業員がいなければなりません。
しかし、AIであれば、誰でも簡単に操作をして、棚卸しを完結させられます。
実地棚卸で起きるミスは、以下の記事で解説しています。防止策も紹介しているので、お役立てください。
☑実地棚卸とは|正しい方法を解説<棚卸しでよく起きる6大ミスを防ぐ>
ほかにも、1拠点ではなく全国の工場・倉庫の在庫管理や、中小企業でよくある属人化の解決などにも、AIは活かせます。在庫問題を抱えていえる企業にとって、大いに役立つことでしょう。
3.AIによる在庫管理事例
在庫管理システムにAIを導入した事例を紹介していきます。
3-1.H&M
アパレル業界を牽引するトップ企業のH&M。
日本だけでも10憶着以上の在庫が廃棄されるのが、常識となっている業界です。
その中で、在庫を一切廃棄しないビジネスモデルを構築しつつあるのがH&Mです。どの国のどの店舗に、どの在庫がどれだけ必要かを、AIによって分析して、出荷するタイミングも見極めています。
3-2.セブン&アイ・ホールディングス
コンビニエンスストア「セブンイレブン」やスーパー「イトーヨーカドー」などを、日本・世界中に展開しているセブン&アイ・ホールディングス。
コンビニエンスストアは、気候や周辺イベント、立地に大きく影響を受けるビジネスです。多角的なお客様ニーズを分析して、さまざまな変化に対応できるよう、AIによる在庫管理に注力(総合商社・三井物産と連携)しています。
全国132店舗で従業員の発注作業の約3割を削減したり、営業中の欠品を減少させたりと、効果を発揮しています。
3-3.株式会社東芝
日本を代表する製造業メーカー、株式会社東芝。
工場・プラントなど製造現場において、生産性・歩留・信頼性の問題を解決するために、最先端アルゴリズムを開発しました。
この技術で、欠損値を多く含む製造データでも、品質低下・歩留悪化の要因を解析できるようになりました。推定誤差を約41%、削減することに成功しています。
4.AIによる在庫管理システムの問題点
AIによる在庫管理の特徴や事例を挙げましたが、メリットばかりではありません。
AIを導入しても失敗する可能性は大いにあります。なぜなら、AIによる機械学習は、ビッグデータをもとにしているからです。
近年、アルゴリズムは進化しているといっても、大量のデータがなければ分析することは困難です。とくに、売れ筋ではない商品はデータ数が少ないため、精度は低くなってしまいます。
大量のヒット商品を開発・販売する大企業にとって、AIによる在庫管理は有効です。しかし、商材の種類や企業の規模によっては、需要予測が当たらないケースもあるでしょう。
需要予測の精度を上げるためには、担当者の手腕が問われます。「製造業における需要予測の手法」に現場で使えるコツをまとめているのでご覧ください。
残念ながら、傾向がつかめないデータや想定できない事象に、AIは対応しきれません。何よりも問題は、AIに任せればすべて解決できるという発想を持ってしまうことです。
「在庫管理110番」で重視している考え方は、情物一致です。整理整頓や先入れ先出しなど、現品管理をすることで、データとのバランスがとれるようになります。詳しい方法は、以下の記事をお役立てください。
5.AI導入の注意点
AIは、情報収集・分析をしてくれますが、作業を代わりにやってくれるわけではありません。そのため、道具を扱う人の基礎的スキルや準備が必ず必要です。
つまりデータ数ではなく、実数を管理する技術が求められます。いわゆる現品管理です。
また、AIを使った在庫管理クラウドやソフトの多くは、開発会社が提供しています。その多くは、在庫管理の現場を知らないため、実務とは合致しない機能を搭載していることがあります。
導入を検討する際は注意してください。
「在庫管理110番」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が推進される中で、最適なシステムの選び方を在庫管理のプロが提案しています。とくに中小企業が現場で活かせる在庫管理システムやIoT在庫管理に実績があります。在庫管理のデジタル化に興味がある方は、お問い合わせください。