在庫管理アドバイザーの岡本です。
経営状況を把握するためには、売上・顧客数・在庫数などの数値の可視化が重要な指針となります。
そのために役立つのがZチャートです。
今回はZチャートの作成方法と活用方法をご紹介します。
目次
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Zチャートは傾向の比較に最適
Zチャートは販売数や在庫推移などの傾向を前年などと比較してどうかということを視覚的にわかりやすく表現できるグラフです。
在庫管理の実務では、在庫の持ち方や発注数を決めるために、前年比や前月比等の過去のデータを参考にします。
通常は、比較したいグラフをそれぞれ作成して見比べることが多いと思います。
実はこの際、2本のグラフが見た目では「微妙な差」だった時に、判断を誤ることがあります。
その際に、Zチャートを使えば、傾向の違いがはっきりと表れ、簡単にしかも間違いなく比較できます。
Zチャートで分かること
Zチャートは3本の折れ線グラフで構成されています。
- (A:青色)分析したい各月の実績データのグラフ
- (B:赤色)分析したい各月の実績データの累計のグラフ
- (C:緑色)過去からの移動合計データのグラフ
前回と比較して増加傾向か、減少傾向か?
まずは、「(C:緑色)移動合計のグラフ」に着目してください。
(C)の傾きで、前回との傾向を比較できます。
- 右肩上がり・・・増加傾向になっている。
- 右肩下がり・・・減少傾向になっている。
- ほぼ水平 ・・・昨年とほぼ同じ傾向
今回、例にしたZチャートを見ると、
(C)のデータはやや右肩下がりになっています。
これは、今年は前年と比較すると減少傾向にあることが分かります。
意味しています。
また傾きの大きさから、
- 特に2月と9月の落ち込みが大きい
- 10月以降は増加傾向に転じていること
がわかります。
青色グラフだけではわかりづらいことが一目でわかります。
売上の傾向
次に「(B:赤色)実績データの累計グラフ」に着目してください。
(B)は、1月から各月のデータの累計です。
例えば、2月のデータは1月と2月のデータの合計、12月は1月から12月までのデータ合計にになります。
そのため、データは必ず右肩上がりになります。
ただ、グラフで(B)を見ていただくと、「傾きの角度」が少し違っているのがわかります。
8月以降からグラフの傾きが急になっているのが分かります。
傾きが急になれば、売上の伸びが良くなったということ。
各月のデータだけでは分かりづらい、売上の増減や傾向などが一目でわかるグラフです。
Zチャートの作り方
Zチャートの作り方を解説します。
上記のZチャートは次のデータからできています。
Zチャートを作る上で必要なのが、作成したい期間の前期分のデータです。
今回は、月別に1年分の出庫データを使ってZチャートを作成しました。
したがって、前年1年分の出庫データも必要になります。
調査したい期間の2倍のデータが必要なので注意してください。
累積出庫数の計算方法
累積出庫数(データ(赤色))は、調査期間の累積値なので、作成したい期間の初めからの合計を足していきます。
例えば、
202108のデータは50、累積出庫数も50となりますが、
202109の累積出庫数は50+21=71となり、
202110の累積出庫数は、50+21+57=128となります。
移動合計の計算方法
Zチャートの作り方で一番悩むと思われるのが、移動合計のデータの作り方です。
(C)のデータ(緑色)が移動合計のデータになります。
移動合計は、Zチャートを作成したい期間の前期同時期の合計値です。
過去1年分のデータを使って計算します。
例えば、
- 202108の移動合計は、202010~202108の出庫数の合計
- 202109の移動合計は、202010~202109の出庫数の合計
つまり、各月の当月を含む過去1年分のデータの合計値です。
(A)~(C)の3つのデータをグラフ化すると図のようになります。
Zチャートがきちんとできているかどうかは、次の二点をみます。
- (A:各月のデータ)の一番初めのデータと(B:累積データ)の一番初めのデータが重なっていること
- (A:各月のデータ)の一番最後のデータと(C:移動合計データ)の一番最後のデータが重なっていること
上記のようになっていなければ、どこかで計算ミスをしてますので、再確認してください。
Zチャートを発注情報の参考にする
発注をする際に前年同月比など過去のデータを参考にして発注数を決めることは多いと思います。
ただ、前年同月比だけでは、前年と比べて売れ行きが上がっているか、下がっているかという傾向は分かりづらいです。
こんな時にZチャートを作ることで、傾向が分かるようになるので、前年同月比だけで見れば、今期の方が下がっていたとしても、売れ行きが右肩上がり傾向であれば、その後売れ行きが増えていく可能性もありますので、発注を多くするという選択肢も生まれます。
また、営業などの販売部門とのコミュニケーションツールとしても、Zチャートは役立ちます。
長期間のデータが必要なのがZチャートの弱点
仮に1年間分のZチャートを作りたい場合、必要なデータは2年分です。
Zチャート分析は、ある程度長い期間のデータが必要です。
新製品や期間限定商品など販売実績が短期間のものにはZチャートが使えません。
逆に言えば、定番商品など長年繰り返し生産をしているロングセラー製品では有効な手段です。
商品だけではなくカテゴリー分析にもZチャートは使える
新商品や限定商品などの短期間の販売実績しかない個別の商品には使えませんが、販売先や品種、カテゴリーなどのグループに対して、Zチャートを使うことができます。
例えば、ある品種の売れ行きを調べる・・・といったときに有効です。
見た目は特殊な印象を受けますが、作り方はとても簡単なのでぜひチャレンジしてみて下さい。
在庫管理にエクセルを活かす
在庫管理110番では、在庫管理に最大限エクセルを有効活用することを推奨しています。
世の中には専用のBIツールなどデータ分析専門の分析システムがありますが、エクセルでもかなり広範囲のことが可能です。エクセルを在庫管理に活かしたい、もっと効率よく使いたいなどのご相談がありましたらお気軽にお問い合わせください。
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