仕入れ販売計画:小売業の三大要素を管理する方法|在庫管理110番

小売業にとって仕入れ販売計画とは?

小売業の3大要素最

小売業の3大要素とは、仕入(調達)、販売、在庫
商品を仕入れて販売して売れた分がお金になります。
一方商品を仕入れて売れ残った分が在庫になる、
という形になります。

仕入(調達)、販売、在庫が分かる例をご紹介します。

Aさんは銀行から100万円を借りて、1個1万円で100個仕入れました。
販売価格は2万円です。

その商品は当月内で80個売れました。売上は160万円です。(2万円×80個=160万円)
その結果、月末時点で銀行の借金100万円を返済しました。(160万円ー100万円)

翌月、Aさんは残った60万円で更に同じ商品を60個仕入れました。
そして、月内で完売しました。
結果としてAさんは、100万円の借金を元手に160個販売して、320万円の売上を獲得。借金を返済しても220万円を手に入れる事が出来ました。

もう一つの例です。
Bさんも銀行から100万円借金をして、別の商品を1個1万円で100個仕入れてました。
販売価格はAさんと同じく2万円です。

しかし、Bさんの商品の売れ行きは悪く、当月内の販売は5個で95個が残りました。
売上は2万円×5個=10万円です。
Bさんは売上10万円を銀行返済に充てましたが、借金はまだ90万円残っており早急に返さなくてはなりません。
翌月も継続して販売しましたが全く売れません。
最終的に販売価格を1000円にして95個を売り切って在庫処分しました。
売上は95000円です。子の売上も銀行返済に充てましたがまだ足りず、
結果としてBさんには80万円を超える借金が残りました。

同じような条件下でも、仕入する商品、販売力、残った在庫状況によって
全く異なる結果を生むことがお分かりいただけると思います。

小売業にとって、仕入(調達)、販売、在庫の三大要素をきちんとマネジメントする事は生命線といえます。

小売りも投資回収業

では、仕入、販売、在庫の三大要素をきちんとマネジメントするとはどういうことなのでしょうか。

あなたは「そんなことは分かっている」と思っていませんか?
本当の意味で理解されていないケースが現実には大半です。

"販売の計画を立てる際に考えるべき端的な目標は、

  • 仕入れに関しては、出来るだけ利益率が高く、品切れしない量を調達できる
  • 販売に関しては、できるだけ多く、或いは前年実績の○○%増で売れる
  • 在庫に関しては、品切れしないレベルでできるだけ少ない在庫

では、この3項目の数値が望ましければ良い販売計画と言えるのでしょうか。

見た目上の数値だけが良い販売計画が沢山作られます。
残念ながら、それらが計画通りに実現する事は実際にはほとんどありません。

一般的に利益率が高くなれば販売数は減少ますし、前年と同様な商品が前年以上に売れる保証はありません。
また在庫も単純に減らせば良い訳ではありません。

商品を仕入れる際に、候補商品は幾つも出てくると思います。

  • 売れそうだが利益率の低い商品①、
  • 売価は高くなるが利益率の高い商品②、
  • Aを海外で生産する事で仕入れ数量単位が大きくなるが利益率も良くなる商品③・・等です。

それぞれの商品について販売計画を立てなければいけません。
販売数量の見込める物も、見込めない物も、また仕入数量が大きい物もそれなりに販売計画を立てます。

そして、①、②、③のどの商品を実際に仕入れるのか決定しなくてはなりません。
場合によっては3つのうちいずれかの商品の販売計画を修正する必要があるかもしれません。

商品①、②、③のそれぞれの販売計画書上には売上高、粗利益高、在庫高、それと回転率が記載されているはずです。

3つの商品の販売計画書を比較するとおそらく商品③が最も良い数値結果を表しているのではないでしょうか?

中身としては、こうなっていると思います。
安く大量に仕入れられて、かつ販売数も多く、利益率も高い・・・

さて、本当にこれで決めて良いのでしょうか。"
答えは【否】です。

商品③を取り扱って儲けがでそうか、あるいは複数の中で決める時など、先ほどの売上高、粗利益高、在庫高のそれぞれの見込み数だけで決めると大きな見落としが出ます。

このあとの項目で詳しく説明をしていきますが、上記の3つ以外の見方や指標が必要です。

冒頭のAさん、Bさんの例をもう一度思い返してください。
借金をして仕入れた(投資した)商品が売上金額と在庫金額になります。
そして売上金額で借金を返済していく、というお金のマネジメントが必須なのです。

投資・回収と仕入販売計画書

では小売業にとっての投資とは何でしょうか?
投資というと、すぐ設備投資だとか、改装や新店への投資といった事柄を想像します。しかし、小売業にとって最も大きな投資は商品投資つまり仕入れです。

仕入れる商品に投資をして販売、資金を回収する、という仕組みです。
残った在庫は未回収資産という構造です。

この投資と回収を、「仕入/販売/在庫」という三大要素に基づいて
表さなければいけないのが仕入販売計画書です。

小売業では通常、仕入れを入れずに「販売計画書」とだけ表現しています。
しかし、そのような表現だとどうしても販売数量や販売金額、粗利にのみ焦点が行ってしまい在庫への関心が薄れがちです。

小売業の三大要素、在庫は投資という観点を忘れないために、
私はをきちんと把握するために販売計画ではなく仕入販売計画書とすることお勧めします。

仕入の現場では

では、小売業の実際の仕入れの際に、現場ではどのような仕入れ・販売が計画されるでしょう?
一般的な会社組織であれば、通常は仕入れ専任者(バイヤー)や仕入部といった部署があり、そこで仕入れ商品の決定が行われているはずです。

仕入を担当する部署では、会社からの年度数値予算があり、その予算達成が使命となります。

予算は売上高と差益高(大体が前年実績値に数%上乗せしただけの前年踏襲型の目標値)が主であり、達成手段として差益率予算や在庫高予算があったりします。

その予算にのっとって、バイヤーは仕入販売計画を作成します。
しかしその際に陥りやすい罠があります。
例えば、次のようなケースです。あなたは心当たりはありませんか?)

  • 希望的観測に基づいた高い販売見込み数量
  • 必要以上の大量仕入れによる低い原価設定
  • 商品価値以上の高い売価設定となっている

売上至上主義や、計算上の差益率を上げるためだけに当初値入率を高くして、仕入販売計画を作成しているのではないでしょうか?(現実に多く存在すると思います。)

そしてそのようにして作られた仕入販売計画書の数値は、ほとんど場合において、売上高、差益高共に会社にとって好ましい見込みとなっているため、仕入を管理する上司の承認も得やすくなっています。

こうして、絵に描いた餅的な仕入販売計画書が横行してきます。

更に悪いことに、このような仕入販売計画書は作成承認以降は、
見直されることは稀です。作りっぱなしの仕入販売計画書は、まさに計画のための計画になってしまいます。

その結果として、描いていたように販売数が上がらず、販売数量の見込みと実際の販売数の乖離による売上、差益高の減少や、在庫の増加等の大きなリスクを抱えてしまいます。

仕入れは投資

小売りの三大要素は仕入れ・販売・在庫と言いました。
何度も言いますが、仕入れは小売業にとって最大の投資です。

仕入れを投資という観点から見た時にその仕入販売計画書は、
回収という側面がきちんと計算されていなければいけません。

先ほど例ではBさんの値入率はAさんと同様で、粗利益(差益高)見込みもAさんと同じはずでした。しかし結果的にはAさんとBさんでは雲泥の差となりました。
では何が違ったのでしょうか?

それは売れるスピード、つまり販売の効率です。
在庫回転日数(在庫回転率)で表します。AさんとBさんでは在庫回転日数が圧倒的に違っていたのです。

仕入れを担当するバイヤーが作成する仕入販売計画書においても、売上見込額や差益高見込だけに目をとられ、そこに潜んでいる売上の水増し見込みや、過剰な仕入れがあったらどうでしょうか?

どんなに理想的な数字が並んでいても投資回収といった視点のない仕入販売計画は会社にとって危険なものでしかありません。

仕入れ販売計画を作成するバイヤー自身はもとよりむしろ、
管理指導する立場の上司、経営者が仕入は投資なんだと考え、
経営者や管理者は投資には回収策が必要との観点で計画を評価指導できなければいけません。

管理者、経営者に知ってほしい事

私自身、小売業大手量販店に40年超携わり、その大半を仕入部門とSCM(サプライチェーンマネジメント部門)に所属し、数々の優秀なバイヤーや管理者と接してきました。
しかし残念ながら「田中バイヤーの例題」に明解に答えてくれた人は全くいませんでした。

むしろその時々の上層部指示のオウム返しの様に、
「売上獲得が最優先だ」或いは「差益高拡大が第一課題」というばかりです。

その結果、月末在庫が過剰になったり、仕入れ資金がタイトな時には「仕入れを一律ストップ」等の指示が飛び交う事もありました。

これらは全て仕入れに対する適切で統一された基準や指標を持たない為に起こる悲劇です。
その悲劇を繰り返さないためにも皆さん自身がが、仕入販売計画を正しく評価し、指導する事が必要なのです。

仕入販売計画を正しく評価するための統一された基準値(指標)とは?

仕入販売計画書の数値結果・見込みで、売上高や粗利益高は絶対に必要で最も重要な指標であることは間違いありません。
しかしそれのみでその計画書を評価する事が危険な事はこれまで述べてきました。
では他に仕入販売計画を正しく評価するための統一された基準値(指標)とは何でしょうか?
在庫回転率や平均在庫高などいくつもある指標の中で、効率を測るために最も適した指標は、次の2つです。

  • DOH(在庫手持ち日数)
  • GMROI(商品投下資本租利益率)

在庫回転日数は今のペースで売れた場合、「今の在庫は何日分あるのか」を表す在庫量の過剰、過小を相対的に判断する最も有効な指標です。
GMROIとは、簡単に言うと仕入れた商品の代金をどれだけのスピードで回収できるかを表す指標です。
したがって、GMROIが悪い商品はいつまでたっても手元に現金が残らないこととなります。

仕入販売計画書を見る場合、売上高見込や粗利益高見込の表面上の良さだけに目を奪われない事が重要です。
その陰には重くのしかかってくる過剰な在庫や、いつまでも返せない仕入れのための借金が隠れているかもしれません。

DOH(在庫手持ち日数)とGMROI(商品投下資本租利益率)

ここで、簡単にGMROI(商品投下資本租利益率)とDOH(在庫手持ち日数)についてご説明します。

DOH(在庫手持ち日数)

”DOH(在庫手持ち日数)は今のペースで売れた場合、「今の在庫は何日分あるのか」を表す”と書きましたが、需要なポイントがあります。
それは、原則として数量で計算するという事です。
各アイテムの動きの早さを測る為なので、売価や原価等の金額で算出はしません。意外とこの辺が認識されていない現場があると思います。

もし会計上金額ベースで知りたい場合は在庫金額、売上金額共に原価ベースで算出をします。

DOHは計画全体を見通す指標としても、またその時点毎に見る指標としても非常に有効です。

在庫量が過剰なのか過小なのか、それに応じた販売戦略の変更や倉庫スペースの配分、また次回補充タイミングと補充量の推測等、常にモニターしておくべき指標と言えます。

GMROI(商品投下資本租利益率)とは?

GMROIとは、Gross margin return on inventory investmentの略です。日本語では商品投下資本租利益率と訳します。(ジムロイ、ジーエムロイと読みます。)

GMROIの計算式は、
GMROI=粗利益率×(売上高/平均在庫高)
または、
GMROI=年間粗利益高/平均在庫高

計算結果が、例えば2.0だった時、そのまま2.0と表現したり、100をかけて200%と表す場合もあります。

この数値が大きいほど、投下した資本(仕入れに使った原資)に対しての儲け(回収)が良い事を示します。
GMROIは1年間をベースに計算すると良いです。
計画段階で必須となる指標です。

GMROIとキャッシュフロー

残念ながら、従来の多くの販売計画表は、売上予定数、仕入予定数、在庫予定数が羅列されているのみで、私の経験上GMROIが計算されている事はほとんど無いです。

その為、粗利益高の見込みやDOHは分かっても、その商品が本当に儲かる見込みなのかはわからず、本当に片手落ちの状態です。

GMROIはなじみが薄い指標で、その概念を理解している人は少ないと思います。
私がトレーニングしたバイヤーの間でも聞いたことはあっても、理解している人は居ませんでした。
彼らもGMROIという言葉や教科書的な文言は見ているのですが、出てきた1.0とか4.0とかの数値の意味が理解できていませんでした。

そんな彼らが一発で納得してくれたのがキャッシュフローとの関係です。

バイヤーが立てた販売計画に基づいて、初めに仕入れに使った金額(借入金)を週ごと(或いは月ごと)に売上で得た金額で返済していくと、どの時点で借金が無くなって黒字化するかを、私が考案した仕入れ販売計画ナビシートで自動計算しグラフィックに表したものです。
そこに表れているのは、借入金を完済するのにかかる日数です。

  • GMROI=1.0 完済は1年後
  • GMROI=2.0 完済は6か月後
  • GMROI=3.0 完済は4か月後

と明快に示すことができます。

GMROIで投資回収の日数が分かる

つまり、仮にあるバイヤーの販売計画書でのGMROIが0.5の場合、「あなたの計画では借入金(投下資本)を回収する(黒字化する)のに2年もかかってしまう」事が明らかになる訳です。

GMROIを利用すれば、いくつかの商品を比較する、或いは計画規模の拡大または縮小を検討できるようになります。

先ほどのDOHと併用すれば、儲けの見える商品を適量に持つことが可能になります。

小売業のあるべき仕入販売計画書とは?

仕入販売計画書には売上高見込や粗利益高見込だけではなく、DOH(在庫回転日数)やGIROI(商品投下資本租利益率)といった項目が必要です。
各指標数値が仕入れや販売状況に応じて正しく計算され、明快に示されている必要があります。

仕入販売計画書を簡単に作成、評価できる「仕入販売計画ナビシート」

しかしそれぞれのバイヤーが自ら計算して正しい仕入販売計画書を作成できるように
なるためにトレーニングする事は忙しい皆様にとって難しいのではないでしょうか?

また教育できたとしてもそれを作成するための時間や、修正するための時間を割くことも忙しいバイヤーにとって難しい作業です。

さらに同様に、或いはそれ以上に上司層や経営者が仕入れ・販売計画書を評価の内容を点検し評価、指導できるようになることは非常に大変な事だと思います。

この悩みは私が現場にいた時にずっと感じていたことです。
そしてこの悩みを解決するために「仕入販売計画ナビシート」を開発しました。

小売りの三大要素をきちんとコントロールして利益のでる仕入れ販売計画書の為
にも是非「仕入販売計画ナビシート」を活用してみませんか?

仕入れ・販売計画にお悩みなら是非お気軽にご相談ください

  • 仕入れ・販売計画を改善したい
  • 仕入販売計画ナビシートを自社の販売計画に導入したい

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