在庫管理は製造業にとって生産工程や保管上の大きな課題です。
材料やパーツを仕入れて製造工程に回し、完成品は保管して出荷するという複数の在庫管理が求められます。
管理担当者は、上がってくる報告やデータの状況を逐一把握することが求められるのです。しかし、リアルタイムで変動し、中には管理中にロストして数が合わないことは生産性を下げる要因となります。
そこで導入したいのがデータで管理して精度の高い在庫管理のできる「在庫管理システム」です。本記事では、在庫管理システムの特徴や機能、メリット・デメリットなどについて解説します。
目次
製造業における在庫管理システムの特徴とは
在庫管理システムは、倉庫内の部品や商品在庫を管理するために使用するさまざまな機能を有したシステムです。
在庫管理という名称が一般的ですが、「倉庫管理システム（WMS）」や「生産管理システム」の一部として別の名称で呼ばれていることもあります。
在庫管理システムを利用する業種は幅広く、製造業や卸売業でも部品や製品の管理のために導入します。
主に、在庫の出入庫や検品を通して在庫数を計算、リアルタイム管理するために、エクセルから在庫管理システムに移行する企業は増えています。
製造業が在庫管理システムを必要とする理由
製造業では電子機器や化学製品、自動車から日用品までさまざまな製品が日々、国内で作られています。
製造業にとっての在庫管理は、商品を通販やECで販売する倉庫内の在庫管理をすることとは少し異なり、組み立てる材料や部品のロットを中心に細かく管理するため、在庫把握が難しいという課題があります。
製造業がよく導入する生産管理システムの在庫管理だけでは、上記を防げないという問題もあります。つまり、実在庫管理を正確に行い、業務を効率化して利益や採算を高めることが在庫管理システムを必要とする理由です。
クラウド型やオンプレミス型がある
在庫管理システムは自社のパソコンやサーバーにインストールして使うオンプレミス型と、外部のレンタルサーバー等に設置されたクラウド型があります。
自社にサーバーを持つと保守管理のために、専門人材やサーバのセキュリティ対策などの固定費が必要になります。
近年は、固定費のかからない機能や使い勝手の良さ（利便性）、更新・再導入の手間の少なさから従量課金制のクラウド型を使用する企業が増えています。
クラウド型の場合、固定費もかからず、複数の倉庫や工場で在庫管理システムを同時かつ簡単に導入して利用しやすいというメリットがあります。
複数の倉庫に在庫を分ける場合でもリアルタイム管理ができるため、製造業ではクラウド型サービスを利用するのがおすすめです。
製造業で使える在庫管理システムの機能
在庫管理システムは数々の機能が備わっています。
特に重要な機能が、入出庫や検品・棚卸、分析・レポート機能などです。
入出庫の機能
入出庫では、倉庫に入れる「入庫作業」と倉庫から取り出す「出庫作業」があります。外部からの入出がある場合は「入出荷」ともいわれます。主に、入出庫の機能では、入庫した材料・パーツや商品の品数を把握するためにある機能です。製造業の場合、在庫管理の対象は大きく分けて原材料（材料・部品）、仕掛品（製造途中）、完成品（製造後）の3種類があります。
検品・棚卸の機能
在庫管理システムには、在庫を棚ごとに管理するときのチェック機能が付いていることがあります。入出庫の際に、数量や品目、状態を確認する作業が「検品」です。
在庫管理システムはその機能がついているものもあり、必要な項目を入力してデータで管理できるため、紙記載などで起こる紛失や手書きのミスなどを防げます。
例えば、ハンディターミナルを使用して入出庫を管理する機能があるシステムの場合は、検品時にバーコードを読み取って、高い精度で在庫数を把握できます。
特に入出庫の数量管理を手作業で行い、紙に記入するケースでは、書き忘れ、書き間違い、転記間違い等のヒューマンエラーのミスが多く発生し、在庫数が合わないといった事が起こるため、システム管理と組み合わせて上記のミスを防げます。
また、データ上の品数と実際の品数を棚卸しの段階で管理することもできます。特に、製造業のような製品の製造工程で在庫が変動する場合には、棚卸機能が重視されています。ハンディターミナルと組み合わせたデータから在庫を見える化することでリアルタイムのモニタリングが可能です。在庫が動く中で起こる在庫ロスがどのタイミング・工程で起こりやすいかなども分かります。
分析、レポート機能
数量をまとめて把握するには、データで管理するのが効率的です。
在庫管理システムはデータを呼び出してCSV出力したり、抽出して特定のデータだけを取り出したりできる機能があります。特にデータを活用した分析を行い、それをレポートとして提出する機能は、発注数の今後の予想、利益の見通しを立てたい経営層や在庫管理の責任者からすればメリットのある機能でしょう。
製造業に在庫管理システムを導入するメリット・デメリット
製造業において在庫管理システムを導入することは大きなメリットがあります。
そこで、3つのデメリットと導入時に割けられないデメリットを紹介します。
メリット1.業務効率の改善
まず、製造業では想像以上に在庫管理に多くの時間が割かれています。それと同時に在庫管理に起因したトラブル（在庫があるはずなのに無い等）が生じた際にすぐ原因がわからないという問題を抱えています。
そこで、在庫管理システムを導入するメリットの1つ目として、在庫管理を含めた業務効率の改善です。
在庫管理が確実かつスピーディに終わるということは、その分を本来の作業であるコア業務に時間を割けます。管理する側にとっては、在庫管理の人材ばかりを投入するわけにはいかず、本来の業務に支障が生じるのも好ましくありません。在庫管理を簡単にして業務効率の改善を図れれば、それだけ生産性も向上するでしょう。
メリット2.属人化を防ぐ
在庫管理システムは、素材や商品の保管場所を特定の社員だけが把握するといったことがなくなり、属人化を防ぐことにつながります。
基本的には、システムで在庫の流れを把握するため、新人でも長い経験のある人でも同じように在庫の管理が可能になります。
管理担当者の業務が増えるだけでなく、引き継ぎ時に問題が生じて現場を担えないことが製造業では問題のため、属人化を防げることは大きなメリットです。
メリット3.棚卸・出荷時の損失を防ぐ
在庫は棚卸や出庫・出荷の際、数が合わないとロスした分だけ損失が発生します。
特に必要な在庫が不足したことで製造ラインが止まるケースは管理者の責任が及ぶ中でも最悪の状況です。
また、製品の販売店や直通通販、卸売業者に出荷するときなど、出荷に不足が生じて余分に製造の必要が出れば、管理者が管理する人材も物資もそれだけ余計にかかります。
特に、発送後に出荷のミスが発覚した場合は、製造が二度手間となるため、現場にも大きな負担がかかるでしょう。そういったミスを最小限にすることで利益を守れるのもメリットの1つです。
デメリット1.導入コストがかかる
在庫管理システムを導入する最大のデメリットは、システムの利用にコストがかかることです。主に、初期費用とランニングコストに分かれており、初期費用は大きいが一度だけです。ランニングコストは使い続ける間、設定料金の費用がかかり続けます。クラウド型では導入し直す必要がなく、メンテナンスや更新も提供側が行うのでそうした費用は発生しにくいですが、基本的に使用料金はかかると考えましょう。
在庫管理システム導入によって無くせる時間と使用料金を比較することでコストメリットを確認しましょう。
デメリット2.システムに慣れる必要がある
システムを導入すれば、必ず操作を覚えなくてはいけません。
これまで在庫管理を手作業や目視、人での数でカバーしてきた企業にとっては、途中で在庫管理システムを導入することは現場の負担を一時的に増やすことがあります。
もちろん、システムに慣れるには現場だけでなく管理担当者も同じです。そのため、在庫管理を効率化するために周知したうえで、システム導入を前提とした倉庫・工場内の人材教育や実際に業務に慣れる時間を確保するなどの配慮が必要でしょう。
在庫管理システムを活用して業務を効率化しよう！
今回は、製造業の在庫管理システムについてその特徴や機能、メリット・デメリットなどについて取り上げました。
製造業では、在庫管理は煩雑化しやすく、製造前と製造後の出庫で数が合わないといったミスが多発します。
ヒューマンエラーを減らして、業務を効率化することで、製造上の利益を最大化することが可能です。解析レポート機能を使えれば将来的な利益の確保にも使えます。
ぜひ、在庫管理システムを導入して、倉庫在庫の正確な把握や今後の見立てに役立てましょう。